今回は平成30年度 電力科目 A問題5を解説します。ロータ半径30m・風速10m/s・パワー係数50%・空気密度1.2kg/m³の風車について、ロータ軸出力[kW]を求める計算問題です。
新エネ6・新エネ8で覚えた3乗則を、ついに数字で使う回。P=(1/2)ρAv³×Cpに代入するだけですが、受風面積はA=πr²(直径ではなく半径の2乗)と、最後のW→kWだけ気をつけましょう。
平成30年度 電力科目 A問題5:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成30年度 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題5
電験3種 電力科目 【新エネルギー】 平成30年度 A問題5
ロータ半径が30mの風車がある。風車が受ける風速が10m/sで、風車のパワー係数が50%のとき、風車のロータ軸出力[kW]に最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
ただし、空気の密度を1.2kg/m³とする。ここでパワー係数とは、単位時間当たりにロータを通過する風のエネルギーのうちで、風車が風から取り出せるエネルギーの割合である。
(1)57 (2)85 (3)710 (4)850 (5)1 700 kW

公式に当てはめるだけ
与えられた値をそのまま入れます——迷う要素はありません。
★半径30 m
★答え
順に掛けていくだけ——0.6×2,827=1,696、×1,000=1,696,000、×0.5=848,000。
パワー係数とは何か
問題文が定義を書いてくれています——風のエネルギーのうち、取り出せる割合です。
| 段階 | エネルギー | 本問の値 |
| ★風が持つ | ★½ρAv³ | ★1,700 kW |
| ★風車が取り出す | ★½ρAv³Cp | ★850 kW |
| 発電機の出力 | さらに効率を掛ける | 約800 kW |
本問が問うているのはロータ軸出力——発電機に入る前の、羽根が取り出した機械出力です。
だから発電機効率は掛けません——Cp までで止めるのが正解になります。
なぜ50 % が上限に近いのか
風のエネルギーをすべて奪うことはできません——全部奪えば空気が止まってしまうからです。
本問の50 % は、その理論限界の84 % にあたります——実機として妥当な値です。
実際の大型風車も40〜50 % 前後——問題の設定は現実に即しています。
風速の3乗が問われ続けている
| 年度 | 問われ方 | 答え |
| ★平成22年度 A5 | ★空欄補充で「3乗」を答えさせる | ★(2) |
| ★平成24年度 A5 | ★「風速に比例」を誤りとして選ばせる | ★(2) |
| ★平成28年度 A5 | ★「風速の2乗に比例」を誤りとして選ばせる | ★(4) |
| ★平成30年度 A5 | ★実際に出力を計算させる | ★(4) |
4つの年度で、同じ3乗則が形を変えて出ています——本問は「実際に計算させる」型です。
P=½ρAv³Cp を書ければ、どの型でも対応できる——覚えるべき式は1つだけになります。
⚠️ よくある間違い
パワー係数を掛け忘れる——1,700 kW となり、選択肢(5)に落ちます。これが最も多い誤りです。
風速を2乗にしてしまう——85 kW で選択肢(2)。3乗則を覚えていないと、ここへ行きます。
半径30 m を直径と読む——面積が4分の1になり、212 kW。問題文は「ロータ半径」です。
½ を忘れる——1,700 kW となり、これも選択肢(5)。
選択肢が57/85/710/850/1,700——係数や指数を取り違えた値が並んでいます。
⏱️ 本番での進め方
①★P=½ρAv³Cp に入れるだけ。
②★A=πr²。半径30 m なので2,827 m²。
③★Cp を掛け忘れると1,700 kW=選択肢(5)。
④「ロータ軸出力」なので発電機効率は掛けない。
💡 覚え方
「½・密度・面積・風速の3乗・パワー係数」——5つを順に掛けるだけです。Cp を忘れると答えが倍になる——そこだけ注意しましょう。
3乗則の原理は平成22年度 A問題5(新エネルギー:風力発電)、記述問題は平成24年度 A問題5(新エネルギー:風力発電)にあります。
この風車の規模を実感する
ロータ半径30 m ということは、直径60 m——ビル20階ぶんの円です。
| 項目 | 本問の値 | 実感 |
| ★受風面積 | ★2,827 m² | ★テニスコート約11面 |
| ★風速 | ★10 m/s | ★風速階級5(さわやかな風) |
| ★ロータ軸出力 | ★850 kW | ★一般家庭約1,700世帯ぶん |
風速10 m/s は、旗がはためく程度の風——台風のような強風ではありません。
それでも850 kW——面積の広さが効いています。
風速が変わるとどうなるか
★8分の1
★3.4倍
風速が半分になると、出力は8分の1——弱い風の日はほとんど発電しません。
だから風力発電の設備利用率は20 % 前後にとどまる——3乗則が変動の激しさも決めています。
ロータ軸出力から発電機出力へ
本問はロータ軸で止めていますが、その先も見ておきましょう。
| 段階 | 効率 | 本問の値から |
| ★風のエネルギー | ★— | ★1,700 kW |
| ★ロータ軸出力 | ★Cp=0.5 | ★850 kW |
| 増速機を経て | 0.97 前後 | 824 kW |
| ★発電機出力 | ★0.95 前後 | ★783 kW |
問われているのがどの段階かで、掛ける効率が変わります——「ロータ軸出力」なら Cp までです。
問題文をよく読めば、どこまで計算すべきか分かる——余計な効率を掛けないことになります。
増速機を使わない設計
ロータは毎分15〜20回転しかしません——そのままでは発電機を回せません。
だから増速機で100倍前後に上げる——けれども故障の原因にもなります。
近年は多極の永久磁石式発電機を直結する方式も増えました——ダイレクトドライブと呼ばれます。
可動部が減るので保守が楽になる——洋上風力では特に重要です。
要点をもう一度
本問は公式に代入するだけの計算問題です。
| 順 | やること | 値 |
| ★① | ★A=πr² | ★2,827 m² |
| ★② | ★½ρ を掛ける | ★0.6×2,827=1,696 |
| ★③ | ★v³ を掛ける | ★×1,000=1,696,000 |
| ★④ | ★Cp を掛ける | ★×0.5=848,000 W |
4手で答えが出ます——約850 kW=選択肢(4)。
④を忘れると1,700 kW=選択肢(5)——ちょうど倍になるので気づきにくいのです。
検算のしかた
選択肢の並びから、誤りの型が読み取れます。
850と1,700はちょうど2倍——Cp を掛けたかどうかの差です。
85は850の10分の1——v³ を v² にした差になります。
自分の答えが選択肢のどれと何倍の関係にあるか——それを見れば、どこを間違えたか分かります。
まとめ
| 受風面積 | A=π×30²≒2827m² |
| 風のパワー | 0.5×1.2×2827×10³≒1.696×10⁶W |
| パワー係数 | ×0.5(風から取り出せる割合) |
| 軸出力 | ≒848×10³W=848kW |
| 答え | ≒850kW→(4) |
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