今回は令和3年度 電力科目 A問題6を解説します。分散型電源——太陽電池・逆潮流対策・小水力・洋上風力の直流送電・燃料電池——について誤っているものを選ぶ問題です。
この問題は令和5年度下期 A問題5(新エネ5)として再出題された出題元。違いは(4)の直流送電のメリットが「誘電損を考慮しなくてよい」という表現になっている点だけで、誤りは同じ(5)の「吸熱反応」です。
令和3年度 電力科目 A問題6:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和3年度 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題6
電験3種 電力科目 【新エネルギー】 令和3年度 A問題6
分散型電源に関する記述として、誤っているものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
太陽電池で発生した直流の電力を交流系統に接続する場合は、インバータにより直流を交流に変換する。連系保護装置を用いると、系統の停電時などに電力の供給を止めることができる。
分散型電源からの逆潮流による系統電圧上昇を抑制する手段として、分散型電源の出力抑制や、電圧調整器を用いた電圧の制御などが行われる。
小水力発電では、河川や用水路などでの流込み式発電が用いられる場合が多い。
洋上の風力発電所と陸上の系統の接続では、海底ケーブルによる直流送電が用いられることがある。ケーブルでの直流送電のメリットとして、誘電損を考慮しなくてよいことなどが挙げられる。
一般的な燃料電池発電は、水素と酸素との吸熱反応を利用して電気エネルギーを作る発電方式であり、負荷変動に対する応答が早い。
出題のポイント:燃料電池は発熱反応

太陽電池のインバータと連系保護、逆潮流による電圧上昇対策、小水力の流込み式、海底ケーブルの直流送電はいずれも正しい記述です。燃料電池では水素と酸素の反応から電気を直接取り出し、同時に熱も発生するため、吸熱反応とした(5)が誤りです。
誤りは(5):燃料電池は発熱反応

