今回は令和3年度 法規科目 A問題3、電磁誘導作用による人の健康影響の防止の空欄補充問題です。令和6年度下期A問題5が変電所・開閉所の規定だったのに対し、こちらはそれ以外の場所を扱う第2項です。
値は同じ商用周波数で磁束密度200μT以下。違うのはただし書きで、田畑・山林その他の人の往来が少ない場所で危害のおそれがなければ適用されません。人がいないなら規制しないという当然の発想です。
答えは(4):磁束密度・商用周波数・200μT・往来が少ない
この記事は第2項、つまり「送電線が野を越え山を越える区間」を扱います。
令和6年度下期 A問題5と平成27年度 A問題3は第1項(発変電所等)です。
令和3年度 法規科目 A問題3:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和3年度 第三種電気主任技術者試験」法規科目 A問題3
電験3種 法規科目 【電技省令】 令和3年度 A問題3
次の文章は、「電気設備技術基準」の電気機械器具等からの電磁誘導作用による人の健康影響の防止における記述の一部である。
変圧器、開閉器その他これらに類するもの又は電線路を発電所、変電所、開閉所及び需要場所以外の場所に施設する場合に当たっては、通常の使用状態において、当該電気機械器具等からの電磁誘導作用により人の健康に影響を及ぼすおそれがないよう、当該電気機械器具等のそれぞれの付近において、人によって占められる空間に相当する空間の(ア)の平均値が、(イ)において(ウ)以下になるように施設しなければならない。ただし、田畑、山林その他の人の(エ)場所において、人体に危害を及ぼすおそれがないように施設する場合は、この限りでない。
上記の記述中の空白箇所(ア)〜(エ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(ア) (イ) (ウ) (エ) (1) 磁束密度 全周波数 200 μT 居住しない (2) 磁界の強さ 商用周波数 100 A/m 往来が少ない (3) 磁束密度 商用周波数 100 μT 居住しない (4) 磁束密度 商用周波数 200 μT 往来が少ない (5) 磁界の強さ 全周波数 200 A/m 往来が少ない

★第1項と第2項はどこが違うのか
| 第1項 | 第2項(本問) | |
| ★対象の場所 | ★★発電所・変電所・開閉所 | ★★それら及び需要場所以外 |
| ★典型例 | ★★変電所の構内・柵の外側 | ★★野山を通る送電線の下 |
| ★数値 | ★★商用周波数200μT以下 | ★★商用周波数200μT以下(同じ) |
| ★ただし書き | ★★取扱者以外が立ち入らない場所 | ★★田畑・山林その他人の往来が少ない場所 |
値は同じ、違うのは「どこで測るか」と「例外の書き方」です——ここを取り違えると選択肢を選べません。
変電所は柵で囲えるが、送電線は囲えない——だから例外の文言が変わるのです。
★なぜ「田畑、山林」なのか
送電線は、市街地を避けて田畑や山林を通ります——用地の確保が容易で、影響を受ける人が少ないからです。
そういう場所まで200μTを機械的に当てはめると、鉄塔を高くする費用ばかりがかさみます。
人がほとんど来ない場所は、危害のおそれがないように施設すれば足りる——規制の合理性を保つためのただし書きです。
★「往来が少ない」と「居住しない」の決定的な違い
| 条文の言葉 | ダミー語 | 違い | |
| 人の往来が少ない | ★★人の往来が少ない | ★人が居住しない | ★★住んでいなくても通る人は守る |
| 田畑、山林 | ★★田畑、山林 | ★山林のみ | ★★田畑も明示されている |
| 危害を及ぼすおそれがない | ★★危害を及ぼすおそれがない | ★同意を得た | ★★客観的な安全が条件 |
公園や河川敷は「居住しない」が「往来は多い」場所です——ここを除外にしてしまっては制度が壊れます。
守るべきは住民ではなく、そこに居合わせる人——だから基準は「往来」なのです。
★磁束密度と磁界の強さ——単位で見分ける
| 量 | 記号 | 単位 | 関係 |
| ★磁束密度 | ★★B | ★★T(テスラ) | ★★B=μH |
| ★磁界の強さ | ★★H | ★★A/m | ★★H=B/μ |
