今回は令和5年度上期 法規科目 A問題4、太陽電池モジュールの絶縁性能(電気設備技術基準の解釈第16条第5項)に関する空欄補充問題です。太陽電池モジュールが備えるべき絶縁耐力試験の電圧と時間が問われます。
覚える値は「直流1.5倍・交流1倍・500V・10分間」。最大使用電圧の1.5倍の直流電圧、又は1倍の交流電圧(500V未満なら500V)を、充電部分と大地との間に連続して10分間加えて耐えること、という試験条件です。
答えは(1):1倍・500V・10分間
平成18年度 A問題6は同一問題で、直流1.5倍と交流1倍の関係を波高値から説明しています。
この記事は、太陽電池発電設備の構成と、解釈16条の全体像から読み解きます。
令和5年度上期 法規科目 A問題4:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和5年度上期 第三種電気主任技術者試験」法規科目 A問題4
電験3種 法規科目 【電気設備技術基準の解釈】 令和5年度上期 A問題4
次の文章は、「電気設備技術基準の解釈」に基づく太陽電池モジュールの絶縁性能に関する記述の一部である。上記の記述中の空白箇所(ア)〜(ウ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
太陽電池モジュールは、最大使用電圧の1.5倍の直流電圧又は(ア)倍の交流電圧((イ)V未満となる場合は、(イ)V)を充電部分と大地との間に連続して(ウ)分間加えたとき、これに耐える性能を有すること。
(ア) (イ) (ウ) (1) 1 500 10 (2) 1 300 10 (3) 1.1 500 1 (4) 1.1 600 1 (5) 1.1 300 1

★太陽電池発電設備の構成
| 単位 | 内容 |
| ★セル | ★★最小単位。1枚で約0.5〜0.6V |
| ★モジュール(パネル) | ★★セルを直列にまとめて枠に収めたもの |
| ★ストリング | ★★モジュールを直列に接続したもの |
| ★アレイ | ★★ストリングを並列に接続した全体 |
条文が対象にしているのは「モジュール」です——製品として出荷される単位だからです。
ストリングの直列枚数が、最大使用電圧を決めます——設計段階で試験電圧が決まるのです。
★解釈16条は何を定めているか
| 項 | 対象 | 試験電圧 |
| ★1項 | ★★高圧・特別高圧の電路 | ★★最大使用電圧に応じた倍率×10分間 |
| ★2項 | ★★回転機 | ★★1.5倍(500V未満は500V) |
| ★3項 | ★★整流器 | ★★交流側・直流側それぞれに規定 |
| ★5項 | ★★太陽電池モジュール・燃料電池 | ★★直流1.5倍/交流1倍(500V未満は500V) |
16条は「絶縁耐力」をまとめて定めた条文です——対象ごとに項が分かれています。
どの項も加圧時間は10分間——ここは共通です。
★低圧電路の絶縁は抵抗値で見る
| 電路の使用電圧 | 絶縁抵抗値 |
| ★300V以下(対地電圧150V以下) | ★★0.1MΩ以上 |
| ★300V以下(対地電圧150V超) | ★★0.2MΩ以上 |
| ★300V超 | ★★0.4MΩ以上 |
低圧は絶縁抵抗(解釈14条)、高圧以上は絶縁耐力(16条)——測り方が違います。
太陽電池は低圧でもモジュール単位で耐力試験が課される——特別扱いされているのです。
★なぜ太陽電池だけ耐力試験なのか
太陽電池は屋外に長年さらされます——雨・紫外線・温度変化・塩害。
絶縁抵抗を測るだけでは、弱っている箇所を見つけられないことがあります。
実際に電圧をかけて確かめる——それが耐力試験の意味です。
最大使用電圧はどう決まるか
モジュールの開放電圧を直列枚数だけ足し合わせる
低温ほど開放電圧が上がるので、最低気温で評価する
太陽電池は、低温ほど電圧が上がります——真冬の朝がいちばん高いのです。
だから最大使用電圧は、想定最低気温で計算します——そこから試験電圧が決まるのです。
燃料電池も同じ規定
| 太陽電池 | 燃料電池 | |
| ★出力 | ★★直流 | ★★直流 |
| ★絶縁耐力 | ★★直流1.5倍/交流1倍(下限500V) | ★★同じ |
