水力28【電験3種 電力】理論水力P=ρgQHの単位検証(力N→仕事J→動力W→kW)!平成27年度 A問題1 完全解説

電験3種 電力科目 水力 平成27年度 A問題1 単位を追えば式が見える!理論水力の組み立て

今回は平成27年度 電力科目 A問題1を解説します。水力発電所の理論水力P=ρgQHの単位を、力(N)→仕事(J)→動力(W)と順に検証していく空欄補充問題です。★水力3(令和7年度上期A問題1)と同じ内容の再出題ですが、選択肢の並びが異なるため答えの番号も違います(令和7年度上期は(2)、本問は(5))。

ρ[kg/m³]・g[m/s²]・Q[m³/s]・H[m]の単位の積を整理すると、力の単位N(=kg·m/s²)、仕事の単位J(=N·m)、動力の単位W(=J/s)と結び付きます。数値9.8×1000を考慮するとP=9.8QH[kW]です。

目次

平成27年度 電力科目 A問題1:問題文と選択肢

まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

電験3種 電力科目 水力 平成27年度 A問題1 問題文
平成27年度 電力科目 A問題1 問題文

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成27年度 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題1

電験3種 電力科目 【水力】 平成27年度 A問題1

 水力発電所の理論水力Pは位置エネルギーの式からP=ρgQHと表される。ここでH[m]は有効落差、Q[m³/s]は流量、g=9.8m/s²は重力加速度、ρ=1000kg/m³は水の密度である。以下に理論水力Pの単位を検証することとする。なお、Paは「パスカル」、Nは「ニュートン」、Wは「ワット」、Jは「ジュール」である。P=ρgQHの単位はρ・g・Q・Hの単位の積であるから、kg/m³·m/s²·m³/s·mとなる。これを変形すると(ア)·m/sとなるが、(ア)は力の単位(イ)と等しい。すなわちP=ρgQHの単位は(イ)·m/sとなる。ここで(イ)·mは仕事(エネルギー)の単位である(ウ)と等しいことからP=ρgQHの単位は(ウ)/sと表せ、これは仕事率(動力)の単位である(エ)と等しい。ゆえに理論水力P=ρgQHの単位は(エ)となるが、g=9.8m/s²とρ=1000kg/m³の数値9.8と1000を考慮するとP=9.8QH[(オ)]と表せる。上記の記述中の空白箇所(ア)〜(オ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。

(ア)(イ)(ウ)(エ)(オ)
(1)kg·mPaWJkJ
(2)kg·m/s²PaJWkW
(3)kg·mNJWkW
(4)kg·m/s²NWJkJ
(5)kg·m/s²NJWkW

9.8QH の「9.8」はどこから来たのか

本問の(オ)が問うているのは、まさにそこ——数値を追えば答えが出ます

\( P=\rho gQH=1000\times 9.8\times QH \)
数値を入れると
9800QH [W]
\( =9.8\times 10^3 QH\ [\mathrm{W}] \)
10³ をくくり出す
★10³ W = kW
\( =9.8QH\ [\mathrm{kW}] \)
kW で表すと
★おなじみの式

ρ=1000 の「1000」が、そのまま k(キロ)に化けている——だから単位は kWです。

kJ ではありません——J は仕事、W は仕事率発電所の出力は仕事率ですから W 系の単位になります。

この「1000 が k に化ける」現象は、電力科目のあちこちで出てきます——数値と単位の接頭語は行き来すると覚えておきましょう。

(ア)〜(エ) 単位を組み立て直す

空欄正しい単位根拠
(ア)kg·m/s2★元の式から m/s をくくり出した残り
(イ)N★力の単位。N=kg·m/s2
(ウ)J★仕事の単位。J=N·m
(エ)W★仕事率の単位。W=J/s
(オ)kW★1000 が k に化ける
\( \dfrac{\mathrm{kg}}{\mathrm{m^3}}\cdot\dfrac{\mathrm{m}}{\mathrm{s^2}}\cdot\dfrac{\mathrm{m^3}}{\mathrm{s}}\cdot\mathrm{m} \)
4つの単位を掛ける
m³ が約分される
\( =\dfrac{\mathrm{kg\cdot m^2}}{\mathrm{s^3}}=\dfrac{\mathrm{kg\cdot m}}{\mathrm{s^2}}\cdot\dfrac{\mathrm{m}}{\mathrm{s}} \)
m/s をくくり出す
★(ア)=kg·m/s²

