今回は令和7年度下期 電力科目 A問題5を解説します。中小水力や風力発電に使用されている誘導発電機について、同期発電機と比較した記述から誤っているものを選ぶ問題です。
誘導発電機はかご形誘導電動機と同じ構造を発電機として使うもの。長所は「簡単・安い・操作が楽」、短所は「単独運転できない」「並列時の突入電流が大きい」。長所と短所を1つずつ入れ替えるのがこのテーマの定番です。
令和7年度下期 電力科目 A問題5:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和7年度下期 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題5
電験3種 電力科目 【新エネルギー】 令和7年度下期 A問題5
中小水力や風力発電に使用されている誘導発電機の特徴について、同期発電機と比較した記述として、誤っているものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
構造が簡単で、励磁装置が不要である。
始動、系統への並列などの運転操作が簡単である。
回転磁界と回転子の速度に差がある。
単独で発電することができず、電力系統に並列して運転する必要がある。
系統への並列時の突入電流が小さい。
出題のポイント:誘導発電機は系統に頼る

誘導発電機は、励磁用の無効電力を系統から受けます。そのため構造と並列操作は簡単ですが、単独発電はできず、接続直後には磁束を立ち上げる大きな突入電流が流れます。
誤りは(5):突入電流は大きい
誘導発電機は、系統につなぐ瞬間に大きな電流が流れます。
| ★誘導発電機 | ★同期発電機 | |
| ★励磁 | ★系統から無効電力をもらう | ★自分の界磁で作る |
| ★励磁装置 | ★不要 | ★必要 |
| ★並列の手順 | ★簡単 | ★電圧・位相・周波数を合わせる |
| ★突入電流 | ★大きい | ★小さい(合わせてからつなぐ) |
| ★単独運転 | ★できない | ★できる |
誘導発電機は、つないだ瞬間に励磁電流が流れ込みます——定格の5〜7倍にもなります。
誘導電動機を始動したときと同じこと——磁束を立ち上げるための電流です。
だから軟始動装置を入れて抑えます——サイリスタで徐々に電圧を上げるのです。
同期発電機なら、電圧・位相・周波数を合わせてからつなぐ——だから突入電流が生じません。
解法の原理:励磁・滑り・突入電流をつなげる

誘導発電機の特徴は、1点から導かれます。
| 特徴 | 理由 |
| ★(1) 構造が簡単・励磁装置が不要 | ★系統から無効電力をもらうから |
| ★(2) 運転操作が簡単 | ★位相を合わせる必要がないから |
| ★(4) 単独では発電できない | ★系統がないと励磁できないから |
「励磁を系統に頼る」——これがすべての出発点です。
頼るから装置が要らない、頼るから手順が簡単、頼るから単独では動けない——表裏一体になります。
停電すれば発電も止まる——単独運転防止が自動的に成り立つという利点もあります。
問題の解説:5つの記述を判定して(5)を選ぶ


