今回は平成19年度 電力科目 A問題10、三相3線式送電線の電力損失率PL/Pを文字式で導出する問題です。この問題は令和6年度下期A問題12(送電の計算2)と文面・選択肢・答えまで完全に同一——17年ぶりのそっくり再出題です。
導出は2行:線電流 I=P/(√3Vrcosθ) → 3線の損失 PL=3I²R。代入すると3と(√3)²=3が約分されて PL=RP²/(Vrcosθ)²。Pで割れば損失率=RP/(Vrcosθ)²です。
答えは(1):RP/(Vr cosθ)²
電流を求めてから、損失率の形に整理します。
| 段階 | 式 | 意味 |
| ★①電流を出す | \( I=\dfrac{P}{\sqrt{3}\,V\cos\theta} \) | ★三相電力の式を電流について解く |
| ★②損失を出す | \( P_L=3I^2R \) | ★★3線分なので3倍する |
| ★③まとめる | \( P_L=\dfrac{P^2R}{(V\cos\theta)^2} \) | ★★電圧と力率の2乗に反比例 |
★3が約分される
★答え
損失率は、損失を電力で割ったものです——だから P が1つ減るのです。
損失そのものは P の2乗に比例しますが、率なら1乗——そこが区別の要点になります。
3が約分されて消えることも押さえておきます——√3 の2乗が3だから。
平成19年度 電力科目 A問題10:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成19年度 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題10
電験3種 電力科目 【送電の計算】 平成19年度 A問題10
三相3線式交流送電線があり、電線1線当たりの抵抗がR〔Ω〕、受電端の線間電圧がVr〔V〕である。受電端から力率cosθの負荷に三相電力P〔W〕を供給している。
この送電線での3線の電力損失をPLとするとき、電力損失率PL/Pを表す式として、正しいのは次のうちどれか。
(1) RP/(Vrcosθ)² (2) 3RP/(Vrcosθ)² (3) RP/{3(Vrcosθ)²}
(4) RP²/(Vrcosθ)² (5) 3RP²/(Vrcosθ)²

損失と損失率の違いを押さえる
| 量 | 式 | P との関係 |
| ★電力損失 PL | \( \dfrac{P^2R}{(V_r\cos\theta)^2} \) | ★★P の2乗に比例 |
| ★損失率 PL/P | \( \dfrac{PR}{(V_r\cos\theta)^2} \) | ★★P に比例(1乗) |
問われているのがどちらかを、まず確かめます——P の次数が変わるのです。
損失率は「送った電力のうち何%が失われるか」——だから割合です。
電力が増えれば、失われる割合も増えます——電流が増えて I²R が効いてくるから。
選択肢に P と P² の両方があるのは、そこを狙っている——(4)(5)が P² の形です。
式から読み取れること
| 量を変えると | 損失率 | 実務での意味 |
| ★電圧を2倍 | ★★4分の1になる | ★★昇圧が最も効く |
| ★力率を0.8から1.0へ | ★★64%に減る | ★力率改善の効果 |
| ★抵抗を半分 | ★半分になる | ★電線を太くする |
| ★電力を2倍 | ★★2倍になる | ★需要が増えると悪化する |
電圧の2乗に反比例するのが、最も効く要素です——2倍にすれば4分の1。
だから送電電圧の格上げが行われてきました——損失も容量も同時に改善するのです。
力率も2乗で効きます——0.8を1.0にすれば損失は64%になります。
だから力率改善用のコンデンサが設置されます——式が対策を示しているのです。
⚠️ よくある間違い
(4)(5)の P² の形を選んでしまう——それは損失そのものです。損失「率」なら P で割るので1乗。
(2)の3が付いた形を選んでしまう——√3 の2乗で約分されて消えます。
(3)の3で割った形を選んでしまう——同じく約分の結果、3は残りません。
cosθ を2乗し忘れる——電流の式で分母にあるので2乗されます。
「率」か「そのもの」かを最初に確かめる——それだけで選択肢が絞れます。
⏱️ 本番での進め方
①★損失は P の2乗、損失率は P の1乗に比例。
②★√3 の2乗で3が約分され、式に3は残らない。
③★電圧と力率はどちらも2乗で効く。
④★電圧を2倍にすれば損失率は4分の1。
💡 覚え方
「損失はP²、率はP」——割った分だけ次数が下がります。3は約分されて消える——選択肢を絞る手がかりになります。
実際の数値計算は令和4年度上期 A問題8(送電の計算:電力損失)にあります。
なぜ3が消えるのか
式の変形で最もつまずきやすい点です。
★ここに3がある
★分母に3が出る
★3と3が約分
「3線だから3倍」と「√3 の2乗が3」がぶつかります——だから約分されて消えるのです。
偶然のように見えますが、必然です——三相の対称性から出てくるのです。
だから最終形に3は残りません——選択肢を絞る手がかりになります。
単相なら2線なので、こうはなりません——三相ならではの形です。
選択肢を絞る手順
計算しなくても、かなり絞れます。
| 確かめること | 判断 | 残る選択肢 |
| ★P の次数 | ★★率なので1乗 | ★★(1)(2)(3) |
| ★3の有無 | ★★約分されて消える | ★★(1)のみ |
まず P の次数を見ます——「率」なら1乗だから(4)(5)が消えます。
次に3の有無を見ます——約分されるので(2)(3)も消えるのです。
残った(1)が答え——2つの手がかりだけで決まるのです。
式を導けなくても、性質を知っていれば選べます——選択問題ならではの解き方です。
損失率から電線の太さを決める
この式は設計でそのまま使われます。
★許される抵抗
★必要な断面積
損失率の上限を決めれば、抵抗の上限が出ます——そこから断面積が決まるのです。
だから「損失率5%以下」という条件から電線が選べます——実際の設計手順です。
電圧が高いほど、細い電線で済みます——2乗で効くから。
だから式を導けることが、実務にも試験にも役立ちます。
損失率が実務で持つ意味
送電のむだをどれだけ抑えるかという指標です。
| 系統 | 損失率の目安 | 理由 |
| ★超高圧送電線 | ★★1〜2% | ★★電圧が高いので損失が小さい |
| ★特別高圧送電線 | ★2〜4% | ★中間 |
| ★配電線 | ★★4〜6% | ★★電圧が低く電流が大きい |
電圧が低いほど損失率は大きくなります——2乗で効くから。
だから配電線のほうが損失率が高い——6.6 kV で送っているのです。
発電所から需要家まででは、合計5%前後になります——それが日本の送配電損失率。
世界的に見ても低い水準です——設備がよく整備されている証拠になります。
まとめ
| 線電流 | I=P/(√3Vrcosθ) |
| 3線の損失 | PL=3I²R=RP²/(Vrcosθ)² |
| 損失率 | PL/P=RP/(Vrcosθ)² |
| 含意 | 損失率∝P・∝1/V²・∝1/cos²θ |
| 再出題 | R06下問12(送電の計算2)と完全同一 |
| 答え | (1) |
▼あわせて解きたい関連問題
・完全同一の再出題(送電の計算2):【電力】令和6年度下期 A問題12
・損失は電圧の2乗に反比例(架空送電13):【電力】令和4年度上期 A問題6

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