誘導機24【電験3種 機械】比例推移と電圧変更時のトルクとは?平成27年 B問題15 完全解説

電験3種 機械科目 誘導機 平成27年度 B問題15 抵抗と電圧を同時に変える!トルクはどうなる?

電験3種(第三種電気主任技術者試験)の機械科目において、「比例推移+T∝V²」の組み合わせは巻線形誘導電動機B問題の総仕上げ的テーマです。本記事では、平成27年度 B問題15を、はじめての方でも確実に解けるように丁寧に解説します。

(a)は比例推移 \( r_2/s = \) 一定で滑りを7 %に。(b)は「滑りも抵抗も同じなら、トルクは電圧の2乗に比例」で定格トルクを \( (200/220)^2 \) 倍。誘導機の2大法則が1問に詰まっています。

目次

平成27年度 機械科目 B問題15:問題文と選択肢

まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

電験3種 機械科目 平成27年度 B問題15 問題文(三相巻線形誘導電動機の比例推移と電圧変更時のトルク)
平成27年度 機械科目 B問題15 問題文

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成27年度 第三種電気主任技術者試験」機械科目 B問題15

電験3種 機械科目 【誘導機】 平成27年度 B問題15

定格出力 15 kW、定格電圧 220 V、定格周波数 60 Hz、6 極の三相巻線形誘導電動機がある。二次巻線は星形(Y)結線でスリップリングを通して短絡されており、各相の抵抗値は 0.5 Ω である。この電動機を定格電圧、定格周波数の電源に接続して定格出力(このときの負荷トルクを Tn とする)で運転しているときの滑りは 5 %であった。計算に当たっては、L 形簡易等価回路を採用し、機械損及び鉄損は無視できるものとして、次の(a)及び(b)の問に答えよ。

(a) 速度を変えるために、この電動機の二次回路の各相に 0.2 Ω の抵抗を直列に挿入し、上記と同様に定格電圧、定格周波数の電源に接続して上記と同じ負荷トルク Tn で運転した。このときの滑りの値 [%] として、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。

(1) 3.0  (2) 3.6  (3) 5.0  (4) 7.0  (5) 10.0

(b) 電動機の二次回路の各相に上記(a)と同様に 0.2 Ω の抵抗を直列に挿入したままで、電源の周波数を変えずに電圧だけを 200 V に変更したところ、ある負荷トルクで安定に運転した。このときの滑りは上記(a)と同じであった。この安定に運転したときの負荷トルクの値 [N・m] として、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。

(1) 99  (2) 104  (3) 106  (4) 109  (5) 114

出題のポイント:抵抗は横へ、電圧は縦へ

この問題は誘導機の2大法則を1問で使わせます(a)は比例推移、(b)は T∝V²——どちらもトルク曲線を動かす操作ですが、動かす方向が違います

設問操作曲線の動き使う関係
(a)二次抵抗を増やす横(滑りが大きい側)へスライドr2/s=一定
(b)電圧を下げる縦(トルクが小さい側)へ縮むT∝V2

「抵抗は横、電圧は縦」——この対比を頭に置いておけば、どちらの関係を使うべきかで迷いません

比例推移で滑り7パーセント、電圧二乗則でトルク104ニュートンメートルを求める図
(a)はr2/s一定、(b)は同じ滑りでTがVの二乗に比例することを使います。

(a):比例推移で滑りを移す

\( \dfrac{r_2}{s}=\dfrac{r_2+R}{s\’} \;\Rightarrow\; \dfrac{0.5}{0.05}=\dfrac{0.7}{s\’} \)
❶ 式を立てる
同じ負荷トルク Tn という条件があるので比例推移が使える。
\( s\’=\dfrac{0.7\times0.05}{0.5}=0.07 \)
❷ 解く
総抵抗が1.4倍なら滑りも1.4倍
答え(a) 滑り 7.0 %(4)

