今回は平成29年度 電力科目 A問題5を解説します。地熱発電の原理と適地、バイオマス発電の資源と燃料を埋める空欄補充問題です。
この問題は令和6年度下期 A問題5(新エネ3)として本文・選択肢・答えの番号まで完全に再出題されました。7年越しの完全リサイクル——地熱とバイオマスの基本セットは、それだけ確実に問われ続けるということです。
平成29年度 電力科目 A問題5:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成29年度 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題5
電験3種 電力科目 【新エネルギー】 平成29年度 A問題5
次の文章は、地熱発電及びバイオマス発電に関する記述である。地熱発電は、地下から取り出した(ア)によってタービンを回して発電する方式であり、発電に適した地熱資源は(イ)に多く存在する。
バイオマス発電は、植物や動物が生成・排出する(ウ)から得られる燃料を利用する発電方式である。燃料の代表的なものには、木くずから作られる固形化燃料や、家畜の糞から作られる(エ)がある。上記の記述中の空白箇所(ア)〜(エ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(ア) (イ) (ウ) (エ) (1) 蒸気 火山地域 有機物 液体燃料 (2) 熱水の流れ 平野部 無機物 気体燃料 (3) 蒸気 火山地域 有機物 気体燃料 (4) 蒸気 平野部 有機物 気体燃料 (5) 熱水の流れ 火山地域 無機物 液体燃料

(ア)(イ) 地熱発電のしくみ
地下のマグマで温められた水を、井戸で取り出します。
| 順 | 起きること |
| ① | ★地下のマグマが岩盤を熱する |
| ② | ★しみ込んだ雨水が温められて地熱貯留層をつくる |
| ③ | ★生産井で汲み上げる(200〜350 ℃) |
| ★④ | ★気水分離器で蒸気と熱水に分ける |
| ★⑤ | ★蒸気でタービンを回す |
| ⑥ | 残った熱水は還元井で地下へ戻す |
タービンを回すのは蒸気——熱水そのものではありません。
だから(ア)は「蒸気」——「熱水の流れ」では水車のようになってしまいます。
マグマが浅いところにあるのは火山地域——だから(イ)は火山地域です。
日本は世界第3位の地熱資源量を持ちます——火山国だからです。
(ウ)(エ) バイオマス燃料
バイオマスは、生物由来の資源——だから(ウ)は有機物です。
| 形態 | 代表例 | 原料 |
| ★固形化燃料 | ★木質ペレット・チップ | ★木くず・間伐材 |
| ★気体燃料 | ★バイオガス(メタン) | ★家畜の糞尿・生ごみ・下水汚泥 |
| ★液体燃料 | ★バイオエタノール・バイオディーゼル | ★サトウキビ・とうもろこし・廃食油 |
家畜の糞から作られるのはバイオガス——気体燃料です。
糞尿を密閉タンクに入れ、酸素を断って微生物に分解させます——メタン発酵と呼ばれる工程です。
できたガスはメタンが約60 %——都市ガスと同じ成分になります。
液体燃料はサトウキビなどの糖を発酵させて作る——糞からは作りません。
地熱発電の3つの方式
| 方式 | タービンを回すもの | 備考 |
| ★ドライスチーム | ★蒸気だけ | ★最も単純。蒸気だけ噴く井戸が必要 |
| ★フラッシュ | ★熱水を減圧して発生させた蒸気 | ★国内の主流 |
| ★バイナリー | ★低沸点媒体の蒸気 | ★温度の低い熱水でも使える |
国内で多いのはフラッシュ方式——取り出すのは蒸気と熱水の混合だからです。
気水分離器で蒸気だけを取り出し、タービンへ送る——沸騰水型原子炉と似た構成だと言えます。
バイナリー方式は、熱水でペンタンなどを蒸発させます——80 ℃ 程度の温泉でも発電できるのが利点です。
⚠️ よくある間違い
(ア)を「熱水の流れ」としてしまう——選択肢(2)(5)がそれです。タービンは蒸気で回します。
(イ)を「平野部」としてしまう——選択肢(2)(4)。地熱資源は火山地域に偏っています。
(ウ)を「無機物」としてしまう——選択肢(2)(5)。バイオマスは生物由来=有機物です。
(エ)を「液体燃料」としてしまう——選択肢(1)(5)。家畜の糞からはバイオガス=気体燃料。
(ア)と(エ)の2欄で確定できます。
⏱️ 本番での進め方
①★地熱のタービンを回すのは蒸気。熱水ではない。
②★地熱資源は火山地域に多い。日本は世界3位。
③★バイオマス=生物由来=有機物。
④★家畜の糞→メタン発酵→バイオガス=気体燃料。
💡 覚え方
「地熱は蒸気で回す、糞からはガス」——この2つで答えが決まります。木くずは固形、糞は気体、糖は液体——原料と形態の対応を押さえましょう。
