今回は令和7年度上期 電力科目 A問題13、線路損失を一定に保ったまま力率が変化したときの負荷電力の比を求める計算問題です。損失一定の条件がそのまま電流一定を意味する点がカギです。
ポイントは線路損失 3I²R が一定=電流Iが一定。端子電圧Vも一定なので、負荷電力 W=√3·V·I·cosθ は力率cosθに比例。したがって W2/W1=cosθ2/cosθ1=0.91/0.70=1.3。
出題のポイント:損失一定を電流一定へ読み替える

三相3線式の線路損失は3I²Rです。同じ配電線で損失が変わらないなら線電流も変わりません。さらに負荷端子電圧も一定なので、有効電力は力率に比例します。したがってW₂/W₁は0.91/0.70で求められます。
令和7年度上期 電力科目 A問題13:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和7年度上期 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題13
電験3種 電力科目 【配電の計算】 令和7年度上期 A問題13
三相3線式配電線により遅れ力率70%、W1[kW]の負荷に電力を供給している。負荷が遅れ力率91%、W2[kW]に変化したが線路損失は変わらなかった。W2はW1の何倍か。最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。ただし、負荷の端子電圧は変わらないものとする。
(1) 0.77 (2) 1.3 (3) 2.3 (4) 1.1 (5) 1.7
解法の原理:線路損失が同じなら電流も同じ

「線路損失は変わらなかった」が、すべての出発点です。
★ここが鍵
★
★答え
損失一定と聞いたら、電流一定に読み替えます——抵抗は変わらないから。
電圧も一定と問題文にあります——だから変わるのは力率だけです。
すると電力は力率にそのまま比例します——比を取るだけで答えが出るのです。
損失一定という条件の読み替え方
| 問題文の言葉 | 読み替える先 | 根拠 |
| ★★線路損失が変わらない | ★★線電流が変わらない | ★★損失=3I²R で R は一定 |
| ★★端子電圧が変わらない | ★★V が一定 | ★★問題文で指定 |
| ★力率が変わった | ★★cosθ だけが変数 | ★★残ったのはこれだけ |
3つの量のうち2つが固定されれば、答えは1つに決まります——それが本問の構造です。
「損失一定=電力一定」と読み違えると解けません——損失は電流で決まるのです。
電力は電流と力率の積で決まります——そこが違いです。
この読み替えができれば、計算は割り算1回で済みます。
力率改善で何が得られたのか
| 変化前(力率0.70) | 変化後(力率0.91) | |
| ★線電流 | ★★同じ | ★★同じ |
| ★線路損失 | ★★同じ | ★★同じ |
| ★送れる有効電力 | ★★W₁ | ★★1.3倍のW₂ |
| ★無効電力 | ★★多い(sinθ=0.714) | ★★少ない(sinθ=0.415) |
同じ電流・同じ損失のまま、3割多く送れるようになりました——それが力率改善の値打ちです。
電流の中身が、無効分から有効分へ入れ替わったのです——大きさは同じでも中身が違うのです。
設備を増やさずに送電能力が上がります——だから力率改善が行われるのです。
本問はその効果を数字で示しています。
⚠️ よくある間違い
逆数の0.77を選ぶ——W₂/W₁ なので0.91÷0.70です。
損失一定を電力一定と読む——損失一定は電流一定です。
力率の2乗で計算する——電力は力率に1乗で比例します。
電圧が変わると考える——問題文で一定と指定されています。
抵抗Rの値を探す——比を取るので不要です。
⏱️ 本番での進め方
①★線路損失一定=線電流一定。
②★電圧も一定なら電力は力率に比例。
③★W₂/W₁=cosθ₂/cosθ₁。
④★分母と分子を取り違えない。
💡 覚え方
「損失一定は電流一定」——まずここに読み替えます。あとは力率の比を取るだけ——0.91÷0.70=1.3です。
★同型の問題が平成30年度 A問題13(配電の計算:損失一定と力率)にあります。問われる量が逆になっています。
電流の中身が入れ替わる
| 力率0.70 | 力率0.91 | |
| ★線電流の大きさ | ★★I(同じ) | ★★I(同じ) |
| ★有効分 | ★★0.70 I | ★★0.91 I |
| ★無効分 | ★★0.714 I | ★★0.415 I |
電流の大きさは同じでも、中身の割合が変わります——有効分が増え無効分が減るのです。
仕事をするのは有効分だけです——だから送れる電力が増えるのです。
無効分は行ったり来たりするだけで、仕事をしません——けれども損失は生むのです。
問題の解説:力率の比から有効電力を求める

