今回は平成18年度 電力科目 問13、原子力ユニット最後の問題です。5.0gのウラン235の核分裂エネルギーの30%を電力量として取り出し、揚程200m・総合効率84%の揚水発電所で揚水できる水量を求めます。
平成29年度 A問題4(原子力13)の逆向きの問題。あちらは水量からウランを逆算しましたが、こちらはウラン→エネルギー→水量の順方向。E=mc²と揚水の式(9.8VH/η)の合わせ技という構図は同じです。
3段階で解く
核分裂のエネルギー → 電力量 → 揚水量——順にたどります。
| 段階 | やること | 使う値 |
| ★① | ★E=mc² | ★5.0 g、0.09 %、c²=9×1016 |
| ★② | ★電力量として取り出す | ★×0.30 |
| ★③ | ★揚水できる水量 | ★揚程200 m、効率84 % |
① 核分裂のエネルギー
★★忘れやすい
② 電力量として取り出す
★掛ける
発電の熱効率にあたる部分——取り出せるのは3割だけです。
平成18年度 電力科目 A問題13:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成18年度 第三種電気主任技術者試験」電力科目 問13
電験3種 電力科目 【原子力】 平成18年度 A問題13
原子力発電に用いられる5.0[g]のウラン235を核分裂させたときに発生するエネルギーを考える。上記エネルギーの30[%]を電力量として取り出すことができるものとする。揚程200[m]、揚水時の総合的効率を84[%]としたとき、揚水発電所で揚水できる水量[m³]の値として、最も近いのは次のうちどれか。
ただし、ウラン235の核分裂時の質量欠損は0.09[%]、光速はc=3.0×10⁸[m/s]とする。
(1)2.6×10⁴ (2)4.2×10⁴ (3)5.2×10⁴ (4)6.1×10⁴ (5)9.7×10⁴ m³

③ 揚水量を求める
揚水は損をする方向——理論値より多くの電気が必要です。
だから V について解くと、効率を掛ける形になります。
★約5.2×10⁴ m³
ウラン5 g で、52,000 m³ の水を200 m 持ち上げられる——25 m プール約150杯ぶんです。
2つの効率の向きに注意
本問には効率が2つ出てきます——向きが逆です。
| 効率 | 値 | 操作 | 理由 |
| ★電力量として取り出す割合 | ★30 % | ★掛ける | ★取り出せる分が減る |
| ★揚水の総合効率 | ★84 % | ★掛ける | ★同じ電気で汲める水が減る |
どちらも掛け算——「できることが減る」方向だからです。
揚水の効率は、発電のときなら「掛ける」、必要な電力量を求めるなら「割る」——何を求めるかで向きが変わります。
本問は「揚水できる水量」——効率が悪いほど汲める水は減るので掛け算です。
| 順 | やること | 注意 |
| ① | 核分裂する質量を求める | ★濃縮度が与えられたら掛ける |
| ② | 質量欠損=質量×0.0009 | 0.09 % |
| ③ | kg に直す | ★g のままだと1000倍ずれる |
| ④ | E=mc²(c²=9×1016) | 答えは J |
| ⑤ | 問われた形に換算する | ★発熱量で割る/効率を掛ける |
本問は①が不要(濃縮度なし)で、⑤が「効率を掛ける」形——燃料への換算ではありません。
⚠️ よくある間違い
質量を g のまま計算する——1000倍ずれます。E=mc² は kg で計算します。
30 % を掛け忘れる——1.7×105 m³ となり、選択肢にありません。
揚水効率84 % で割ってしまう——7.4×104 m³ となり、選択肢(5)の9.7×104 に近づきます。
「揚水できる水量」なので、効率が悪いほど少なくなる——掛けるのが正解です。
g を掛け忘れる(9.8)——桁が大きく外れます。
⏱️ 本番での進め方
①★5.0 g → 4.5×10-6 kg。kg に直す。
②★30 % を掛けて電力量にする。
③★V=Wη/(ρgH)。揚水効率は掛ける。
④「揚水できる水量」なので、効率が悪いほど減る。
💡 覚え方
「できることが減る方向なら掛ける」——2つの効率とも掛け算です。E=mc² から始めて、効率を2回掛け、ρgH で割る——それだけで答えが出ます。
揚水発電の計算は平成28年度 A問題1(水力:揚水発電所の発電出力・揚水入力)、E=mc² の基本は令和元年度 A問題4(原子力:E=mc²で石炭換算)にあります。
揚水発電と組み合わせる意味
本問は原子力と揚水を結びつけた問題——実際の運用とも関係します。
| 時間帯 | 原子力 | 揚水 |
| ★夜間 | ★一定出力で運転し続ける | ★余った電気で水を汲み上げる |
| ★昼のピーク | ★一定出力のまま | ★汲み上げた水で発電する |
原子力は出力を頻繁に変える運転に向きません——だから一定出力で運転し続けるのです。
夜間は需要が少ないので電気が余ります——それを揚水で貯めることになります。
揚水発電所は「原子力とセット」で建設された——そうした歴史的な経緯があります。
近年は昼の太陽光の余剰を汲み上げることも増えました——役割が変わりつつあると言えます。
52,000 m³ という水量
★2.8×10⁴ kW·h
ウラン5 g で28,000 kW·h ぶんの水を汲み上げられる——一般家庭7年分にあたります。
揚水で失う分を差し引いても、これだけの量——核燃料のエネルギー密度がいかに高いかが分かります。
揚水の効率84 % の内訳
総合効率84 % は、いくつかの損失の積です。
| 要素 | 効率の目安 | 損失の中身 |
| 電動機 | 約98 % | 銅損・鉄損 |
| ポンプ | 約90 % | 羽根車の摩擦・渦 |
| ★水路(損失水頭) | ★約95 % | ★管の摩擦 |
| ★総合 | ★約84 % | ★0.98×0.90×0.95 |
0.98×0.90×0.95=0.838——ほぼ問題の84 % と一致します。
発電するときも同じだけ損をします——往復すると0.84×0.84=0.71。
つまり揚水発電の総合効率は70 % 前後——3割は捨てていることになります。
それでも成り立つのは、夜間の安い電気を昼の高い電気に変えられる——価値の差が損失を上回るからです。
なぜ揚水では効率を掛けるのか
「揚水できる水量」を求めています——効率が悪ければ汲める水は減るのです。
逆に「必要な電力量」を求めるなら、効率で割ります——効率が悪いほど余計に要るから。
求めるものが増えるか減るかで、掛けるか割るかが決まる——公式を覚えるより確実です。
まとめ
| 質量欠損 | 5.0×10⁻³×0.0009=4.5×10⁻⁶kg |
| エネルギー | E=4.5×10⁻⁶×9×10¹⁶=4.05×10¹¹J |
| 電力量 | ×0.30=1.215×10⁸kJ |
| 水量 | V=1.215×10⁸×0.84/(9.8×200)≒5.2×10⁴m³ |
| 答え | (3)(効率は掛ける——逆算のH29問4では割る) |
▼あわせて解きたい関連問題
・E=mc²と揚水の融合・逆算版(原子力13):【電力】平成29年度 A問題4
・この年度の問題を通しで解く:電験3種 平成18年度 問題一覧(全4科目)

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