原子力22【電験3種 電力】出力調整はPWR=ほう素濃度・BWR=再循環流量!制御棒は引抜きで上昇 平成20年度 A問題4 完全解説

電験3種 電力科目 原子力 平成20年度 A問題4 PWRはほう素・BWRは流量!出力調整の違い

今回は平成20年度 電力科目 A問題4を解説します。軽水炉(PWR・BWR)の熱出力調整の方法と、制御棒の操作と出力の関係を埋める空欄補充問題です。

出力調整のペアはPWR=ほう素濃度/BWR=再循環流量(原子力9のR03問5で確認済み)。制御棒は中性子を吸収する棒なので、引き抜けば吸収が減って出力上昇、挿入すれば吸収が増えて出力下降です。

目次

平成20年度 電力科目 A問題4:問題文と選択肢

まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

電験3種 電力科目 原子力 平成20年度 A問題4 問題文
平成20年度 電力科目 A問題4 問題文

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成20年度 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題4

電験3種 電力科目 【原子力】 平成20年度 A問題4

 わが国の商業発電用原子炉のほとんどは、軽水炉と呼ばれる型式であり、それには加圧水型原子炉(PWR)と沸騰水型原子炉(BWR)の2種類がある。PWRの熱出力調整は主として炉水中の(ア)の調整によって行われる。一方、BWRでは主として(イ)の調整によって行われる。なお、両型式とも起動又は停止時のような大幅な出力調整は制御棒の調整で行い、制御棒の(ウ)によって出力は上昇し、(エ)によって出力は下降する。上記の記述中の空白箇所(ア)〜(エ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。

(ア)(イ)(ウ)(エ)
(1)ほう素濃度再循環流量挿入引抜き
(2)再循環流量ほう素濃度引抜き挿入
(3)ほう素濃度再循環流量引抜き挿入
(4)ナトリウム濃度再循環流量挿入引抜き
(5)再循環流量ほう素濃度挿入引抜き
答え正解は (3)——(ア)ほう素濃度 (イ)再循環流量 (ウ)引抜き (エ)挿入 です。

(ア)(イ) 出力調整の方法が違う

加圧水型と沸騰水型では、日常の出力調整のしかたが異なります

方式出力調整の手段仕組み
★加圧水型(PWR)★炉水中のほう素濃度★ほう素が中性子を吸収する
★沸騰水型(BWR)★再循環流量★炉心のボイド(泡)の量が変わる

ほう素で調整するとは

ほう素は中性子をよく吸収します——水に溶かして濃度を変えれば、核分裂の量を加減できるのです。

濃度を上げれば中性子が吸われて出力が下がる——下げれば出力が上がることになります。

加圧水型では炉内が沸騰しないので、水の量は変わりません——だから流量で調整する手が使えないのです。

再循環流量で調整するとは

沸騰水型の炉心には、蒸気の泡(ボイド)があります——泡は水より密度が小さく、減速材としての働きが弱いのです。

再循環流量ボイドの量減速の効き出力
★増やす★泡が押し流されて減る★よく効く★上がる
★減らす★泡が溜まって増える★効きにくい★下がる

流量を増やすと泡が減り、減速材としての水が増える——核分裂が進んで出力が上がるのです。

これをボイド効果といいます——沸騰水型ならではの調整手段になります。

(ウ)(エ) 制御棒は引き抜けば出力上昇

制御棒は中性子を吸収する棒——入れれば反応が抑えられます

操作中性子出力
★引抜き★吸収されなくなる★上昇
★挿入★吸収される★下降

制御棒の材料は、ほう素・カドミウム・ハフニウムなど——いずれも中性子をよく吸収する物質です。

ほう素で調整するのも、制御棒で調整するのも、原理は同じ——中性子を吸わせるかどうかになります。

違うのは応答の速さ——制御棒は素早く、ほう素濃度はゆっくり効きます。

だから制御棒は起動停止のような大幅な調整、ほう素濃度は日常の緩やかな調整——問題文もそう述べています

⚠️ よくある間違い
(ア)と(イ)を逆にしてしまう——選択肢(2)(5)がそれです。
再循環ポンプは沸騰水型の設備——加圧水型にはありませんだから加圧水型がほう素、沸騰水型が再循環流量です。
(ア)を「ナトリウム濃度」としてしまう——選択肢(4)ナトリウムは高速増殖炉の冷却材で、軽水炉では使いません
(ウ)(エ)を逆にしてしまう——選択肢(1)(4)(5)制御棒を入れれば中性子が吸われて出力が下がる——直感どおりです。
(ア)と(ウ)の2欄で確定できます。