N→J→W と一段ずつ上がっていくのが本問の骨格——力に距離を掛ければ仕事、仕事を時間で割れば仕事率です。

答え正解は (5)——(ア)kg·m/s2 (イ)N (ウ)J (エ)W (オ)kW です。

⚠️ よくある間違い
(イ)を Pa としてしまう——Pa は圧力の単位です。問題文が「力の単位」と明記しているので N。
Pa=N/m2——力を面積で割ったものですから、力そのものではありません。
(ウ)(エ)を逆にしてしまう——J が仕事、W が仕事率問題文の「(ウ)/s と表せ、これは仕事率」という流れを追えば、(ウ)は J だと分かります。
(オ)を kJ としてしまう——(エ)が W なら、その1000倍は kW(エ)と(オ)は同じ系統の単位でなければ辻褄が合いません。

⏱️ 本番での進め方
①(イ)は「力の単位」と明記。N 一択。
②N→J→W の3段を追う。掛ける m、割る s。
③(オ)★1000 が k に化けるので kW。
④(エ)と(オ)は同じ系統(W と kW)でそろう。

💡 覚え方
「N に m を掛けて J、J を s で割って W」——この3段だけで(イ)(ウ)(エ)が決まりますそして ρ の1000が k になって kW

同じ趣旨の問題が令和7年度上期 A問題1にあります(水力:理論水力P=ρgQHの単位検証)。選択肢の並びが違うだけで、内容はほぼ同一です。

P=9.8QHη の使いどころ

導いた式は、そのまま計算問題の道具になります——電力科目の水力では、ほぼ毎年これを使うのです。

水力発電の出力
\( P=9.8\,QH\eta\ [\mathrm{kW}] \)

Q:流量[m³/s] H:有効落差[m] η:総合効率

問われ方変形
出力を求めるP=9.8QHη
★流量を求める★Q=P/(9.8Hη)
★落差を求める★H=P/(9.8Qη)
電力量を求めるW=Pt[kW·h]

η を掛けるか割るかで迷ったら、大小を確かめる——効率は1より小さいので、掛ければ小さく、割れば大きくなります

発電所の出力は理論水力より小さいはずですから、発電では掛ける——逆に揚水(ポンプ)では割ることになります。

桁の感覚を持っておく

\( P=9.8\times 10\times 100\times 0.85\ \fallingdotseq\ 8\,330\ [\mathrm{kW}] \)
流量10 m³/s・落差100 m なら
★約8 MW

「流量×落差×10」でおよその kW——暗算の目安になります。計算結果がこの桁から大きく外れたら、単位換算を疑いましょう

単位から式の形を推測する

本問の逆をたどれば、公式を忘れても組み立て直せます——次元解析と呼ばれる手法です。

求めたいもの単位使える量
出力 PW=kg·m2/s3ρ, g, Q, H

ρ[kg/m³]・g[m/s²]・Q[m³/s]・H[m] を掛け合わせて W にする——組み合わせは1通りしかありません

\( \mathrm{kg/m^3}\times\mathrm{m/s^2}\times\mathrm{m^3/s}\times\mathrm{m} \)
4つを掛ける
\( =\mathrm{kg\cdot m^2/s^3}=\mathrm{W} \)
整理する
★確かに W になる

もし ρgQ だけなら kg·m/s³ で、W になりません——H が必要だと分かります

逆に ρgQH² としたら m が1つ多い——単位が合わないので誤りだと判定できます。

次元解析で分からないこと

効率 η は無次元——掛けても割っても単位は変わりません

1/2 や 2π といった数係数も同じ——単位だけでは決められないのです。

「単位が合っている」は必要条件であって十分条件ではない——検算には使えても、それだけで正しいとは言えません

それでも、選択肢を絞るには十分強力——単位が合わないものは、その場で切り捨てられるからです。

単位を追う問題が出る理由

公式を丸暗記しているだけでは解けない——そこを試しているのでしょう。

P=9.8QH を「9.8を掛ける式」として覚えていると、9.8が重力加速度だと気づけません——本問はその中身を分解させています

成り立ちを知っていれば、条件が変わっても対応できます——たとえば海水(ρ≒1030)なら、9.8ではなく10.1になるのです。

まとめ

ρgQHの単位kg·m²/s³=(kg·m/s²)(m/s)
(ア)(イ)kg·m/s²=N(力)
(ウ)N·m=J(仕事)
(エ)J/s=W(動力)
(オ)P=9.8QH[kW]→(5)

▼あわせて解きたい関連問題
・理論水力P=ρgQHの単位検証(水力3・同内容の令和7年度上期):【電力】令和7年度上期 A問題1

・この年度の問題を通しで解く:電験3種 平成27年度 問題一覧(全4科目)

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