水力5【電験3種 電力】水力発電の誤り判定(カプラン水車・主変圧器の結線・磁極数)!令和6年度下期 A問題1 完全解説

電験3種 電力科目 水力 令和6年度下期 A問題1 カプラン水車と主変圧器の結線!誤りはどれ?

今回は令和6年度下期 電力科目 A問題1を解説します。水力発電に関する5つの記述(電圧・周波数の制御、カプラン水車、主変圧器の結線、ペルトン水車、磁極数)のうち、誤っているものを選ぶ問題です。

発電所の主変圧器は発電機側Δ・系統側YのΔ-Y昇圧が一般的です。系統側Yは中性点接地のため、発電機側Δは第3調波を環流させるためで、この向きを逆にしないことがポイントです。

出題のポイント:水力発電設備の正誤判定

水力発電設備の正誤判定で確認する要点図
調速機・水車・変圧器結線・磁極数の基本を順番に確認します。

水力発電設備の基本事項を一つずつ確認し、主変圧器の一般的な結線と中性点接地の目的から誤りを判定します。

目次

令和6年度下期 電力科目 A問題1:問題文と選択肢

まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

電験3種 電力科目 水力 令和6年度下期 A問題1 問題文
令和6年度下期 電力科目 A問題1 問題文

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和6年度下期 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題1

電験3種 電力科目 【水力】 令和6年度下期 A問題1

 水力発電に関する記述として、誤っているものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。

(1)電圧の大きさや周波数は、自動電圧調整器と調速機を用いて制御される。
(2)カプラン水車は、プロペラ水車の一種で、流量に応じて羽根の角度を調整することができるため、部分負荷での効率の低下が少ない。
(3)発電所で発電された電力は、発電電圧を主変圧器で昇圧した後、送電される。この主変圧器には発電機側にY結線、系統側にΔ結線のものが多く用いられる。
(4)ペルトン水車は、水の衝撃力で回転する衝動水車の一つである。
(5)水車発電機の回転速度は、汽力発電と比べて小さいため、発電機の磁極数は多くなる。

答え誤っている記述は (3)——「発電機側にΔ結線、系統側にY結線」が正しい形です。

正しい記述を整理する

水力発電設備に関する選択肢1・2・4・5が正しい理由の解説
自動電圧調整器、調速機、カプラン水車、ペルトン水車、磁極数の関係を整理します。

発電所の主変圧器は、発電機側がΔ結線、系統側がY結線——問題文は逆に書かれています

★正しい結線理由
★発電機側(低圧)★Δ結線★第3調波電流を環流させて閉じ込める
★系統側(高圧)★Y結線★中性点が取り出せる=接地できる

送電系統では中性点を接地したい——地絡事故を検出し、異常電圧を抑えるためです。Y結線なら中性点が自然に出てくることになります。

Δ結線には中性点がありません——だから系統側には向かないのです。

一方、発電機側をΔにすると、第3調波電流がΔの中をぐるぐる回って外に出ません——波形のひずみを抑えられるのです。

この Δ-Y の組み合わせを昇圧結線と呼びます——発電所の主変圧器はほぼこの形です。

なぜ昇圧してから送るのか

発電機の端子電圧は、せいぜい十数 kV——そのまま送ると損失が大きすぎます

送電損失
\( P_\ell=3I^2R \)

電流の2乗に比例する

同じ電力を送るなら、電圧を上げれば電流が減ります——P=√3VIcosθ ですから、V を10倍にすれば I は1/10

\( P_\ell\propto I^2=\left(\dfrac{1}{10}\right)^2=\dfrac{1}{100} \)
電圧を10倍にすると
★損失は100分の1

損失は電圧の2乗に反比例する——だから遠くへ送るほど高い電圧が使われるのです。500 kV の送電線が存在する理由がここにあります。

電圧階級用途
発電機端子11〜24 kV 程度
★超高圧送電★275/500 kV
一次送電154/187 kV
配電6.6 kV → 100/200 V

(5) 回転速度と磁極数

同期速度
\( N=\dfrac{120f}{p} \)

N:回転速度[min⁻¹] f:周波数[Hz] p:極数

回転速度が小さいなら、極数を多くするしかありません——f は系統で決まっているからです。

\( p=\dfrac{120\times 50}{200}=30 \)
50 Hz・200 min⁻¹ の場合
★30極が必要

タービン発電機なら2極で3,000 min-1——この違いが、形の違いをすべて生んでいます

⚠️ よくある間違い
(3)の結線を「そんなものか」と流してしまう——Δ と Y のどちらがどちら側か、はっきり覚えていないと判断できません
「系統側は接地したいからY」——この一点さえ押さえれば、残りは自動的にΔです。
配電用変圧器は逆にΔ-Y ではなくY-Δのこともあります——降圧のときは事情が変わるのです。本問は「発電所の主変圧器」=昇圧だと確認してください。
(1)(2)(4)(5)は令和4年度上期とほぼ同じ選択肢——定番の記述は覚えてしまうのが早道です。

