今回は令和4年度上期 電力科目 A問題8、三相3線式送電線の抵抗による全電力損失を求める基本計算です。線電流を出して3線分の損失3I²Rを計算する、送電損失の王道パターンです。
手順は2ステップ:①線電流 I=P/(√3V cosθ)を求める→②全損失 PL=3I²R(三相3線なので3本分)。受電端電力Pと受電端電圧Vが与えられているので、そのまま代入するだけです。
令和4年度上期 電力科目 A問題8:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和4年度上期 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題8
電験3種 電力科目 【送電の計算】 令和4年度上期 A問題8
受電端電圧が20kVの三相3線式の送電線路において、受電端での電力が2000kW、力率が0.9(遅れ)である場合、この送電線路での抵抗による全電力損失の値〔kW〕として、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。ただし、送電線1線当たりの抵抗値は9Ωとし、線路のインダクタンスは無視するものとする。
(1)12.3 (2)37.0 (3)64.2 (4)90.0 (5)111 kW
出題のポイント:線電流から3線分の損失を求める

受電端の三相有効電力、線間電圧、力率から線電流を求め、1線当たりの抵抗損失I²Rを3線分合計します。kWとkVをWとVへ換算し、I=P/(√3Vcosθ)、PL=3I²Rの順に計算すると約111 kWです。
答えは(5):111 kW

電流を求めてから、3線分の損失を計算します。
★
★答え
√3 を忘れないことが第一の関門です——三相電力の式に必ず入ります。
次に「3倍する」ことを忘れないこと——3線あるからです。
式の組み立て方を覚える
| 段階 | 式 | 意味 |
| ★①電流を出す | \( I=\dfrac{P}{\sqrt{3}\,V\cos\theta} \) | ★三相電力の式を電流について解く |
| ★②損失を出す | \( P_L=3I^2R \) | ★★3線分なので3倍する |
| ★③まとめる | \( P_L=\dfrac{P^2R}{(V\cos\theta)^2} \) | ★★電圧と力率の2乗に反比例 |
①と②を組み合わせれば、③の形になります——覚えるのは①と②だけでよいのです。
★3が約分される
★③の形
3が約分されて消えるのが、この式の面白いところ——√3 の2乗が3だからです。
だから最終形には3が残りません——覚え違いしやすい点になります。
この形を覚えておけば、一気に計算できます——電流を経由しなくてよいのです。
損失を減らす手立てを式から読む
式のどこを動かせるかを見ましょう。
| 動かす量 | 損失への効き方 | 実際の手立て |
| ★電圧 V | ★★2乗に反比例 | ★★送電電圧の格上げ |
| ★力率 cosθ | ★★2乗に反比例 | ★★進相コンデンサの設置 |
| ★抵抗 R | ★比例 | ★電線を太くして抵抗を下げる |
電圧を2倍にすれば、損失は4分の1になります——最も効果が大きいのです。
力率も同じく2乗で効きます——0.9を1.0にすれば損失は81%に。
電線を太くするのは、抵抗を下げる直接の手段——ただし1乗でしか効きません。
実際の損失低減では、送電電圧、力率、導体抵抗を設備条件や経済性に応じて検討します。
数値の見当をつける
計算する前に、おおよその答えを予想できます。
| 段階 | 概算 | 考え方 |
| ★電流 | ★★2000÷(1.73×20×0.9)≒64 A | ★√3≒1.73 で概算 |
| ★I² | ★★64²≒4100 | ★60²=3600、70²=4900 の間 |
| ★損失 | ★★3×4100×9≒110 kW | ★選択肢の(5)111に近い |
選択肢が離れているので、概算で選べます——90 と 111 なら区別できるのです。
√3 を1.73として計算すれば十分——細かい桁は要りません。
時間が足りないときは、この方法で切り抜けられます——試験ならではの技術です。
ただし選択肢が近いときは、丁寧に計算します——使い分けが大切になります。
単相と三相で式が変わる
√3 と3が出てくるのは三相だからです。
| 方式 | 電力の式 | 損失の式 | 線の数 |
| ★単相2線式 | \( P=VI\cos\theta \) | \( P_L=2I^2R \) | ★2本 |
| ★三相3線式 | \( P=\sqrt{3}VI\cos\theta \) | \( P_L=3I^2R \) | ★★3本 |
単相なら2線なので、損失は2倍します——行きと帰りの2本だから。
三相なら3線なので3倍——帰り線が要らないのが三相の利点です。
電力の式にも√3 が入るかどうかが変わります——線間電圧と相電圧の関係から。
問題文が「三相3線式」と書いていれば、√3 と3を使います——まずそこを確かめるのです。
別解:損失の式を直接使う
★
電流を出さずに一気に求められます——途中の丸め誤差も減るのです。
V cosθ をまとめて計算するのがこつ——20×0.9=18 kV と考えるのです。
どちらの解き方でも同じ答えになります——検算にも使えることになります。
⚠️ よくある間違い
√3 を忘れて I=P/(V cosθ) としてしまう——電流が√3倍になり、損失は3倍になります。
3倍するのを忘れて PL=I²R としてしまう——3線あるので3倍です。
力率を掛け忘れる——P=√3 V I cosθ なので電流を出すときに割ります。
まとめた式に3を残してしまう——√3 の2乗で約分されて消えます。
単位をそろえ忘れる——kW と kV を W と V に直してから計算します。
⏱️ 本番での進め方
①★I=P/(√3 V cosθ) で電流を出す。
②★PL=3I²R で3線分の損失を出す。
③★まとめると PL=P²R/(V cosθ)² で3は消える。
④★V cosθ をまとめて計算すると速い。
💡 覚え方
「電流を出して3倍」——それだけで解けます。まとめた式では3が消える——√3 の2乗で約分されるからです。
損失率の式は平成19年度 A問題10(送電の計算:電力損失率)にあります。
まとめ

| 線電流 | I=P/(√3Vcosθ)=64.15A |
| 全損失 | PL=3I²R=3×64.15²×9 |
| 計算 | =111×10³W=111kW |
| 受電端電力に対する損失割合 | 111/2000≈5.6% |
| 答え | (5) |
▼あわせて解きたい関連問題
・損失率の導出(送電の計算2):【電力】令和6年度下期 A問題12
・最小断面積の計算(送電の計算7):【電力】令和6年度上期 A問題13

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