| ★保護装置 | ★★逆流防止・単独運転検出 | ★★出力異常低下・燃料ガスの異常等(解釈45条) |
どちらも直流を出す分散型電源——だから同じ枠でまとめられています。
「太陽電池と燃料電池はセット」と覚えておくと便利です。
試験を行うときの注意
日射があると、太陽電池は発電しています——試験前に遮光するか、夜間に行います。
発電したまま試験電圧を重ねれば、実際にかかる電圧が変わってしまいます。
試験後は残留電荷を放電——直流試験の後は特に重要です。
太陽電池発電設備の事故
| 事故 | 原因 |
| ★直流地絡 | ★★絶縁劣化・浸水・ケーブルの損傷 |
| ★直流アーク | ★★コネクタの接触不良(直流は消弧しにくい) |
| ★飛散・倒壊 | ★★台風による架台の破損 |
直流は電流のゼロ点がないので、一度アークが出ると消えにくいのです。
交流なら1秒間に100〜120回ゼロを通る——そのたびに消弧の機会があるのです。
これが直流特有の危険——絶縁を確実にする理由です。
50kWという境目
| 出力 | 区分 |
| ★50kW未満(低圧連系) | ★★一般用電気工作物 |
| ★50kW以上 | ★★自家用電気工作物(主任技術者が必要) |
50kWを境に、法的な扱いが大きく変わります——保安規程・主任技術者・事故報告の義務が生じるのです。
ただし絶縁耐力の規定は、規模を問わず適用されます——技術基準は出力で緩まないのです。
高圧電路の絶縁耐力(16条1項)
| 最大使用電圧 | 倍率 | 最低値 |
| ★7 000V以下 | ★★1.5倍 | ★★500V |
| ★7 000V超 60 000V以下 | ★★1.25倍 | ★★10 500V |
| ★60 000V超(中性点接地式) | ★★1.1倍 | ★★75 000V |
| ★60 000V超(中性点直接接地式) | ★★0.72倍 | ★★— |
電圧が高くなるほど倍率は下がります——絶対値がすでに十分大きいからです。
ここでも最低値500Vが登場します——太陽電池の下限500Vと同じ数字です。
回転機の絶縁耐力(16条2項)
| 機器 | 試験電圧 |
| ★回転機(発電機・電動機)7 000V以下 | ★★最大使用電圧の1.5倍(500V未満は500V) |
| ★回転機 7 000V超 | ★★最大使用電圧の1.25倍(10 500V未満は10 500V) |
| ★回転変流器 | ★★直流側の最大使用電圧の1倍の交流(500V未満は500V) |
回転機は1.5倍、太陽電池は直流1.5倍/交流1倍——倍率の数字が近いので混同しやすいのです。
「何の絶縁耐力か」を最初に確認する習慣をつけます。
太陽光発電の運用で問われること
| 項目 | 内容 |
| ★定期点検 | ★★絶縁抵抗・接地抵抗・外観・発電量の推移 |
| ★ホットスポット | ★★影や汚れでセルが発熱する現象 |
| ★PID現象 | ★★高電圧が長期間かかり出力が低下する |
| ★除草・清掃 | ★★影による出力低下と発熱を防ぐ |
部分的な影がホットスポットを生み、火災に至ることもあります——だからバイパスダイオードが組み込まれています。
絶縁性能の維持は、こうした日常点検と一体です。
⏱️ 本番での進め方
① 交流は1倍、直流は1.5倍。
② 下限は500V——300Vや600Vではない。
③ 加圧時間は10分間——1分ではない。
④ 燃料電池も同じ条件(解釈16条5項)。
💡 覚え方
解釈16条5項=太陽電池モジュール(燃料電池も同じ)は、最大使用電圧の1.5倍の直流電圧又は1倍の交流電圧(500V未満となる場合は500V)を充電部分と大地との間に連続して10分間加えて耐えること。
⚠️ よくある間違い
交流は「1.1倍」ではなく1倍。下限は「300V」「600V」ではなく500V。加圧時間は「1分」ではなく10分間。
まとめ
| 直流試験電圧 | 最大使用電圧の1.5倍 |
| (ア)交流試験電圧 | 最大使用電圧の1倍 |
| (イ)下限電圧 | 500V(未満のとき) |
| (ウ)加圧時間 | 連続10分間 |
| 加える箇所 | 充電部分と大地との間 |
| 答え | (1) |
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