今回は令和7年度上期 電力科目 A問題1を解説します。水力発電所の理論水力P=ρgQHの単位を、力(N)→仕事(J)→動力(W)と順に検証していく空欄補充問題です。
ρ[kg/m³]・g[m/s²]・Q[m³/s]・H[m]の単位の積を整理すると、力の単位N(=kg·m/s²)、仕事の単位J(=N·m)、動力の単位W(=J/s)と結び付きます。数値9.8×1000を考慮するとP=9.8QH[kW]です。
出題のポイント:力・仕事・仕事率の単位をつなぐ

理論水力ρgQHの単位を基本単位へ分解し、力N、仕事J、仕事率Wの順につなぎます。最後に1000 W=1 kWを使って数値と単位をそろえ、選択肢を照合します。
令和7年度上期 電力科目 A問題1:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和7年度上期 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題1
電験3種 電力科目 【水力】 令和7年度上期 A問題1
水力発電所の理論水力Pは位置エネルギーの式からP=ρgQHと表される。ここでH[m]は有効落差、Q[m³/s]は流量、g=9.8m/s²は重力加速度、ρ=1000kg/m³は水の密度である。P=ρgQHの単位はρ・g・Q・Hの単位の積であるから、kg/m³·m/s²·m³/s·mとなる。これを変形すると(ア)·m/sとなるが、(ア)は力の単位(イ)と等しい。すなわちP=ρgQHの単位は(イ)·m/sとなる。ここで(イ)·mは仕事(エネルギー)の単位である(ウ)と等しいことからP=ρgQHの単位は(ウ)/sと表せ、これは仕事率(動力)の単位である(エ)と等しい。ゆえに理論水力P=ρgQHの単位は(エ)となるが、g=9.8m/s²とρ=1000kg/m³の数値9.8と1000を考慮するとP=9.8QH[(オ)]と表せる。上記の記述中の空白箇所(ア)〜(オ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(ア) (イ) (ウ) (エ) (オ) (1) kg·m Pa W J kJ (2) kg·m/s² N J W kW (3) kg·m/s² Pa J W kW (4) kg·m N J W kW (5) kg·m/s² N W J kJ
解法の原理:ρgQHをSI組立単位で分解する

