誘導機22【電験3種 機械】比例推移で求める二次挿入抵抗とは?平成22年 A問題4 完全解説

電験3種 機械科目 誘導機 平成22年度 A問題4 始動トルクを最大にしたい!挿入抵抗は何Ω?

電験3種(第三種電気主任技術者試験)の機械科目において、「比例推移で挿入抵抗を求める」問題は巻線形誘導電動機の代表的な計算パターンです。本記事では、平成22年度 A問題4「回転速度を1 200 min⁻¹にするための二次挿入抵抗」を、はじめての方でも確実に解けるように丁寧に解説します。

使う式は比例推移 \( \dfrac{r_2}{s_1} = \dfrac{r_2 + R}{s_2} \) ただ一つ。目標の滑り \( s_2 \) さえ出せば、あとは分数方程式を解くだけです。

目次

平成22年度 機械科目 A問題4:問題文と選択肢

まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

電験3種 機械科目 平成22年度 A問題4 問題文(巻線形三相誘導電動機の二次挿入抵抗)
平成22年度 機械科目 A問題4 問題文

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成22年度 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題4

電験3種 機械科目 【誘導機】 平成22年度 A問題4

極数 4 で 50 Hz 用の巻線形三相誘導電動機があり、全負荷時の滑りは 4 %である。全負荷トルクのまま、この電動機の回転速度を 1 200 min⁻¹ にするために、二次回路に挿入する 1 相当たりの抵抗 [Ω] の値として、最も近いのは次のうちどれか。

ただし、巻線形三相誘導電動機の二次巻線は星形(Y)結線であり、各相の抵抗値は 0.5 Ω とする。

(1) 2.0  (2) 2.5  (3) 3.0  (4) 7.0  (5) 7.5

出題のポイント:使う式は1本だけ

比例推移の計算問題は、式を1本立てれば終わります難しいのは式ではなく、目標の滑りを正しく出すことです。

比例推移の式

\( \dfrac{r_2}{s_1}=\dfrac{r_2+R}{s_2} \)

同じトルクを出す2つの運転状態を等号で結ぶだけ。左辺が抵抗を入れる前、右辺が入れた後です。

4極50ヘルツの巻線形誘導電動機で滑りが0.04から0.20へ5倍になり二次総抵抗も0.5オームから2.5オームへ5倍となる関係
比例推移では、同じトルクの運転点において滑りと二次総抵抗が比例します。

3ステップで解く

\( N_s=\dfrac{120\times50}{4}=1500\ \mathrm{min^{-1}} \)
❶ 同期速度
4極・50 Hz。60 Hz と読み違えないこと。
\( s_2=\dfrac{1500-1200}{1500}=0.20 \)
❷ 目標の滑り
1 200 min−1 にしたいということは、滑り0.20 で運転するということ。
\( \dfrac{0.5}{0.04}=\dfrac{0.5+R}{0.20} \;\Rightarrow\; 0.5+R=12.5\times0.20=2.5 \)
❸ 比例推移の式
滑りが0.04→0.20 と5倍なので、総抵抗も5倍の2.5 Ω
\( R=2.5-0.5=2.0\ \Omega \)
❹ 挿入する抵抗
答えるのは「挿入分」であって「総抵抗」ではない
答え挿入する抵抗 2.0 Ω(1) / 検算:滑り5倍・総抵抗5倍で比例が成立 ✓
二次抵抗0.5オームに外部抵抗を直列に加え滑りと総抵抗をそれぞれ5倍にする比例推移の説明
総抵抗2.5 Ωから元の二次抵抗0.5 Ωを引いた2.0 Ωが、実際に挿入する抵抗です。
平成22年度機械A問題4で同期速度1500毎分、目標滑り0.20、比例推移から挿入抵抗2.0オームを導く計算
同期速度、目標滑り、比例推移の順に計算すると、正解は(1) 2.0 Ωです。

選択肢の正体

選択肢そう出る計算どこを間違えたか
(1) 2.02.5 − 0.5正解
(2) 2.50.5 × 5総抵抗をそのまま答えた(最頻の誤り)
(3) 3.00.5 × 6滑り比を6倍と誤った
(4) 7.07.5 − 0.560 Hz として Ns=1 800 で計算(s=1/3)
(5) 7.50.5 × 15同上で、しかも総抵抗のまま

(4)(5)は「60 Hz と思い込んだ場合」の答えです。Ns=1 800 とすると s2=(1800−1200)/1800=1/3 で15倍——問題文の「50 Hz 用」を読み飛ばすと、この2つに吸い込まれます

(2)は「総抵抗と挿入抵抗の取り違え」で、この型の問題で最も多い誤りです。計算の最後に「引き算がもう1回要らないか」を確認する習慣をつけてください。

一般式にしておくと速い

挿入抵抗の一般式

\( R=r_2\left(\dfrac{s_2}{s_1}-1\right) \)

