今回は令和2年度 法規科目 A問題4、特別高圧架空電線路の誘導作用による感電防止の空欄補充問題です。静電誘導と電磁誘導を正しく使い分けられるかが問われます。
使い分けはこう。電磁誘導作用は弱電流電線路を通じて人体に危害(電流のループが生む誘導電圧が通信線に乗る)。静電誘導作用は地表上1mの電界強度3kV/m以下(電圧が空間につくる電界が直接人に感じられる)。
令和2年度 法規科目 A問題4:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和2年度 第三種電気主任技術者試験」法規科目 A問題4
電験3種 法規科目 【電技省令】 令和2年度 A問題4
次の文章は、「電気設備技術基準」に基づく架空電線路からの静電誘導作用又は電磁誘導作用による感電の防止に関する記述である。
a) 特別高圧の架空電線路は、(ア)誘導作用により弱電流電線路(電力保安通信設備を除く。)を通じて(イ)に危害を及ぼすおそれがないように施設しなければならない。
b) 特別高圧の架空電線路は、通常の使用状態において、(ウ)誘導作用により人による感知のおそれがないよう、地表上1mにおける電界強度が(エ)kV/m以下になるように施設しなければならない。ただし、田畑、山林その他の人の往来が少ない場所において、(イ)に危害を及ぼすおそれがないように施設する場合は、この限りでない。
上記の記述中の空白箇所(ア)〜(エ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(ア) (イ) (ウ) (エ) (1) 電磁 人体 静電 3 (2) 静電 人体 電磁 3 (3) 静電 人体 電磁 5 (4) 静電 取扱者 電磁 5 (5) 電磁 取扱者 静電 3

答えは(1):電磁・人体・静電・3kV/m
(ア)は「電磁」——「弱電流電線路を通じて」がヒントです。
(イ)は「人体」・(ウ)は「静電」・(エ)は「3」kV/mです。
5kV/mではありません。
★静電誘導と電磁誘導の対比
| 静電誘導 | 電磁誘導 | |
| ★原因 | ★★電圧 | ★★電流 |
| ★作るもの | ★★電界 | ★★磁界 |
| ★伝わり方 | ★★空間を通じて直接 | ★★導体(電線路)を通じて |
| ★規制 | ★★地表上1mで3kV/m以下 | ★★弱電流電線路への危害を防ぐ |
電圧→電界→静電誘導/電流→磁界→電磁誘導——この2つの流れで覚えれば、取り違えません。
a)に「弱電流電線路を通じて」とあるのが電磁誘導の目印です。
★静電誘導で何が起きるのか
特別高圧送電線の下では、体や傘に電荷が誘起されます——金属に触れるとピリッとした感知が起こります。
健康被害というより、不快感や驚きが問題になります——条文が「人による感知のおそれ」と書いているのはこのためです。
だから3kV/mという、感知しない水準で線が引かれています。
★電磁誘導で何が起きるのか
| 段階 | 起きること |
| ★① | ★★送電線に電流が流れる |
| ★② | ★★まわりに磁界ができる |
| ★③ | ★★並行する通信線に誘導電圧が生じる |
| ★④ | ★★通信線に触れた人が感電する |
通信線という「経路」を介して危害が及びます——だから条文が「弱電流電線路を通じて」と書いているのです。
とくに地絡事故時には、大きな誘導電圧が生じます——三相のバランスが崩れるからです。
★27条と27条の2の違い
| 条 | 対象 | 規制値 |
| ★第27条 | ★★特別高圧架空電線路(感電・感知) | ★★電界3kV/m以下 |
| ★第27条の2 | ★★変電所・開閉所等(人の健康) | ★★磁束密度200μT以下 |
27条は電界、27条の2は磁界を規制しています——守るものも「感知」と「健康」で違います。
2つの条文をセットで覚えると、混同しません——3kV/mと200μTという2つの数字です。
「人体」であって「取扱者」ではない
| 条文の言葉 | ダミー語 | 違い | |
| 電磁 | ★★電磁 | ★静電 | ★★弱電流電線路を通じて=電磁 |
| 人体 | ★★人体 | ★取扱者 | ★★被害を受けるのは一般の人 |
