今回は令和6年度上期 電力科目 A問題12、水平張力を調整してたるみを変える問題です。たるみの公式 D=wS²/(8T) の中で、たるみと張力がどんな関係にあるかが一発でわかれば即答できます。
ポイントは「たるみDは水平張力Tに反比例」(D=wS²/8T で分母にT)。たるみを10%小さく=0.9倍にしたいなら、Tを1/0.9倍にすればよい——引っ張れば張るほどたるみは減る、という直感どおりです。
出題のポイント:たるみと水平張力

たるみDは水平張力Tに反比例します。電線荷重と径間を変えずにたるみを10%小さくするには、張力を0.9倍にするのではなく0.9で割り、T/0.9とします。
たるみは張力に反比例

たるみと張力は反比例します。
★答え
たるみを小さくするには、強く張る必要があります——だから張力は大きくなるのです。
反比例なので、0.9で割ることになります——0.9倍ではありません。
T/0.9=1.111T ですから、約11%増えます——10%減らすのに11%増やすのです。
W と S は変わらないので、そのまま約分されます——だから値が与えられていないのです。
令和6年度上期 電力科目 A問題12:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和6年度上期 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題12
電験3種 電力科目 【送電の計算】 令和6年度上期 A問題12
図のように高低差のない支持点A、Bで、径間長Sの架空送電線において、架線の水平張力Tを調整してたるみDを10%小さくし、電線地上高を高くしたい。この場合の水平張力の値として、正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。ただし、両側の鉄塔は十分な強度があるものとする。
(1) 0.9²T (2) 0.9T (3) T/√0.9 (4) T/0.9 (5) T/0.9²


