今回は令和7年度上期 電力科目 A問題5を解説します。バイオマス発電について、資源の性質・木くずから作る燃料・カーボンニュートラルの考え方・設備の規模を埋める空欄補充問題です。
バイオマス=植物などの有機物。木くずからは固形化燃料(木質ペレット)、植物が吸収するCO₂と発電時の排出を同じにできれば環境負担なし(カーボンニュートラル)、設備は燃料集めの制約から小規模分散型——4つとも「らしさ」で決まります。
出題のポイント:有機物・CO₂循環・分散型を結び付ける

バイオマスは植物などの有機物を利用し、木くずは固形化燃料にできます。成長時と発電時の二酸化炭素を対応させるカーボンニュートラルと、地域資源を使う小規模分散型が要点です。
解法の原理:バイオマス発電の4つの特徴

本問で最も特徴的な空欄です——他のバイオマス問題には出てきません。
| ★バイオマス | 火力・原子力 | |
| ★燃料の集め方 | ★周辺地域から集める | ★船で大量に運ぶ |
| ★エネルギー密度 | ★低い | 高い |
| ★典型的な出力 | ★2,000〜5,000 kW | ★100万 kW |
| ★立地 | ★燃料の産地の近く | 臨海部 |
燃料がかさばり、遠くから運べません——だから発電所を大きくできないのです。
5,000 kW の発電所で、年間6万トン前後の木質燃料が要ります——大型トラックで毎日十数台ぶん。
集められる範囲は半径50 km 程度——それ以上運ぶと輸送の燃料が問題になります。
だから各地に小さな発電所が分散する形になる——それが「小規模分散型」です。
大規模集中型の石炭火力とは、正反対の性格を持ちます。
令和7年度上期 電力科目 A問題5:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和7年度上期 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題5
電験3種 電力科目 【新エネルギー】 令和7年度上期 A問題5
次の文章は、バイオマス発電に関する記述である。バイオマス発電は、植物等の(ア)物から得られる燃料を利用した発電と定義することができ、燃料の代表的なものには、木くずから得られる(イ)やさとうきびから得られるエタノールがある。植物から燃料を得る場合、その植物に吸収される(ウ)量と発電時の(ウ)発生量を同じとすることができれば、環境に負担をかけないエネルギー源となる。バイオマス発電の設備は、一般的に(エ)である。上記の記述中の空白箇所(ア)〜(エ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(ア) (イ) (ウ) (エ) (1) 無機 固形化燃料 二酸化炭素 小規模分散型 (2) 無機 メタン 窒素化合物 小規模分散型 (3) 有機 メタン 窒素化合物 大規模集中型 (4) 有機 メタン 二酸化炭素 大規模集中型 (5) 有機 固形化燃料 二酸化炭素 小規模分散型
(イ) 木くずから得られる燃料
木くずは乾いているので、そのまま燃やせます——だから固形化燃料です。
| 原料 | 状態 | 加工 | 燃料の形 |
| ★木くず | ★乾いている | ★破砕・圧縮 | ★固形化燃料 |
| ★さとうきび | ★糖を含む | ★アルコール発酵 | ★エタノール |
| ★家畜の糞 | ★湿っている | ★メタン発酵 | ★メタンガス |
「メタン」は家畜の糞から得るもの——木くずからではありません。
選択肢(2)(3)(4)が「メタン」としているのは、そこが罠——原料と燃料の対応を押さえていれば切れます。
木質ペレットは、おがくずを圧縮して固めたもの——直径6〜8 mm の粒状です。
かさが減って運びやすくなり、含水率も下がる——発熱量が約18 MJ/kg まで上がります。
⚠️ よくある間違い
(イ)を「メタン」としてしまう——選択肢(2)(3)(4)がそれです。木くずからは固形化燃料。メタンは糞からになります。
(ア)を「無機」としてしまう——選択肢(1)(2)。植物は有機物です。
(ウ)を「窒素化合物」としてしまう——選択肢(2)(3)。カーボンニュートラルは炭素の話。
(エ)を「大規模集中型」としてしまう——選択肢(3)(4)。燃料が集まらないので大きくできません。
(イ)だけで(1)(5)に絞れます——あとは(ア)で確定するでしょう。
⏱️ 本番での進め方
①★木くず→固形化燃料。メタンは糞から。
②★バイオマス=有機物。
③吸収量=発生量ならカーボンニュートラル。
④★燃料が集まる範囲で規模が決まる→小規模分散型。
💡 覚え方
「燃料を遠くから運べないから、発電所も小さい」——それが小規模分散型の理由です。木くずは固形、糞は気体、糖は液体——原料の状態が燃料の形を決めます。
カーボンニュートラルと量的確保の課題は平成21年度 A問題5(新エネルギー:バイオマス発電)にあります。
熱も使えば効率が上がる
小規模分散型であることは、利点にもなります。
| 大規模集中型 | ★小規模分散型 | |
| ★需要地との距離 | ★遠い | ★近い |
| ★排熱の利用 | ★運べないので捨てる | ★近隣で使える |
| ★送電損失 | ★生じる | ★小さい |
| 総合効率 | 40 % 前後 | ★80 % 前後(熱電併給) |
発電効率だけ見れば小規模は不利——20〜25 % 程度にとどまります。
けれども排熱を温水や暖房に使えば、総合効率は跳ね上がる——コージェネレーションです。
大規模火力の排熱は海へ捨てるしかない——需要地から遠すぎて運べないのです。
近くにあることが、そのまま強みになる——分散型の本質的な利点だと言えます。
地域内で完結する
燃料は地元の間伐材、電気と熱も地元で使う——お金が域外へ出ていきません。
林業の副産物に値段がつく——森林の手入れが進むという効果もあります。
木質ペレットという燃料
(イ)の固形化燃料を、もう少し詳しく見ましょう。
| 項目 | 木質チップ | ★木質ペレット |
| ★形 | ★不揃いの木片 | ★直径6〜8 mm の円柱 |
| ★含水率 | ★30〜50 % | ★10 % 以下 |
| ★発熱量 | ★約10 MJ/kg | ★約18 MJ/kg |
| ★加工 | ★破砕のみ | ★乾燥・粉砕・圧縮成形 |
ペレットは加工にエネルギーを使いますが、そのぶん扱いやすくなります。
粒が揃っているので自動供給できる——家庭用ストーブにも使えます。
圧縮の際に木のリグニンが接着剤の役目をする——糊を加えなくても固まります。
燃やしたあとの灰
木質燃料の灰は1 % 前後——石炭の10 % 前後に比べればわずかです。
しかもカリウムやカルシウムを含む——肥料として畑に戻せます。
硫黄をほとんど含まないので、脱硫装置も要らない——設備が簡素で済むのも小規模向きの理由です。
問題の解説:空欄(ア)〜(エ)と選択肢を照合する

