今回は令和6年度下期 法規科目 A問題5、電磁誘導作用による人の健康影響の防止の空欄補充問題です。2011年に追加された比較的新しい条文で、近年よく狙われます。
覚えるのは1セット。変電所・開閉所は、人によって占められる空間に相当する空間の磁束密度の平均値が、商用周波数において200μT以下。守る対象は設備ではなく人の健康、量は磁束密度(磁界の強さではない)です。
令和6年度下期 法規科目 A問題5:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和6年度下期 第三種電気主任技術者試験」法規科目 A問題5
電験3種 法規科目 【電技省令】 令和6年度下期 A問題5
次の文章は、「電気設備技術基準」における、電気機械器具等からの電磁誘導作用による影響の防止に関する記述の一部である。
変電所又は開閉所は、通常の使用状態において、当該施設からの電磁誘導作用により(ア)の(イ)に影響を及ぼすおそれがないよう、当該施設の付近において、(ア)によって占められる空間に相当する空間の(ウ)の平均値が、商用周波数において(エ)以下になるように施設しなければならない。
上記の記述中の空白箇所(ア)〜(エ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(ア) (イ) (ウ) (エ) (1) 通信設備 機能 磁界の強さ 200 A/m (2) 人 健康 磁界の強さ 100 A/m (3) 無線設備 機能 磁界の強さ 100 A/m (4) 通信設備 機能 磁束密度 200 μT (5) 人 健康 磁束密度 200 μT

答えは(5):人・健康・磁束密度・200μT
(ア)(イ)は「人」「健康」・(ウ)は「磁束密度」・(エ)は「200μT」——守るのは設備ではなく人です。
この記事では、電界の規制や国際的な背景に踏み込みます。
条文の趣旨と磁束密度の性質は、平成27年度の記事で扱っています。
★磁界だけでなく電界の規制もある
| 対象 | 規制値 | 根拠 |
| ★磁束密度 | ★★200μT以下 | ★★電技27条の2 |
| ★電界の強さ | ★★地表上1mで3kV/m以下 | ★★解釈(特別高圧架空電線路) |
磁界は電流が、電界は電圧が作ります——だから規制も別々に定められています。
電界の3kV/mは、特別高圧架空電線路の下で問題になります——静電誘導による不快感を防ぐのが目的です。
2つの数字をセットで覚えておきましょう。
★架空電線路にも同じ200μT
| 対象 | 基準値 |
| ★変電所・開閉所(第1項) | ★★200μT |
| ★発変電所等以外の変圧器・電線路(第2項) | ★★200μT |
| ★架空電線路 | ★★200μT |
場所が変わっても、値はすべて200μTです——覚えるのは1つだけで済みます。
令和3年度A問題3では第2項が問われました——どこが出ても200μTです。
★ICNIRPガイドラインとは
| 内容 | |
| ★正式名 | ★★国際非電離放射線防護委員会 |
| ★役割 | ★★電磁界の人体影響について指針を示す |
| ★日本の対応 | ★★2011年に電技へ取り入れた |
国際的な指針を国内法に取り入れた条文です——だから比較的新しいのです。
解釈第218条の国際規格の取り入れと同じ流れです——電気の基準は国際的に揃えられていく傾向にあります。
なぜ商用周波数なのか
人体への影響は、周波数によって大きく変わります——だから周波数を特定して基準を定めます。
商用周波数(50Hz/60Hz)は、電力設備が作る磁界の周波数です——これが規制の対象になります。
高周波(電波)は別の法律(電波法)で規制されます——法律ごとに守備範囲が分かれているのです。
変電所の設計での配慮
| 方法 | 効果 |
| ★距離をとる | ★★磁束密度は距離とともに急減する |
| ★配置を工夫する | ★★相を近づけて磁界を打ち消し合わせる |
| ★磁気シールド | ★★鋼板などで磁界を遮る |
いちばん効くのは距離をとることです——三相なら距離の3乗に反比例して減るからです。
実際の変電所では、敷地境界で200μTを超えることはまずありません——余裕をもって設計されているのです。
