電気化学1【電験3種 機械】ファラデーの法則で亜鉛めっきの析出量を計算!平成19年度 A問題13 完全解説

電験3種 機械科目 電気化学 平成19年度 A問題13 流した電気の分だけ金属が析出!何gつく?

今回は平成19年度 機械科目 A問題13を解説します。硫酸亜鉛系の電解液中で陽極に亜鉛、陰極に鋼帯を用いる電気めっき(トタンの製造)で、2Aの電流を5時間通じたときに原板へ析出する亜鉛の量を求める計算問題です。

ファラデーの電気分解の法則を使い、まず通過電気量に電流効率を掛けた実効電気量を求め、次に反応電子数(原子価)と原子量から析出量〔g〕を計算する2段階で解きます。

目次

平成19年度 機械科目 A問題13:問題文と選択肢

まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

電験3種 機械科目 電気化学 平成19年度 A問題13 問題文
平成19年度 機械科目 A問題13 問題文

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成19年度 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題13

電験3種 機械科目 【電気化学】 平成19年度 A問題13

 硫酸亜鉛(ZnSO4)/硫酸系の電解液の中で陽極に亜鉛を,陰極に鋼帯の原板を用いた電気めっき法はトタンの製造法として広く知られている。今,両電極間に2〔A〕の電流を5〔h〕通じたとき,原板に析出する亜鉛の量〔g〕の値として,最も近いのは次のうちどれか。

 ただし,亜鉛の原子価(反応電子数)は2,原子量は65.4,電流効率は65〔%〕,ファラデー定数F=9.65×104〔C/mol〕とする。

(1)0.0022 (2)0.13 (3)0.31 (4)7.9 (5)16〔g〕

ファラデーの法則の意味

電極で析出する物質の量は、流れた電気量に比例する——これがファラデーの電気分解の法則です。

ファラデーの法則
\( m=\dfrac{M}{zF}\,Q \)

M:原子量、z:反応電子数(原子価)、F:ファラデー定数、Q:電気量[C]

F=9.65×104 C/mol は「電子1 mol の電気量」——電子1個の電荷1.602×10-19 C にアボガドロ数6.022×1023 を掛けた値です。

\( F=1.602\times 10^{-19}\times 6.022\times 10^{23} \)
電子1 mol の電荷
\( =9.647\times 10^4\ [\mathrm{C/mol}] \)
計算
★約96,500

だから「Q÷F」で電子の物質量[mol]が出る——これが計算の出発点になります。

亜鉛陽極、鋼帯陰極、電解液と計算条件を示す亜鉛めっき装置図
亜鉛は陰極の鋼帯へ析出し、計算には電流効率と価数2を用います

計算する

\( Q_0=It=2\times 5\times 3600=36\,000\ [\mathrm{C}] \)
①通過電気量
★時間は秒に
\( Q=\eta Q_0=36\,000\times 0.65=23\,400\ [\mathrm{C}] \)
②★電流効率を掛ける
実際に反応に使われた分
\( n_e=\dfrac{Q}{F}=\dfrac{23\,400}{96\,500}=0.2425\ [\mathrm{mol}] \)
③電子の物質量
\( n_{\mathrm{Zn}}=\dfrac{n_e}{2}=0.1213\ [\mathrm{mol}] \)
④★亜鉛の物質量
Zn2++2e→Zn
\( m=0.1213\times 65.4=7.93\ [\mathrm{g}] \)
⑤質量
★答え

5段階に見えますが、やっていることは単位の変換——C →mol(電子)→mol(亜鉛)→g と順に直しているだけです。

電流効率が100 % にならない理由

本問の電流効率は65 %——残り35 % はどこへ行くのかを考えてみましょう。

副反応内容
★水素発生★水素イオンが電子を受け取ってH2
不純物の析出目的以外の金属が析出する
再溶解析出した金属が溶け戻る

亜鉛は水素よりイオン化しやすい——だから水溶液中では水素発生と競合します。その分が効率の低下として現れるのです。

電流効率は電解の条件(電流密度、温度、pH、添加剤)で変わります——実務では、これを高く保つことが省エネにつながることになります。

電気めっきに必要な電力量

本問の条件で、亜鉛1 kg を析出させるには——電気量がどれだけ要るかを計算してみましょう。

\( Q=\dfrac{zF}{M}\cdot\dfrac{m}{\eta}=\dfrac{2\times 96\,500}{65.4}\times\dfrac{1000}{0.65} \)
必要な電気量
\( =2950\times 1538=4.54\times 10^6\ [\mathrm{C}] \)
計算
★約1,260 Ah

