今回は令和6年度下期 電力科目 A問題5を解説します。地熱発電の原理と適地、バイオマス発電の資源と燃料を埋める空欄補充問題です。
この問題は平成29年度 A問題5と本文・選択肢まで完全に同一の再出題。地熱は地下の蒸気でタービンを回す方式で適地は火山地域、バイオマスは有機物由来で家畜の糞からは気体燃料(メタン)——2つの発電方式の基本セットです。
出題のポイント:地熱発電とバイオマス発電

地熱発電を動かす蒸気と資源の分布、バイオマス燃料の由来と状態を区別して空欄を決めます。
令和6年度下期 電力科目 A問題5:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和6年度下期 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題5
電験3種 電力科目 【新エネルギー】 令和6年度下期 A問題5
次の文章は、地熱発電及びバイオマス発電に関する記述である。地熱発電は、地下から取り出した(ア)によってタービンを回して発電する方式であり、発電に適した地熱資源は(イ)に多く存在する。
バイオマス発電は、植物や動物が生成・排出する(ウ)から得られる燃料を利用する発電方式である。燃料の代表的なものには、木くずから作られる固形化燃料や、家畜の糞から作られる(エ)がある。上記の記述中の空白箇所(ア)〜(エ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(ア) (イ) (ウ) (エ) (1) 蒸気 火山地域 有機物 液体燃料 (2) 熱水の流れ 平野部 無機物 気体燃料 (3) 蒸気 火山地域 有機物 気体燃料 (4) 蒸気 平野部 有機物 気体燃料 (5) 熱水の流れ 火山地域 無機物 液体燃料
地熱・バイオマスの基本

バイオマスは「生物量」を意味する言葉——だから(ウ)は有機物です。
無機物とは、炭素を骨格に持たない物質——鉱物や金属のことです。
生物が作るものはすべて有機物——燃やせばエネルギーが出ます。
| 形態 | 代表例 | 原料 |
| ★固形化燃料 | ★木質ペレット・チップ | ★木くず・間伐材 |
| ★気体燃料 | ★バイオガス(メタン) | ★家畜の糞尿・生ごみ・下水汚泥 |
| ★液体燃料 | ★バイオエタノール・バイオディーゼル | ★サトウキビ・とうもろこし・廃食油 |
家畜の糞から作られるのは気体燃料——だから(エ)は気体燃料になります。
メタン発酵のしくみ
| 段階 | 働く微生物 | できるもの |
| ① | 加水分解菌 | 糖・アミノ酸・脂肪酸 |
| ② | 酸生成菌 | 酢酸・水素・二酸化炭素 |
| ★③ | ★メタン生成菌 | ★メタン(約60 %)+二酸化炭素 |
酸素を断った密閉タンクで進みます——嫌気性発酵と呼ばれます。
発酵後の残りかすは液肥として使える——廃棄物が出ないのが利点です。
畜産の糞尿処理と発電を同時に解決できる——そこに導入の意義があります。
4つの空欄と選択肢照合

