電験3種(第三種電気主任技術者試験)の機械科目において、「変圧器の等価回路と一次側換算」は理論の土台となる最重要テーマです。本記事では、平成26年度 A問題7で出題された「簡易等価回路の換算係数」の穴埋め問題を、はじめての方でも確実に判断できるように丁寧に解説します。
覚えることは実質1セットだけ。「電圧は a 倍・電流は 1/a 倍・インピーダンス類は a² 倍」。この3点セットで(ア)〜(オ)の5つの空欄がすべて埋まります。
一字一句ほぼ同じ問題が 【機械】令和6年度上期A問題8 で再出題されました(選択肢の並びだけ違い、答えの位置が変わります)。位置ではなく中身で覚えるのが鉄則です。
平成26年度 機械科目 A問題7:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成26年度 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題7
電験3種 機械科目 【変圧器】 平成26年度 A問題7
次の文章は、単相変圧器の簡易等価回路に関する記述である。
変圧器の電気的な特性を考える場合、等価回路を利用すると都合がよい。特に二次側の諸量を一次側に置き換え、一次側の回路はそのままとした「一次側に換算した簡易等価回路」は広く利用されている。一次巻線の巻数を \( N_1 \)、二次巻線の巻数を \( N_2 \) とすると、巻数比 \( a = N_1/N_2 \) を使用すると二次側諸量の一次側への換算は以下のように表される。
二次電圧 \( \dot{V}_2′ = \) (ア) \( \cdot \dot{V}_2 \)、二次電流 \( \dot{I}_2′ = \) (イ) \( \cdot \dot{I}_2 \)、二次抵抗 \( r_2′ = \) (ウ) \( \cdot r_2 \)、二次漏れリアクタンス \( x_2′ = \) (エ) \( \cdot x_2 \)、負荷インピーダンス \( \dot{Z}_L’ = \) (オ) \( \cdot \dot{Z}_L \)
空白箇所(ア)〜(オ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
| (ア) | (イ) | (ウ) | (エ) | (オ) | |
| (1) | a | 1/a | a² | a² | a² |
| (2) | 1/a | a | a² | a² | a |
| (3) | a | 1/a | 1/a² | 1/a² | 1/a² |
| (4) | 1/a | a | 1/a² | 1/a² | a² |
| (5) | 1/a | a | 1/a² | 1/a² | 1/a² |
出題のポイント:覚えるのは電圧と電流の2つだけ
一次側への換算では、倍率は3種類しかありません。しかも覚える必要があるのは電圧と電流の2つだけ——インピーダンスはその比として自動的に決まります。
| 換算する量 | 倍率 | 理由 |
| 電圧 | a 倍 | 巻数に比例。一次の電圧レベルに引き上げる |
| 電流 | 1/a 倍 | 起磁力が等しいので巻数に反比例 |
| 抵抗・リアクタンス・インピーダンス | a2 倍 | 電圧÷電流=a÷(1/a) |
\( Z’=\dfrac{V’}{I’}=\dfrac{aV}{I/a}=a^{2}Z \)——電圧が a 倍、電流が 1/a 倍なら、その比は必ず a2 倍。抵抗も漏れリアクタンスも負荷インピーダンスも、すべて同じ扱いになります。
| (ア) | (イ) | (ウ) | (エ) | (オ) | |
| (1) | a | 1/a | a² | a² | a² |
| (2) | 1/a | a | a² | a² | a |
| (3) | a | 1/a | 1/a² | 1/a² | 1/a² |
| (4) | 1/a | a | 1/a² | 1/a² | a² |
| (5) | 1/a | a | 1/a² | 1/a² | 1/a² |

なぜ電圧が a 倍で電流が 1/a 倍なのか
「一次側に換算する」とは、二次側の回路を一次側と同じ電圧レベルに置き換えることです。置き換えても電力が変わらないように決めるのが原則になります。
一次側から見た二次電圧
一次側から見た二次電流
電力は変わらない
電力が保存されることが、この換算の正当性そのものです。もし電圧も電流も a 倍にしてしまえば、電力が a2 倍に増えてしまう——そんな置き換えは物理的に成り立ちません。

