電験3種の機械科目で問われる直流分巻電動機の無負荷回転速度。本記事では、平成19年度 A問題2で出題された、負荷運転の条件から無負荷時の回転速度を求める計算問題を解説します。
カギは電機子回路式 \( E=V-I_aR_a \) と、磁束一定のときの \( E\propto n \)(逆起電力は回転速度に比例)です。
平成19年度 機械科目 A問題2:問題文と選択肢
無負荷になると何が消えるのかを確かめるところから始めます。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成19年度 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題2
電験3種 機械科目 【直流機】 平成19年度 A問題2
直流分巻電動機があり、電機子回路の全抵抗(ブラシの接触抵抗も含む。)は 0.098 Ω である。この電動機を端子電圧 220 V の電源に接続して、ある負荷で運転すると、回転速度は 1 480 min⁻¹、電機子電流は 120 A であった。同一端子電圧でこの電動機を無負荷運転したときの回転速度 [min⁻¹] の値として、最も近いのは次のうちどれか。
ただし、無負荷運転では、電機子電流は非常に小さく、電機子回路の全抵抗による電圧降下は無視できるものとする。(1) 1 518 (2) 1 532 (3) 1 546 (4) 1 559 (5) 1 564
出題のポイント:無負荷なら「引く量がゼロ」になる
この問題は負荷運転の1点から、無負荷運転の速度を予測するという形です。使う道具はE=V−IaRa と n ∝ E の2つだけ。
無負荷では電機子電流がほぼゼロなので、抵抗降下もゼロ——つまり逆起電力が端子電圧そのものになります。問題文の「電機子回路の全抵抗による電圧降下は無視できる」がその指示です。
| 負荷運転 | 無負荷運転 | |
| 端子電圧 V | 220 V | 220 V(同じ) |
| 電機子電流 Ia | 120 A | ほぼ 0 A |
| 抵抗降下 IaRa | 11.76 V | ほぼ 0 V |
| 逆起電力 E | 208.24 V | ≒220 V |
| 回転速度 n | 1 480 min-1 | ?(速くなる) |
逆起電力が大きくなる=速度が上がる——負荷を外すと電動機は速くなるという、直感どおりの結果になります。答えは必ず1 480 より大きいと先に決めておけば、方向を間違えることはありません。

問題の解説:引く量が消えるだけ
0.098 Ω はブラシの接触抵抗も含む全抵抗と問題文にある。
このとき n=1 480 min-1。
電流がほぼゼロなら引く量もゼロ。
分子が無負荷側(大きいほう)。逆にすると遅くなってしまう。
約5.6 % の速度上昇。