選択肢に「200μT」とあれば磁束密度、「200A/m」とあれば磁界の強さ——単位を見れば(ア)は即断できます。
人体に誘導される電界・電流は磁束密度Bに比例する——だから国際的にもBで規定します。
200μTという値はどこから来たか
| 出典 | 内容 |
| ★ICNIRPガイドライン(2010年) | ★★一般公衆の参考レベル 200μT(50/60Hz) |
| ★電技27条の2 | ★★2011年に追加、同じ200μTを採用 |
国際非電離放射線防護委員会(ICNIRP)の指針をそのまま国内法に取り込んだものです。
電磁界の健康影響は国際的な議論なので、国内独自の値にする理由がないのです。
送電線の下の磁束密度は実際いくらか
| 場所 | おおよその磁束密度 |
| ★50万V送電線の直下 | ★★十数μT程度 |
| ★配電線の下 | ★★数μT程度 |
| ★家電製品の至近 | ★★数十〜数百μT(ごく近傍) |
| ★基準値 | ★★200μT |
実際の送電線の下は、基準値よりずっと小さい値です——設計段階で十分な離隔をとっているからです。
むしろ身近な家電のほうが至近距離では大きい——距離の効き方が桁違いに大きいのです。
磁束密度は距離でどう減るか
アンペアの法則から。距離rに反比例する
行きと帰りで打ち消し合うため、実際はr²に反比例して急減する
送電線は三相3線で、電流の和がほぼゼロになります——離れれば急激に打ち消し合うのです。
だから地上高を確保するだけで、基準値を大きく下回れるのです。
電界の規制は別の条文
| 条文の言葉 | ダミー語 | 違い | |
| 電技27条の2=磁界(磁束密度200μT) | ★★電技27条の2=磁界(磁束密度200μT) | ★電界も同じ条文 | ★★電界は解釈で3kV/m |
| 解釈=地表上1mで3kV/m以下 | ★★解釈=地表上1mで3kV/m以下 | ★27条の2に書いてある | ★★電界の数値は省令にはない |
磁界は省令に200μT、電界は解釈に3kV/m——置かれている場所が違います。
電界は静電誘導、磁界は電磁誘導——原因も規制の根拠も別物です。
「通常の使用状態において」の意味
事故時や瞬時の過電流は考えません——ふだんの運転状態で判断するという限定です。
健康影響は長期の曝露で議論されるもの——一瞬の値を規制しても意味がないからです。
絶縁の規定が「事故時に想定される異常電圧」を見るのと対照的です。
⏱️ 本番での進め方
① 単位μT=磁束密度、A/m=磁界の強さ。選択肢は単位で切る。
② 値は第1項も第2項も200μT——変わらない。
③ 例外は「往来が少ない」——「居住しない」は誤り。
④ 「商用周波数」——「全周波数」ではない。
出題履歴——新条文はすぐ出る
| 年度 | 問われた項 | 正解番号 |
| ★平成27年度 問3 | ★★第1項 | ★★(4) |
| ★令和3年度 問3 | ★★第2項(本問) | ★★(4) |
| ★令和6年度下期 問5 | ★★第1項 | ★★(2) |
27条の2は2011年に追加された新しい条文です——2015年(平成27年度)に早くも出題されました。
電技に条文が追加されたら数年以内に出る——これは法規科目の鉄則です。
💡 覚え方
電技27条の2第2項=発電所・変電所・開閉所及び需要場所以外に変圧器・開閉器・電線路を施設する場合、人が占める空間の磁束密度の平均値が商用周波数において200μT以下。ただし田畑・山林その他人の往来が少ない場所で危害のおそれがないように施設する場合を除く。
⚠️ よくある間違い
「磁界の強さ」ではなく磁束密度(単位μT)。「全周波数」ではなく商用周波数。「居住しない」ではなく往来が少ない。値は100μTではなく200μT。
まとめ
| (ア) | 磁束密度 |
| (イ) | 商用周波数 |
| (ウ) | 200 μT |
| (エ) | 往来が少ない |
| 対象 | 発電所・変電所・開閉所・需要場所以外 |
| 答え | (4) |
▼あわせて解きたい関連問題
・変電所・開閉所の場合(電技省令6):【法規】令和6年度下期 A問題5
・電磁誘導作用による影響の防止(電技省令34):【法規】平成27年度 A問題3

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