誘導機は、回転磁界と回転子に速度差がないと働きません。
| 回転子の速度 | 滑り | 動作 |
| ★同期速度より遅い | ★正 | ★電動機として動く |
| ★同期速度と同じ | ★ゼロ | ★何も起きない |
| ★同期速度より速い | ★負 | ★発電機として動く |
風車が同期速度より速く回すと、発電機になります——同じ機械が両方に使えるのです。
滑りは−1〜−5 % 程度——速度差が風の変動を吸収してくれます。
だから風力や中小水力に向く——問題文の(3)は正しい記述です。
⚠️ よくある間違い
(5)の「突入電流が小さい」を正しいと判断する——実際は大きいのです。
「運転操作が簡単」という(2)から、突入電流も小さいと連想してしまう——手順の簡単さと電流の大きさは別です。
(1)の「励磁装置が不要」を疑ってしまう——系統からもらうので不要。
(3)の「速度に差がある」を疑ってしまう——滑りがなければ発電しません。
(4)の「単独で発電できない」を疑ってしまう——励磁できないので正しいです。
5つのうち4つが「簡単・不要」という利点——唯一の欠点が(5)になります。
⏱️ 本番での進め方
①★誘導発電機の突入電流は大きい。定格の5〜7倍。
②★すべての特徴は「励磁を系統に頼る」から導かれる。
③★同期速度より速く回すと発電機になる(滑りが負)。
④単独では発電できないので、単独運転防止になる。
💡 覚え方
「頼るから簡単、頼るから単独では動けない」——誘導発電機の特徴はすべて励磁が出発点です。唯一の欠点が並列時の突入電流——そこが問われました。
風力発電の発電機の種類は平成24年度 A問題5(新エネルギー:風力発電)にあります。
誘導発電機が無効電力を必要とする
(1)の「励磁装置が不要」には、代償があります。
| ★誘導発電機 | ★同期発電機 | |
| ★有効電力 | ★系統へ送る | ★系統へ送る |
| ★無効電力 | ★系統からもらう(遅れ) | ★送ることも受けることもできる |
| ★力率 | ★調整できない | ★調整できる |
磁束を作るための電流を、系統からもらいます——だから遅れ無効電力を消費するのです。
系統から見れば、電圧を下げる方向に働きます——大量につなぐと問題になるのです。
だから進相コンデンサを併設して補償します——力率を改善することになります。
最近の風力発電機は
近年は電力変換装置を介してつなぐ方式が主流です。
変換装置なら無効電力を自由に制御できる——むしろ系統の電圧安定化に貢献できます。
誘導発電機を直接つなぐ方式は、中小水力や小型風車に残る——設備が簡単で安いからです。
要点をもう一度
誘導発電機の特徴を、1枚で整理します。
| 記述 | 内容 | 正誤 |
| (1) | 構造が簡単・励磁装置不要 | 正 |
| (2) | 運転操作が簡単 | 正 |
| (3) | 回転磁界と回転子に速度差がある | 正 |
| (4) | 単独では発電できない | 正 |
| ★(5) | ★突入電流が小さい | ★誤(大きい) |
4つが利点、1つだけが欠点——その1つが誤りとして仕込まれています。
なぜ中小水力と風力に使われるのか
| 条件 | 誘導発電機が向く理由 |
| ★出力が小さい | ★励磁装置の費用が相対的に重い |
| ★無人運転 | ★並列の操作が簡単で自動化しやすい |
| ★原動力が変動する | ★滑りが変動を吸収する |
小さくて、無人で、変動する——中小水力と風力はまさにこの条件です。
同期発電機の並列手順
(2)の「操作が簡単」を理解するため、同期側を見ましょう。
| 合わせるもの | 合っていないと |
| ★電圧の大きさ | ★無効電流が流れ込む |
| ★周波数 | ★同期がとれず脱調する |
| ★位相 | ★大きな衝撃電流と機械的衝撃 |
| ★相回転の向き | ★短絡に近い状態になる |
4つすべてを合わせてから遮断器を投入します——同期投入と呼ばれる操作です。
誘導発電機なら、これらを合わせる必要がありません——つないでから回転を上げればよいのです。
だから(2)の「運転操作が簡単」——無人の小規模発電所に向く理由になります。
それでも突入電流は流れる
手順が簡単なことと、電流が小さいことは別です。
つないだ瞬間、磁束を立ち上げるための電流が流れ込む——定格の5〜7倍になります。
系統の電圧が一時的に下がるので、軟始動装置で抑えるのが一般的です。
誘導発電機の滑りと出力
(3)の速度差が、そのまま出力を決めます。
| 滑り | 回転速度 | 出力 |
| ★0 | ★同期速度 | ★ゼロ |
| ★−1 % | ★同期速度の1.01倍 | ★小さい |
| ★−5 % | ★同期速度の1.05倍 | ★定格 |
速く回すほど発電量が増えます——けれども滑りは数 % の範囲です。
風が強くなれば回転が速まり、自然に出力が増える——制御しなくても追従します。
この柔らかさが、変動する原動力に向く理由——同期機では速度を固定するしかありません。
その代わり、回転速度をほとんど変えられない——可変速運転には電力変換装置が要ります。
まとめ
| (1)構造 | かご形で簡単・励磁装置不要→正しい |
| (2)運転操作 | 同期投入が不要で簡単→正しい |
| (3)すべり | 回転磁界と回転子の速度に差がある→正しい |
| (4)単独運転 | できない(励磁を系統からもらう)→正しい |
| (5)突入電流 | 並列時は大きい(小さいは逆)→誤り。答えは(5) |
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