今回は平成21年度 電力科目 A問題4を解説します。原子力発電の原理を汽力発電と対応付けながら、置き換わる設備・燃料と、核分裂連鎖反応する核種・しない核種を埋める空欄補充問題です。
対応表は「汽力のボイラ→原子炉」「化石燃料→原子燃料」。熱で蒸気を作ってタービンを回す下流側はまったく同じです。核種は連鎖反応するのがウラン235、しないのがウラン238(天然の99%以上)——0.7%と99.3%の関係そのものです。
平成21年度 電力科目 A問題4:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成21年度 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題4
電験3種 電力科目 【原子力】 平成21年度 A問題4
次の文章は、原子力発電に関する記述である。原子力発電は、原子燃料が出す熱で水を蒸気に変え、これをタービンに送って熱エネルギーを機械エネルギーに変えて、発電機を回転させることにより電気エネルギーを得るという点では、(ア)と同じ原理である。原子力発電では、ボイラの代わりに(イ)を用い、(ウ)の代わりに原子燃料を用いる。現在、多くの原子力発電所で燃料として用いている核分裂連鎖反応する物質は(エ)であるが、天然に産する原料では核分裂連鎖反応しない(オ)が99[%]以上を占めている。このため、発電用原子炉にはガス拡散法や遠心分離法などの物理学的方法で(エ)の含有率を高めた濃縮燃料が用いられている。上記の記述中の空白箇所(ア)〜(オ)に当てはまる語句として、正しいものを組み合わせたのは次のうちどれか。
(ア) (イ) (ウ) (エ) (オ) (1) 汽力発電 原子炉 自然エネルギー プルトニウム239 ウラン235 (2) 汽力発電 原子炉 化石燃料 ウラン235 ウラン238 (3) 内燃力発電 原子炉 化石燃料 プルトニウム239 ウラン238 (4) 内燃力発電 燃料棒 化石燃料 ウラン238 ウラン235 (5) 太陽熱発電 燃料棒 自然エネルギー ウラン235 ウラン238

(ア)〜(ウ) 原子力は汽力の熱源を置き換えたもの
原子力発電の仕組みは、火力(汽力)とほとんど同じです——違うのは熱を作る部分だけ。
| 役割 | 汽力発電 | ★原子力発電 |
| ★熱を作る装置 | ボイラ | ★原子炉 |
| ★熱を出すもの | 化石燃料 | ★原子燃料(ウラン) |
| 熱の使い方 | 水を蒸気に変える | ★同じ |
| タービン | 蒸気で回す | ★同じ |
| 発電機 | 同期発電機 | ★同じ |
蒸気でタービンを回して発電機を回す——ここから先はまったく同じです。
だから原子力発電も「汽力発電」の一種だと言えます——熱源が核分裂か燃焼かの違いにすぎません。
「内燃力発電」はディーゼルエンジンなど——燃料を機関の中で燃やして直接動力を得る方式で、蒸気を使いません。
(エ)(オ) ウラン235とウラン238
| ★ウラン235 | ★ウラン238 | |
| ★天然ウラン中の割合 | ★約0.7 % | ★約99.3 % |
| ★核分裂 | ★遅い中性子で起こる | ★起こしにくい |
| ★連鎖反応 | ★続く | ★続かない |
| 役割 | ★燃料そのもの | ★中性子を吸ってプルトニウムになる |
天然のウランの99.3 % は、燃えないウラン238——使えるのは残る0.7 % だけです。
問題文が「99 % 以上を占めている」と書いているのが(オ)——ウラン238 になります。
ウラン235とウラン238は、同じウランで陽子の数は同じ——中性子の数だけが3個違うのです。これを同位体といいます。
化学的な性質はほとんど同じ——だから化学的な方法では分けられません。
濃縮という工程
問題文の「ガス拡散法や遠心分離法などの物理学的方法」——質量のわずかな差を利用します。
| 方法 | 原理 | 現状 |
| ★ガス拡散法 | ★軽い分子のほうが速く膜を通る | ★電力を大量に使うため衰退 |
| ★遠心分離法 | ★高速回転させると重いほうが外側へ | ★現在の主流 |
ウランを六フッ化ウランという気体にしてから分けます——固体のままでは分離できないからです。
235と238では質量が1 % ほどしか違いません——だから何段にも重ねて少しずつ濃縮することになります。
軽水炉では3〜5 % まで濃縮すれば足ります——低濃縮ウランと呼ばれる範囲です。
⚠️ よくある間違い
(ア)を「内燃力発電」としてしまう——選択肢(3)(4)がそれです。