4つの空欄が、バイオマスの要点をそのまま並べています。
| 空欄 | 答え | 紛らわしい選択肢 |
| (ア) | ★有機 | ★無機 |
| (イ) | ★固形化燃料 | ★メタン |
| (ウ) | ★二酸化炭素 | ★窒素化合物 |
| (エ) | ★小規模分散型 | ★大規模集中型 |
(イ)だけで(1)(5)に絞れ、(ア)で確定します。
木くずは乾いているので固形のまま燃やす——メタンは湿った糞から発酵で作ります。
なぜ(エ)が問われたのか
バイオマスの本質が、規模に現れているからです。
燃料のエネルギー密度が低く、遠くから運べない——だから発電所も小さくなる。
これは技術の制約ではなく、燃料の性質そのもの——将来も変わりません。
地域ごとに小さな発電所が立つ姿が、バイオマスの標準形——大規模集中型の火力とは対照的です。
バイオマスの燃料としての位置づけ
他の電源と並べると、性格がはっきりします。
| ★バイオマス | 太陽光・風力 | |
| ★出力の調整 | ★できる | ★できない |
| ★天候の影響 | ★受けない | ★受ける |
| ★設備利用率 | ★70〜90 % | ★15〜20 % |
| ★制約 | ★燃料の確保 | ★天候 |
バイオマスは燃料を燃やす方式なので、出力を調整できます——火力と同じ性格です。
だから再生可能エネルギーの中では珍しく、ベースロードにも調整力にもなれる——系統にとって扱いやすいのです。
その代わり、燃料が尽きれば止まります——太陽や風はなくなりません。
制約の性質が正反対——だから組み合わせると補い合えます。
エタノールの作り方
問題文が挙げるもう1つの燃料も見ておきましょう。
| 順 | 工程 | できるもの |
| ① | ★さとうきびを搾る | ★糖を含む汁 |
| ★② | ★酵母でアルコール発酵させる | ★エタノール数 % の液 |
| ★③ | ★蒸留して濃縮する | ★エタノール |
酒を造るのと同じ工程——飲むか燃やすかの違いだけです。
ブラジルでは自動車燃料として広く使われています——ガソリンに混ぜるか、そのまま燃やすのです。
搾りかす(バガス)も燃料になる——製糖工場の熱と電気をまかなえます。
1本の作物から、液体燃料と固形燃料の両方が取れる——無駄が出ない仕組みだと言えます。
まとめ
| (ア) | バイオマス=植物等の有機物 |
| (イ) | 木くず→固形化燃料(木質ペレット) |
| (ウ) | 吸収CO₂=排出CO₂→カーボンニュートラル |
| (エ) | 燃料収集の制約から小規模分散型 |
| 答え | (5) |
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