⏱️ 本番での進め方
①★主変圧器は発電機側Δ・系統側Y。問題文は逆。
②理由:系統側は中性点接地したいからY。
③昇圧する理由は損失が電圧の2乗に反比例するから。
④(5) N=120f/p。低速なら多極。

💡 覚え方
「系統側は接地したいからY」——これだけ覚えれば結線問題は解けます発電機側のΔは第3調波を閉じ込めるため——2つセットで昇圧結線です。

ほぼ同じ選択肢の問題が令和4年度上期 A問題1水力:吸出し管は反動水車用)にあります。

誤りは(3):主変圧器の結線

発電機側デルタ結線と系統側スター結線から選択肢3の誤りを判定する解説
一般に発電機側をΔ、系統側を接地可能なYとするため、逆に述べた選択肢(3)が誤りです。

変圧器の鉄心は磁気飽和するので、励磁電流にひずみが生じます——その主成分が第3調波です。

調波3相の位相性質
基本波120°ずつずれる合計するとゼロ
★第3調波★3相とも同相(零相)★合計してもゼロにならない

第3調波は3相が同じ向きにそろいます——120°の3倍は360°=同相だからです。

Δ結線は輪になっているので、同相の電流はその中をぐるぐる回れます——外部に出ていかないのです。

Y結線だけで組むと、行き場を失った第3調波が電圧波形をひずませます——だから必ずどこかにΔを入れることになります。

Y-Y 結線に安定巻線を入れる理由

大容量の変圧器では Y-Y にしたいこともあります——両側で中性点接地したい場合です。

そのときは第3巻線としてΔを追加——安定巻線(三次巻線)と呼ばれます。調相設備をつなぐのにも使われるので一石二鳥です。

正誤判定の進め方

5つの記述のうち、令和4年度上期と共通なのが4つ——残る(3)が新顔です。

記述内容判定
(1)AVR と調速機正しい
(2)カプランの可動羽根正しい
★(3)★発電機側Y・系統側Δ★誤り(逆)
(4)ペルトンは衝動水車正しい
(5)低速だから多極正しい

過去問を解いていれば、(1)(2)(4)(5)は見覚えのある記述——それだけで(3)に絞れます

この型の問題は、定番の選択肢に1つだけ新しい記述を混ぜてくる——見慣れないものが答えである確率が高いと言えます。

結線の組み合わせと用途

結線用途特徴
★Δ-Y★発電所の昇圧★系統側に中性点が出る
Y-Δ受電端の降圧低圧側にΔ
Δ-Δ配電用1台故障してもV結線で継続できる
Y-Y-Δ大容量の系統連系三次巻線で第3調波を処理

Δ-Y と Y-Δ では、一次と二次で30°の位相差が生じます——並行運転するときは、この角変位をそろえる必要があるのです。

中性点を接地する理由

系統側をY結線にするのは、中性点を接地したいから——その接地に何の意味があるのかを押さえましょう

ねらい内容
★異常電圧の抑制★1線地絡時の健全相の電圧上昇を抑える
★地絡の検出★地絡電流が流れるので保護継電器が動作できる
絶縁の低減電圧が上がらないぶん絶縁を薄くできる

非接地なら地絡電流がほとんど流れません——事故が起きても検出しにくいのです。

接地すれば大きな電流が流れるので、すぐに検出して遮断できます——その代わり事故電流そのものは大きくなることになります。

接地方式の使い分け

方式適用地絡電流
★直接接地★187 kV 以上の超高圧★大きい
抵抗接地66〜154 kV
非接地6.6 kV 配電★小さい

電圧が高いほど絶縁の負担が大きい——だから超高圧では直接接地にして電圧上昇を抑えますY結線が必要になるのは、まさにこのためです。

配電系統が非接地なのは、逆の事情——電圧が低いので絶縁の負担が小さく、地絡電流を抑えて通信線への誘導障害を防ぐほうを優先するのです。

だから「発電所の主変圧器はΔ-Y」であって、配電用変圧器は別の結線——電圧階級ごとに事情が違うと押さえておきましょう。

まとめ

(3)誤り主変圧器は発電機側Δ・系統側Y(記述は逆)
(1)AVRで電圧・調速機で周波数(正)
(2)カプランは可動羽根で部分負荷に強い(正)
(4)ペルトンは衝動水車(正)
(5)低速→N=120f/pで磁極数多い(正)

▼あわせて解きたい関連問題
・流況曲線と調整池式の運転計画(水力4):【電力】令和7年度上期 B問題15

・この年度の問題を通しで解く:電験3種 令和6年度下期 問題一覧(全4科目)

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