今回は令和5年度上期 法規科目 A問題9、住宅及び住宅以外の場所の屋内電路の対地電圧の制限(電気設備技術基準の解釈第143条)に関する問題です。数値の記述として誤っているものを選びます。
覚える数値は「住宅は150V以下、条件付きで300V以下、太陽電池・蓄電池は直流450V以下」。解釈第143条に400Vという値は登場しません。この一点で誤りを見抜けます。
令和5年度上期 法規科目 A問題9:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和5年度上期 第三種電気主任技術者試験」法規科目 A問題9
電験3種 法規科目 【電気設備技術基準の解釈】 令和5年度上期 A問題9
次の記述は、「電気設備技術基準の解釈」に基づく住宅及び住宅以外の場所の屋内電路の対地電圧の制限に関するものである。誤っているものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
次の記述は、「電気設備技術基準の解釈」に基づく住宅及び住宅以外の場所の屋内電路(電気機械器具内の電路を除く。)の対地電圧の制限に関するものである。誤っているものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(1)住宅の屋内電路の対地電圧を150V以下とすること。
(2)住宅と店舗、事務所、工場等が同一建造物内にある場合であって、当該住宅以外の場所に電気を供給するための屋内配線を人が触れるおそれがない隠ぺい場所に金属管工事により施設し、その対地電圧を400V以下とすること。
(3)住宅に設置する太陽電池モジュールに接続する負荷側の屋内配線を、電路に地絡が生じたときに自動的に電路を遮断する装置を施設し、ケーブル工事により施設し電線に接触防護措置を施して、その対地電圧を直流450V以下とすること。
(4)住宅に常用電源として用いる蓄電池に接続する負荷側の屋内配線を、個々の蓄電池の出力がそれぞれ10kW未満、地絡遮断装置を施設、人が触れるおそれのない隠ぺい場所に合成樹脂管工事により施設して、その対地電圧を直流450V以下とすること。
(5)住宅以外の場所の屋内に施設する家庭用電気機械器具に電気を供給する屋内電路の対地電圧を、家庭用電気機械器具並びにこれに電気を供給する屋内配線及びこれに施設する配線器具に簡易接触防護措置を施す場合(取扱者以外の者が立ち入らない場所を除く。)、300V以下とすること。

答えは(2):同一建造物内でも300V以下
令和3年度 A問題8は同一問題で、143条の数値の全体像を扱っています。
この記事は、同一建造物内の規定と住宅以外の特則を掘り下げます。
★同一建造物内の規定が必要な理由
1階が店舗、2階が住宅——そんな建物は珍しくありません——いわゆる併用住宅です。
店舗には業務用の200V機器が必要になります——しかし住宅の制限は150V以下。
そこで「住宅以外の場所へ供給する配線」だけ300Vを認める——これが第2項の意味です。
★3つの条件で住宅の住人を守る
| 条件 | 狙い |
| ★住宅の屋内電路と直接接続しない | ★★住宅側に300Vが入り込まない |
| ★簡易接触防護措置を施す | ★★触れられない高さ・覆い |
| ★隠ぺい場所に管工事・ケーブル工事 | ★★配線が露出しない |
「分ける」「触れさせない」「覆う」の三段構えです——住宅の住人は300Vに近づけません。
だから300Vを認めても危険が生じない——条件があって初めて緩和されるのです。
★「がいし引き工事」は使えない
| 条文の言葉 | ダミー語 | 違い | |
| 合成樹脂管・金属管・ケーブル工事 | ★★合成樹脂管・金属管・ケーブル工事 | ★がいし引き工事 | ★★充電部が露出するかどうか |
| 隠ぺい場所に施設 | ★★隠ぺい場所に施設 | ★展開した場所 | ★★見えない場所に通す |
条文が挙げるのは管工事とケーブル工事だけです——いずれも電線が覆われています。
がいし引きは充電部が露出するので、隠ぺい場所には使えません——そもそも工事の性質と合いません。
★住宅以外の場所の家庭用電気機械器具
| 場面 | 対地電圧 | 条件 |
| ★住宅以外の屋内電路(一般) | ★★300V以下 | ★★— |
| ★住宅以外に施設する家庭用電気機械器具 | ★★300V以下 | ★★機器・屋内配線・配線器具に簡易接触防護措置 |
事務所の給湯室に家庭用の電子レンジを置くような場面です——機器は家庭用でも、場所は住宅ではない。
だから簡易接触防護措置を条件に300Vまで認めます——設問(5)がこれです。
「取扱者以外の者が立ち入らない場所を除く」——電気室等なら措置は不要です。
143条の全体構造
| 項 | 内容 |