問題文が「水を蒸気に変え、タービンに送って」と書いているので蒸気を使う汽力発電です。
(エ)を「プルトニウム239」としてしまう——選択肢(1)(3)。プルトニウムは天然にはほとんど存在しません。「天然に産する原料では」という文脈に合いません。
(エ)(オ)を逆にしてしまう——選択肢(4)。99 % 以上を占めるのは238——燃えるのは0.7 % の235です。
(ア)と(エ)の2欄で確定できます。
⏱️ 本番での進め方
①(ア)★蒸気タービンを使うので汽力発電と同じ原理。
②(イ)(ウ)★ボイラ→原子炉、化石燃料→原子燃料。
③(エ)(オ)★燃えるのは235(0.7 %)、燃えないのが238(99.3 %)。
④濃縮はガス拡散法・遠心分離法。物理的に分ける。
💡 覚え方
「ボイラが原子炉に変わっただけ」——蒸気から先は火力とまったく同じです。そして天然ウランの99.3 % は燃えない238——だから濃縮が要ることになります。
核分裂性物質と親物質は令和2年度 A問題4(原子力:原子燃料)、核燃料サイクルは平成28年度 A問題4(原子力:核燃料サイクル)にあります。
核分裂で何が起きているのか
ウラン235が中性子を吸収すると、2つに割れます。
| 生じるもの | 内容 |
| ★核分裂生成物 | ★セシウム、ヨウ素などの破片。放射性物質 |
| ★中性子(2〜3個) | ★次の核分裂を起こす |
| ★エネルギー | ★1回あたり約200 MeV。ほとんどが熱になる |
飛び出した中性子が次のウラン235に当たる——それが連鎖反応です。
1回の核分裂で1個が次につながれば、反応は一定に保たれます——それが臨界という状態になります。
| 状態 | 次につながる中性子 | 出力 |
| 臨界未満 | 1個未満 | 下がっていく |
| ★臨界 | ★ちょうど1個 | ★一定に保たれる |
| 臨界超過 | 1個より多い | 上がっていく |
余った中性子を制御棒やほう素で吸収する——それが出力制御の正体です。
原子力と火力の違うところ
原理は同じでも、蒸気の条件が違います。
| 項目 | 火力(超々臨界圧) | ★原子力(軽水炉) |
| ★蒸気の温度 | 600 ℃ 以上 | ★280 ℃ 前後 |
| ★蒸気の圧力 | 24 MPa | ★7 MPa 前後 |
| ★熱効率 | ★43 % 前後 | ★33 % 前後 |
| 蒸気の状態 | 過熱蒸気 | ★飽和蒸気(湿り気がある) |
原子力の蒸気は、火力よりずっと低温・低圧——燃料被覆管の温度に制限があるからです。
カルノー効率で見れば、T₁ が低いぶん効率が落ちます——だから原子力の熱効率は33 % 前後にとどまるのです。
湿り蒸気を扱うので、タービンには湿分分離器が必要——火力にはない設備になります。
効率が低いということは、捨てる熱が多いということ——復水器の冷却水量も火力より多く必要です。
この1問で押さえること
原子力発電は汽力発電と同じ原理——ボイラが原子炉に、化石燃料が原子燃料に置き換わっただけです。
燃えるのはウラン235(天然ウラン中0.7 %)——99 % 以上を占めるウラン238は連鎖反応しません。
だから濃縮が必要——ガス拡散法や遠心分離法という物理的な方法で分けます。
同位体は化学的に分けられない
| ウラン235 | ウラン238 | |
| 陽子の数 | ★92(同じ) | ★92(同じ) |
| ★中性子の数 | ★143 | ★146 |
| 化学的性質 | ★ほぼ同じ | ★ほぼ同じ |
| ★質量 | ★わずかに軽い | ★わずかに重い |
化学反応は電子のやりとりで決まります——陽子の数が同じなら電子の数も同じですから、化学的にはまったく同じ振る舞いをします。
だから化学的な方法では分けられない——質量のわずかな差を使う物理的な方法しかないのです。
要点をもう一度
原子力発電は汽力発電と同じ原理——ボイラ→原子炉、化石燃料→原子燃料という置き換えです。
燃えるのはウラン235で天然ウラン中0.7 %——99 % 以上はウラン238 になります。
濃縮はガス拡散法・遠心分離法——質量のわずかな差を利用した物理的な方法です。
まとめ
| (ア) | 蒸気→タービン→発電機は汽力発電と同じ原理 |
| (イ) | ボイラの代わりに原子炉 |
| (ウ) | 化石燃料の代わりに原子燃料 |
| (エ) | 連鎖反応する物質=ウラン235 |
| (オ) | 天然の99%以上=ウラン238→(2) |
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