今回は平成18年度 電力科目 A問題3、新エネルギーユニット最後の問題です。地熱・廃棄物発電・太陽光・燃料電池・風力の5つの記述から誤っているものを選びます。
決め手は数字の相場観。太陽光の変換効率は7〜20%(sn14で確認)に対し、汽力発電は40%超。「最新の汽力発電なみの高い発電効率」はまったくの過大評価です。クリーンさと効率の高さは別の話——ここを混ぜた文が引っかけになります。
平成18年度 電力科目 A問題3:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成18年度 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題3
電験3種 電力科目 【新エネルギー】 平成18年度 A問題3
電力の発生に関する記述として、誤っているのは次のうちどれか。
地熱発電は、地下から発生する蒸気の持つエネルギーを利用し、タービンで発電する方式である。
廃棄物発電は、廃棄物焼却時の熱を利用して発電を行うもので、最近ではスーパーごみ発電など、高効率化を目指した技術開発が進められている。
太陽光発電は、最新の汽力発電なみの高い発電効率をもつ、クリーンなエネルギー源として期待されている。
燃料電池発電は、水素と酸素を化学反応させて電気エネルギーを発生させる方式で、騒音、振動が小さく分散型電源として期待されている。
風力発電は、比較的安定して強い風が吹く場所に設置されるクリーンな小規模発電として開発され、近年では単機容量の増大が図られている。

誤りは(3):太陽光の効率は汽力より低い
「最新の汽力発電なみの高い発電効率」——実際には半分以下です。
| 方式 | 発電効率 | 備考 |
| ★汽力(超々臨界圧) | ★43 % 前後 | ★最新の石炭火力 |
| コンバインドサイクル | 60 % 前後 | 最も高い |
| ★太陽光 | ★7〜20 % | ★実用品の変換効率 |
太陽光の利点は効率ではありません——燃料が要らないことです。
燃料代がゼロなら、効率が低くても成り立ちます——火力とは評価の物差しが違うのです。
「クリーンなエネルギー源として期待されている」の部分は正しい——誤りは効率の記述だけになります。
シリコン単接合の理論限界でも約29 %——原理的に汽力並みには届きません。
(2) 廃棄物発電とスーパーごみ発電
ごみを燃やした熱で発電します——けれども効率が上がりません。
| ふつうの廃棄物発電 | ★スーパーごみ発電 | |
| ★蒸気温度 | ★300 ℃ 前後 | ★500 ℃ 前後 |
| ★発電効率 | ★10 % 前後 | ★30 % 前後 |
| ★しくみ | ★ごみの熱だけ | ★ガスタービンの排熱で過熱する |
なぜ蒸気温度を上げられないのでしょうか——ごみに塩素が含まれるからです。
燃焼ガスの塩化水素が、高温の伝熱管を腐食させます——だから300 ℃ 程度で我慢するのです。
そこで別のガスタービンの排熱で蒸気を過熱する——腐食しない場所で温度を上げる工夫になります。
それがスーパーごみ発電——効率を3倍に高められます。
(1)(4)(5) 残る3つの記述
| 記述 | 内容 | 要点 |
| (1) | 地熱は蒸気でタービンを回す | ★熱水ではなく蒸気 |
| (4) | 燃料電池は騒音・振動が小さい | ★回転部がないから |
| (5) | 風力は単機容量が増大している | ★羽根が長くなり続けている |
(5)の「単機容量の増大」は今も続いています——出題当時は1,000 kW 級、今は洋上で15,000 kW 級。
直径が2乗で効くので、大型化の効果が大きい——3乗則と並ぶ、風力の基本です。
⚠️ よくある間違い
(3)の「クリーンなエネルギー源」だけを見て正しいと判断する——そこは正しいのです。誤りは効率の記述。
(2)の「スーパーごみ発電」を造語だと思ってしまう——実在する技術名です。
(1)の地熱を疑ってしまう——蒸気でタービンを回すので正しい。
(4)の燃料電池を疑ってしまう——回転部がないので静かです。
(5)の「小規模発電として開発され」を疑ってしまう——歴史的な経緯として正しい。
数値や比較が書かれた記述を疑う——本問では(3)だけです。
⏱️ 本番での進め方
①★太陽光の効率は7〜20 %。汽力43 % には届かない。
②★太陽光の利点は効率ではなく燃料が要らないこと。
③★スーパーごみ発電はガスタービン排熱で過熱し効率30 %。
④ごみに塩素があるので蒸気温度を上げられない。
💡 覚え方
「太陽光は効率で勝負していない」——燃料代がゼロだから成り立ちます。汽力並みという記述を見たら誤り——理論限界でも29 % です。
太陽電池の変換効率は平成25年度 A問題5(新エネルギー:太陽光発電)にあります。