選択肢は2段階で絞れる
(ウ)(エ)(オ)はすべてインピーダンスの仲間ですから、3つとも同じ倍率でなければおかしい——まずこの観点で落とします。
| 選択肢 | (ウ)(エ)(オ)はそろっているか | (ア)(イ)は正しいか | 判定 |
| (1) | a2/a2/a2 ⇒ そろう | a/1/a ⇒ 正しい | 正解 |
| (2) | (オ)だけ a ⇒ そろわない | — | 誤り |
| (3) | そろう | 倍率が1/a2 で逆 | 誤り |
| (4) | (オ)だけ a2 ⇒ そろわない | — | 誤り |
| (5) | そろう | (ア)(イ)が逆 | 誤り |
「3つがそろっているか」で(2)(4)が落ち、「電圧が a 倍か」で(3)(5)が落ちる——2つの観点で1つに絞れます。倍率をすべて暗記していなくても、この構造だけで答えにたどり着けるのです。
☝️ ひっかけの作り方:(ア)を 1/a としてしまうのが最も多い誤りです。a=N1/N2 は一次巻数÷二次巻数——降圧変圧器なら a>1です。二次電圧を一次側の目線で見れば、値は大きくなるはず——「換算=一次と同じ土俵に上げる=a 倍」と考えれば向きを間違えません。
二次側に統一する換算もある
本問は一次側への換算でしたが、逆に二次側へそろえることもできます。どちらに統一しても等価回路として正しく、計算結果も一致します。
| 換算する量 | 二次 → 一次(本問) | 一次 → 二次 |
| 電圧 | a 倍 | 1/a 倍 |
| 電流 | 1/a 倍 | a 倍 |
| インピーダンス | a2 倍 | 1/a2 倍 |
倍率がちょうど逆数になっているだけです。「どちらへ換算するか」で向きが決まる——本問の選択肢に 1/a や 1/a2 が並んでいるのは、この向きを取り違えた場合の答えが用意されているからです。
どちらに統一するかは、問題しだい
実務や試験問題では、扱いやすいほうを選びます。負荷側の電圧や電流を知りたいなら二次側に統一、電源側の電流を知りたいなら一次側に統一——求めたい量がある側にそろえるのが自然です。
ただし途中で混ぜてはいけません。一次側の抵抗と二次側の抵抗を、換算せずに足してしまう——これがこの分野で最も多い誤りです。「どちらの土俵にそろえたか」を、計算の最初に決めて紙に書いておくとよいでしょう。
換算した値には、ダッシュ(プライム)を付けて区別するのが慣習です。\( r_2 \) は二次側の実際の抵抗、\( r_2′ \) は一次側に換算した値——記号にダッシュが付いていたら「換算済み」の合図だと読み取ってください。
本問の空欄も、すべて左辺にダッシュが付いています。\( V_2’、I_2’、r_2’、x_2’、Z_L’ \)——「一次側に換算した二次側の量」を求める問題だと、記号が語っているのです。
⏱️ 本番での進め方
① 覚えるのは「電圧 a 倍、電流 1/a 倍」だけ。
② インピーダンスは比なので a2 倍。3つとも同じ。
③(ウ)(エ)(オ)の倍率がそろわない肢は即消し。
④ 検算は「換算しても電力が変わらない」で行う。
💡 覚え方
「電圧は上げて、電流は下げて、インピーダンスは2乗」——電圧を上げれば同じ電力を送るのに電流は下がる。送電で高電圧を使う理由と、まったく同じ関係です。
出題履歴:令和6年度上期に同じ問題(答えの番号は違う)
本問は令和6年度上期 A問題8とまったく同じ問題です(変圧器5:変圧器の等価回路と一次側換算)。問題文も空欄も同一で、選択肢の並び順だけが違います。
| 平成26年度 問7(本問) | 令和6年度上期 問8 | |
| 問われる内容 | 同じ | 同じ |
| 入る倍率 | a/1/a/a2/a2/a2 | 同じ |
| 正解の番号 | (1) | (4) |
10年ぶりの再出題で、正解の番号が (1) から (4) に変わっています——「答えは(1)」と番号で覚えていたら、令和6年度で失点します。覚えるべきは倍率そのものだという、分かりやすい実例です。


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