| 量 | 与えられているか | 比を取ると |
| ★線間電圧 V | ★★数値は不明 | ★★消える |
| ★線電流 I | ★★数値は不明 | ★★消える |
| ★抵抗 R | ★★数値は不明 | ★★そもそも出てこない |
| ★★力率 cosθ | ★★与えられている | ★★残る |
数値が与えられていない量は、比を取れば消えます——だから求められるのです。
「何倍か」と問われたら、比の形にできないか考えます——それが解法の入口です。
力率が改善する理由
| 原因 | 内容 |
| ★★進相コンデンサの設置 | ★★遅れ無効電力を打ち消す |
| ★負荷の入れ替え | ★★誘導電動機が減り抵抗負荷が増えた |
| ★運転状態の変化 | ★★電動機が定格に近い負荷で回るようになった |
誘導電動機は、軽負荷ほど力率が悪くなります——励磁電流の割合が増えるから。
だから負荷が増えると力率も上がることがあります——本問はまさにその状況です。
もちろんコンデンサを入れても改善します——実務ではこちらが主です。
線路損失の式を確かめる
3本の電線それぞれで I²R の損失が生じます——だから3倍です。
この式には電圧も力率も出てきません——電流と抵抗だけで決まるのです。
だから損失一定=電流一定と読み替えられます——それが本問の出発点です。
単相2線式なら 2I²R になります——本数が違うだけです。
単相と三相で式はどう変わるか
| 単相2線式 | 三相3線式 | |
| ★線路損失 | ★★2I²R | ★★3I²R |
| ★負荷電力 | ★★VIcosθ | ★★√3VIcosθ |
| ★損失一定なら | ★★I一定 | ★★I一定 |
| ★電力の比 | ★★力率の比 | ★★力率の比 |
係数は違いますが、比を取れば同じ結論になります——2も√3も消えるのです。
だから単相でも三相でも、答えの出し方は変わりません——力率の比だけです。
力率が下がると何が起きるか
| 力率 | 同じ電力を送るのに必要な電流 | 線路損失 |
| ★★1.0 | ★★基準 | ★★基準 |
| ★0.91 | ★★1.10倍 | ★★1.21倍 |
| ★0.70 | ★★1.43倍 | ★★2.04倍 |
力率0.70では、力率1のときの2倍の損失が出ます——電流の2乗で効くから。
だから力率改善には大きな価値があります——損失も設備容量も減るのです。
本問は損失を一定に保った場合の見方ですが、裏返せば同じことです。
端子電圧一定という条件の意味
| 条件 | ないとどうなるか |
| ★★端子電圧が一定 | ★★電力は電流と力率だけで決まる |
| ★電圧が変わる | ★★電圧の比も式に入り、答えが決まらない |
問題文の「ただし、負荷の端子電圧は変わらないものとする」は必須の条件です——これがないと解けないのです。
但し書きには必ず意味があります——読み飛ばさないことです。
三相3線式の損失の式を導く
| 段階 | 考えること |
| ① | ★1本の電線で生じる損失は I²R |
| ★② | ★★三相3線式では電線が3本ある |
| ★③ | ★★平衡していれば3本とも同じ電流 |
| ★④ | ★★だから合計は 3I²R |
中性線がないので、3本ぶんだけを数えます——単相3線式とは違うのです。
平衡していることが前提です——不平衡なら1本ずつ計算することになります。
本問は三相平衡負荷なので、この式がそのまま使えます。
まとめ
| 損失一定 | 3I²R一定→I一定 |
| 端子電圧 | 一定 |
| 電力 | W=√3·V·I·cosθ∝cosθ |
| 比 | W2/W1=0.91/0.70 |
| 答え | (2) 1.3 |
▼あわせて解きたい関連問題
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