誘導障害の条文との違い
| 条文の言葉 | ダミー語 | 違い | |
| 人の健康 | ★★人の健康 | ★通信設備の機能 | ★★第16条の誘導障害と混同しない |
| 磁束密度 | ★★磁束密度 | ★磁界の強さ | ★★単位がμTなら磁束密度 |
| 200μT | ★★200μT | ★100A/m | ★★量と単位はセットで覚える |
第16条は他の設備への影響、第27条の2は人への影響です——守る対象がまったく違います。
「通信設備の機能」という語が出てきたら、それは第16条の話——本条の選択肢では必ずダミーです。
再出題で正解番号が変わる
平成27年度では正解が(4)、本問(令和6年度下期)では(5)です——選択肢の並びが違うだけです。
電技には、こうした番号だけ変えた再出題が多くあります——絶縁(5条)も接地(10条)も同じです。
だから過去問は、答えの番号ではなく理由で覚えましょう。
誘導障害を防ぐ具体策
| 方法 | 効果 |
| ★離隔距離をとる | ★★弱電流電線と2m以上離す |
| ★ねん架する | ★★三相の位置を入れ替えて磁界を打ち消す |
| ★遮へい線を設ける | ★★誘導電圧を低減する |
| ★金属被覆をD種接地 | ★★静電誘導を遮る |
解釈第52条の弱電流電線への誘導障害防止の規定です——こちらは第16条(設備への影響)の具体化です。
本条(人体影響)とは別の条文ですが、対策は共通する部分もあります——磁界を減らすという点では同じです。
送電線の下に住めるのか
送電線の直下でも、磁束密度は基準を大きく下回るのが普通です——数μT程度にとどまります。
200μTという基準は、かなり余裕をもって決められています——健康影響が生じない水準の、さらに下です。
ただし電界(3kV/m)のほうは、直下で問題になることがあります——だから離隔距離が定められているのです。
条文が新設された背景
| 年 | できごと |
| ★1998年 | ★★ICNIRPがガイドラインを公表 |
| ★2010年 | ★★ICNIRPが改定(低周波の指針値を見直し) |
| ★2011年 | ★★日本が電技に取り入れて第27条の2を新設 |
国際的な議論を受けて、日本の基準が作られました——電気の基準は国際的に揃えられていく傾向です。
だから今後も改正の可能性があります——新しい条文ほど動きやすいのです。
⏱️ 本番での進め方
① (ア)(イ)は「人」「健康」——通信設備の機能は第16条。
② (ウ)は単位で判断——μTなら磁束密度、A/mなら磁界の強さ。
③ (エ)は200μT。どの項でも同じ値。
④ 電界の規制は3kV/m——磁界とセットで覚える。
出題履歴——3回出ている新しい条文
| 年度 | 問われ方 | 正解番号 |
| ★平成27年度 問3 | ★★同一内容 | ★★(4) |
| ★令和3年度 問3 | ★★第2項 | ★★— |
| ★令和6年度下期 問5 | ★★本問 | ★★(5) |
平成27年度 A問題3では、磁束密度と磁界の強さの違いを中心に解説しています。本記事は電界規制と国際的な背景に寄せました。
2011年に新設された条文が、すでに3回出題されています——新しい条文ほど狙われるという傾向どおりです。
💡 覚え方
電技27条の2=変電所・開閉所は人の健康に影響を及ぼさないよう、人が占める空間に相当する空間の磁束密度の平均値が商用周波数において200μT以下。架空電線路にも同じ200μTの規定あり。電界は地表上1mで3kV/m以下。
⚠️ よくある間違い
「通信設備の機能」(誘導障害の条文)と混同しない。磁界の強さ[A/m]ではなく磁束密度[T]。正解番号は年度で変わる(H27は(4))。
まとめ
| (ア) | 人 |
| (イ) | 健康 |
| (ウ) | 磁束密度 |
| (エ) | 200 μT(商用周波数) |
| 根拠 | 電技 第27条の2 |
| 答え | (5) |
▼あわせて解きたい関連問題
・電磁誘導作用による健康影響の防止(電技省令21):【法規】令和3年度 A問題3
・電磁誘導作用による影響の防止(電技省令34):【法規】平成27年度 A問題3

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