(b):定格トルクを出してから電圧の2乗で縮める

\( N=1\,200\times0.95=1\,140\ \mathrm{min^{-1}},\quad \omega=\dfrac{2\pi\times1140}{60}=119.4\ \mathrm{rad/s} \)
❶ 定格運転の角速度
6極・60 Hz で Ns=1 200、滑り5 % を引く。
\( T_n=\dfrac{15\,000}{119.4}=125.7\ \mathrm{N\cdot m} \)
❷ 定格トルク
\( T=T_n\left(\dfrac{200}{220}\right)^2=125.7\times0.826=104\ \mathrm{N\cdot m} \)
❸ 電圧を下げたときのトルク
滑りも抵抗も同じなので、変わるのは電圧だけ。
答え(b) 負荷トルク 約104 N·m(2)
二次抵抗増加でトルク滑り曲線が横移動し電圧低下でトルクが低下する比較図
比例推移は滑り方向への移動、電圧低下はトルクの二乗低下です。
平成27年度機械B問題15の滑り7パーセントと負荷トルク104ニュートンメートルの計算手順
(a)は(4)7.0%、(b)は(2)104 N・mです。

(b)の「ある負荷トルクで安定に運転した」をどう読むか

この一文は、慣れないと戸惑うところです。電圧を下げたのに、なぜ「同じ滑り」で運転できるのか——負荷側が変わったからです。

電圧を200 V に下げると、トルク曲線全体が (200/220)2=0.826 倍に縮みます。もし負荷トルクが Tn のままなら、釣り合う点は滑りの大きい側へ移動するはずです。

ところが問題文は「このときの滑りは(a)と同じであった」と言っています。滑りが変わらなかったということは、負荷トルクのほうが電圧の2乗に合わせて下がったということ——ファンやポンプのような、速度が下がればトルクも下がる負荷を想定していると読めます。

(a)の状態(b)の状態
電圧220 V200 V
二次抵抗0.7 Ω0.7 Ω(同じ)
滑り0.070.07(同じ)
トルクTn=125.7 N·m104 N·m(0.826倍)
回転速度1 116 min−11 116 min−1(同じ)

滑りが同じなら回転速度も同じです。速度が変わらないのにトルクだけが減った——出力もそのぶん減っています「電圧を下げると出せるトルクが減る」という当たり前の結論を、数値で確かめる問題だと言えます。

T=kV²s という近似式で見ると一目瞭然

(a)と(b)は、じつは1本の式で説明できます安定運転域でのトルクの近似式です。

安定運転域のトルク

\( T=k\,V^2s \)  (k は二次抵抗で決まる定数、\( k\propto1/r_2 \))

トルクは電圧の2乗と滑りの積——この形にすると2つの設問が同じ式の別の使い方だと分かります

設問何が一定か何を動かしたか何が変わるか
(a)T と Vr2(k が 1/1.4 倍)s が1.4倍
(b)s と r2V(0.909倍)T が0.826倍

(a)は「T と V を固定して k と s を動かす」、(b)は「k と s を固定して V と T を動かす」——同じ式の中で、固定する変数と動かす変数を入れ替えているだけです。

この見方ができると、B問題の(a)(b)が別々の知識に見えなくなります。1本の式を持っていれば、あとはどの変数が固定されているかを問題文から読み取るだけ——誘導機のB問題は、たいていこの構造をしています

⏱️ 本番での進め方
「抵抗は横、電圧は縦」——比例推移とT∝V2 の使い分け。
(a)は総抵抗が1.4倍なら滑りも1.4倍。0.05×1.4=0.07。
(b)は定格トルクを先に出す。Ns=1 200、N=1 140、ω=119.4。
T=kV2s の1本で(a)(b)の両方が説明できる。

「二次巻線はY結線でスリップリングを通して短絡されている」

問題文のこの一文には、計算に必要な情報が3つ詰まっています読み飛ばすと、抵抗の扱いを間違えます

記述意味すること計算への影響
Y結線相電流=線電流1相分の回路をそのまま扱える(√3 の換算が要らない)
スリップリングを通して巻線形である外部抵抗を挿入できる=比例推移が使える
短絡されているもとの状態では外部抵抗ゼロ二次抵抗は巻線自身の0.5 Ω だけ

