今回は令和6年度上期 電力科目 A問題5を解説します。燃料電池の原理と特徴について、発生する電力の種類・電解質による分類・原理・排熱利用・燃料の作り方の5つの記述から誤っているものを選ぶ問題です。
燃料電池は「電池」の仲間——化学反応で直流を作る装置です。「直接、交流電力を発生」とあったら即誤り。系統や家庭で使うにはインバータ(電力変換装置)で交流に変換します。太陽電池と同じ注意点です。
出題のポイント:燃料電池は直流を発生

燃料電池は化学反応で電子を一方向に取り出すため、直接発生するのは直流です。交流で利用するときはインバータで変換し、反応・分類・排熱利用・改質も照合します。
燃料電池が直接つくるのは直流

「直接、交流電力を発生する」——直流が正しいです。
| 項目 | 燃料電池は | 理由 |
| ★出力 | ★直流 | ★化学反応で電子を直接取り出すから |
| ★反応 | ★発熱反応 | ★水素の酸化だから |
| ★振動・騒音 | ★小さい | ★回転する部分がないから |
| ★排熱 | ★給湯・空調に使える | ★需要地の近くに置けるから |
| ★発電効率 | ★40〜60 % | ★カルノー効率の制約を受けないから |
化学反応で電子を取り出すと、向きが変わりません——だから直流になります。
交流が出るのは、磁石とコイルが回転しているとき——回転が周期を作るのです。
燃料電池に回転する部分はありません——だから交流にはなり得ないことになります。
「燃料は外部から供給され」の部分は正しい——誤りは「交流」の1語だけです。
令和6年度上期 電力科目 A問題5:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和6年度上期 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題5
電験3種 電力科目 【新エネルギー】 令和6年度上期 A問題5
燃料電池の原理と特徴に関する記述として、誤っているものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
燃料は外部から供給され、直接、交流電力を発生する。
電解質により、りん酸形、溶融炭酸塩形、固体高分子形などに分類される。
水の電気分解と逆の化学反応を利用した発電方式である。
発電時の排熱を空調や給湯に活用できる。
天然ガスやメタノールを改質して発生させた水素を燃料として利用できる。
燃料電池の5つの記述を照合

