今回は平成28年度 電力科目 A問題2を解説します。発電所に用いられる同期発電機である水車発電機とタービン発電機の特徴(回転子の形式、鉄機械・銅機械、短絡比と同期インピーダンス)の空欄を補充する問題です。
水車発電機は低速で磁極を多くとる突極機、タービン発電機は高速で遠心力に耐える円筒機。そして鉄機械(水車発電機)は短絡比が大きく同期インピーダンスが小さい——この2軸で整理すると解けます。
平成28年度 電力科目 A問題2:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成28年度 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題2
電験3種 電力科目 【水力】 平成28年度 A問題2
次の文章は、発電所に用いられる同期発電機である水車発電機とタービン発電機の特徴に関する記述である。水力発電所に用いられる水車発電機は直結する水車の特性からその回転速度はおおむね100min⁻¹〜1200min⁻¹とタービン発電機に比べ低速である。したがって、商用周波数50/60Hzを発生させるために磁極を多くとれる(ア)を用い、大形機では据付面積が小さく落差を有効に使用できる立軸形が用いられることが多い。タービン発電機に比べ、直径が大きく軸方向の長さが短い。
一方、火力発電所に用いられるタービン発電機は原動機である蒸気タービンと直結し、回転速度が水車に比べ非常に高速なため2極機又は4極機が用いられ、大きな遠心力に耐えるように、直径が小さく軸方向に長い横軸形の(イ)を採用し、その回転子の軸及び鉄心は一体の鍛造軸材で作られる。
水車発電機は、電力系統の安定度の面及び負荷遮断時の速度変動を抑える点から発電機の経済設計以上のはずみ車効果を要求される場合が多く、回転子直径がより大きくなり、鉄心の鉄量が多い、いわゆる鉄機械となる。一方、タービン発電機は、上述の構造のため界磁巻線を施す場所が制約され、大きな出力を得るためには電機子巻線の導体数が多い、すなわち銅量が多い、いわゆる銅機械となる。鉄機械は、体格が大きく重量が重く高価になるが、短絡比が(ウ)、同期インピーダンスが(エ)なり、電圧変動率が小さく、安定度が高く、(オ)が大きくなるといった利点をもつ。上記の記述中の空白箇所(ア)〜(オ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(ア) (イ) (ウ) (エ) (オ) (1) 突極機 円筒機 大きく 小さく 線路充電容量 (2) 円筒機 突極機 大きく 小さく 線路充電容量 (3) 突極機 円筒機 大きく 小さく 部分負荷効率 (4) 円筒機 突極機 小さく 大きく 部分負荷効率 (5) 突極機 円筒機 小さく 大きく 部分負荷効率

水車発電機とタービン発電機
同じ同期発電機でも、原動機が違えば形がまるで変わります——すべては回転速度から決まるのです。
| ★水車発電機 | ★タービン発電機 | |
| 回転速度 | ★100〜1,200 min-1 | ★3,000/3,600 min-1 |
| 極数 | ★多極 | ★2極・4極 |
| 回転子 | ★突極機 | ★円筒機 |
| 軸 | 立軸が多い | 横軸 |
| 形 | ★直径大・軸長短 | ★直径小・軸長長 |
低速だから多極、多極だから直径が大きい——磁極を円周に並べる必要があるからです。その結果、平たい形になり、立軸で据えるのが自然になります。
タービン発電機は毎分3,000回転——直径を大きくすると遠心力に耐えられません。だから細長い円筒形——回転子は一体の鍛造材で作られるのもそのためです。
(ウ)(エ)(オ) 鉄機械と銅機械
本問の後半は、同期機の特性の話——短絡比と同期インピーダンスは互いに逆数の関係です。
| ★鉄機械 | 銅機械 | |
| 該当 | ★水車発電機 | タービン発電機 |
| 多いもの | ★鉄(鉄心) | ★銅(巻線) |
| 短絡比 | ★大きい(0.8〜1.2) | 小さい(0.5〜0.7) |
| 同期インピーダンス | ★小さい | 大きい |
| 電圧変動率 | ★小さい | 大きい |
| 安定度 | ★高い | 低い |
| 体格・価格 | ★大きく高価 | 小さく安価 |
なぜ短絡比が大きいと同期インピーダンスが小さいのか——短絡比とは「無負荷で定格電圧を出す界磁電流」÷「短絡時に定格電流を流す界磁電流」。インピーダンスが小さければ、わずかな界磁で定格電流が流れるので、比は大きくなります。
同期インピーダンスが小さいと、負荷をかけても電圧が下がりにくい——だから電圧変動率が小さい。また同期化力が大きく、系統から脱調しにくい=安定度が高いことになります。
(オ) 線路充電容量とは
送電線には静電容量があり、無負荷でも進み電流が流れます——これが充電電流です。
