新エネ18【電験3種 電力】バイオマスの課題!量的確保と食料競合 平成21年度 A問題5 完全解説

電験3種 電力科目 新エネルギー 平成21年度 A問題5 バイオマスの弱点は量の確保!食料との競合も

今回は平成21年度 電力科目 A問題5を解説します。バイオマス発電の定義とカーボンニュートラル、そして発電事業として成立させる上での課題を埋める空欄補充問題です。

前半は有機性資源とCO₂収支の話。後半が本問の顔で、バイオマスの2大課題——エネルギー作物の量的確保と、サトウキビ等の食料をエネルギーに回すことによる作物価格への影響(食料競合)を問います。

目次

平成21年度 電力科目 A問題5:問題文と選択肢

まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

電験3種 電力科目 新エネルギー 平成21年度 A問題5 問題文
平成21年度 電力科目 A問題5 問題文

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成21年度 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題5

電験3種 電力科目 【新エネルギー】 平成21年度 A問題5

 バイオマス発電は、植物等の(ア)性資源を用いた発電と定義することができる。森林樹木、サトウキビ等はバイオマス発電用のエネルギー作物として使用でき、その作物に吸収される(イ)量と発電時の(イ)発生量を同じとすることができれば、環境に負担をかけないエネルギー源となる。ただ、現在のバイオマス発電では、発電事業として成立させるためのエネルギー作物等の(ウ)確保の問題や(エ)をエネルギーとして消費することによる作物価格への影響が課題となりつつある。上記の記述中の空白箇所(ア)〜(エ)に当てはまる語句として、正しいものを組み合わせたのは次のうちどれか。

(ア)(イ)(ウ)(エ)
(1)無機二酸化炭素量的食料
(2)無機窒素化合物量的肥料
(3)有機窒素化合物質的肥料
(4)有機二酸化炭素質的肥料
(5)有機二酸化炭素量的食料
答え正解は (5)——(ア)有機 (イ)二酸化炭素 (ウ)量的 (エ)食料 です。

(ア)(イ) カーボンニュートラルという考え方

バイオマスを燃やせば二酸化炭素は出ます——それでも「環境に負担をかけない」と言えるのはなぜでしょうか

段階二酸化炭素の動き
★①★植物が成長するとき、大気から吸収する
★②★燃やすとき、大気へ放出する
★差し引き★ゼロ

吸った量と出した量が同じなら、大気中の総量は増えません——これがカーボンニュートラルです。

だから(ア)は有機、(イ)は二酸化炭素になります。

化石燃料は、何億年も前に固定された炭素を掘り出して燃やす——大気中の量が純増します

同じ二酸化炭素でも、循環の中にあるか外から持ち込むか——そこが決定的な違いです。

(ウ)(エ) バイオマス発電の2つの課題

(ウ) 量的確保の難しさ

発電を続けるには、燃料を安定して集め続ける必要があります

課題内容
★エネルギー密度が低い★木質は石炭の半分以下の発熱量
★分散している★広い範囲から集める必要がある
★収集・輸送のコスト★運ぶだけでエネルギーを消費する
★季節変動★農作物由来は収穫期に偏る

5,000 kW の発電所で、年間6万トン前後の木質燃料が要ります——大型トラックで毎日十数台ぶんです。

だから燃料が集まる範囲に規模が制約される——大規模化しにくいのです。

問われているのは「質的」ではなく「量的」——集める量の問題になります。

(エ) 食料との競合

とうもろこしやサトウキビは、本来は食べ物です

燃料の需要が増えれば、食料としての価格も上がる——問題文の「作物価格への影響」です。

2000年代にバイオエタノールの需要が急増し、とうもろこし価格が高騰しました——実際に起きたことになります。

だから食べない部分を使う研究が進んでいます——稲わら・間伐材・廃食油などです。

「第2世代バイオ燃料」と呼ばれます——食料と競合しないことが売りになります。

⚠️ よくある間違い
(ア)を「無機」としてしまう——選択肢(1)(2)がそれです。植物は有機性資源
(イ)を「窒素化合物」としてしまう——選択肢(2)(3)カーボンニュートラルは炭素の話です。
(ウ)を「質的」としてしまう——選択肢(3)(4)課題は集める量になります。
(エ)を「肥料」としてしまう——選択肢(2)(3)(4)「作物価格への影響」とあるので食料です。
(ア)と(エ)の2欄で(5)に確定できます。

⏱️ 本番での進め方
①★バイオマス=有機性資源。
②★吸収量=発生量ならカーボンニュートラル。
③★課題は「量的」確保。エネルギー密度が低く分散している。
④★食料と競合して作物価格が上がる。

