今回は平成18年度 電力科目 A問題14、架空送電線のたるみDを公式一発で求める基本問題です。この問題は令和5年度下期A問題12(送電の計算8)と数値・答えまで完全に同一——17年ぶりにそっくり再出題された、送電の計算ユニットの締めくくりにふさわしい定番です。
公式はD=wS²/(8T)(w:電線1m当たりの重量〔N/m〕、S:径間〔m〕、T:水平張力〔N〕)。単位をNとmでそろえて代入すれば、たるみが〔m〕で出ます。kN→Nの換算だけ注意しましょう。
平成18年度 電力科目 A問題14:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成18年度 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題14
電験3種 電力科目 【送電の計算】 平成18年度 A問題14
両端の高さが同じで径間距離250〔m〕の架空電線路があり、電線1〔m〕当たりの重量は20.0〔N〕で、風圧荷重はないものとする。今、水平引張荷重が40.0〔kN〕の状態で架線されているとき、たるみD〔m〕の値として、最も近いのは次のうちどれか。
(1)2.1 (2)3.9 (3)6.3 (4)8.5 (5)10.4 m

答えは(2):3.9 m
★答え
単位の変換が唯一の関門です——40.0 kN=40,000 N。
あとは代入して割るだけ——電力科目で最も易しい計算の1つです。
選択肢が2倍ずつ離れているので、多少ずれても選べます——3.9 と 6.3 なら間違えません。
たるみの式が導かれる考え方
電線は「懸垂線」という曲線を描きます。
| 段階 | 考えること |
| ① | ★電線を、両端で支えられた柔らかい糸と考える |
| ★② | ★★厳密には懸垂線(カテナリー)という曲線になる |
| ★③ | ★★たるみが小さければ放物線で近似できる |
| ★④ | ★★その放物線から D=WS²/(8T) が導かれる |
実際の電線は懸垂線を描きます——双曲線関数で表される曲線です。
けれども計算が複雑になります——だから放物線で近似するのです。
たるみが径間の10%以下なら、誤差はごくわずか——実用上は放物線で十分です。
本問でも 3.9÷250=1.6% ですから、問題ありません——近似が成り立つ範囲になります。
電線の実長を求める式
たるみが分かれば、電線の実際の長さも計算できます。
★16 cm 長い
250 m の径間で、電線は約16 cm 長くなります——意外に少ないと感じるかもしれません。
たるみが2乗で効くので、たるみが小さいうちは差もわずか——だから近似が成り立つのです。
電線を発注するときは、この実長で数えます——実務で使う計算です。
温度が上がると電線が伸び、たるみが増えます——この式を逆にたどれば、たるみの変化が出せるのです。
⚠️ よくある間違い
kN を N に直し忘れる——40.0 kN=40,000 N。1000倍違えば答えもまったく変わります。
分母の8を忘れる——D=WS²/(8T)です。
径間を2乗し忘れる——250²=62,500。
W を全体の重さと考える——1 m 当たりの荷重です。
実長の式と混同する——たるみを聞かれたら D=WS²/(8T)になります。
⏱️ 本番での進め方
①★D=WS²/(8T)。単位をそろえるだけで解ける。
②★実長は L=S+8D²/(3S)。
③★厳密には懸垂線だが、放物線で近似している。
④★たるみが径間の10%以下なら近似の誤差は小さい。
💡 覚え方
「たるみは8T分の重さ×径間の2乗」——この1行で解けます。実長は「8D²を3Sで割って足す」——2つセットで覚えます。
★この問題は令和5年度下期 A問題12として、17年後にまったく同一の形で再出題されました(送電の計算:たるみ(R05下))。
たるみが設計を左右する
計算した値が、そのまま鉄塔の高さになります。
| 決めるもの | 関わる量 |
| ★鉄塔の高さ | ★★たるみ+地上高+余裕 |
| ★径間の取り方 | ★★長くするとたるみが2乗で増える |
| ★電線の選定 | ★★張力に耐える引張強さ |
| ★がいしの長さ | ★電線の吊り下げ位置に影響 |
電線の最下点が、地上から一定以上離れる必要があります——それが離隔距離です。
だから鉄塔の高さは、たるみの分だけ余分に要ります——たるみが大きいほど高い鉄塔。
径間を長くすれば鉄塔の数は減りますが、高さが増します——そのつり合いで径間が決まるのです。
だからたるみの計算は、設計の出発点になります。
径間が変わるとどうなるか
2乗で効くことの意味を、数字で見ましょう。
| 径間 | S² | たるみ(W・T が同じなら) |
| ★125 m | ★15,625 | ★0.98 m |
| ★250 m | ★62,500 | ★★3.91 m |
| ★500 m | ★250,000 | ★★15.6 m |
径間を2倍にすると、たるみは4倍になります——2乗で効くから。
500 m の径間なら、たるみは15 m を超えます——ビル5階分に相当します。
だから鉄塔も高くしなければなりません——長径間の代償です。
河川や谷を渡るときは、この計算が要ります——実務で最も使う式の1つになります。
支持点に高低差があるとき
本問は「両端の高さが同じ」という条件でした。
| 条件 | 電線の形 | たるみの測り方 |
| ★高さが同じ | ★★左右対称で最下点は中央 | ★★両支持点を結ぶ直線から測る |
| ★高低差がある | ★★最下点が低いほうへ寄る | ★同じく直線から測る |
高さが同じなら、最下点はちょうど中央に来ます——左右対称だからです。
高低差があると、最下点は低いほうへ寄ります——それでも式の形は変わりません。
両支持点を結ぶ直線から測った距離が、たるみです——その定義は同じなのです。
だから本問の式が、そのまま使えます——山地の鉄塔でも同じ考え方になります。
たるみの計算が使われる場面
試験だけの式ではありません。
| 場面 | 使い方 |
| ★設計 | ★★鉄塔の高さと位置を決める |
| ★施工 | ★★張力計を見ながら所定のたるみに合わせる |
| ★点検 | ★★たるみを測って張力の変化を知る |
| ★増強 | ★電線を張り替えるときの検討 |
施工では、たるみを見ながら張ります——張力を直接測るより確かめやすいから。
温度によって目標のたるみが変わります——だから施工時の気温を測るのです。
点検でたるみが増えていれば、電線が伸びた証拠——劣化の兆しになります。
だから1つの式が、設計から保守まで使われます——覚える価値のある式です。
選択肢から答えを絞る
計算する前に、桁の見当をつけられます。
| 概算 | 計算 | 結果 |
| ★分子 | ★★20×250²=20×62500 | ★125万 |
| ★分母 | ★★8×40000 | ★32万 |
| ★商 | ★★125÷32 | ★★約3.9 |
125万を32万で割ると、だいたい4です——選択肢の(2)3.9が最も近い。
桁だけ合っていれば、選択肢は1つに決まります——2.1と3.9なら区別できるのです。
細かい計算をする前に、この見当をつけておきます——計算間違いにも気づけるから。
時間が足りないときの助けにもなります——試験ならではの技術です。
まとめ
| 公式 | D=wS²/(8T) |
| w | 20.0N/m |
| S | 250m |
| T | 40.0kN=40000N |
| D | 1250000/320000=3.9m |
| 再出題 | R05下問12(送電の計算8)と完全同一 |
| 答え | (2) |
▼あわせて解きたい関連問題
・完全同一の再出題(送電の計算8):【電力】令和5年度下期 A問題12
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