速度変動率という見方
この結果は速度変動率という指標そのものです。「全負荷から無負荷にしたとき、速度が何 % 上がるか」を表します。
分巻電動機として標準的な値(一般に3〜8 % 程度)。
| 電動機の種類 | 速度変動率のめやす | 理由 |
| 他励・分巻 | 3〜8 % | 磁束が一定で、変わるのは抵抗降下だけ |
| 和動複巻 | 10〜25 % | 直巻巻線の磁束も加わるため変動が大きい |
| 直巻 | 非常に大きい(無負荷で発散) | 磁束が負荷電流でできている |
「分巻=定速度電動機」と呼ばれる根拠がこの数値です。負荷を全部外しても6 % 弱しか速くならない——工作機械や送風機のように速度を保ちたい用途に向く理由がここにあります。
「無負荷」でも電流はゼロにならない
問題文は「無負荷運転では、電機子電流は非常に小さく、電機子回路の全抵抗による電圧降下は無視できる」と書いています。「ゼロ」ではなく「非常に小さく」という言い方に意味があります。
軸に何もつながっていなくても、電動機は回り続けるために仕事をしています。
| 無負荷でも必要なもの | 中身 | だいたいの割合(定格に対して) |
| 機械損 | 軸受の摩擦・ブラシと整流子の摩擦・風損 | 数 % |
| 鉄損 | 電機子鉄心のヒステリシス損・渦電流損 | 数 % |
| 合計(無負荷電流) | 上の2つに打ち勝つ電機子電流 | 定格電流の3〜7 % 程度 |
本問なら定格120 A に対して数 A 程度が流れているはずです。抵抗0.098 Ω との積はせいぜい0.5 V 弱——220 V に対して0.2 % 未満なので、確かに無視して差し支えありません。
もし律儀に5 A を見込むと、Ea0=220−0.49=219.51 V、n0=1480×219.51/208.24=1 560 min-1。選択肢(4)1 559 に近づいてしまいます。問題文が「無視できる」と明示している以上、素直に E=220 V とするのが正解——条件文の指示に従うことが、余計な考察より優先するという例です。
分巻電動機の界磁電流はどこへ行ったのか
本問は分巻電動機なので、端子には電機子と界磁が並列につながっています。電源から流れ込む電流 I は、電機子電流 Ia と界磁電流 If に分かれます。
問題文が与えているのは「電機子電流120 A」であって電源電流ではありません。電圧の式に入れるのは電機子電流のほうなので、そのまま使えます。もし「電源から流れる電流が120 A」と書かれていたら、界磁電流を引いてから使う必要がありました。
そして界磁電流が一定だからこそ、磁束 φ も一定になり、E∝n が使えます。本問が「分巻」で「端子電圧一定」なのは、この前提を保証するための設定です。他励でも同じことが言えます——大事なのは「磁束が変わらない」ことだけで、それが分巻の並列接続で保証されているか、他励の別電源で保証されているかは問いません。
選択肢を検算する
選択肢は1 518/1 532/1 546/1 559/1 564 とすべて1 480 より大きいので、「速くなる」という方向の判断だけでは絞れません。数値を出し切る必要があります。
| 選択肢 | 対応する速度変動率 | 判定 |
| (1) 1 518 | 2.6 % | 抵抗降下を半分程度に見積もった場合に近い |
| (2) 1 532 | 3.5 % | 散らしのダミー |
| (3) 1 546 | 4.5 % | 散らしのダミー |
| (4) 1 559 | 5.3 % | 正解に最も近い散らし。1 564 との差はわずか5 min-1 |
| (5) 1 564 | 5.7 % | 正解(1480×220/208.24) |
(4)1 559 と正解の差は0.3 % しかありません。途中で丸めると危険です——11.76 を「約12」として E=208 とすると、1480×220/208=1 565.4 で(5)に着地しますが、逆に E を209 とすると1 557.7 で(4)を選んでしまいます。0.098×120=11.76 を丸めずに持つのが安全です。
電卓なしで確かめる方法もあります。220/208.24=1+11.76/208.24=1+0.0565。1480の5.65 %=83.6 なので 1480+84=1564——「もとの値+増加分」で計算すると割り算が1回で済み、精度も保てます。
⏱️ 本番での進め方
① 無負荷=引く量がゼロ=E が V そのものと読み替える。
② 答えは必ず元の速度より大きいと先に決める(分子分母の向きを間違えない)。
③ IaRa は丸めない。0.098×120=11.76 のまま持つ。
④ 「もとの値+増加分」で計算:1480×(11.76/208.24)=83.6 ⇒ 1480+84=1564。
💡 覚え方
無負荷では Ia≒0 なので E≒V。φ 一定なら n∝E なので、n0=n×(V/Ea)。負荷を外すと必ず速くなるので分子は無負荷側。速度変動率 ε=(n0−nn)/nn で、分巻なら3〜8 % が相場——これを知っていれば答えの妥当性も検算できます。
⚠️ よくある間違い
比を逆にして遅くなる方向に計算するのが典型です。「負荷を外したら速くなる」と物理で確認してください。もう一つは途中で丸めること——選択肢(4)1 559 と(5)1 564 の差は0.3 % しかないので、11.76 を12 に丸めるだけで答えが変わりかねません。

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