進み電流を流すと、発電機の電圧は上がろうとします(自己励磁)——制御できなくなるおそれがあるのです。
短絡比が大きい機ほど、この進み電流に耐えられます——つまり長い送電線を無負荷で充電できる。それが「線路充電容量が大きい」という利点になります。
選択肢の「効率」ではありません——鉄機械は体格が大きいぶん、効率がとくに高いわけではないのです。短絡比が大きいことの利点は、電圧変動・安定度・充電容量の3つだと押さえてください。
⚠️ よくある間違い
(ウ)(エ)を逆にしてしまう——短絡比と同期インピーダンスは逆数の関係です。
「鉄機械=短絡比が大きい=同期インピーダンスが小さい」——3つがセットで動きます。1つ決まれば残りも決まるので、覚えるのは1つで足ります。
(ア)(イ)を逆にする選択肢——「磁極を多くとれる」のが突極機です。円筒機は2〜4極——問題文の「磁極を多くとれる(ア)」が手がかりになります。
(ア)と(ウ)の2欄で確定します。
⏱️ 本番での進め方
①(ア)(イ) 低速多極=突極機、高速2〜4極=円筒機。
②(ウ)(エ)★鉄機械は短絡比が大きく同期インピーダンスが小さい。
③Ks≒1/Zs[p.u.]。逆数の関係。
④(オ)★利点は電圧変動小・安定度高・線路充電容量大。
💡 覚え方
「鉄機械は短絡比が大きい」——ここから同期インピーダンス小、電圧変動率小、安定度高がすべて導けます。水車発電機=低速=多極=突極=鉄機械——一本の鎖でつながっています。
多極になる理由は平成20年度 A問題1(水力:水車発電機が多極になる理由)にあります。
はずみ車効果と速度変動
水車発電機が「直径大・軸長短」であることには、もう一つ意味があります——回転部分が重く、慣性が大きいのです。
D が2乗で効く——直径が大きい水車発電機は、GD2 が非常に大きくなります。
| ★水車発電機 | タービン発電機 | |
| GD2 | ★大きい | 小さい |
| 負荷変動時の速度変化 | ★小さい(安定) | 大きい |
| 事故時の速度上昇 | ★穏やか | 急激 |
負荷が急に切れても、重い回転子はすぐには加速しません——調速機が働くまでの時間を稼いでくれるのです。
水車発電機の GD2 を、あえて標準より大きく設計することもあります——系統の安定に貢献させるためです。
立軸と横軸
水車発電機が立軸なのは、平たい形だから——横に寝かせると軸受にかかる荷重が偏ります。
立軸なら重さを下のスラスト軸受で受けられる——水車を下、発電機を上に配置できるのも都合がよい点です。
タービン発電機は細長いので横軸——タービンと同じ軸線上に並べるのが自然になります。
空欄の絞り込み手順
5つの空欄がありますが、2つで確定します。
| 確定させる欄 | 正しい語 | 残る選択肢 |
| (ア) | 突極機 | ★(1)(2)(4) |
| (ウ) | 大きく | ★(1)に確定 |
(ア)は「磁極を多くとれる」水車発電機の回転子——突極機 です。円筒機は2〜4極しか作れません。これで2つ落ちます。
(ウ)は鉄機械の短絡比——大きい。短絡比が大きいことが鉄機械の定義そのものですから、2手で確定します。
(エ)(オ)で裏を取る
(エ)は同期インピーダンス——短絡比の逆数ですから小さい。(ウ)と(エ)が同じ向きになっている選択肢は、その時点で誤りです。
(オ)は鉄機械の利点——線路充電容量が大きい。「効率」とする選択肢もありますが、体格が大きいことが効率に直結するわけではありません。
短絡比から3つの特性が導ける
| 短絡比が大きい | 導かれること | 理由 |
| ★同期インピーダンス小 | Ks≒1/Zs | 定義から直接 |
| ★電圧変動率小 | 負荷をかけても電圧が下がりにくい | 内部インピーダンス降下が小さい |
| ★安定度高 | 脱調しにくい | 同期化力が大きい |
| ★線路充電容量大 | 長い送電線を充電できる | 進み電流に耐えられる |
覚えるのは「鉄機械=短絡比が大きい」の一言だけ——あとはすべてここから導けます。
同期発電機は原動機で決まる
本問の前半と後半は、実は同じことを言っています——低速だから多極、多極だから鉄機械という一本の流れです。
水車は低速でしか回らない → 極数を増やす → 直径が大きくなる → 鉄心が増える → 鉄機械 → 短絡比が大きい——すべてが原動機の回転速度から始まっています。
まとめ
| (ア) | 水車発電機=低速多極→突極機 |
| (イ) | タービン発電機=高速→円筒機(横軸) |
| (ウ) | 鉄機械は短絡比が大きく |
| (エ) | 同期インピーダンスが小さい |
| (オ) | 線路充電容量が大きい→(1) |
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