「水素と酸素との吸熱反応」——発熱反応が正しいです。
★熱が出る
水素が燃えれば熱が出ます——それは燃焼でも燃料電池でも同じです。
吸熱反応なら、外から熱を加えないと進みません——発電になりません。
| 燃焼 | ★燃料電池 | |
| 反応 | 同じ | ★同じ(発熱反応) |
| ★取り出し方 | ★熱→運動→電気 | ★電子を直接取り出す |
| ★効率の制約 | ★カルノー効率 | ★受けない |
| ★発電効率 | ★40 % 前後 | ★40〜60 % |
出た熱は捨てずに給湯へ回せる——総合効率80 % 前後になります。
問題文の「負荷変動に対する応答が早い」は正しい——回転機がないので追従が速いのです。
(3) 逆潮流による電圧上昇
分散型電源に特有の問題です。
| ふつうの需要家 | ★太陽光がある需要家 | |
| 電流の向き | 系統→需要家 | ★需要家→系統(逆潮流) |
| ★端子電圧 | ★下がる | ★上がる |
電流が逆に流れれば、電圧降下も逆向きになります——つまり電圧が上がるのです。
上がりすぎると、他の需要家の機器に影響します——低圧は101±6 V に保つ義務があるからです。
| 対策 | 内容 |
| ★出力抑制 | ★パワーコンディショナが発電を絞る |
| ★電圧調整器(SVR) | ★配電線の途中で電圧を調整する |
| 無効電力制御 | 進み無効電力を取り込んで電圧を下げる |
| 柱上変圧器のタップ変更 | 変圧比を調整する |
問題文が挙げている2つは、いずれも実際の対策です。
(1)(2)(4) 残る記述
| 記述 | 内容 | 要点 |
| (1) | インバータで直流を交流に変換 | ★太陽電池は直流を出す |
| (2) | 連系保護装置で停電時に供給を止める | ★単独運転防止 |
| (4) | 小水力は流込み式/洋上風力は直流送電 | ★ケーブルでは誘電損が問題になる |
(4)の直流送電は、海底ケーブルの決め手——交流では静電容量による充電電流が大きすぎるのです。
直流なら誘電損も充電電流も生じません——長距離の海底送電が成り立ちます。
小水力の流込み式は、貯水池を持たず川の流れをそのまま使う方式——用水路にも設置できます。
⚠️ よくある間違い
(5)の「負荷変動に対する応答が早い」だけを見て正しいと判断する——そこは正しいのです。誤りは「吸熱反応」の1語。
(1)の「インバータ」を疑ってしまう——直流→交流の変換はインバータで正しい。
(3)の「出力抑制」を疑ってしまう——実際に行われています。
(4)の「誘電損を考慮しなくてよい」を疑ってしまう——直流では誘電損が生じません。
化学の基本に立ち返る——水素が燃えて熱が出るのは当たり前です。
⏱️ 本番での進め方
①★燃料電池は発熱反応。吸熱では発電にならない。
②★逆潮流があると系統電圧は上がる。
③対策は出力抑制・電圧調整器・無効電力制御。
④★直流送電なら誘電損も充電電流も生じない。
💡 覚え方
「水素が燃えれば熱が出る」——燃料電池も同じ発熱反応です。違うのは、熱を経ずに電子を直接取り出すこと——だから効率が高いのです。
燃料電池の記述は平成28年度 A問題5(新エネルギー:各種発電)にもあります。
分散型電源とは何か
本問の主題である「分散型電源」を整理しましょう。
| 集中型電源 | ★分散型電源 | |
| 例 | 大規模火力・原子力・大水力 | ★太陽光・小水力・燃料電池・コージェネ |
| ★規模 | ★数十万〜百万 kW | ★数 kW〜数千 kW |
| ★つなぐ場所 | ★超高圧の基幹系統 | ★配電系統(低圧・高圧) |
| ★電気の流れ | ★上流から下流へ一方向 | ★逆流することがある |
配電系統は、もともと一方向に流すものとして作られました——だから逆潮流は想定外だったのです。
そこに分散型電源がつながると、さまざまな調整が必要になる——本問の(2)(3)がその話です。
小水力発電
1,000 kW 以下を小水力と呼ぶことが多い——用水路や上下水道にも設置できます。
流込み式なら貯水池が要らない——だから小規模でも成り立つのです。
流量が季節で変わっても、年間を通じて安定して発電できる——設備利用率は60 % 前後になります。
(4) 海底ケーブルに直流を使う理由
交流では長い海底ケーブルが成り立ちません。
| 交流 | ★直流 | |
| ★充電電流 | ★静電容量に応じて流れる | ★流れない |
| ★誘電損 | ★生じる | ★生じない |
| ★導体の本数 | ★3本 | ★2本 |
| 変換設備 | 不要 | 両端に必要(高価) |
ケーブルは架空線より静電容量が数十倍大きい——導体と外皮が近いからです。
交流では、その静電容量に充電電流が流れ続けます——長くなるほど増え、送れる電力を食いつぶします。
直流なら電圧が一定なので、充電電流が流れません——誘電体の分極も動かないので誘電損もゼロです。
だから長距離の海底送電は直流一択——洋上風力の系統連系でも使われます。
変換設備が要るという代償
両端に交直変換所が必要になります——建設費が高くつくのです。
だから短い距離では交流のほうが有利——ケーブルなら30〜50 km が分かれ目になります。
要点をもう一度
分散型電源をめぐる5つの記述です。
| 記述 | 話題 | 正誤 |
| (1) | インバータ | 正 |
| (2) | 連系保護装置 | 正 |
| (3) | 逆潮流と電圧上昇 | 正 |
| (4) | 小水力・洋上風力の直流送電 | 正 |
| ★(5) | ★燃料電池 | ★誤(吸熱→発熱) |
誤りは化学の基本に関わる1語だけ——「吸熱」を「発熱」に直せば正しくなります。
水素が酸素と結びつけば熱が出る——燃焼と同じ反応だからです。
燃料電池が発電と呼ばれる理由
「電池」という名前ですが、蓄えるわけではありません。
燃料を供給し続けるかぎり発電し続ける——だから発電装置です。
乾電池や蓄電池は、あらかじめ蓄えた分だけ——そこが決定的に違います。
(2) 連系保護装置が守るもの
停電時に供給を止める理由を、もう一度整理します。
| 守る対象 | 危険 |
| ★作業員 | ★切ったはずの配電線に電気が来て感電する |
| ★需要家の機器 | ★電圧・周波数が乱れたまま供給される |
| ★分散型電源自身 | ★復電時に位相が合わず過大な電流が流れる |
停電の復旧作業は、電気が来ていない前提で行われます——そこへ太陽光が電気を送り込めば、命に関わります。
だから系統が止まったことを検出して、自分も止まる——単独運転防止と呼ばれる機能です。
近年は蓄電池と組み合わせて、系統から切り離したうえで自立運転する方式も普及しました——停電時でも家の中では電気が使えます。
切り離してから使うので、系統には流れ込みません——安全は保たれています。
まとめ

| (1)太陽電池 | インバータ+連系保護装置→正しい |
| (2)逆潮流対策 | 出力抑制・電圧調整器→正しい |
| (3)小水力 | 流込み式が多い→正しい |
| (4)直流送電 | 誘電損を考慮しなくてよい→正しい |
| (5)燃料電池 | 発熱反応(吸熱は誤り)→誤り。答えは(5) |
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