送電の計算5【電力】フェランチをπ形回路で計算!受電端71.7kV>送電端66kV 令和6年度下期 B問題17 完全解説

電験3種 電力科目 送電の計算 令和6年度下期 B問題17 受電端が送電端より高い!フェランチを計算する

今回は令和6年度下期 電力科目 B問題17フェランチ現象を π形等価回路の計算で確かめる問題です。地中送電8・20で学んだ「受電端電圧が送電端より高くなる」現象を、実際に数値で計算します。

ポイントは受電端が無負荷なので、流れるのは充電電流(進み)だけ。抵抗を無視した jX と jB/2 だけの回路では、計算がすべて実数になり(j同士の積で符号が反転)、受電端電圧が送電端より高くなることが素直な式で示せます。

出題のポイント:π形等価回路とフェランチ現象

π形等価回路のフェランチ現象と送電端電流を求める問題の要点図
無負荷では受電端電圧が上昇し、送電端電流は両端の容量電流の和になります。

π形回路ではアドミタンスを両端にB/2ずつ配置します。無負荷時の分圧から受電端電圧を求め、両端の容量電流を相電圧で計算して送電端電流を求めます。

目次

無負荷時の受電端電圧を求める

π形等価回路の分圧から無負荷時受電端電圧71.7キロボルトを求める解説
受電端側容量と直列リアクタンスの分圧比が1より大きくなり、フェランチ現象が現れます。

無負荷なので、分圧の式で受電端電圧が出ます

部位置くもの役割
★中央★★インピーダンス jX★線路のリアクタンス
★送電端側★★アドミタンスの半分 jB/2★★静電容量の半分
★受電端側★★アドミタンスの半分 jB/2★★同じく半分
\( Z_C=\dfrac{1}{j\,0.400\times 10^{-3}}=-j2500\ \Omega \)
受電端側容量のインピーダンス(B/2=0.400 mS)
\( \dfrac{V_r}{V_s}=\dfrac{-j2500}{j200-j2500}=\dfrac{2500}{2300} \)
分圧の式
\( \fallingdotseq\ 1.087 \)
1より大きい
★フェランチ
\( V_r=66.0\times 1.087\fallingdotseq 71.7\ \mathrm{kV} \)
受電端電圧
★答え

送電端側のアドミタンスは、受電端電圧に影響しません——送電端電圧が与えられているから。

だから直列枝と受電端側容量の分圧だけを考えます——回路が単純になるのです。

比が1より大きいので、受電端のほうが高い——それがフェランチ現象です。

令和6年度下期 電力科目 B問題17:問題文と選択肢

まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

電験3種 電力科目 送電の計算 令和6年度下期 B問題17 問題文
令和6年度下期 電力科目 B問題17 問題文

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和6年度下期 第三種電気主任技術者試験」電力科目 B問題17

電験3種 電力科目 【送電の計算】 令和6年度下期 B問題17

 送電線のフェランチ現象に関する問である。三相3線式1回線送電線の一相が図のπ形等価回路で表され、送電線路のインピーダンスjX=j200Ω、アドミタンスjB=j0.800mSとし、送電端の線間電圧が66.0kVであり、受電端が無負荷のとき、次の(a)及び(b)の問に答えよ。

(a) 受電端の線間電圧の値〔kV〕として、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。

(1)66.0 (2)71.7 (3)78.6 (4)114 (5)132 kV

(b) 1線当たりの送電端電流の値〔A〕として、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。

(1)15.2 (2)16.6 (3)28.7 (4)31.8 (5)55.1 A

令和6年度下期 B問題17 π形等価回路(1相分)
令和6年度下期 B問題17 π形等価回路(1相分)
令和6年度下期 B問題17 π形等価回路(1相分)
令和6年度下期 B問題17 π形等価回路(1相分)
答え(a) 受電端の線間電圧は約 71.7 kVです。

両端の容量電流から送電端電流を求める

π形等価回路の両端容量電流を加えて送電端電流31.8アンペアを求める解説
受電端側16.6Aと送電端側15.2Aを加え、設問(b)の正解は31.8Aの選択肢(4)です。
\( I_r=\dfrac{71.7\times 10^3}{\sqrt{3}}\times 0.400\times 10^{-3} \)
受電端側容量を流れる電流
\( \fallingdotseq\ 16.6\ \mathrm{A} \)
計算する
\( I_s’=\dfrac{66.0\times 10^3}{\sqrt{3}}\times 0.400\times 10^{-3} \)
送電端側容量を流れる電流
\( \fallingdotseq\ 15.2\ \mathrm{A} \)
計算する
\( I_s=16.6+15.2\fallingdotseq 31.8\ \mathrm{A} \)
2つを足す
★答え

