電験3種(第三種電気主任技術者試験)の機械科目で問われる直流機の誘導起電力の公式。本記事では、平成20年度 A問題1で出題された、公式 \( E=\dfrac{pZ\phi n}{60a} \) を導く穴埋め問題を解説します。
じつはこの問題は、令和6年度下期でもほぼ同一の内容で再出題されています(→【機械】令和6年度下期A問題1)。それだけ重要な基本問題です。カギは導体1本の \( e=Blv \) と、ブラシ間に \( Z/a \) 本が直列に接続されることです。
ほぼ同じ問題が 【機械】令和6年度下期A問題1 でも出題されています。出題パターンが固定なので、セットで解けば確実な得点源になります。
平成20年度 機械科目 A問題1:問題文と選択肢
公式を暗記しているかではなく、作れるかを問う問題です。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成20年度 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題1
電験3種 機械科目 【直流機】 平成20年度 A問題1
長さ l [m] の導体を磁束密度 B [T] の磁束の方向と直角に置き、速度 v [m/s] で導体及び磁束に直角な方向に移動すると、導体にはフレミングの (ア) の法則により、e = (イ) [V] の誘導起電力が発生する。
1極当たりの磁束が Φ [Wb]、磁極数が p、電機子総導体数が Z、巻線の並列回路数が a、電機子の直径が D [m] なる直流機が速度 n [min⁻¹] で回転しているとき、周辺速度 v = πD(n/60) [m/s] となり、直流機の正負のブラシ間には (ウ) 本の導体が (エ) に接続されるので、電機子の誘導起電力 E は、E = (オ) [V] となる。
上記の記述中の空白箇所(ア)、(イ)、(ウ)、(エ)及び(オ)に当てはまる語句又は式として、正しいものを組み合わせたのは次のうちどれか。
| (ア) | (イ) | (ウ) | (エ) | (オ) | |
|---|---|---|---|---|---|
| (1) | 右手 | \( Blv \) | \( \frac{Z}{a} \) | 直列 | \( \frac{pZ}{60a}\phi n \) |
| (2) | 左手 | \( Blv \) | \( Za \) | 直列 | \( \frac{pZa}{60}\phi n \) |
| (3) | 右手 | \( \frac{Bv}{l} \) | \( Za \) | 並列 | \( \frac{pZa}{60}\phi n \) |
| (4) | 右手 | \( Blv \) | \( \frac{a}{Z} \) | 並列 | \( \frac{pZ}{60a}\phi n \) |
| (5) | 左手 | \( \frac{Bv}{l} \) | \( \frac{Z}{a} \) | 直列 | \( \frac{Z}{60pa}\phi n \) |
出題のポイント:この問題は公式の「導出手順」そのもの
5つの空欄はE=pZφn/(60a) を組み立てる4つのステップに対応しています。公式を暗記しているかではなく、作れるかを問うている——だから空欄を順に埋めれば、それがそのまま導出になります。
| 空欄 | 答え | 導出のどの段階か |
| (ア) | 右手 | ①発電機の起電力の向き ⇒ フレミング右手の法則 |
| (イ) | Blv | ②導体1本の起電力 |
| (ウ) | Z/a | ③ブラシ間に直列につながる導体の本数 |
| (エ) | 直列 | ④それらが直列 ⇒ 起電力が足し合わされる |
| (オ) | pZφn/(60a) | ⑤周速と磁束密度を代入して整理 |

(ア):右手か左手か
フレミングの法則は2つあり、どちらを使うかは「何を求めたいか」で決まります。
| 法則 | 何が分かるか | 使う場面 | 覚え方 |
| 右手の法則 | 誘導起電力の向き | 発電機(動かして電気を作る) | 右手の「右」=発電 |
| 左手の法則 | 電磁力(トルク)の向き | 電動機(電気を流して動かす) | 左手の「左」=電動 |
本問は「導体を移動すると起電力が発生する」という話なので、右手の法則です。「発電=右手、電動=左手」——語呂で覚えてしまうのが確実です。
なお直流機は発電機としても電動機としても同じ構造なので、どちらの法則も出てきます。起電力の話なら右手、力(トルク)の話なら左手と、問われている量で切り替えてください。
(ウ)(エ):なぜ Z/a 本が直列なのか
電機子の全導体数が Z 本、並列回路数が a 本——ということは、Z 本の導体が a 本の道に均等に分かれているわけです。1つの道には Z/a 本が入っています。
そして1つの道の中では、導体が数珠つなぎに直列になっています。だからブラシ間に現れる起電力は、導体1本の起電力 e の Z/a 倍——E=(Z/a)·e です。
| 直列につながる本数 | 1本あたりの電流 | 得られる特性 | |
| 重ね巻(a=p) | Z/p 本(少ない) | Ia/p(小さい) | 低電圧・大電流 |
| 波巻(a=2) | Z/2 本(多い) | Ia/2(大きい) | 高電圧・小電流 |
並列の道が多いほど、1つの道に入る導体は少なくなり、電圧は低くなる——代わりに電流を分担できるので大電流に強くなります。a が分母にいる理由が構造から理解できます。
☝️ ひっかけの作り方:(ウ)を「Za」や「a/Z」とする誤答が用意されています。Z 本を a 本の道に分けるのだから割り算——掛け算では本数が増えてしまい意味を成しません。単位や次元ではなく物理的な意味で判断してください。