約1,260 Ah——2 A なら630時間かかる計算になります。工業的には大電流を流すのはこのためです。

桁で選択肢を絞る

選択肢は0.0022 から16 まで4桁の開き——おおまかな計算だけで絞れます

選択肢値[g]どんな誤りに対応するか
(1)0.0022★時間を秒に直し忘れた
(2)(3)0.13/0.31mol のまま止まった値に近い
★(4)★7.9★正解
(5)16★価数2 で割り忘れた

電子のmol 数0.2425 が計算の中間に出てくる——これに近い0.31 や0.13 は「途中で止まった値」だと分かります。

亜鉛の原子量65.4 を掛ければ、答えは数g のオーダー——この見当だけで(4)と(5)に絞れますあとは価数2 で割ったかどうかで決まりです。

1つの式にまとめる

\( m=\dfrac{M}{zF}\eta It=\dfrac{65.4}{2\times 96\,500}\times 0.65\times 2\times 5\times 3600 \)
まとめた形
\( =3.389\times 10^{-4}\times 23\,400=7.93\ [\mathrm{g}] \)
計算
★同じ答え

M/(zF) は「電気量1 C あたり何g 析出するか」——電気化学当量と呼ばれます。亜鉛なら3.389×10-4 g/C です。

2Aを5時間流した亜鉛析出量を7.93gと求め正解4を選ぶ計算図
析出量は約7.93gで、最も近い7.9gの(4)が正解です
答え正解は (4) 7.9 gです。

⚠️ よくある間違い
電流効率を掛け忘れる——7.93÷0.65=12.2 g となり、約1.5倍になります。
電流効率とは、流した電流のうち目的の反応に使われた割合——残りは水素発生などの副反応に消えます「効率」なので必ず1 以下、析出量は減る方向です。
反応電子数2 で割り忘れる0.2425×65.4=15.9 g——選択肢(5)の16 にぴったり落ちます。
Zn2+ は電子を2個受け取って金属になる——だから亜鉛1 mol につき電子2 mol が必要です。「原子価(反応電子数)は2」と問題文に書かれているのは、そのためです。
時間を秒に直し忘れると3,600倍のずれ——選択肢(1)の0.0022 に近い値になります。

トタンとブリキ

本問の「トタン」は亜鉛めっき鋼板——よく似た「ブリキ」との違いを知っておきましょう。

トタンブリキ
めっき金属★亜鉛(Zn)★すず(Sn)
鉄との関係★亜鉛のほうがイオン化しやすいすずのほうがイオン化しにくい
傷が付くと★亜鉛が先に溶けて鉄を守る★鉄が先に溶けて腐食が進む
用途屋根、外装缶詰(内面)

トタンは傷が付いても鉄が錆びにくい——亜鉛が身代わりになって溶けるからです。これを犠牲防食(流電陽極方式)といいます。

ブリキは逆——傷が付くと鉄のほうが溶けますだから内面を保護できる缶詰用に使われ、屋外には向きません

イオン化傾向の順(Zn>Fe>Sn)が、そのまま用途を決めている——電気化学の知識が実用と直結している例です。

⏱️ 本番での進め方
①m=(M/zF)×ηIt。時間は★秒に直す。
②★電流効率η を掛ける(掛け忘れで1.5倍)。
③★反応電子数z=2 で割る(忘れると選択肢(5)の16)。
④F=96,500 C/mol は電子1 mol の電気量。

💡 覚え方
「C →mol →mol →g」——単位を順に変換していくだけです。F で割って電子のmol、価数で割って金属のmol、原子量を掛けてgこの流れを覚えれば、どの金属でも同じ手順で解けます。

電気めっきの原理は平成25年度 A問題12にあります(電気化学:ニッケルめっきの原理)。

ファラデーの法則で通過電気量から析出質量を求める公式の流れ図
Q₀、実効電気量、電子mol、亜鉛molの順に変換します

まとめ

Q0=It36000 C
Q=ηQ023400 C
ne=Q/F≒0.2425 mol
m=(1/2)ne×原子量≒7.9 g
答え(4)

▼あわせて解きたい関連問題
・食塩電解(イオン交換膜法)の仕組みの穴埋め問題:【機械】平成21年度A問題12
・ニッケルめっきの原理(電着)の穴埋め問題:【機械】平成25年度A問題12

📚 次に解くべき関連問題
【機械】平成21年度A問題12(電気化学2)
【機械】平成25年度A問題12(電気化学3)
【機械】平成28年度A問題12(電気化学4)
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