廃棄物発電が抱える課題
(2)のスーパーごみ発電が生まれた背景を見ましょう。
| 課題 | 内容 | 影響 |
| ★塩素による腐食 | ★塩化ビニルなどが塩化水素を出す | ★蒸気温度を上げられない |
| ★ごみの質の変動 | ★季節や地域で発熱量が変わる | ★安定運転が難しい |
| ダイオキシン対策 | 800 ℃ 以上で燃やす必要がある | 設備が複雑になる |
火力発電なら600 ℃ 以上の蒸気を使えます——燃料に塩素が入っていないからです。
ごみは何が入っているか分からない——だから低い温度で我慢することになります。
その制約を、外部のガスタービンで回避したのがスーパーごみ発電——発想の転換です。
それでも廃棄物発電に意味がある理由
効率が低くても、ごみはどのみち燃やします。
捨てていた熱を電気にするだけ——燃料費はゼロです。
しかも都市の中にあるので、送電損失もない——近隣に温水を供給できる施設もあります。
要点をもう一度
5つの発電方式を横断的に問う形です。
| 記述 | 方式 | 正誤 |
| (1) | 地熱 | 正 |
| (2) | 廃棄物 | 正 |
| ★(3) | ★太陽光 | ★誤(効率が汽力並みではない) |
| (4) | 燃料電池 | 正 |
| (5) | 風力 | 正 |
他と比較している記述は(3)だけ——そこを疑うのが定石です。
太陽光の評価軸
| 観点 | 太陽光は |
| ★変換効率 | ★低い(7〜20 %) |
| ★燃料費 | ★ゼロ |
| ★設置の自由度 | ★高い |
| ★出力の安定 | ★低い |
効率だけを取り出せば見劣りします——けれども評価すべきはそこではありません。
屋根の上に置けて燃料が要らない——それが火力にはない価値です。
出題当時と現在の違い
平成18年の出題です——数値は変わっても、判断は変わりません。
| 項目 | 平成18年ごろ | ★現在 |
| ★太陽電池の効率 | ★10〜15 % | ★7〜20 % |
| ★汽力の効率 | ★41 % 前後 | ★43 % 前後 |
| ★風車の単機容量 | ★1,000 kW 級 | ★洋上で15,000 kW 級 |
太陽電池の効率は上がりましたが、汽力にはまだ届きません——(3)は今でも誤りです。
理論限界が約29 % なので、原理的に追いつけない——将来も判断は変わらないでしょう。
風力の「小規模発電として開発され」
(5)の記述は、歴史的な経緯を述べています。
当初は数十 kW の小型機から始まりました——それが今では1万 kW を超えるようになりました。
直径が2乗、風速が3乗で効くので、大型化の効果が大きい——塔を高くすれば風も速くなります。
だから「単機容量の増大が図られている」——出題当時から続く流れです。
地熱発電の記述を確かめる
(1)は本問で唯一、原理を述べた記述です。
| 問題文の言葉 | 正しいか | 補足 |
| ★地下から発生する蒸気 | ★正しい | ★熱水を減圧して得る場合も含む |
| ★エネルギーを利用 | ★正しい | ★200〜350 ℃ |
| ★タービンで発電 | ★正しい | ★火力と同じ蒸気タービン |
タービンを回すのは蒸気であって熱水ではありません——ここを入れ替える出題が他の年度にあります。
本問の(1)は正しく書かれている——疑う必要はありません。
火力との違いは、ボイラがなく燃料も要らないこと——蒸気から先は同じ設備です。
だから熱効率は低くても、燃料費がゼロで成り立つ——太陽光と同じ構図になります。
ごみ発電が都市にもたらすもの
(2)の廃棄物発電は、発電以外の価値も持っています。
| 用途 | 内容 |
| ★場内の電力 | ★焼却炉の送風機や排ガス処理装置を動かす |
| ★売電 | ★余った分を系統へ送る |
| ★温水供給 | ★隣接する温水プールや福祉施設へ |
| ★地域冷暖房 | ★周辺のビルへ蒸気や冷水を送る |
都市の中にあるので、熱をそのまま近隣で使えます——大規模火力にはできないことです。
発電効率10 % でも、熱まで含めれば利用率は大きく上がる——評価すべきは総合効率になります。
ごみは毎日出るので、燃料が尽きることもない——安定して運転できます。
清掃工場が「エネルギーセンター」と呼ばれる例もある——位置づけが変わってきました。
まとめ
| (1)地熱 | 地下の蒸気でタービン→正しい |
| (2)廃棄物発電 | スーパーごみ発電など高効率化→正しい |
| (3)太陽光 | 効率7〜20%で汽力なみではない→誤り |
| (4)燃料電池 | 騒音振動小の分散型電源→正しい |
| (5)風力 | 単機容量の増大が進む→正しい。答えは(3) |
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