今回は令和6年度上期 電力科目 A問題13、送電損失を5%以下に抑えるための電線の最小断面積を求める計算問題です。抵抗R=ρL/A の A について解く形で、損失の条件式から必要な断面積を逆算します。
つまずきやすいのは「三相3線式2回線」の電流の扱い。負荷全体の電流は2回線に分かれるので1回線あたりは半分。損失は6本の電線分(3線×2回線)で計算します。ここを正しく数えられるかが分かれ目です。
出題のポイント:2回線の送電損失と断面積

三相3線式2回線では負荷電流と許容損失を各回線に半分ずつ配分します。こう長20 kmを20,000 mへ換算し、損失から抵抗、抵抗から最小断面積を逆算します。
令和6年度上期 電力科目 A問題13:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和6年度上期 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題13
電験3種 電力科目 【送電の計算】 令和6年度上期 A問題13
こう長20kmの三相3線式2回線の送電線路がある。受電端で33kV、6600kW、力率0.9の三相負荷に供給する場合、受電端電力に対する送電損失を5%以下にするための電線の最小断面積の値〔mm²〕として、計算値が最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。ただし、使用電線は、断面積1mm²、長さ1m当たりの抵抗を1/35Ωとし、その他の条件は無視する。
(1)14.3 (2)23.4 (3)24.7 (4)42.8 (5)171 mm²
2回線の送電損失から断面積を求める

損失の上限から、許される抵抗を逆算します。
| 段階 | 求めるもの | 使う式 |
| ★① | ★1回線あたりの電流 | \( I=\dfrac{P}{\sqrt{3}V\cos\theta}\div(\text{回線数}) \) |
| ★② | ★1回線あたりの許容損失 | ★受電端電力×損失率÷回線数 |
| ★③ | ★許される抵抗 | \( R=\dfrac{P_L}{3I^2} \) |
| ★④ | ★断面積 | \( A=\rho\dfrac{\ell}{R} \) |
① 1回線あたりの電流
★
② 1回線あたりの許容損失
★
③ 許される抵抗と断面積
★答え
2回線であることを、電流と損失の両方で扱います——片方だけだと4倍ずれるのです。
計算結果を選択肢と照合

★同じ値
損失率は回線数によらず5%のままです——比だから。
だから2で割るのは電力だけで済みます——電流も損失も直す必要がないのです。
間違えにくいので、こちらの解き方をすすめます——電流を経由しないのも利点。
どちらでも同じ答えになります——検算にも使えるのです。
2回線にする理由
| ねらい | 内容 |
| ★★信頼度の向上 | ★★片方が故障してももう片方で送れる |
| ★送電容量の増加 | ★2回線で2倍の電力を送れる |
| ★損失の低減 | ★★1回線あたりの電流が半分になり損失は4分の1 |
| ★用地の効率 | ★1つの鉄塔に2回線を載せられる |
電流が半分になれば、損失は4分の1になります——2乗で効くから。
2回線合計でも損失は半分で済みます——4分の1が2つだから。
だから多回線化は損失の面でも有利です——信頼度だけが理由ではないのです。
本問はその効果を数字で確かめています——見落とすと(5)171を選ぶことになります。
⚠️ よくある間違い
2回線であることを見落とす——電流が2倍、損失は4倍になり、断面積も4倍の171になります。
電流だけ半分にして損失を半分にし忘れる——両方を1回線あたりに直します。
こう長20 km を m に直し忘れる——20,000 mです。
抵抗率の 1/35 を逆にする——断面積1 mm²、長さ1 m 当たりの抵抗。
損失率で解けば、2で割るのは電力だけ——混乱を避けられます。
⏱️ 本番での進め方
①★2回線なら電流も損失も1回線あたりに直す。
②★損失率で解けば2で割るのは電力だけ。
③★R=ρℓ/A から断面積を逆算する。
④★2回線を見落とすと断面積が4倍になる。
💡 覚え方
「2回線なら電力も損失も半分ずつ」——両方をそろえて直します。損失率で解けば混乱しにくい——率は回線数によらず5%だからです。
★この問題は平成24年度 A問題10とまったく同一です(送電の計算:電線の断面積(H24))。12年を隔てての再出題です。
損失率5%という条件の意味
なぜこの数字が使われるのでしょうか。
| 損失率 | 電線 | 評価 |
| ★1〜3% | ★★太い | ★損失は小さいが費用が高い |
| ★5% | ★中程度 | ★★一般的な設計の目安 |
| ★10%以上 | ★★細い | ★★損失が大きすぎる |
電線を太くすれば損失は減りますが、費用が増えます——そのつり合いで基準が決まるのです。
損失は毎日発生し続けます——長い目で見れば太いほうが得なことも。
建設費と運転費の合計で判断します——経済的電流密度という考え方です。
本問の5%は、その目安を数字にしたもの——実務に近い設定になります。
抵抗率の与え方を確かめる
問題文の「1/35」が何を表すか整理します。
| 表し方 | 意味 | 単位 |
| ★抵抗率 ρ | ★★断面積1 mm²、長さ1 m 当たりの抵抗 | ★Ω・mm²/m |
| ★実際の材料 | ★★軟銅は1/58、アルミは1/35 前後 | ★同じ単位 |
単位がそろっているので、そのまま代入できます——換算が要らないのです。
1/35 はアルミに近い値です——架空送電線を想定しているのでしょう。
軟銅なら1/58 で、より細くて済みます——導電率が高いから。
数値の意味が分かると、代入の間違いが減ります。
計算の見通しを立てる
4段階の流れを頭に入れておきます。
| 段階 | 入れる値 | 出る値 |
| ★① | ★電力・電圧・力率・回線数 | ★1回線あたりの電流 |
| ★② | ★電力・損失率・回線数 | ★1回線あたりの許容損失 |
| ★③ | ★①と②の結果 | ★許される抵抗 |
| ★④ | ★抵抗率・こう長・③の結果 | ★断面積 |
①と②で、それぞれ回線数で割ります——ここが最大の注意点です。
③で電流と損失を結びつけます——PL=3I²R。
④で抵抗を断面積に直します——R=ρℓ/A。
流れが決まっているので、順に進めば解けます。
まとめ
| 全体電流 | I=6600k/(√3×33k×0.9)=128.3A |
| 1回線電流 | I₁=64.15A(2回線) |
| 損失条件 | 6I₁²R≦0.05×6600k→R≦13.37Ω |
| 断面積 | A=ρL/R=(20000/35)/13.37=42.8mm² |
| 答え | (4) |
▼あわせて解きたい関連問題
・損失率の導出(送電の計算2):【電力】令和6年度下期 A問題12
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