令和6年度下期 A問題5(新エネルギー:地熱発電とバイオマス発電)は本問とまったく同じ問題です。答えも同じ(3)——7年を隔てた再出題になります。
地熱発電の長所と短所
他の再生可能エネルギーと比べると、性格がはっきりします。
| ★地熱 | 太陽光 | 風力 | |
| ★設備利用率 | ★70 % 前後 | 15 % 前後 | 20 % 前後 |
| ★天候の影響 | ★受けない | 受ける | 受ける |
| ★昼夜の差 | ★ない | 大きい | あり |
| ★開発期間 | ★10年以上 | 1年程度 | 3〜5年 |
地熱は安定して発電し続けられます——ベースロード電源になれるのです。
その代わり、開発に時間と費用がかかる——掘っても蒸気が出ないこともあります。
好適地の多くが国立公園内にあることも制約——温泉地との調整も必要になります。
日本の地熱資源
資源量は約2,300万 kW で世界第3位——アメリカ、インドネシアに次ぐ規模です。
けれども実際の発電設備は約60万 kW——資源の3 % も使えていません。
火山国であることが、そのまま資源になっている——活かしきれていないのが実情です。
地熱発電所の井戸
地熱発電には2種類の井戸が要ります。
| 井戸 | 役割 | 深さ |
| ★生産井 | ★蒸気と熱水を汲み上げる | ★1,000〜3,000 m |
| ★還元井 | ★使い終わった熱水を地下へ戻す | ★同程度 |
なぜ熱水を戻すのでしょうか——3つの理由があります。
| 理由 | 内容 |
| ★資源の維持 | ★汲み上げるだけでは貯留層が枯れる |
| ★地盤沈下の防止 | ★水を抜き続けると地盤が沈む |
| ★排水処理 | ★熱水にはヒ素やホウ素が含まれる |
地熱は「使えばなくなる」資源ではありません——けれども汲み上げ過ぎれば枯れます。
戻した水が地下で温められて再び上がってくる——循環させることで長く使えます。
スケール(析出物)が配管に付着するのも課題——シリカやカルシウムが固まります。
要点をもう一度
2つの発電方式を、1問でまとめて問う形です。
| 空欄 | 答え | 決め手 |
| (ア) | ★蒸気 | ★タービンを回すのは蒸気 |
| (イ) | ★火山地域 | ★マグマが浅い場所 |
| (ウ) | ★有機物 | ★生物由来だから |
| (エ) | ★気体燃料 | ★糞はメタン発酵させる |
(ア)と(ウ)の2欄で選択肢は(3)に確定します。
地熱もバイオマスも、天候に左右されない再生可能エネルギー——太陽光や風力との大きな違いです。
再生可能エネルギーの分類
| 区分 | 該当 | 性質 |
| ★変動する | ★太陽光・風力 | ★天候次第 |
| ★安定している | ★地熱・バイオマス・水力 | ★調整できる |
系統に組み込みやすいのは後者——ベースロードとして使えます。
バイナリー発電という広がり
従来の地熱発電は、200 ℃ 以上の蒸気が必要でした。
| ★フラッシュ方式 | ★バイナリー方式 | |
| ★必要な温度 | ★200 ℃ 以上 | ★80 ℃ 前後から |
| ★タービンを回す媒体 | ★地下の蒸気そのもの | ★ペンタンなど低沸点の媒体 |
| ★系統 | ★1つ | ★2つ(バイナリー=2つの意味) |
| ★規模 | ★大規模 | ★小規模(数十〜数千 kW) |
熱水で低沸点の媒体を沸騰させ、その蒸気でタービンを回します——加圧水型原子炉の蒸気発生器と同じ発想です。
温泉の余り湯でも発電できる——源泉に手を加えないので地元の理解を得やすいのです。
大規模開発が難しい日本では、この方式が現実的な選択肢——導入が着実に増えています。
地熱発電所の主な設備
火力発電所と似た構成ですが、ボイラがありません。
| 設備 | 働き | 火力との対応 |
| ★生産井 | ★蒸気と熱水を取り出す | ★ボイラに相当(燃料が不要) |
| ★気水分離器 | ★蒸気だけを分ける | ★沸騰水型原子炉と同じ |
| ★蒸気タービン | ★蒸気で回す | ★同じ |
| 復水器 | 蒸気を水に戻す | 同じ |
| ★還元井 | ★熱水を地下へ戻す | ★火力にはない |
燃料を燃やす設備が要らない——だから排気ガスも出ません。
その代わり、蒸気に硫化水素などが混じります——除去する設備が必要になります。
蒸気の温度が火力より低いので、熱効率は10〜20 % 程度——数字としては低いのです。
けれども燃料代がかからない——効率の低さは大きな欠点になりません。
まとめ
| (ア) | 地下から取り出した蒸気でタービン |
| (イ) | 地熱資源は火山地域に多い |
| (ウ) | バイオマス=有機物 |
| (エ) | 家畜の糞→気体燃料(メタン) |
| 答え | (3)(R06下問5と完全同一) |
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