今回は平成22年度 電力科目 A問題5を解説します。風力発電機の出力が風速の何乗に比例するかを、運動エネルギーと通過空気量に分解して答える空欄補充問題です。
3乗則を丸暗記でなく導出で問う良問。同一質量の空気の運動エネルギー=v²(2乗)、単位時間に風車面を通過する空気の量=v(1乗)、掛け合わせて出力=v³(3乗)——2+1=3の足し算です。
平成22年度 電力科目 A問題5:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成22年度 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題5
電験3種 電力科目 【新エネルギー】 平成22年度 A問題5
次の文章は、風力発電に関する記述である。風として運動している同一質量の空気が持っている運動エネルギーは、風速の(ア)乗に比例する。また、風として風力発電機の風車面を通過する単位時間当たりの空気の量は、風速の(イ)乗に比例する。したがって、風車面を通過する空気の持つ運動エネルギーを電気エネルギーに変換する風力発電機の変換効率が風速によらず一定とすると、風力発電機の出力は風速の(ウ)乗に比例することとなる。上記の記述中の空白箇所(ア)、(イ)及び(ウ)に当てはまる数値として、正しいものを組み合わせたのは次のうちどれか。
(ア) (イ) (ウ) (1) 2 2 4 (2) 2 1 3 (3) 2 0 2 (4) 1 2 3 (5) 1 1 2

(ア) 運動エネルギーは風速の2乗
同じ質量の空気が持つ運動エネルギー——力学の基本式そのものです。
だから(ア)は2——ここは迷いようがありません。
風速が2倍になれば、同じ質量の空気のエネルギーは4倍になります。
(イ) 通過する空気の量は風速の1乗
1秒間に風車面を通り抜ける空気の量を考えます。
風速 v で流れているなら、1秒間に長さ v の柱ぶんが通過する——断面積 A を掛ければ体積です。
★風速の1乗に比例
だから(イ)は1——速く流れれば、そのぶん多くの空気が通るのです。
(ウ) 出力は風速の3乗
(ア)と(イ)を掛け合わせます。
★風速の3乗
2乗と1乗を掛けて3乗——だから(ウ)は3です。
3乗則が意味すること
| 風速 | 出力の比 | 意味 |
| 1倍 | 1 | 基準 |
| ★1.26倍 | ★2倍 | ★わずかな差で倍になる |
| ★2倍 | ★8倍 | ★けた違いに増える |
| ★0.5倍 | ★0.125倍 | ★8分の1に落ちる |
風速がわずかに違うだけで、出力は大きく変わります——だから立地の選定が決定的です。
年平均風速が6 m/s と7 m/s の土地では、出力が約1.6倍違う——採算性がまるで変わります。
風車を高くするのも同じ理由——地表から離れるほど風は速いのです。
ベッツの限界
風のエネルギーをすべて取り出すことはできません。
全部奪えば、空気が風車の後ろで止まってしまう——すると後ろがつかえて、風が通らなくなります。
約59.3 % が理論上の上限——実機では40 % 前後になります。
⚠️ よくある間違い
(ア)を1としてしまう——選択肢(4)(5)がそれです。運動エネルギーは½mv²——2乗になります。
(イ)を2としてしまう——選択肢(1)。通過する量は体積の話で、速度の1乗です。
(ウ)を2としてしまう——選択肢(3)。(ア)と(イ)を足すことを忘れています。
(ウ)を4としてしまう——選択肢(1)。2乗と2乗を掛けた形です。
(ア)+(イ)=(ウ)という関係が成り立ちます——2+1=3。この検算で選択肢を絞れます。
⏱️ 本番での進め方
①★運動エネルギー½mv² より (ア)=2。
②★単位時間の質量ρAv より (イ)=1。
③★掛け合わせて (ウ)=3。(ア)+(イ)=(ウ)。
④★風速2倍で出力8倍。立地がすべてを決める。
💡 覚え方
「エネルギーで2乗、流れる量で1乗、合わせて3乗」——P=½ρAv³です。この式1つで(ア)(イ)(ウ)すべてが読み取れます。
風力発電の出力を実際に計算する問題が令和2年度 A問題5(新エネルギー:風力発電)にあります。
風車の出力を実際に計算する
直径80 m の風車が風速12 m/s を受ける場合を計算してみましょう。
★直径の2乗に比例
★ρ=1.2、Cp=0.4
★2 MW 級
実際の大型風車の定格出力と一致します——式は現実をよく表しています。
大型化が進む理由
| 要素 | 出力への効き方 | 結果 |
| ★風速 | ★3乗 | ★風の強い場所へ・タワーを高く |
| ★直径 | ★2乗 | ★羽根を長く |
| 空気密度 | 1乗 | 変えられない |
直径を2倍にすれば出力は4倍——だから羽根はどんどん長くなります。
洋上風力なら羽根の直径が200 m を超えるものもある——1基で1万世帯ぶんをまかないます。
タワーを高くするのも、上空ほど風が速いから——3乗で効くので効果が大きいのです。
風車の種類と制御
実用の大型風車は、ほぼ1つの形に収束しています。
| 形式 | 特徴 | 採用 |
| ★プロペラ形(水平軸) | ★効率が高い・3枚羽根 | ★大型機のほぼすべて |
| ダリウス形(垂直軸) | 風向を選ばない | 小型・実験的 |
| サボニウス形(垂直軸) | 低速でも回る・効率は低い | 小型 |
3枚羽根なのは、効率と振動のつり合いが最もよいから——2枚では回転が不安定、4枚では材料が増えます。
風が強すぎるときの制御
| 風速 | 呼び名 | 動作 |
| ★3 m/s 前後 | ★カットイン | ★発電を始める |
| ★12 m/s 前後 | ★定格風速 | ★定格出力に達する |
| ★25 m/s 前後 | ★カットアウト | ★危険なので停止する |
3乗則のままなら、風速25 m/s で定格の9倍の出力になります——設備がもちません。
だから定格風速を超えたら、羽根の角度を変えて風を逃がす——ピッチ制御と呼ばれます。
台風のときはむしろ止める——強い風がそのまま利益になるわけではないのです。
要点をもう一度
本問は P=½ρAv³ という1つの式に集約されます。
| 空欄 | 答え | 根拠 |
| (ア) | ★2 | ★運動エネルギー ½mv² |
| (イ) | ★1 | ★単位時間の質量 ρAv |
| (ウ) | ★3 | ★2+1=3 |
(ア)+(イ)=(ウ)——この関係が成り立つ選択肢は(2)だけです。
選択肢を見ると、2+2=4、2+1=3、2+0=2、1+2=3、1+1=2——足し算が合うのは(2)(3)(4)の3つになります。
そこから(ア)=2、(イ)=1 で(2)に確定——2段階で決まります。
設備利用率が低い理由
風力の設備利用率は20 % 前後——定格風速に達する時間が短いからです。
風速が半分になれば出力は8分の1——弱い風の日はほとんど発電しません。
3乗則は、出力の大きさだけでなく変動の激しさも決めている——そこが系統運用の課題になります。
まとめ
| (ア) | 運動エネルギー(1/2)mv²→2乗 |
| (イ) | 通過空気量ρAv→1乗 |
| (ウ) | 出力=2+1=3乗 |
| 正体 | P=(1/2)ρAv³ |
| 答え | (2) |
▼あわせて解きたい関連問題
・風車の軸出力の計算(新エネ11・3乗則の実践):【電力】平成30年度 A問題5
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