新エネ6【電験3種 電力】風車のパワーは風速の3乗に比例!「比例」の一語を見逃すな 令和5年度上期 A問題5 完全解説

電験3種 電力科目 新エネルギー 令和5年度上期 A問題5 風速2倍で出力8倍!3乗則の一語を見逃すな

今回は令和5年度上期 電力科目 A問題5を解説します。風力発電について、再生可能エネルギーとしての性質・風速とパワーの関係・離島での活用・発電機の種類・騒音対策の5つの記述から誤っているものを選ぶ問題です。

覚えるべきは風力の3乗則。風の運動エネルギーは(1/2)mv²で、単位時間に通過する空気の質量m自体がρAvと風速に比例するので、パワーはP=(1/2)ρAv³——風速の3乗に比例します。風速が2倍なら出力は8倍です。

目次

令和5年度上期 電力科目 A問題5:問題文と選択肢

まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

電験3種 電力科目 新エネルギー 令和5年度上期 A問題5 問題文
令和5年度上期 電力科目 A問題5 問題文

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和5年度上期 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題5

電験3種 電力科目 【新エネルギー】 令和5年度上期 A問題5

 風力発電に関する記述として、誤っているものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。

風力発電は、風の力で風力発電機を回転させて電気を発生させる発電方式である。風が得られれば燃焼によらずパワーを得ることができるため、発電するときにCO₂を排出しない再生可能エネルギーである。
風車で取り出せるパワーは風速に比例するため、発電量は風速に左右される。このため、安定して強い風が吹く場所が好ましい。
離島においては、風力発電に適した地域が多く存在する。離島の電力供給にディーゼル発電機を使用している場合、風力発電を導入すれば、そのディーゼル発電機の重油の使用量を減らす可能性がある。
一般的に、風力発電では同期発電機、永久磁石式発電機、誘導発電機が用いられる。
風力発電では、翼が風を切るため騒音を発生する。風力発電を設置する場所によっては、この騒音が問題となる場合がある。この騒音対策として、翼の形を工夫して騒音を低減している。

答え誤っている記述は (2)です。

出題のポイント:風速の3乗比例を見抜く

風の運動エネルギーと通過空気量から風力パワーが風速の3乗に比例することを導く解説
運動エネルギーのv²と1秒間の空気量のvを掛けるため、風のパワーはv³に比例します。

風の運動エネルギーは風速の2乗に比例し、1秒間にロータ面を通る空気の質量は風速に比例します。したがって風が供給するパワーは風速の3乗に比例します。この基本式を軸に、残り4つの記述も正誤判定します。

誤りは(2):3乗に比例する

「風速に比例する」——1乗ではなく3乗です。

風力発電の出力
\( P=\dfrac{1}{2}\rho A v^3 C_p \)

風速は3乗で効く

この誤りは、6つの年度で形を変えて出ています

年度問われ方答え
★平成22年度 A5★空欄補充(2乗・1乗・3乗)★(2)
★平成24年度 A5★「風速に比例」を誤りとして選ばせる★(2)
★平成28年度 A5★「風速の2乗に比例」を誤りとして選ばせる★(4)
★平成30年度 A5★実際に出力を計算させる★(4)
★令和4年度上期 A5★空欄補充(2乗と3乗を並べる)★(2)
★令和5年度上期 A5★「風速に比例」を誤りとして選ばせる★(2)

4年度が「誤りを選ばせる」型、2年度が空欄補充、1年度が計算——あらゆる角度から問われています

逆に言えば、3乗さえ覚えていれば6問が取れる——費用対効果が最も高い知識です。

「風速に比例」「風速の2乗に比例」はいずれも誤り——3乗以外はすべて誤りになります。

風のパワーが風速の3乗に比例する理由

ロータ面を通る空気、風向、受風面積、空気密度、パワー係数を用いて風力パワーの式を導く解説
同じ空気密度・受風面積・パワー係数なら、風速2倍で理論上のパワーは8倍です。
★平成24年度 A5★令和5年度上期 A5(本問)
(1)(2)(3)(5)★同一の文★同一の文
★(4)の後半★「特に、大形には同期又は誘導」の一文がある★その一文がない
誤りの記述★(2)★(2)

違いは(4)の一文だけ——誤りの箇所も答えも同じです。

9年を隔てて、ほぼそのまま再出題された例——過去問を解く価値がよく分かります

5つの記述を照合して選択肢(2)を選ぶ

風力発電に関する5記述を正誤判定し、風速に比例するという選択肢2を誤りとして選ぶ解説
(1)(3)(4)(5)は正しく、風車のパワーを風速に比例するとした選択肢(2)が誤りです。

問題文には出てきませんが、実務では重要です

制御動かすもの目的
★ピッチ制御★羽根の取付角度★風を逃がして出力を抑える
★ヨー制御★ナセル全体の向き★風向きに正対させる
★ブレーキ★軸を機械的に止める★完全停止させる