(オ):最後の式をその場で組み立てる
導体1本の起電力を Z/a 倍する。
電機子の直径 D、毎秒 n/60 回転。
電機子の全表面積 πDl に、p 極ぶんの磁束 pφ が通るので、平均の磁束密度はこの割り算。
πD と l がきれいに約分される。
寸法 D・l が消えて、極数・導体数・磁束・回転数だけが残る。
D と l が約分で消えるのが導出の見どころです。「機械の大きさによらず、磁束と極数と回転数だけで起電力が決まる」——これが公式に寸法が現れない理由であり、公式を忘れてもこの流れで作り直せるということでもあります。

選択肢を絞り込む手順
| 段階 | 根拠 | 残る選択肢 |
| (ア)=右手 | 起電力の話 ⇒ 発電=右手 | (2)(5)が消えて(1)(3)(4) |
| (イ)=Blv | Bv/l は次元が合わない(l で割ると長さの効果が逆になる) | (3)が消えて(1)(4) |
| (ウ)=Z/a | Z 本を a 本の道に分ける | (4)が消えて(1)に確定 |
(エ)(オ)を見るまでもなく決まります。(4)は(ウ)がa/Zで(エ)が並列という組合せですが、a/Z は1未満の小さな数になってしまい「本数」として意味を成しません。選択肢の形が物理的に成立するかを見るだけで大半が消せます。
★同一問題:令和6年度下期 A問題1(番号が違う)
この問題は令和6年度下期 A問題1としてほぼ同じ内容で再出題されています。問われている5つの空欄も、答えとなる語句・式も同じです。
| 平成20年度 A問題1(本問) | 令和6年度下期 A問題1 | |
| (ア) | 右手 | 右手(同じ) |
| (イ) | Blv | Blv(同じ) |
| (ウ)(エ) | Z/a・直列 | Z/a・直列(同じ) |
| (オ) | pZφn/(60a) | pZφn/(60a)(同じ) |
| 正解の番号 | (1) | (5) |
答えの中身は完全に同じなのに、正解の番号が (1) から (5) へ移動しています。16年ぶりの再出題で、選択肢を並べ替えただけ——「答えは(1)」と番号で覚えていた人は、令和6年度下期で確実に外します。
16年という長い間隔を置いても同じ問題が出るということは、「公式を導出できるか」が直流機の基本として一貫して重視されているということです。e=Blv から始める4行の導出を手で書けるようにしておけば、どんな形で問われても対応できます。
過去問を解くときは「答えの番号」ではなく「どの語句・どの式が入るか」を覚えてください。この論点に限らず、直流機では同じ問題の再出題で番号が変わる例が繰り返し確認されています(補極と補償巻線、直流電動機の特性、永久磁石機の回転数など)。
★この問題は令和6年度下期にも出ている
この問題は令和6年度下期 A問題1としてほぼ同じ内容で再出題されています。公式の導出を問う形式は繰り返し出るということです。
「公式を覚えているか」ではなく「作れるか」を問う出題が増えているのは、丸暗記では応用できないという出題側のメッセージでもあります。e=Blv から始めて πD·(n/60) を代入し、Z/a 倍する——この流れを手で書けるようにしておけば、どんな形で問われても対応できます。
⏱️ 本番での進め方
① 起電力なら右手、力なら左手。「発電=右、電動=左」。
② Z/a は「Z 本を a 本の道に分けた1本あたり」。掛け算の選択肢は即消せる。
③ (オ)は分母に 60a、分子に pZφn。a が分母にいるのは「道が増えると電圧が下がる」から。
④ 迷ったら導出をなぞる:Blv → ×(Z/a) → v と B を代入 → πD と l が約分。
💡 覚え方
E=pZφn/(60a) は e=Blv から作れる。①右手の法則で e=Blv ②ブラシ間には Z/a 本が直列 ③v=πD(n/60)、B=pφ/(πDl) を代入 ④πD と l が約分。a が分母なのは、並列の道が増えると1つの道の導体が減るから。重ね巻 a=p(大電流向き)/波巻 a=2(高電圧向き)。
⚠️ よくある間違い
(ア)を「左手」とするのが最頻です。問われているのは起電力なので右手。もう一つは(ウ)を「Za」とする誤り——Z 本を a 本の道に分けるのだから割り算で、掛け算では本数が増えてしまいます。

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