比例推移の式を R について解いただけ「滑りが何倍になったか」から直接求まります

\( R=0.5\times\left(\dfrac{0.20}{0.04}-1\right)=0.5\times(5-1)=2.0\ \Omega \)
本問に当てはめる
「5倍にしたいなら元の4倍を足す」——引き算が式の中に組み込まれているので取り違えようがない。

この形で覚えておくと、(2)のような取り違えが構造的に起きなくなります。「滑りを k 倍にしたいなら、外部抵抗は r2 の (k−1) 倍」——覚えるならこの一文です。

この運転で、どれだけの電力を捨てているのか

滑り0.20 で運転するということは、二次入力の20 % を熱にしているということです。具体的な数字で見てみましょう

仮にこの電動機の二次入力が10 kW だったとします(トルク一定なら同期ワット=二次入力も一定です)。

抵抗なし(s=0.04)抵抗挿入後(s=0.20)
二次入力 P210 kW10 kW(トルク一定なので同じ)
二次銅損 sP20.4 kW2.0 kW
 うち回転子内部(0.5 Ω 分)0.4 kW0.4 kW
 うち外部抵抗器(2.0 Ω 分)1.6 kW
機械出力 (1−s)P29.6 kW8.0 kW
回転速度1 440 min−11 200 min−1

速度を17 % 落とすために、1.6 kW を抵抗器で捨てている——これが二次抵抗による速度制御の代償です。熱くなるのは外部抵抗器なので機械は焼けませんが、電気代はそのまま出ていきます

抵抗の配分は抵抗値の比そのままです。0.5 Ω : 2.0 Ω=1 : 4 ですから、2.0 kW のうち0.4 kW が回転子内部、1.6 kW が外部抵抗器——4/5 は機外で捨てられているので、電動機自体の温度上昇は抑えられます。

「熱を機外で出せる」ことが巻線形の長所でもあります。かご形で一次電圧制御をすると、同じ熱が回転子の中で出てしまい冷やせません——同じ「滑りを捨てる」制御でも、捨てる場所が違えば使える範囲が変わるのです。

⏱️ 本番での進め方
式は r2/s1=(r2+R)/s2 の1本。または R=r2(s2/s1−1)。
「50 Hz 用」を読み落とさない。60 Hz と思うと(4)(5)へ吸い込まれる。
答えるのは挿入分。総抵抗2.5 Ω をそのまま書くと(2)。
倍率で検算:滑り5倍 ⇒ 総抵抗も5倍。

抵抗を入れると、速度が負荷で動きやすくなる

本問は「全負荷トルクのまま」という条件で解きました。では、負荷が変わったらどうなるのか——ここに二次抵抗制御のもう一つの弱点があります。

トルクは r2/s で決まるのですから、抵抗が大きいほど、同じトルク変化に対する滑りの変化も大きくなります

負荷トルク抵抗なし(r2=0.5 Ω)抵抗挿入後(合計2.5 Ω)
全負荷s=0.04(1 440 min−1s=0.20(1 200 min−1
半負荷s=0.02(1 470 min−1s=0.10(1 350 min−1
無負荷s≒0(1 500 min−1s≒0(1 500 min−1
全負荷→無負荷の速度変化60 min−1(4 %)300 min−1(20 %)

抵抗を入れた状態では、負荷が抜けると一気に1 500 min−1 まで戻ってしまいます。速度変動率が4 % から20 % へ跳ね上がる——定速度電動機だったものが、変速度電動機になってしまうのです。

だから二次抵抗による速度制御は「負荷が安定している用途」に限られます。クレーンの巻下げのように負荷(荷の重さ)が決まっている場面では問題ありませんが、負荷が刻々変わる用途では速度が定まりません

インバータならこの問題は起きません。同期速度そのものを下げているので、滑りは元のまま小さく、速度変動率も定格のままです。「滑りを大きくして減速する」方式と「同期速度を下げて減速する」方式の、もう一つの決定的な違いがここにあります。

💡 覚え方
「r2/s=一定——滑り k 倍なら総抵抗も k 倍、答えは挿入分だけ」一般式は R=r2(s2/s1−1)で、「k 倍にしたいなら (k−1) 倍を足す」滑り0.20 での運転は二次入力の20 % を熱にしているが、その4/5 は外部抵抗器=機外で捨てられる

⚠️ よくある間違い
総抵抗2.5 Ω をそのまま答える(選択肢(2))のが最頻の誤りです。問われているのは「挿入する抵抗」——一般式 R=r2(s2/s1−1) で解けば構造的に防げます。もう一つは「50 Hz 用」を見落として Ns=1 800 とすることです。

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