| ★第1項 | ★★住宅の屋内電路は150V以下(例外は2kW以上の機器等) |
| ★第2項 | ★★同一建造物内の住宅以外の場所へ供給する電路は300V以下 |
| ★第3項 | ★★住宅以外の場所の家庭用電気機械器具は300V以下 |
「住宅」「住宅以外」「その中間」の3段構成です——どの項の話かを見極めます。
設問は5つの記述が別々の項から作られています——横断的な理解が要るのです。
併用住宅の配線設計
| 方式 | 内容 |
| ★引込みを分ける | ★★住宅用と店舗用で別々に受電する |
| ★同一引込みで分岐 | ★★分電盤で系統を分け、住宅側と直接接続しない |
実務では引込みを分けることが多いです——契約も別になるから。
同一引込みなら、条文の条件を満たす設計が必要——「直接接続しない」が要です。
なぜ住宅だけ150V以下なのか
住宅には子どもも高齢者もいます——電気の知識がない人が日常的に触る場所です。
裸足で水回りを使うことも多い——人体抵抗が下がり、感電時の危険が大きいのです。
だから他の場所より厳しい150V以下——この趣旨が143条全体を貫いています。
簡易接触防護措置の定義
| 措置 | 屋内 | 屋外 |
| ★簡易接触防護措置 | ★★床上1.8m以上 | ★★地表上2m以上 |
| ★接触防護措置 | ★★床上2.3m以上 | ★★地表上2.5m以上 |
143条が求めるのは「簡易」のほうです——床上1.8m以上、又はさく・へい等。
定義は解釈1条——他の条文から参照される用語です。
同じ問題が繰り返し出ている
| 年度 | 問われ方 | 正解番号 |
| ★令和3年度 問8 | ★★誤りを選ぶ(5選択肢) | ★★(2) |
| ★令和5年度上期 問9(本問) | ★★同一の5選択肢 | ★★(2) |
2年で再出題、選択肢も正解番号も同じ——143条は繰り返し狙われます。
「400V」という存在しない数値を見抜けるかが勝負です。
2kW以上の機器の例外(第1項)
| 条件 | 内容 |
| ★対象 | ★★定格消費電力2kW以上の電気機械器具 |
| ★対地電圧 | ★★300V以下 |
| ★接続 | ★★屋内配線と直接接続(コンセントを介さない) |
| ★保護 | ★★専用の開閉器・過電流遮断器+地絡遮断装置 |
IHクッキングヒーターや電気温水器がこれに当たります——オール電化住宅では必須の規定です。
2kWを100Vで使うと20A——一般的な分岐回路を使い切るので200Vにするのです。
住宅の分電盤の構成
| 部分 | 役割 |
| ★主幹漏電遮断器 | ★★全体の過電流・漏電を遮断する |
| ★分岐用配線用遮断器 | ★★回路ごとに過電流を遮断する |
| ★200V専用回路 | ★★エアコン・IH等に直接接続する |
200V機器には専用回路を設けます——143条の「専用の開閉器及び過電流遮断器」です。
身近な分電盤が、条文をそのまま形にしています。
蓄電池・太陽電池が住宅に入ってきた
住宅用蓄電池やV2Hの普及で、住宅内に直流の高い電圧が入るようになりました。
そこで直流450V以下という規定が加わりました——個々の蓄電池の出力は10kW未満という条件付きです。
技術の変化が条文を動かす——143条はその典型例です。
⏱️ 本番での進め方
① 同一建造物内の住宅以外へ供給する電路は300V以下。
② 条件は住宅の電路と直接接続しない・簡易接触防護措置・隠ぺい場所に管工事等。
③ 住宅以外の家庭用電気機械器具も300V以下(簡易接触防護措置)。
④ 「400V」は143条に存在しない。
💡 覚え方
解釈143条2項=住宅と店舗・事務所・工場等が同一建造物内にある場合、住宅以外の場所へ供給する屋内電路の対地電圧は300V以下。条件は①住宅の屋内電路と直接接続しない ②簡易接触防護措置を施す ③人が触れるおそれがない隠ぺい場所に合成樹脂管工事・金属管工事又はケーブル工事により施設する。
⚠️ よくある間違い
「400V」は解釈143条に存在しない数値——正しくは300V以下。工事は合成樹脂管・金属管・ケーブル——がいし引きは不可。
まとめ
| (1)住宅の屋内電路 | 150V以下 → 正しい |
| (2)住宅以外へ供給 | 300V以下が正、400Vは誤り |
| (3)太陽電池モジュール | 直流450V以下 → 正しい |
| (4)蓄電池 | 直流450V以下 → 正しい |
| (5)住宅以外の家庭用機器 | 300V以下 → 正しい |
| 答え | (2) |
▼あわせて解きたい関連問題
・太陽電池モジュールの絶縁性能(電気設備技術基準の解釈21):【法規】令和5年度上期 A問題4
・配線器具の施設(電気設備技術基準の解釈16):【法規】令和6年度上期 A問題9

コメント