今回は令和6年度下期 電力科目 A問題12、三相3線式送電線の電力損失率PL/Pを文字式で導出する問題です。架空送電13で使った損失の式 Ploss=P²R/(V²cos²θ) を、自分の手で導けるかが問われます。
導出は2行:線電流 I=P/(√3Vrcosθ) → 3線の損失 PL=3I²R。代入すると3と(√3)²=3が約分されて PL=RP²/(Vrcosθ)²。Pで割れば損失率=RP/(Vrcosθ)²です。
出題のポイント:三相3線式の電力損失率

三相電力の式から線電流を求め、3線分のジュール損に代入します。3が約分される理由と、損失を供給電力で割って損失率にする流れを押さえます。
令和6年度下期 電力科目 A問題12:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和6年度下期 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題12
電験3種 電力科目 【送電の計算】 令和6年度下期 A問題12
三相3線式交流送電線があり、電線1線当たりの抵抗がR〔Ω〕、受電端の線間電圧がVr〔V〕である。今、受電端から力率cosθの負荷に三相電力P〔W〕を供給しているものとする。
この送電線での3線の電力損失をPLとすると、電力損失率PL/Pを表す式として、正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
ただし、線路のインダクタンス、静電容量及びコンダクタンスは無視できるものとする。
(1) RP/{3(Vrcosθ)²} (2) RP/(Vrcosθ)² (3) RP²/(Vrcosθ)²
(4) 3RP/(Vrcosθ)² (5) 3RP²/(Vrcosθ)²
基本式から3線の電力損失を求める

電流を出して、損失を求め、電力で割ります。
★3が約分される
★答え
「率」なので、最後に P で割ります——だから P の次数が1つ下がるのです。
3が約分されて消えることも押さえます——√3 の2乗が3だから。
この2点だけで、選択肢が1つに絞れます——式を導かなくても選べるのです。
代入と約分から損失率を求める

| 手がかり | 判断 | 消える選択肢 |
| ★P の次数 | ★★「率」なので1乗 | ★★(3)(5)が消える |
| ★3の有無 | ★★約分されて消える | ★★(1)(4)が消える |
まず P の次数を見ます——(3)(5)は P² なので損失そのものです。
次に3の有無を見ます——(4)は3が掛かり、(1)は3で割っています。
どちらも約分の結果には合いません——残るのは(2)だけ。
計算せずに選べるのが、この型の面白いところ——性質を知っていれば足りるのです。
損失率が示すもの
| 量を変えると | 損失率 | 実務での手立て |
| ★電圧を2倍 | ★★4分の1になる | ★★送電電圧の格上げ |
| ★力率を0.8から1.0へ | ★★64%に減る | ★★進相コンデンサ |
| ★抵抗を半分 | ★半分になる | ★電線を太くする |
| ★電力を2倍 | ★★2倍になる | ★需要増で悪化する |
電圧と力率が2乗で効くのが、この式の要点です——だから対策の優先順位が決まる。
電線を太くするのは1乗でしか効きません——しかも費用がかさむのです。
だから昇圧と力率改善が優先されます——式が対策を示しているのです。
需要が増えれば損失率も上がります——だから設備の増強が要ることになります。
⚠️ よくある間違い
(3)(5)の P² を選んでしまう——それは損失そのものです。「率」なら P で割ります。
(4)の3が掛かった形を選んでしまう——√3 の2乗で約分されて消えます。
(1)の3で割った形を選んでしまう——同じく残りません。
cosθ を2乗し忘れる——電流の式の分母にあるので2乗されます。
「率」か「そのもの」かを最初に確かめる——それだけで半分に絞れます。
⏱️ 本番での進め方
①★損失率は P の1乗、損失そのものは P の2乗。
②★3は約分されて式に残らない。
③★この2点だけで選択肢が1つに絞れる。
④★電圧と力率はどちらも2乗で効く。
💡 覚え方
「率ならPで割る、3は消える」——2つの手がかりで選べます。計算せずに答えを出せる型——性質を知っていることが力になります。
★この問題は平成19年度 A問題10とまったく同一です(送電の計算:電力損失率(H19))。17年を隔てての再出題で、選択肢の並びだけが違います。
なぜ3が消えるのか
式の変形で最もつまずきやすい点です。
★ここに3がある
★分母にも3が出る
★3と3が約分
「3線だから3倍」と「√3 の2乗が3」がぶつかります——だから約分されて消えるのです。
偶然のように見えますが、必然です——三相の対称性から出てくるのです。
単相2線式なら2線なので、こうはなりません——三相ならではの形。
だから選択肢に3があれば、まず疑ってよい——絞り込みの手がかりになります。
損失率から電線の太さを決める
この式は設計でそのまま使われます。
★許される抵抗
★必要な断面積
損失率の上限を決めれば、抵抗の上限が出ます——そこから断面積が決まるのです。
だから「損失率5%以下」という条件から電線を選べます——実際の設計手順です。
電圧が高いほど、細い電線で済みます——2乗で効くから。
式を導けることが、実務にも試験にも役立ちます。
損失率の実際の水準
系統ごとに目安があります。
| 系統 | 損失率の目安 | 理由 |
| ★超高圧送電線 | ★★1〜2% | ★★電圧が高いので電流が小さい |
| ★特別高圧送電線 | ★2〜4% | ★中間 |
| ★配電線 | ★★4〜6% | ★★6.6 kV と低く電流が大きい |
電圧が低いほど損失率が大きくなります——2乗で効くから。
だから配電線のほうが損失率が高い——末端ほど不利なのです。
発電所から需要家まででは、合計5%前後——それが日本の送配電損失率です。
世界的に見ても低い水準——設備がよく整備されている証拠になります。
式を組み立てる順序
覚えるのは2つの式だけです。
| 段階 | 式 | 覚え方 |
| ★① | \( P=\sqrt{3}\,VI\cos\theta \) | ★★三相電力の基本形 |
| ★② | \( P_L=3I^2R \) | ★★3線あるので3倍 |
| ★③ | \( \dfrac{P_L}{P}=\dfrac{PR}{(V\cos\theta)^2} \) | ★①と②から導ける |
①を電流について解いて、②に代入するだけです——③を丸暗記する必要はないのです。
導く過程で3が約分されることも確かめられます——覚え違いを防げるのです。
試験中に導けるなら、そのほうが確実——記憶違いの心配がないから。
2つの基本式は、他の問題でも使います——覚える価値が高いのです。
損失を減らす手立ての優先順位
式のどこを動かすのが効くか見ましょう。
| 手立て | 効き方 | 実現しやすさ |
| ★送電電圧の格上げ | ★★2乗で効く | ★★設備の更新が要る |
| ★力率の改善 | ★★2乗で効く | ★★コンデンサで比較的容易 |
| ★電線の太線化 | ★1乗 | ★★張り替えが要る |
| ★負荷の平準化 | ★1乗 | ★需要側の協力が要る |
2乗で効くのは電圧と力率です——だから優先されるのです。
力率改善はコンデンサを置くだけなので、最も手軽——費用対効果が高いのです。
電圧の格上げは効果が大きいが、機器をすべて替える必要があります——大がかりな工事になります。
だから既設の系統では、まず力率改善から手をつけます——式が順序を示しているのです。
まとめ
| 線電流 | I=P/(√3Vrcosθ) |
| 3線の損失 | PL=3I²R=RP²/(Vrcosθ)² |
| 損失率 | PL/P=RP/(Vrcosθ)² |
| 含意 | 損失率∝P・∝1/V²・∝1/cos²θ |
| 答え | (2) |
▼あわせて解きたい関連問題
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