火山地域に資源があるという事実は、そのまま制約にもなります。
| 課題 | 内容 |
| ★立地の重なり | ★好適地の多くが国立公園内にある |
| ★温泉との調整 | ★源泉が枯れる懸念から地元の合意が要る |
| ★開発期間 | ★調査から運転開始まで10年以上 |
| ★掘削のリスク | ★掘っても蒸気が出ないことがある |
資源量は世界3位なのに、発電量では10位前後——使いこなせていないのが実情です。
その一方で、設備利用率は70 % 前後と高い——天候に左右されないからです。
太陽光の約15 %、風力の約20 % と比べれば際立ちます——ベースロード電源として使えるのです。
近年はバイナリー方式で温泉の余り湯を使う小規模発電が増えています——源泉に影響を与えないのが利点になります。
⚠️ よくある間違い
(ア)を「熱水の流れ」としてしまう——選択肢(2)(5)です。「タービンを回す」とあれば蒸気。
(ウ)を「無機物」としてしまう——選択肢(2)(5)。生物由来なので有機物です。
(エ)を「液体燃料」としてしまう——選択肢(1)(5)。液体燃料はサトウキビやとうもろこしから作ります。
(イ)を「平野部」としてしまう——選択肢(2)(4)。マグマが浅いのは火山地域。
(ウ)の有機物だけで(1)(3)(4)に絞れます——あとは(エ)で決まるでしょう。
⏱️ 本番での進め方
①★バイオマス=生物由来=有機物。
②★糞は気体、木くずは固形、糖は液体。
③★メタン発酵は嫌気性。メタン約60 %。
④地熱の設備利用率は70 % 前後と高い。
💡 覚え方
「原料の形が、燃料の形を決める」——固い木くずは固形、湿った糞は発酵させて気体、甘い作物は発酵させて液体です。
平成29年度 A問題5(新エネルギー:地熱発電とバイオマス発電)は本問とまったく同じ問題です。答えも同じ(3)——過去問がそのまま出た例になります。
バイオマスがカーボンニュートラルである理由
燃やせば二酸化炭素は出ます——それでも「増やさない」と言えるのはなぜでしょうか。
| ★バイオマス | ★化石燃料 | |
| ★炭素の出どころ | ★今の大気から植物が吸ったもの | ★数億年前に地中へ固定されたもの |
| ★燃やすと | ★吸った分が戻るだけ | ★大気中の量が純増する |
| ★差し引き | ★ゼロ | ★プラス |
炭素が循環の中にあるか、外から持ち込まれるか——そこが決定的な違いです。
ただし収集や輸送で化石燃料を使えば、その分は純増します——完全にゼロにはなりません。
廃棄物系と資源作物系
| 区分 | 例 | 特徴 |
| ★廃棄物系 | ★家畜の糞尿・生ごみ・下水汚泥・建設廃材 | ★処理費が浮くので採算がよい |
| ★未利用系 | ★間伐材・稲わら・もみ殻 | ★集めるコストが課題 |
| ★資源作物系 | ★さとうきび・とうもろこし | ★食料と競合する |
本問の「家畜の糞」は廃棄物系——捨てるものを使うので最も有利です。
畜産農家にとっては糞尿処理の手段でもある——発電は副産物とも言えます。
バイオマス発電の方式
燃料の形によって、発電のしかたも変わります。
| 方式 | 燃料 | しくみ |
| ★直接燃焼 | ★木質チップ・ペレット | ★ボイラで蒸気を作りタービンを回す |
| ★ガス化 | ★木質・廃棄物 | ★可燃ガスにしてガスエンジンを回す |
| ★メタン発酵 | ★糞尿・生ごみ・汚泥 | ★バイオガスでガスエンジンを回す |
| 混焼 | 木質+石炭 | 既存の石炭火力に混ぜて燃やす |
湿ったものは燃やせません——だから糞尿は発酵させるのです。
乾いたものはそのまま燃やせる——木くずは直接燃焼になります。
燃料の含水率が方式を決めている——単純な原則です。
混焼という現実解
既存の石炭火力に木質ペレットを数 % 混ぜる方式です。
新しい発電所を建てずに済む——設備投資が小さいのが利点になります。
大型ボイラの高い熱効率をそのまま使える——専焼の小型設備より効率がよいのです。
その一方で、燃料の輸入に頼る面もある——国内の未利用材を使う本来の趣旨とは離れます。
要点をもう一度
平成29年度とまったく同じ問題で、答えも同じ(3)です。
| 空欄 | 答え | 紛らわしい選択肢 |
| (ア) | ★蒸気 | ★熱水の流れ |
| (イ) | ★火山地域 | ★平野部 |
| (ウ) | ★有機物 | ★無機物 |
| (エ) | ★気体燃料 | ★液体燃料 |
4欄とも、対になる語が1つずつ用意されています——正しいほうを確実に覚えましょう。
過去問がそのまま出る例——7年前の問題でも解いておく価値があります。
バイオマスは炭素の貯金
植物は成長するあいだ、大気の二酸化炭素を炭素として蓄えます。
燃やせばそれが戻るだけ——放置して腐らせても同じことが起きます。
どうせ戻るなら、途中でエネルギーを取り出そう——それがバイオマス発電の発想です。
バイオガスの精製と利用
発酵で得たガスは、そのままでは使いにくい面があります。
| 成分 | 割合 | 扱い |
| ★メタン | ★約60 % | ★これが燃料になる |
| ★二酸化炭素 | ★約40 % | ★燃えないので発熱量を下げる |
| ★硫化水素 | ★微量 | ★腐食性があるので除去する |
発熱量は都市ガスの半分程度——二酸化炭素が混ざっているためです。
それでもガスエンジンは動かせる——発電機を回すには十分になります。
硫化水素を除かないと配管やエンジンを傷めます——脱硫が必須の工程です。
精製して二酸化炭素を除けば、都市ガスに混ぜられる——発電以外の使い道も広がります。
木質バイオマス発電の規模
燃料が集まる範囲が、そのまま発電所の規模を決めます。
| 出力 | 年間の燃料 | 集める範囲の目安 |
| ★2,000 kW | ★約2.4万トン | ★半径30 km 程度 |
| ★5,000 kW | ★約6万トン | ★半径50 km 程度 |
| ★50,000 kW | ★約60万トン | ★輸入に頼ることが多い |
石炭火力なら100万 kW が普通——バイオマスはその50分の1以下です。
大きくすれば効率は上がるが、燃料が足りなくなる——そのつり合いで規模が決まります。
だから地域に密着した小規模分散型になる——大規模集中の火力とは性格が異なります。
発電と同時に熱も利用すれば、総合効率は80 % 前後まで上がる——コージェネレーションとの相性がよいのです。
まとめ
| (ア) | 地下から取り出した蒸気でタービンを回す |
| (イ) | 地熱資源は火山地域に多い |
| (ウ) | バイオマス=植物・動物の有機物 |
| (エ) | 家畜の糞→気体燃料(メタンガス) |
| 答え | (3)(H29問5と完全同一) |
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