どちらも進み電流なので、そのまま足せます——同じ向きのベクトルだから。

選択肢に16.6も15.2もあるので、片方だけだと引っかかります——両方を足すのです。

相電圧に直してから計算します——アドミタンスは1相分だから。

答え(b) 1線当たりの送電端電流は約 31.8 Aです。

フェランチ現象への備え

対策しくみ使う場面
★★分路リアクトル★★遅れ電流を流して進み電流を打ち消す★★軽負荷時・線路の充電時
★調相設備の切り離し★電力用コンデンサを外す★軽負荷時
★発電機の低励磁運転★遅れ無効電力を吸収する★発電所側

進み電流が原因なので、遅れ電流をぶつけます——打ち消せば電圧上昇が収まるのです。

線路を充電するときは、先にリアクトルを入れます——あとからでは遅いから。

本問のような無負荷状態が、まさにその場面——実務に直結する計算です。

深夜の軽負荷でも同じ対策をとります——時間帯に応じて入り切りするのです。

⚠️ よくある間違い
(a)でアドミタンスをB のまま使う——π形なので両端にB/2ずつです。
(a)で66.0を選んでしまう——フェランチなので上がります
(b)で片方の電流だけ答える——16.6と15.2の両方を足します
(b)で線間電圧のまま計算する——相電圧に直します
mS を S に直し忘れる——0.800 mS=0.800×10⁻³ Sです。

⏱️ 本番での進め方
①★π形回路ではアドミタンスは両端にB/2ずつ。
②★無負荷なら受電端電圧は送電端より高くなる。
③★送電端電流は2つの容量電流の和。
④★アドミタンスの計算は相電圧で行う。

💡 覚え方
「π形は両端にB/2」——そこを間違えると全部ずれます無負荷なら電圧は上がる——それがフェランチ現象です。

★この問題は令和元年度 B問題16とまったく同一です送電の計算:フェランチ現象(R01))。5年を隔てての再出題です

長距離送電線ほど起きやすい

線路が長いほど、静電容量が大きくなるからです

条件静電容量フェランチ現象
★短い架空線★小さい★ほとんど起きない
★長い架空線★★大きい★★起きやすい
★★ケーブル★★架空線の数十倍★★短くても起きやすい

静電容量は線路の長さに比例します——だから長いほど充電電流が大きいのです。

ケーブルは導体と外部の距離が近いので、静電容量がとりわけ大きくなります——だから地中線では要注意

本問の0.800 mS は、かなり長い線路を想定しています——だから6 kV近く上がるのです。

実際の系統では、この上昇を見込んで運用します——計算で予測できるからです。

進み電流で電圧が上がる理由

ベクトルで考えると、はっきり分かります

電流の種類jXI の向き受電端電圧
★遅れ電流(誘導性負荷)★★電圧と同じ向きに近い★★下がる
★同相電流(抵抗負荷)★90度ずれる★ほとんど変わらない
★★進み電流(容量性)★★電圧と逆向きに近い★★上がる

リアクタンスによる電圧降下は jXI です——電流を90度進めた向きになります。

電流が遅れていれば、jXI は電圧と同じ向きに近づきます——だから送電端のほうが高いのです。

電流が進んでいれば、jXI は電圧と逆向きに近づきます——だから引き算になるのです。

本問は無負荷なので、電流は完全な進み電流——電圧上昇が最も大きくなる条件です。

だから受電端が71.7 kV まで上がります——送電端より5.7 kV も高いのです。

ベクトル図を描けば、一目で納得できます——試験でも余白に描くとよいのです。

単位の扱いで間違えないために

mS と kV が混ざるので、注意が要ります

問題文の表記計算で使う値
★アドミタンス★0.800 mS★★0.800×10⁻³ S
★その半分★—★★0.400×10⁻³ S
★線間電圧★66.0 kV★★66.0×10³ V
★相電圧★—★★線間電圧÷√3

mS は10⁻³ S です——直し忘れると1000倍ずれるのです。

電圧は必ず相電圧に直してから掛けます——1相分の回路だから

この2点だけ気をつければ、計算自体は掛け算だけ——落ち着いて進めましょう

送電端側の容量が答えに関わる場面

(a)では効かず、(b)では効きます

問い送電端側の B/2理由
★(a) 受電端電圧★★関係ない★★送電端電圧が固定されている
★(b) 送電端電流★★関係する★★そこにも電流が流れ込む

送電端電圧が与えられているので、その手前の容量は電圧に影響しません——電源が支えているから。

けれども電流としては確かに流れています——15.2 A の分です。

だから(b)では足す必要があります——問われているものによって使う要素が変わるのです。

まとめ

送電端相電圧Es=66000/√3=38105V
(a)受電端Er=Es/(1-XB/2)=41419V→線間71.7kV
フェランチ確認71.7kV>66.0kV(受電端が高い)
(b)送電端電流Is=(Es+Er)(B/2)=31.8A
答え(a)-(2),(b)-(4)

▼あわせて解きたい関連問題
・フェランチの誤り選択(地中送電20):【電力】平成24年度 A問題12
・T形等価回路の計算(送電の計算4):【電力】令和6年度下期 B問題16

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