新エネ19【電験3種 電力】地熱の商用発電所は稼働している!東北・九州が拠点 平成20年度 A問題5 完全解説

電験3種 電力科目 新エネルギー 平成20年度 A問題5 日本の地熱発電は稼働中!東北と九州が拠点

今回は平成20年度 電力科目 A問題5を解説します。風力・地熱・太陽電池・燃料電池・エネルギー安定供給について、誤っているものを選ぶ問題です。

ねらいは「地熱の商用発電所は稼働していない」という事実誤認。日本は火山国で、東北・九州を中心に商用の地熱発電所が古くから運転しています(松川・八丁原など)。sn3で覚えた「地熱×火山地域」がそのまま効きます。

目次

平成20年度 電力科目 A問題5:問題文と選択肢

まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

電験3種 電力科目 新エネルギー 平成20年度 A問題5 問題文
平成20年度 電力科目 A問題5 問題文

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成20年度 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題5

電験3種 電力科目 【新エネルギー】 平成20年度 A問題5

 電気エネルギーの発生に関する記述として、誤っているのは次のうちどれか。

風力発電装置は風車、発電機、支持物などで構成され、自然エネルギー利用の一形態として注目されているが、発電電力が風速の変動に左右されるという特徴を持つ。
わが国は火山国でエネルギー源となる地熱が豊富であるが、地熱発電の商用発電所は稼働していない。
太陽電池の半導体材料として、主に単結晶シリコン、多結晶シリコン、アモルファスシリコンが用いられており、製造コスト低減や変換効率を高めるための研究が継続的に行われている。
燃料電池は振動や騒音が少ない、大気汚染の心配が少ない、熱の有効利用によりエネルギー利用率を高められるなどの特長を持ち、分散形電源の一つとして注目されている。
日本はエネルギー資源の多くを海外に依存するので、石油、天然ガス、石炭、原子力、水力など多様なエネルギー源を発電に利用することがエネルギー安定供給の観点からも重要である。

答え誤っている記述は (2)です。

誤りは(2):地熱発電所は稼働している

「地熱発電の商用発電所は稼働していない」——事実に反します

日本の地熱発電
★商用発電所★1966年の松川地熱発電所が最初
★現在の設備容量★約60万 kW(20か所以上)
★資源量★約2,300万 kW(世界第3位)
★主な発電所★八丁原・葛根田・大岳など

60年近く前から商用運転しています——「稼働していない」は明確な誤りです。

問題文の前半「火山国でエネルギー源となる地熱が豊富」は正しい——誤りは後半だけになります。

正しくは「資源量に比べて開発が進んでいない」——資源の3 % ほどしか使えていないのです。

「進んでいない」と「稼働していない」は別のこと——そこを混同させる作りになっています。

(3) 太陽電池の材料

材料変換効率特徴
★単結晶シリコン★16〜20 %★効率が高い・製造に手間がかかる
★多結晶シリコン★14〜17 %★最も普及・安価
★アモルファス★7〜10 %★薄く曲げられる・材料が少ない

3つとも問題文の通り実用化されています——(3)は正しい記述です。

単結晶は、シリコンをゆっくり引き上げて作ります——時間がかかるので高価になります。

多結晶は、溶かして固めるだけ——効率はやや劣りますが安く作れます

アモルファスは結晶構造を持たない——薄い膜にできるので電卓などにも使われます

(5) エネルギーの多様化

1つの資源に偏らないことが重要です

観点内容
★供給の安定★1つの資源が止まっても他で補える
★価格変動★特定燃料の高騰の影響を抑える
★調達先★輸入元の国も分散させる

日本のエネルギー自給率は1割前後——だから分散が生命線です。

1970年代の石油危機で、石油偏重の危うさを経験しました——そこから多様化が進められたのです。

問題文の(5)は、その基本方針そのもの——正しい記述になります。

⚠️ よくある間違い
(2)の前半「火山国で地熱が豊富」だけを見て正しいと判断する——そこは正しいのです。誤りは後半の「稼働していない」
「開発が進んでいない」という知識に引きずられる——進んでいないだけで、稼働はしています
(1)の風力を疑ってしまう——風速の変動に左右されるのは正しい
(3)の3種類を疑ってしまう——すべて実用化されています
(4)の燃料電池を疑ってしまう——3つの特長すべて正しい
「〜していない」という否定形は疑う価値がある——言い切りは誤りになりやすいのです。

⏱️ 本番での進め方
①★日本の地熱発電所は1966年から稼働している。
②★「開発が進んでいない」と「稼働していない」は別のこと。
③太陽電池は単結晶・多結晶・アモルファスの3種。
④エネルギー源の多様化は安定供給の基本方針。

