今回は令和3年度 電力科目 B問題16、たるみ計算の3公式(実長・たるみ・張力)を全部つなげる総合問題です。温度変化で伸びた実長から、新しいたるみ、そして水平張力まで一気にたどります。
流れは実長L₁→温度で伸ばしてL₂→新たるみD₂→張力T。(a)で実長L₂、(b)でその実長に対応するたるみを逆算し、たるみの公式 D=wS²/8T を張力について解いて求めます。送電の計算1・3の集大成です。
令和3年度 電力科目 B問題16:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和3年度 第三種電気主任技術者試験」電力科目 B問題16
電験3種 電力科目 【送電の計算】 令和3年度 B問題16
支持点の高さが同じで径間距離150mの架空電線路がある。電線の質量による荷重が20N/m、線膨張係数は1℃につき0.000018である。電線の導体温度が−10℃のとき、たるみは3.5mであった。次の(a)及び(b)の問に答えよ。ただし、張力による電線の伸縮はないものとし、その他の条件は無視するものとする。
(a) 電線の導体温度が35℃のとき、電線の支持点間の実長の値〔m〕として、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(1)150.18 (2)150.23 (3)150.29 (4)150.34 (5)151.43 m
(b) (a)と同じ条件のとき、電線の支持点間の最低点における水平張力の値〔N〕として、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(1)6272 (2)12863 (3)13927 (4)15638 (5)17678 N

(a) の答えは(4):150.34 m
もとの実長を求めてから、伸びを足します。
★
★
★答え
温度差は45 ℃ です——−10 から35 までだから。
負の温度をまたぐので、引き算に注意します——35−(−10)=45。
12 cm 伸びただけで、実長がその分増えます——単純な足し算です。
(b) の答えは(2):12863 N
実長から新しいたるみを出し、張力を求めます。
★新しいたるみ
★約12863
(a)の答えをそのまま使えます——B問題のつながりです。
たるみが3.5 m から4.37 m に増えたので、張力は下がります——反比例だから。
温度が上がると張力が下がる
| 温度 | 実長 | たるみ | 張力 |
| ★−10 ℃ | ★150.218 m | ★3.5 m | ★★16071 N |
| ★35 ℃ | ★★150.34 m | ★★4.37 m | ★★12863 N |
45 ℃ 上がると、張力は2割ほど下がります——電線が伸びて緩むのです。
逆に冬は張力が上がります——だから低温時に切れないかを確かめるのです。
本問は−10 ℃ という厳しい条件から始まっています——そのときの張力が最大になります。
だから設計では、この温度で電線が耐えるかを見ます——実務に直結する計算です。
⚠️ よくある間違い
温度差を35 ℃ としてしまう——−10 から35 なので45 ℃です。
(b)で(a)の実長を使わない——そこから新しいたるみを出します。
張力の式でD を2乗してしまう——T=WS²/(8D) でD は1乗。
W を全体の重さと考える——1 m 当たり20 Nです。
平方根を取り忘れる——D² が出たら√を取ります。
⏱️ 本番での進め方
①★実長=S+8D²/(3S)。温度変化はここを経由する。
②★温度差は「差」。負の温度をまたぐときは特に注意。
③★T=WS²/(8D) でD は1乗。
④★温度が上がると たるみ増・張力減。
💡 覚え方
「伸びた分は実長に足す」——そこから たるみ、張力へと進みます。−10 から35 なら差は45——符号に注意します。
たるみの温度変化は令和6年度下期 A問題13(送電の計算:たるみの温度変化)にもあります。
電線の長さはどれだけ変わるか
径間150 m に対して、増えるのはわずかです。
| 状態 | たるみ | 実長 | 径間との差 |
| ★まっすぐ張ったとき | ★0 m | ★150.000 m | ★0 |
| ★−10 ℃ | ★3.5 m | ★★150.218 m | ★★22 cm |
| ★35 ℃ | ★★4.37 m | ★★150.34 m | ★★34 cm |
3.5 m もたるんでいるのに、長さは22 cm しか増えません——そこが感覚とずれるところです。
たるみは径間の2%ほどなので、弧はほぼ直線に近い——だから伸びが小さいのです。
逆に言えば、少し伸びただけでたるみは大きく増えます——12 cm 伸びて87 cm たるむのです。
だから温度によるたるみの変化を軽く見てはいけません——地上高に直に効いてくるからです。
支持点の高さを決める考え方
たるみが最大になるときを基準にします。
| 項目 | 内容 | 本問では |
| ★支持点の高さ | ★★地上高+たるみ+余裕 | ★4.37 m 分を見込む |
| ★最大たるみの条件 | ★★最高温度+大電流時 | ★35 ℃ のとき |
| ★最大張力の条件 | ★★最低温度+着氷雪時 | ★−10 ℃ のとき |
電線が地面に最も近づくのは、たるみが最大のときです——だから夏の高温時を見るのです。
本問では−10 ℃ で3.5 m、35 ℃ で4.37 m——87 cm も差があります。
この差を見込まないと、夏に地上高が足りなくなります——電技解釈の高さを割ってしまうのです。
一方、鉄塔や電線の強度は−10 ℃ の張力で決めます——そのとき最も引っ張られるから。
つまり2つの温度で、それぞれ別のことを確かめます——夏は高さ、冬は強度です。
本問はその両方をつなぐ計算になっています——実務の設計手順そのものです。
たるみの式を3つの形で使い分ける
同じ式を、求めるものに応じて変形します。
| 求めるもの | 使う形 | 本問での出番 |
| ★たるみ D | ★★D=WS²/(8T) | ★与えられている |
| ★張力 T | ★★T=WS²/(8D) | ★★(b)で使う |
| ★実長 L | ★★L=S+8D²/(3S) | ★★(a)と(b)の両方 |
覚えるのは D の式と実長の式の2つだけ——張力はそこから移項するだけです。
本問は実長の式を、順方向と逆方向の両方で使います——(a)は L を、(b)は D を求めるのです。
逆に使うときは、平方根を取り忘れないこと——D² が出てくるからです。
電線の重さをどう扱うか
W は1メートル当たりの荷重です。
| 荷重の種類 | 内容 | 考える場面 |
| ★自重 | ★★電線そのものの重さ | ★★常に効く(本問の20 N/m) |
| ★氷雪の重さ | ★★電線に付いた氷や雪 | ★★冬の設計 |
| ★風圧荷重 | ★★横向きに押す力 | ★合成荷重として扱う |
実際の設計では、これらを合成した値を W とします——冬は自重の何倍にもなるのです。
本問は自重だけの条件です——だから20 N/m をそのまま使います。
荷重が増えれば、たるみも張力も増えます——どちらも W に比例するからです。
まとめ
| (a)L₁ | 150+8×3.5²/450=150.218m |
| (a)L₂ | L₁(1+0.000018×45)=150.34m |
| (b)D₂ | √{(L₂-150)×450/8}=4.37m |
| (b)T | wS²/(8D₂)=12863N |
| 答え | (a)-(4),(b)-(2) |
▼あわせて解きたい関連問題
・たるみの温度変化(送電の計算3):【電力】令和6年度下期 A問題13
・張力とたるみの反比例(送電の計算6):【電力】令和6年度上期 A問題12

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