とくに「短絡されている」が重要です。これがあるから、定格運転時の二次抵抗が0.5 Ω だと確定します。もし最初から外部抵抗が入っていたら、(a)の計算の出発点が変わってしまいます

「各相の抵抗値は0.5 Ω」という書き方も、Y結線であることと合わせて読む必要があります三相分をまとめた値ではなく、1相あたりの値——だから0.2 Ω を「各相に直列に挿入」すれば、1相の合計が0.7 Ω になります。

三相の問題では「1相あたりか三相合計か」を必ず確認するのが鉄則です。本問は比を取るだけなので影響しませんが、抵抗値から電力を計算する問題では、ここを取り違えると3倍の誤差が出ます。

15 kW・6極という機械の姿

この電動機がどんなものかを、与えられた数値から読んでみましょう。答えの妥当性チェックにもなります

\( N_s=\dfrac{120\times60}{6}=1\,200\ \mathrm{min^{-1}} \)
同期速度
6極なので、汎用の4極機より遅い
\( T_n=\dfrac{15\,000}{2\pi\times1\,140/60}=126\ \mathrm{N\cdot m} \)
定格トルク
同じ15 kW でも4極機なら84 N·m

6極の巻線形で15 kW——低速で大きなトルクが必要な用途を想定した機械です。巻線形であることと合わせると、始動も重い用途(クレーン・コンベヤ・攪拌機など)が思い浮かびます。

定格滑りが5 %というのも、この種の機械としては標準的です。二次抵抗をやや大きめに設計して始動トルクを稼いでいる——そのぶん定格滑りが大きくなり、効率は少し犠牲になっています

(a)で外部抵抗を入れると滑りが7 %回転速度は1 140 から1 116 min−1 へ、わずか24 min−1 しか下がりません——速度制御としては効きが弱いということです。大きく減速したければ、もっと大きな抵抗が要ります

★同じ諸元の機械が別の年度でも出ている

定格出力15 kW・定格電圧220 V・定格周波数60 Hz・6極・定格滑り5 %——この諸元の機械は、平成21年度と平成27年度の2つのB問題に登場します。聞いていることは違いますが、同じ機械です

平成21年度 B問題15平成27年度 B問題15
機械の諸元15 kW・220 V・60 Hz・6極同じ(巻線形と明記)
定格滑り5 %5 %(同じ)
定格トルク125.7 N·m125.7 N·m(同じ)
(a)で聞くこと発生トルク抵抗挿入後の滑り
(b)で聞くこと半負荷時の効率電圧低下時の負荷トルク

平成27年度の(b)では、この125.7 N·m を出発点にして電圧の2乗を掛けます。平成21年度の(a)で求めるのが、まさにその125.7 N·m——2つの問題は地続きです。

同じ諸元で違う切り口を問う——出題者が「この機械なら、こういうことも聞ける」と考えた結果でしょう。2問を並べて解くと、1台の電動機についてトルク・効率・比例推移・電圧依存性のすべてを見たことになります

諸元が同じなら、途中の値も同じです。Ns=1 200、N=1 140、ω=119.4、ωs=125.7——この4つの数字は、どちらの問題でも共通して使います

💡 覚え方
「抵抗は横へ(比例推移)、電圧は縦へ(T∝V2)」安定域では T=kV2s(k∝1/r2——この1本で、固定する変数を入れ替えれば(a)も(b)も解ける(b)は滑りが同じ=速度も同じで、トルクだけが電圧の2乗で減った状態。

⚠️ よくある間違い
(b)で定格トルクを出さずに、いきなり比を掛けてしまうのが典型です。問われているのは N·m という具体的な値なので、まず Tn=15 000/119.4=125.7 を求める一手が必要です。もう一つは(b)で(a)の滑り0.07 ではなく定格の0.05 で角速度を計算すること——Tn は定格運転時の値なので0.05 が正しい向きです。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

目次