⏱️ 本番での進め方
①(ア)★加圧水型はほう素濃度。沸騰水型は再循環流量。
②理由:再循環ポンプは沸騰水型にしかない。
③(ウ)(エ)★制御棒は引き抜けば上昇、挿入すれば下降。
④ナトリウムは高速増殖炉の冷却材。軽水炉では使わない。

💡 覚え方
「入れれば下がる、抜けば上がる」——制御棒は中性子を吸う棒です。そして加圧水型はほう素、沸騰水型は流量——設備の違いがそのまま調整方法の違いになります。

PWR と BWR の設備の違いは平成27年度 A問題4原子力:原子力発電の設備概要)にあります。

空欄の絞り込み手順

4つの空欄がありますが、2つで確定します。

確定させる欄正しい語残る選択肢
(ア)ほう素濃度★(1)(3)
(ウ)引抜き★(3)に確定

(ア)は加圧水型の出力調整——再循環ポンプは沸騰水型の設備ですから、加圧水型では使えませんこれで3つ落ちます

(ウ)は制御棒を引き抜いたときの出力——中性子が吸われなくなるので上昇2手で確定します。

3つの調整手段を速さで並べる

手段応答の速さ使う場面
★制御棒★速い(秒単位)★起動停止・緊急停止
★再循環流量(BWR)★中間(分単位)★日常の出力調整
★ほう素濃度(PWR)★遅い(時間単位)★燃料の消耗に応じた長期調整

ほう素濃度は水に溶かして薄めたり濃くしたりする——系統全体に行き渡るまで時間がかかるのです。

だから加圧水型は、急な出力変化には向きません——ベース電源として一定出力で運転するのがふつうになります。

制御棒はどちらの方式でも使えますが、局所的に出力が偏る——だから日常の微調整には使わないのです。

ボイド効果という自己制御性

沸騰水型の再循環流量による調整は、原子炉の自己制御性とも関係します

出来事ボイド反応結果
★出力が上がる★沸騰が増えて泡が増える★減速が効かなくなる★出力が下がる方向へ
★出力が下がる★泡が減る★減速がよく効く★出力が上がる方向へ

出力が上がりすぎると、自動的に抑える方向へ働きます——負のフィードバックです。

これをボイド係数が負であるといいます——軽水炉に共通する安全上の性質になります。

加圧水型にも同じ性質があります——温度が上がると水の密度が下がり、減速が効かなくなるからです。

減速材温度係数が負——言い方は違いますが、原理は同じだと言えます。

制御棒の材料

材料特徴
★ほう素(B₄C)★中性子吸収能力が高く安価。広く使われる
★カドミウム★吸収能力が非常に高い
ハフニウム耐食性がよく長寿命

いずれも中性子をよく吸う物質——ほう素を水に溶かして使うのが、加圧水型のほう素濃度調整です。

制御棒とほう素は、同じ物質を違う形で使っている——そう考えると理解しやすいでしょう。

この1問で押さえること

加圧水型はほう素濃度、沸騰水型は再循環流量で出力を調整します——再循環ポンプは沸騰水型にしかない設備だからです。

制御棒は引き抜けば出力上昇、挿入すれば下降——中性子を吸う棒だと考えれば直感どおりです。

ナトリウムは高速増殖炉の冷却材——軽水炉の出力調整とは無関係になります。

大幅な調整と微調整を使い分ける

問題文が「起動又は停止時のような大幅な出力調整は制御棒」と書いているのが手がかりです。

制御棒は効きが強く、応答も速い——そのぶん出力の分布が偏りやすいのです。

だから運転中の細かい調整には、より穏やかな手段を使う——それがほう素濃度や再循環流量になります。

軽水炉の自己制御性

出力が上がりすぎると、自動的に抑える方向へ働きます

係数内容符号
★ボイド係数★泡が増えると反応が抑えられる★負
★減速材温度係数★水温が上がると密度が下がり反応が抑えられる★負
ドップラ係数燃料温度が上がるとウラン238が中性子を吸いやすくなる

3つとも負——出力が上がれば下げる方向に働くということです。

だから軽水炉は暴走しにくい——安全上の重要な性質だと言えます。

まとめ

(ア)PWR=炉水中のほう素濃度で調整
(イ)BWR=再循環流量で調整(ボイド量)
(ウ)制御棒の引抜き→中性子吸収が減り出力上昇
(エ)制御棒の挿入→吸収が増え出力下降
答え(3)

▼あわせて解きたい関連問題
・軽水炉の減速材と出力調整(原子力9):【電力】令和3年度 A問題5

・この年度の問題を通しで解く:電験3種 平成20年度 問題一覧(全4科目)

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