| 3kV/m | ★★3kV/m | ★5kV/m | ★★地表上1mでの電界強度 |
誘導障害の被害を受けるのは、電気設備の関係者ではありません——通信線を使う人や、送電線の下を通る人です。
だから「人体」という広い語が使われています——「取扱者」では対象が狭すぎます。
ただし書きの意味
「田畑、山林その他の人の往来が少ない場所」は除外されています——人がいなければ、感知のおそれもないからです。
ただし「人体に危害を及ぼすおそれがないように施設する場合」に限られます——まったくの野放しではありません。
山間部の送電線が低い位置にあるのは、この例外によるものです。
誘導障害を減らす方法
| 方法 | 効果 |
| ★離隔距離をとる | ★★距離とともに急減する |
| ★ねん架する | ★★三相の位置を入れ替えて打ち消す |
| ★架空地線・遮へい線 | ★★誘導電圧を低減する |
解釈第52条に、弱電流電線への誘導障害防止の具体策があります——並行距離2m以上・ねん架・D種接地などです。
省令が原則、解釈が具体——この関係がここでも成り立っています。
誘導電圧の大きさ
f:周波数/M:相互インダクタンス/l:並行長/I:電流
★誘導電圧も大きい
★誘導電圧も大きい
誘導電圧は、電流・周波数・並行長に比例します——だから並行距離を短くするのが対策になります。
地絡事故時には、零相電流が流れて誘導が大きくなります——平常時の何倍にもなるのです。
ねん架という工夫
三相の電線の位置を、区間ごとに入れ替えることをねん架といいます。
3相それぞれが均等に各位置を通るので、磁界が打ち消し合います——誘導電圧が小さくなるのです。
送電線の鉄塔で、電線の並びが変わっている箇所がそれです。
電力保安通信設備が除かれる理由
条文は「弱電流電線路(電力保安通信設備を除く。)」と書いています。
電力保安通信設備は、電力会社が自分で管理する設備です——誘導対策も自分で行えます。
だからこの規定の対象から外されています——守るのは他人の設備という考え方です。
誘導作用は理論科目の知識がそのまま生きる分野です——電界と磁界の区別がついていれば迷いません。
誘導障害の歴史
電話が普及した時代、送電線からの誘導が大きな問題になりました——通話に雑音が入るのです。
そこで離隔・ねん架・遮へいといった対策が発達しました——電力と通信が並行して発展した歴史があります。
いまは光ファイバが使われるので、誘導の問題は減っています。
⏱️ 本番での進め方
① a)の「弱電流電線路を通じて」が電磁誘導の目印。
② b)の「電界強度」が静電誘導の目印。
③ 電圧→電界→静電/電流→磁界→電磁で覚える。
④ 数値は3kV/m(27条)と200μT(27条の2)。
出題履歴——誘導作用は繰り返し出る
| 年度 | 問われ方 |
| ★令和2年度 問4 | ★★静電誘導と電磁誘導(本問) |
| ★令和4年度下期 問4 | ★★架空電線の高さと誘導作用 |
| ★令和6年度下期 問5 | ★★電磁誘導と人の健康(27条の2) |
令和6年度下期 A問題5は磁束密度200μTの条文です。本問の3kV/mと合わせて、2つの数字を押さえましょう。
令和4年度下期 A問題4でも「誘導作用による感電」が問われました。
💡 覚え方
電技27条=特別高圧架空電線路は、電磁誘導作用により弱電流電線路(電力保安通信設備を除く)を通じて人体に危害を及ぼさない/静電誘導作用により地表上1mの電界強度3kV/m以下(田畑・山林その他人の往来が少ない場所は除外)。
⚠️ よくある間違い
静電と電磁を取り違えない——電圧→電界→静電/電流→磁界→電磁。「取扱者」ではなく人体。5kV/mではなく3kV/m。
まとめ
| (ア) | 電磁(誘導作用) |
| (イ) | 人体 |
| (ウ) | 静電(誘導作用) |
| (エ) | 3(kV/m以下・地表上1m) |
| 除外 | 田畑・山林その他人の往来が少ない場所 |
| 答え | (1) |
▼あわせて解きたい関連問題
・架空電線等の高さ(電技省令18):【法規】令和4年度下期 A問題4
・電磁誘導作用による健康影響(電技省令21):【法規】令和3年度 A問題3

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