今回は令和7年度下期 電力科目 A問題2を解説します。水力発電所の水圧管内における、単位体積当たりの水が保有している運動エネルギー[J/m³]を表す式を選ぶ問題です。
運動エネルギーは(1/2)mv²です。質量mを密度ρと体積で表し、単位体積(1m³)当たりにすると(1/2)ρv²になります。単位[J/m³]の次元からも確認できます。
令和7年度下期 電力科目 A問題2:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和7年度下期 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題2
電験3種 電力科目 【水力】 令和7年度下期 A問題2
水力発電所の水圧管内における単位体積当たりの水が保有している運動エネルギー[J/m³]を表す式として、正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。ただし、水の速度は水圧管の同一断面において管路方向に均一とする。また、ρは水の密度[kg/m³]、vは水の速度[m/s]を表す。
(1)(1/2)ρv2 (2)(1/2)ρ2v (3)2ρv (4)√(2ρv) (5)(1/2)ρ2v2
出題のポイント:単位体積当たりの運動エネルギー

運動エネルギーK=(1/2)mv²の質量mを、密度ρと体積Vの積に置き換えます。単位体積当たりにするため体積Vで割ると、(1/2)ρv²[J/m³]が得られます。
運動エネルギーを「単位体積当たり」に直す
問われているのは[J/m3]——1 m3 の水が持つ運動エネルギーです。ふつうの ½mv2 を、質量から密度に置き換えるだけになります。
おなじみの式
★密度×体積
★(1)
やっていることは m を ρ に書き換えただけ——v の指数も係数も変わりません。ρ2 や v の1乗になる理由がないのです。
解法の原理:質量を密度と体積で表す

迷ったら次元をそろえてみる——選択肢のうち[J/m3]になるのは1つだけです。
★これはPa
★一致
| 選択肢 | 式 | 単位 | 判定 |
| ★(1) | ½ρv2 | ★J/m3 | ★正 |
| (2) | ½ρ2v | kg2/(m5·s) | ✕ |
| (3) | 2ρv | kg/(m2·s) | ✕ |
| (5) | ½ρ2v2 | 単位が合わない | ✕ |
ρ が2乗になると kg が2つ出てきて、絶対に J にならない——指数を1つ確かめるだけで落とせます。公式を忘れても、次元解析で答えにたどり着ける問題です。
[J/m3]は圧力と同じ単位
単位体積当たりのエネルギーは、じつは圧力と同じ次元——J/m3=N/m2=Pa です。
だから ½ρv2 は「動圧」とも呼ばれます——流れが持つ圧力という見方ができるのです。
| 項 | 意味 | 水頭で書くと |
| p | 圧力(静圧) | 圧力水頭 p/(ρg) |
| ★½ρv2 | ★動圧(本問の量) | ★速度水頭 v2/(2g) |
| ρgz | 位置エネルギー | 位置水頭 z |
3つを ρg で割ると、おなじみの水頭[m]になります——エネルギーで書くか、高さで書くかの違いだけです。水力発電の問題は、この2つの表現を行き来することになります。
ペルトン水車は、位置水頭をすべて速度水頭に変える——つまり ρgz をすべて ½ρv2 にするということ。本問の式が、水車の原理そのものにつながっているのです。
⏱️ 本番での進め方
①½mv2 の m を ρ に置き換えるだけ。
②★単位[J/m3]で照合すれば公式を忘れても解ける。
③J/m3=Pa。½ρv2 は動圧とも呼ばれる。
④ρg で割ると速度水頭 v2/(2g) になる。
💡 覚え方
「単位体積当たりなら m を ρ に」——それだけで ½ρv2。迷ったら次元をそろえる——[kg/m3][m/s]2=[J/m3] です。
この速度水頭を使う水車が衝動水車です(水力:衝動水車は位置水頭を速度水頭に変える)。
問題の解説:基本式と単位解析で選択肢(1)を確定


ダムに溜まった水が電気になるまで——エネルギーの形が次々に変わっていきます。
| 場所 | エネルギーの形 | 式 |
| 貯水池 | ★位置エネルギー | ρgz |
| 水圧管の中 | 圧力+運動エネルギー | p+½ρv2 |
| ★ノズル出口 | ★運動エネルギーのみ | ★½ρv2 |
| ランナ | 回転の運動エネルギー | — |
| 発電機 | 電気エネルギー | — |
本問が扱う ½ρv2 は、この鎖の途中にある量——水圧管の中を流れる水が持っている運動エネルギーです。
水圧管の上流では圧力が高く流速は遅い——ノズルに近づくほど圧力が下がり、流速が上がる。合計は一定に保たれます(ベルヌーイ)。
だから同じ管の中でも、場所によって ½ρv2 の値は変わります——問題文が「同一断面において管路方向に均一」と断っているのは、断面内で流速のばらつきを考えなくてよい、という意味です。
水頭とエネルギーの対応をそろえる
水力の問題では、同じことを3通りの単位で書きます——どれも中身は同じです。
| 表し方 | 速度の項 | 単位 | 使う場面 |
| ★単位体積当たり | ★½ρv2 | ★J/m3=Pa | ★本問。圧力と比べたいとき |
| 単位質量当たり | ½v2 | J/kg | 流体力学 |
| 水頭(高さ) | v2/(2g) | m | 水力発電の実務 |
ρ で割れば単位質量当たり、さらに g で割れば水頭——順に割っていくだけです。
「速度水頭 v2/(2g)」という形が電力科目では最頻出——本問の ½ρv2 を ρg で割ったものだと分かれば、2つの式が別物ではないと納得できます。
流速はどれくらいか
有効落差100 m の水圧管なら、ノズル出口の流速はどれくらいでしょうか。
★時速158 km
秒速44 m=時速158 km——かなりの高速です。この噴流がバケットを叩いて発電機を回していることになります。
水圧管の設計に関わる量
½ρv2 は、水圧管を設計するうえでも重要な量です。
| 観点 | 内容 |
| 管を細くすると | ★流速が上がり、摩擦損失が増える |
| 管を太くすると | 損失は減るが、建設費が上がる |
| 実際の流速 | ★3〜6 m/s 程度に抑える |
摩擦損失は流速の2乗に比例します——速度を2倍にすると損失は4倍。だから水圧管の中では流速をあまり上げません。
速度を上げるのはノズルの中だけ——管の中はゆっくり運び、出口で一気に加速するという設計になります。本問が「水圧管内」の運動エネルギーを問うているのは、この区間ではまだ速度が小さいことを踏まえた設定だと言えます。
動圧と静圧を足すと一定になる
| 項 | 呼び名 | 単位 |
| \( p \) | ★★静圧 | ★★Pa |
| \( \tfrac{1}{2}\rho v^{2} \) | ★★動圧 | ★★Pa |
| \( \rho gh \) | ★★位置圧 | ★★Pa |
3つの項はすべて〔Pa〕=〔J/m³〕で、単位がそろっています——だから足し算ができるのです。
水圧管を下るほど位置圧が減り、その分だけ静圧と動圧が増えていきます——合計は変わらないのです。
本問の1/2ρv² は、この動圧そのものです。
まとめ
| 運動エネルギー | K=(1/2)mv² |
| m→ρ(単位体積) | m=ρV、V=1m³でm=ρ |
| 単位体積当たり | (1/2)ρv²[J/m³] |
| 単位確認 | [kg/m³][m/s]²=J/m³ |
| 答え | (1) |
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