本問は単位を順にたどるだけの問題——N →J →W という階段を知っていれば即答できます。
| 量 | 単位 | 組立 | 意味 |
| ★力 | ★N(ニュートン) | ★kg·m/s2 | 質量×加速度 |
| ★仕事 | ★J(ジュール) | ★N·m | 力×距離 |
| ★仕事率 | ★W(ワット) | ★J/s | 1秒あたりの仕事 |
「力に距離を掛ければ仕事、それを時間で割れば仕事率」——物理の基本そのものです。この3段を覚えていれば(ア)〜(エ)は自動的に決まります。
ρgQH の単位を分解する
★m3 が消える
★(ア)=kg·m/s2
★(イ)(ウ)(エ)
kg·m2/s3 をどう区切るか——m/s を外に出すと、残りが kg·m/s2=N になります。問題文が「(ア)·m/s となる」と誘導しているので、迷いようがありません。
(オ) なぜ kW なのか
★(オ)=kW
9,800 を9.8 にした分、単位が W から kW へ上がる——1,000倍を単位に押し込んだのです。kJ ではありません——もとが W(仕事率)なのですから、k を付けても kW です。
おなじみの P=9.8QH という式は、この操作から生まれています——9.8 は重力加速度、隠れている1,000 は水の密度。意味が分かれば忘れません。
⚠️ よくある間違い
(イ)を「Pa」としてしまう——選択肢(1)(3)がそれです。
Pa は圧力の単位で N/m2——力そのものではありません。問題文が「力の単位(イ)」と明記しているので、N 以外にあり得ません。
(ウ)(エ)を入れ替えた選択肢(5)——W が仕事で J が仕事率としており逆です。「ワット数」は電力=仕事率——日常語からも判断できます。
(オ)を kJ とする選択肢(1)(5)——もとが W なら k を付けても kW。単位の種類は変わりません。
⏱️ 本番での進め方
①N=kg·m/s2、J=N·m、W=J/s。この3段を覚える。
②ρgQH=kg·m2/s3 を m/s でくくれば N が出る。
③Pa は N/m2。力の単位ではない。
④★9.8QH は kW。もとがW なので kJ にはならない。
💡 覚え方
「力→仕事→仕事率」は「N→J→W」——距離を掛けてJ、時間で割ってW。P=9.8QH[kW] の9.8 は重力加速度、1,000(=k)は水の密度 です。
この式を使う計算問題は平成21年度 A問題1(水力:P=9.8QHη から流量を求める)にあります。
SI組立単位の作られ方
N も J も W も、基本単位から組み立てられたもの——成り立ちを知れば覚える必要がありません。
| 単位 | 定義 | 基本単位で書くと |
| N | 1 kg の物体に1 m/s2 の加速度 | kg·m/s2 |
| J | 1 N の力で1 m 動かす仕事 | kg·m2/s2 |
| W | 1秒間に1 J の仕事 | ★kg·m2/s3 |
| Pa | 1 m2 に1 N の力 | kg/(m·s2) |
ρgQH を計算した kg·m2/s3 は、W の定義そのもの——途中の変形をしなくても、最終形を見れば W だと分かります。
問題文が(ア)〜(エ)と段階を踏ませているのは、N→J→W のつながりを確認させるためでしょう。答えだけなら最後の形で判断できます。
電気の単位ともつながっている
W は電力の単位でもあります——P=VI。力学の仕事率と電力が同じ単位なのは偶然ではありません。
水の位置エネルギーが電気エネルギーに変わる——形は変わっても、単位は同じ W のまま。だから発電所の出力を kW で表せるのです。
次元解析は電力科目の武器になる
公式を忘れても単位から復元できる——本問はその練習そのものです。
| 場面 | 単位で確かめられること |
| ★式を忘れた | ★選択肢の単位が合うものだけ残す |
| 掛けるか割るか迷った | ★答えの単位になる向きが正しい |
| 桁がおかしい | k・M の付け忘れを発見できる |
たとえば流量を求める式で、効率を掛けるか割るか迷ったとします——効率は無次元なので単位では判断できません。そこは意味で考える必要があります。
一方、9.8 を掛け忘れたかどうかは単位では分かりませんが、桁で気づけます——約10倍のずれになるからです。
「単位で分かること」と「意味でしか分からないこと」を切り分ける——それができると検算が速くなります。
接頭語の扱い
| 接頭語 | 倍率 | 電力での例 |
| k(キロ) | 103 | ★kW(発電所の出力) |
| M(メガ) | 106 | MW(大型発電所) |
| G(ギガ) | 109 | GW(系統全体) |
1つ上がるごとに1,000倍——9.8QH[kW] を MW にしたければさらに1,000で割ることになります。問題文がどの単位で答えを求めているかを最初に確認してください。
問題の解説:空欄(ア)〜(オ)を順に決める


5つの空欄がありますが、2つで確定します。
| 確定させる欄 | 正しい値 | 残る選択肢 |
| (イ) | N | ★(2)(4)(5) |
| (エ) | W | ★(2)(4) |
| (ア) | kg·m/s2 | ★(2)に確定 |
「力の単位」と問題文に明記されている(イ)——N 以外にあり得ません。Pa は圧力なので、これで2つ落ちます。
次に(エ)「仕事率(動力)の単位」——W です。J は仕事なので(5)が落ちます。
最後に(ア)——kg·m か kg·m/s2 か。N=kg·m/s2 ですから、(イ)=N と等しくなるのは後者。3手で確定します。
まとめ
| ρgQHの単位 | kg·m²/s³=(kg·m/s²)(m/s) |
| (ア)(イ) | kg·m/s²=N(力) |
| (ウ) | N·m=J(仕事) |
| (エ) | J/s=W(動力) |
| (オ) | P=9.8QH[kW]→(2) |
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