反比例を選択肢で確認

| たるみを | 張力は | 数値で |
| ★0.5倍にする | ★★2倍 | ★2T |
| ★0.9倍にする | ★★1.11倍 | ★★T/0.9 |
| ★1.1倍にする | ★★0.909倍 | ★T/1.1 |
| ★2倍にする | ★★0.5倍 | ★T/2 |
「たるみを◯倍にする」なら「張力は1/◯倍」です——それが反比例。
10%小さくするのに、11%増やす必要があります——減らす割合と増やす割合は一致しません。
0.9倍と1/0.9倍は違います——そこが(2)と(4)の分かれ目です。
選択肢に両方あるのは、そこを狙っている——向きを確かめることになります。
たるみを小さくする理由
| 場面 | たるみを小さくする理由 |
| ★地上高が足りない | ★★電線と地面の距離を確保する |
| ★道路や鉄道を横断する | ★★より高い離隔が求められる |
| ★建物が近い | ★接近距離を保つ |
| ★鉄塔を高くできない | ★★用地や景観の制約 |
問題文の「電線地上高を高くしたい」がその狙いです——たるみを減らせば最下点が上がるのです。
鉄塔を高くするほうが確実ですが、費用がかかります——だから張力で調整するのです。
ただし張力を上げすぎると、電線が切れる危険が増します——とりわけ冬に縮んだとき。
問題文が「鉄塔は十分な強度がある」と断っているのは、そこを考えなくてよいという意味です。
⚠️ よくある間違い
(2)の0.9T を選んでしまう——反比例なので割ります。たるみを減らすには強く張るのです。
張力を減らせばたるみも減ると考える——逆です。緩めればたるみます。
(1)の0.9²T を選んでしまう——2乗で効くのは径間だけです。
(5)のT/0.9² を選んでしまう——たるみは1乗で効きます。
0.9倍と1/0.9倍を区別する——選択肢の(2)と(4)がそこになります。
⏱️ 本番での進め方
①★D と T は反比例。たるみを減らすには張力を増やす。
②★たるみを0.9倍なら張力は T/0.9(約1.11倍)。
③★0.9倍と1/0.9倍を取り違えない。
④★2乗で効くのは径間 S だけ。
💡 覚え方
「強く張ればたるまない」——反比例の関係です。10%減らすには11%増やす——割合は一致しません。
張力の比を問う問題は平成29年度 A問題8(送電の計算:たるみと張力)にもあります。
たるみと地上高の関係
たるみを減らせば、電線の最下点が上がります。
| 量 | 関係 |
| ★支持点の高さ | ★★鉄塔で決まる(変えられない) |
| ★たるみ | ★★張力で調整できる |
| ★電線の最下点 | ★★支持点の高さ − たるみ |
たるみが10 cm 減れば、最下点が10 cm 上がります——そのまま地上高が増えるのです。
鉄塔を高くするより、はるかに安く済みます——張力を調整するだけだから。
だから地上高が足りないときの第一の手段になります——問題文の狙いがそれです。
ただし電線の許容張力を超えてはいけません——そこに限度があるのです。
式に出てこない量に注意する
W と S が与えられていないことに意味があります。
| 量 | 本問での扱い | 理由 |
| ★荷重 W | ★★変わらないので約分される | ★電線を替えていない |
| ★径間 S | ★★変わらないので約分される | ★鉄塔を動かしていない |
| ★たるみ D | ★★0.9倍にする | ★問題文の条件 |
| ★張力 T | ★★求めるもの | ★— |
値が与えられていない量は、たいてい約分されます——それが出題者からの合図です。
だから比を取る解き方だと分かります——数値計算ではないのです。
変わるのはたるみと張力だけ——その2つの関係を使えばよいのです。
問題文の条件を整理することが、第一歩になります。
張力を上げる限界
いくらでも強く張れるわけではありません。
| 制約 | 内容 |
| ★電線の引張強さ | ★★破断荷重の40%程度までが目安 |
| ★冬の張力増 | ★★低温で縮むとさらに大きくなる |
| ★着氷雪 | ★★荷重が数倍になり張力も増す |
| ★支持物の強度 | ★★鉄塔やがいしが耐えられるか |
最も厳しいのは、冬に着氷雪が加わったときです——そのときの張力で上限が決まるのです。
だから常温での張力には余裕を持たせます——破断荷重の40%程度が目安。
問題文が「鉄塔は十分な強度がある」と断っているのは、支持物側の制約を外すためです。
実際には電線と支持物の両方を確かめます——どちらか厳しいほうが上限になります。
たるみを変える別の手立て
張力だけが方法ではありません。
| 方法 | たるみへの効果 | 短所 |
| ★張力を上げる | ★★反比例で減る | ★★電線に負担がかかる |
| ★径間を短くする | ★★2乗で減る | ★★鉄塔を増やす費用 |
| ★軽い電線に替える | ★比例して減る | ★導電率も変わる |
| ★鉄塔を高くする | ★★たるみは変わらないが地上高は増える | ★★建設費が大きい |
径間を短くすれば、2乗で効くので最も確実です——ただし鉄塔が増えるのです。
張力の調整は、既設の線路でもできます——だから最初に検討されるのです。
鉄塔を高くすれば、たるみを変えずに地上高が増えます——けれども費用が大きい。
本問は張力による調整を問うています——最も手軽な方法だからです。
たるみと張力の関係をまとめる
3つの量の効き方を確かめておきます。
| 量 | たるみへの効き方 | 張力への効き方 |
| ★荷重 W | ★★比例 | ★★比例 |
| ★径間 S | ★★2乗に比例 | ★★2乗に比例 |
| ★張力 T | ★★反比例 | ★— |
W と S は、たるみにも張力にも同じ向きに効きます——重く長いほど両方が増えるのです。
T と D だけが、互いに反比例します——片方を決めればもう片方が決まるのです。
だから設計では、まず W と S が決まります——電線と鉄塔の配置から。
そのうえで T と D のつり合いを決めます——本問はその調整になります。
まとめ
| たるみ公式 | D=wS²/(8T)→D∝1/T |
| 目標 | D′=0.9D(10%小さく) |
| 張力 | T′=T/0.9 |
| 向き | たるみ減=張力増(T/0.9>T) |
| 答え | (4) |
▼あわせて解きたい関連問題
・実長とたるみ(送電の計算1):【電力】令和7年度上期 A問題12
・たるみの温度変化(送電の計算3):【電力】令和6年度下期 A問題13

コメント