💡 覚え方
「吸った分だけ出すから増えない」——それがカーボンニュートラルです。課題は集める量と、食べ物との奪い合い——2つとも実際に起きている問題になります。

バイオマス燃料の形態は平成29年度 A問題5新エネルギー:地熱発電とバイオマス発電)にあります。

木質バイオマスの発熱量

(ウ)の「量的確保」を、数字で確かめましょう

燃料発熱量比較
★木質チップ(含水率40 %)★約10 MJ/kg★基準
★木質ペレット★約18 MJ/kg★1.8倍
★石炭★約26 MJ/kg★2.6倍
重油約41 MJ/kg4.1倍

木質チップは石炭の半分以下——同じ発電量を得るには2倍以上の重さが要ります

しかもかさばる——体積では石炭の4〜5倍になります。

だから遠くから運ぶと、輸送に使う燃料のほうが問題になる——半径50 km 程度が現実的な範囲です。

含水率が効く

木質燃料は、水分が発熱量を大きく左右します

\( \text{含水率}\ 20\ \%\ \rightarrow\ \text{約}14\ [\mathrm{MJ/kg}] \)
乾燥させると
★1.4倍
\( \text{含水率}\ 60\ \%\ \rightarrow\ \text{約}6\ [\mathrm{MJ/kg}] \)
湿ったままだと
★0.6倍

水を蒸発させるのにエネルギーを使ってしまう——だから乾燥が要るのです。

ペレットに加工するのは、乾燥と圧縮を同時に行うため——輸送も貯蔵も楽になります

バイオ燃料の世代

(エ)の食料競合を避けるため、原料が変わってきました

世代原料課題
★第1世代★とうもろこし・さとうきび・なたね★食料と競合する
★第2世代★稲わら・間伐材・廃食油★分解が難しくコストが高い
★第3世代★藻類★研究段階

第2世代は、食べない部分を使います——セルロースを糖に分解する工程が要ります

木も稲わらも主成分はセルロース——けれども固く、分解に手間がかかるのです。

藻類は成長が速く、農地を使いません——期待は大きいが、まだ実用には遠いと言えます。

2008年に起きたこと

アメリカがとうもろこしからバイオエタノールを大量に作りました

とうもろこし価格は3年で約3倍に上昇——飼料価格も連動して上がりました

メキシコではトルティーヤの価格が高騰し、抗議行動が起きた——問題文の「作物価格への影響」はこれを指しています

エネルギーと食料は、同じ土地を奪い合う——それが最も根本的な課題です。

要点をもう一度

バイオマスの利点と課題を、1問で両方問う形です。

空欄答え内容
(ア)★有機★生物由来の資源
(イ)★二酸化炭素★吸収量=発生量ならゼロ
(ウ)★量的★集める量の確保
(エ)★食料★作物価格への影響

前半が利点(カーボンニュートラル)、後半が課題(量と食料)——構成がはっきりしています

(ア)と(エ)の2欄で(5)に確定できます。

カーボンニュートラルの限界

厳密には、完全にゼロではありません

工程使うエネルギー
★収集・運搬★トラックの燃料
★加工(乾燥・破砕)★電力・熱
栽培肥料・農機の燃料

これらに化石燃料を使えば、その分は純増します——だから近距離で集めることが重要になります。

固定価格買取制度とバイオマス

(ウ)の量的確保は、制度の設計にも影響しています

区分買取価格の考え方
★未利用木材★最も高い(集めるコストが大きいため)
★一般木材★中位
★建設資材廃棄物★低い(処理費が浮くため)
★メタン発酵ガス★高い(小規模で手間がかかるため)

集めにくいものほど高く買い取る設計——量的確保の課題に制度で対応しています

それでも燃料が集まらず、稼働率が上がらない例もある——計画通りに集めるのは難しいのです。

輸入木質ペレットに頼る発電所も現れました——国内資源の活用という趣旨からは離れます

「量的確保」は、今も現実の課題であり続けている——問題文が書いた通りの展開になりました。

まとめ

(ア)バイオマス=有機性資源
(イ)吸収CO₂=発生CO₂→カーボンニュートラル
(ウ)エネルギー作物の量的確保が課題
(エ)食料の燃料化→作物価格への影響
答え(5)

▼あわせて解きたい関連問題
・バイオマス発電の基本(新エネ2・定義部分の後継):【電力】令和7年度上期 A問題5

・この年度の問題を通しで解く:電験3種 平成21年度 問題一覧(全4科目)

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