中学校で習う水の電気分解を思い出しましょう。
★電気を加えて分解する
★結びつけて電気を得る
矢印の向きが逆になっただけ——まったく同じ反応です。
電気分解では電気を加える、燃料電池では電気が出る——問題文(3)の記述は正しいことになります。
だから発熱反応——分解に電気が要るなら、結合では出るのです。
(2) 電解質による分類
| 種類 | 電解質 | 動作温度 | 用途 |
| ★固体高分子形 | ★イオン交換膜 | ★80 ℃ | ★家庭用・自動車 |
| ★りん酸形 | ★りん酸水溶液 | ★200 ℃ | ★業務用 |
| ★溶融炭酸塩形 | ★溶けた炭酸塩 | ★650 ℃ | ★大規模 |
| 固体酸化物形 | セラミック | 1,000 ℃ | 高効率 |
電解質はイオンを通し、電子は通さない材料——電子を外の回路へ回すためです。
問題文が挙げる3種は、いずれも実在します——(2)は正しい記述になります。
動作温度が高いほど発電効率が上がる——反応が速く進むからです。
⚠️ よくある間違い
(1)の「燃料は外部から供給され」だけを見て正しいと判断する——そこは正しいのです。誤りは「交流」の1語。
(2)の3種類を疑ってしまう——すべて実在する分類です。
(3)の「水の電気分解と逆」を疑ってしまう——正しい表現になります。
(4)の排熱利用を疑ってしまう——発熱反応なので熱が出ます。
(5)の改質を疑ってしまう——今の主流は天然ガスからの改質です。
「直流か交流か」は燃料電池の最頻出論点——太陽電池と同じになります。
⏱️ 本番での進め方
①★燃料電池は直流。交流ではない。
②★回転する部分がないので交流にはなり得ない。
③水の電気分解の逆=発熱反応。
④電解質で分類する。動作温度が高いほど高効率。
💡 覚え方
「回るから交流、回らないから直流」——燃料電池も太陽電池も直流です。系統につなぐには必ず変換装置が要る——そこまでセットで覚えましょう。
燃料電池の記述は平成28年度 A問題5(新エネルギー:各種発電)、発熱反応かどうかは令和3年度 A問題6(新エネルギー:分散型電源)にあります。
燃料電池の反応を極ごとに見る
固体高分子形を例に、何が起きているか追いましょう。
| 極 | 反応 | 動くもの |
| ★燃料極(負極) | ★H₂ → 2H⁺ + 2e⁻ | ★電子を放す |
| ★電解質 | ★— | ★H⁺ だけが通る |
| ★空気極(正極) | ★½O₂ + 2H⁺ + 2e⁻ → H₂O | ★電子を受け取る |
電解質は水素イオンを通し、電子を通しません——だから電子は外の回路を回るのです。
その電子の流れが電流——向きが変わらないので直流になります。
もし電解質が電子も通せば、内部で短絡して電気を取り出せません——「イオンだけ通す」ことが本質です。
1セルの電圧
★25 ℃
★損失で下がる
太陽電池のセルと同じく、1枚では電圧が低すぎます——だから何枚も積み重ねるのです。
積み重ねたものをスタックと呼びます——数十枚から数百枚を直列にします。
要点をもう一度
誤りは(1)の「交流」の1語だけです。
| 記述 | 正誤 | 要点 |
| ★(1) | ★誤 | ★直流を発生する |
| (2) | 正 | 電解質で分類する |
| (3) | 正 | 水の電気分解の逆反応 |
| (4) | 正 | 排熱を空調・給湯に利用 |
| (5) | 正 | 天然ガス等を改質して水素を得る |
「燃料は外部から供給され」は正しい——そこが乾電池との違いです。
供給し続けるかぎり発電し続ける——だから「電池」ではなく発電装置になります。
改質という工程
(5)の改質は、水素を作る化学処理です。
| 原料 | 反応 |
| ★都市ガス(メタン) | ★CH₄ + 2H₂O → 4H₂ + CO₂ |
| メタノール | CH₃OH + H₂O → 3H₂ + CO₂ |
水蒸気と反応させて水素を取り出します——二酸化炭素も同時に出るのが課題です。
それでも直接燃やすより効率が高い——総合的には排出を減らせます。
燃料電池の効率が高い理由
(1)の「直接」という言葉が、効率の高さの理由です。
| 方式 | エネルギーの経路 | 効率の上限 |
| 火力発電 | 化学→熱→運動→電気 | ★カルノー効率に縛られる |
| ★燃料電池 | ★化学→電気 | ★理論上83 % |
熱を経由すると、必ず一定の割合を捨てることになります——熱力学第二法則です。
燃料電池は熱を経由しません——だからその制約を受けないのです。
小規模でも効率が落ちにくいのも利点——タービンは小さくすると効率が急落します。
だから家庭用の700 W でも40 % を確保できる——分散型電源に向く決定的な理由になります。
水素をどう運ぶか
| 方法 | 特徴 |
| ★高圧ガス | ★70 MPa に圧縮する(自動車用) |
| ★液化 | ★−253 ℃ まで冷やす |
| ★現地で改質 | ★都市ガスから作る(家庭用) |
水素は軽いので、体積あたりのエネルギーが小さい——運ぶのが難しいのです。
だから家庭用では、既存のガス管を使って現地で作る——(5)の改質がその手段になります。
燃料電池と二次電池の違い
名前が似ていますが、性質はまったく異なります。
| ★燃料電池 | ★二次電池(蓄電池) | |
| ★役割 | ★発電する | ★蓄える |
| ★活物質 | ★外部から供給し続ける | ★内部に持っている |
| ★容量 | ★燃料がある限り無制限 | ★決まっている |
| ★出力と容量 | ★別々に設計できる | ★連動する |
問題文の「燃料は外部から供給され」が、その違いを示しています。
二次電池は充電しないと使えません——燃料電池は水素を送り続ければ動き続けるのです。
だから燃料電池は電源、二次電池は貯蔵装置——系統での役割が違います。
「電池」という語に引きずられないこと——本質は小型の発電所です。
まとめ
| (1)発生電力 | 直流(交流はインバータで変換)→誤り |
| (2)分類 | 電解質でりん酸形・溶融炭酸塩形・固体高分子形→正しい |
| (3)原理 | 水の電気分解と逆の反応→正しい |
| (4)排熱 | 空調・給湯に活用(コージェネ)→正しい |
| (5)燃料 | 天然ガス等を改質した水素→正しい。答えは(1) |
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