3乗則があるので、風速25 m/s では定格の9倍の出力になります——設備がもちません

だから定格風速12 m/s を超えたらピッチ制御で絞る——羽根を風に平行にすれば風が素通りします

それでも危険なら、ブレーキで完全に止める——台風のときは発電しません

⚠️ よくある間違い
(2)の後半「安定して強い風が吹く場所が好ましい」だけを見て正しいと判断する——前半の「風速に比例」が誤りです。
1つの記述に、正しい部分と誤った部分が混ざっています——最後まで読むこと
(1)の「CO₂を排出しない」を疑ってしまう——発電時には出しません
(3)の離島の話を疑ってしまう——正しいのです。ディーゼル発電の重油を減らせます
(4)の発電機3種を疑ってしまう——いずれも実際に使われています
(5)の騒音対策を疑ってしまう——翼の形状で低減しています

⏱️ 本番での進め方
①★「風速に比例」は誤り。3乗に比例。
②★同じ誤りが6つの年度で出題されている。
③平成24年度とほぼ同一問題。答えも(2)。
④強風時はピッチ制御で羽根を風に平行にする。

💡 覚え方
「3乗以外はすべて誤り」——1乗でも2乗でも切れます6年度で問われた最頻出の知識——ここだけは確実にしましょう

ほぼ同一の問題が平成24年度 A問題5新エネルギー:風力発電)にあります。空欄補充型は令和4年度上期 A問題5新エネルギー:風力発電)へ。

風力発電のパワー曲線

(2)の3乗則は、実機では途中で頭打ちになります

区間風速出力
★停止★3 m/s 未満★ゼロ(回らない)
★3乗の区間★3〜12 m/s★3乗で増える
★定格の区間★12〜25 m/s★一定に保つ(ピッチ制御)
★停止★25 m/s 超★ゼロ(危険なので止める)

3乗則がそのまま効くのは、定格風速までの範囲——それ以上は制御で抑えます

もし抑えなければ、25 m/s で定格の9倍——発電機も塔も耐えられません

だから発電機の容量は、定格風速に合わせて決める——最大風速に合わせると過大になります

なぜ台風で発電できないのか

「強い風ほどたくさん発電する」は、ある範囲までの話です。

25 m/s を超えると止める——台風のときはむしろ発電量がゼロになります。

だから「安定して強い風」が望ましい——問題文の(2)後半が正しい理由です。

要点をもう一度

誤りは(2)の「風速に比例」だけです。

記述正誤要点
(1)発電時にCO₂を出さない
★(2)★誤★3乗に比例する
(3)離島のディーゼル代替
(4)同期・永久磁石式・誘導
(5)翼の形状で騒音を低減

6年度で問われた最頻出の1点——ここだけは確実にしましょう

3乗が生む2つの帰結

帰結内容
★立地が決定的★年平均風速が1 m/s 違えば採算が変わる
★変動が激しい★設備利用率が20 % 前後にとどまる

同じ3乗則が、利点と欠点の両方を生んでいます——強い風では大きく発電し、弱い風ではほとんど発電しない

だから「安定して強い風」が理想——強いだけでも、安定しているだけでも足りません

離島でのハイブリッド運用

(3)の離島の話を、もう少し具体的に見ましょう

時間帯・気象風力ディーゼル
★風が強い★主力★出力を絞る
★風が弱い★ほぼゼロ★主力に戻る
★無風★停止★単独で供給

ディーゼルを止めることはできません——風がやんだ瞬間に停電するからです。

だから重油の使用量は減らせても、設備は残す——問題文が「減らす可能性がある」と控えめに書く理由

離島の発電コストは本土の数倍——重油を船で運ぶからです。

だから多少高い設備でも、燃料が減れば採算が合う——本土より導入しやすいことになります。

蓄電池との組合せ

近年は蓄電池を加えて、風の変動を吸収する例が増えました

ディーゼルの起動停止を減らせるので、燃料も設備寿命も改善します——離島は新技術の実証の場になっています

永久磁石式発電機が増えている

(4)が挙げる3種のうち、近年注目されているものです

★永久磁石式巻線界磁の同期機
★界磁★永久磁石★コイルに直流を流す
★励磁電力★不要★必要
★低速での発電★できる★極数を増やせば可能
★増速機★省ける★必要なことが多い

多極にすれば、低速のまま系統周波数に近い発電ができます——増速機が要らなくなるのです。

増速機は故障の多い部品——洋上では修理に船が要るので、なくす価値が大きい

その代わり、希土類磁石が高価で調達も不安定——一長一短だと言えます。

問題文が3種類を並べているのは、どれも実用されているからです。

まとめ

(1)再エネ燃焼なし・発電時CO₂ゼロ→正しい
(2)パワー風速の3乗に比例(比例ではない)→誤り
(3)離島ディーゼルの重油使用量を削減可能→正しい
(4)発電機同期・永久磁石式・誘導発電機→正しい
(5)騒音翼の形の工夫で低減→正しい。答えは(2)

▼あわせて解きたい関連問題
・誘導発電機の特徴(新エネ1):【電力】令和7年度下期 A問題5

・この年度の問題を通しで解く:電験3種 令和5年度上期 問題一覧(全4科目)

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