💡 覚え方
「稼働していない」という言い切りを疑う——日本には20か所以上の地熱発電所があります問題は開発の遅れであって、不在ではありません

地熱発電のしくみは平成29年度 A問題5新エネルギー:地熱発電とバイオマス発電)にあります。

日本の地熱発電の歩み

(2)を判断するために、実績を知っておきましょう

できごと
★1966年★松川地熱発電所が運転開始(日本初の商用)
★1967年★大岳発電所が運転開始
★1996年★八丁原発電所が国内最大(11万 kW)
★現在★20か所以上・合計約60万 kW

問題が出題された平成20年(2008年)の時点で、すでに40年以上の実績があります。

「稼働していない」は明らかな誤り——知識というより事実の問題です。

正しくは「資源量に比べて開発が進んでいない」——そこを混同させる作りになっています。

なぜ開発が進まないのか

障害内容
★国立公園★好適地の8割が公園内にある
★温泉との調整★源泉が枯れる懸念から反対が出る
★調査の不確実さ★掘っても蒸気が出ないことがある
★期間★運転開始まで10年以上

技術ではなく、立地と手続きが壁になっています——近年は規制緩和が進みました

要点をもう一度

誤りは(2)の後半だけです。

記述話題正誤
(1)風力
★(2)★地熱★誤(稼働している)
(3)太陽電池の材料
(4)燃料電池
(5)エネルギー多様化

「〜していない」という否定形は疑う価値がある——言い切りは誤りになりやすいのです。

前半の「火山国で地熱が豊富」は正しい——1つの記述の中に正誤が混ざっています

エネルギー自給率という背景

日本の自給率備考
1970年代約10 %石油危機を経験
★2010年★約20 %★原子力を含む
★2020年代★約13 %★原子力の停止で低下

先進国のなかでも際立って低い——だから(5)の多様化が重要になります

燃料電池の3つの特長

(4)が挙げる3点を、あらためて整理します

特長理由
★振動・騒音が少ない★回転する部分がない
★大気汚染の心配が少ない★燃焼させないのでNOxが出にくい
★エネルギー利用率が高い★排熱を近くで使える

燃焼と違い、高温の炎ができません——だから窒素酸化物がほとんど生じないのです。

硫黄酸化物も出ません——改質の段階で硫黄を取り除くからです。

3つとも「回転せず燃焼しない」ことから来ています——1つの原理から導けるでしょう。

分散形電源としての位置づけ

静かで汚さないから、需要地の近くに置けます

近くに置けるから、排熱が使えて総合効率が上がる——好循環になっています

大規模火力の排熱は海へ捨てるしかない——需要地から遠すぎて運べないのです。

風力の出力が風速に左右される

(1)の記述は、3乗則を言い換えたものです

風速出力の比実際に起きること
★定格の8割★0.51★半分に落ちる
★定格の5割★0.125★8分の1になる

風速が2割落ちるだけで、出力は半減します——3乗で効くからです。

だから風の変動が、そのまま電力の変動になる——問題文の(1)が指摘する特徴になります。

系統から見れば、調整力を別に用意する必要がある——大量導入の課題です。

太陽光の変動は雲の動き、風力の変動は風速の揺れ——どちらも予測が難しいことになります。

太陽電池の材料が3種類ある理由

(3)の3種は、それぞれ別の需要に応えています

材料作り方向く用途
★単結晶シリコン★溶かしてゆっくり引き上げる★面積が限られる屋根
★多結晶シリコン★溶かして型に流し込む★広い土地のメガソーラー
★アモルファス★ガラスや樹脂に薄く堆積させる★曲面・窓・電卓

効率を優先するなら単結晶、費用なら多結晶——選ぶ基準がはっきりしています

アモルファスは効率で劣りますが、材料が100分の1で済む——薄い膜で足りるからです。

問題文の「製造コスト低減や変換効率を高めるための研究」——この2つが常に追求されています

実際、出題後の十数年で価格は10分の1以下になりました——研究の成果が現れています

まとめ

(1)風力発電電力は風速の変動に左右される→正しい
(2)地熱商用発電所は東北・九州で稼働中→誤り
(3)太陽電池単結晶・多結晶・アモルファスSi→正しい
(4)燃料電池振動騒音少・排熱利用・分散形電源→正しい
(5)安定供給多様なエネルギー源の利用が重要→正しい。答えは(2)

▼あわせて解きたい関連問題
・地熱は蒸気×火山地域(新エネ3):【電力】令和6年度下期 A問題5

・この年度の問題を通しで解く:電験3種 平成20年度 問題一覧(全4科目)

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