今回は令和6年度下期 電力科目 B問題17、フェランチ現象を π形等価回路の計算で確かめる問題です。地中送電8・20で学んだ「受電端電圧が送電端より高くなる」現象を、実際に数値で計算します。
ポイントは受電端が無負荷なので、流れるのは充電電流(進み)だけ。抵抗を無視した jX と jB/2 だけの回路では、計算がすべて実数になり(j同士の積で符号が反転)、受電端電圧が送電端より高くなることが素直な式で示せます。
出題のポイント:π形等価回路とフェランチ現象

π形回路ではアドミタンスを両端にB/2ずつ配置します。無負荷時の分圧から受電端電圧を求め、両端の容量電流を相電圧で計算して送電端電流を求めます。
無負荷時の受電端電圧を求める

無負荷なので、分圧の式で受電端電圧が出ます。
| 部位 | 置くもの | 役割 |
| ★中央 | ★★インピーダンス jX | ★線路のリアクタンス |
| ★送電端側 | ★★アドミタンスの半分 jB/2 | ★★静電容量の半分 |
| ★受電端側 | ★★アドミタンスの半分 jB/2 | ★★同じく半分 |
★フェランチ
★答え
送電端側のアドミタンスは、受電端電圧に影響しません——送電端電圧が与えられているから。
だから直列枝と受電端側容量の分圧だけを考えます——回路が単純になるのです。
比が1より大きいので、受電端のほうが高い——それがフェランチ現象です。
令和6年度下期 電力科目 B問題17:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和6年度下期 第三種電気主任技術者試験」電力科目 B問題17
電験3種 電力科目 【送電の計算】 令和6年度下期 B問題17
送電線のフェランチ現象に関する問である。三相3線式1回線送電線の一相が図のπ形等価回路で表され、送電線路のインピーダンスjX=j200Ω、アドミタンスjB=j0.800mSとし、送電端の線間電圧が66.0kVであり、受電端が無負荷のとき、次の(a)及び(b)の問に答えよ。
(a) 受電端の線間電圧の値〔kV〕として、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(1)66.0 (2)71.7 (3)78.6 (4)114 (5)132 kV
(b) 1線当たりの送電端電流の値〔A〕として、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(1)15.2 (2)16.6 (3)28.7 (4)31.8 (5)55.1 A


両端の容量電流から送電端電流を求める

★
★
★答え
どちらも進み電流なので、そのまま足せます——同じ向きのベクトルだから。
選択肢に16.6も15.2もあるので、片方だけだと引っかかります——両方を足すのです。
相電圧に直してから計算します——アドミタンスは1相分だから。
フェランチ現象への備え
| 対策 | しくみ | 使う場面 |
| ★★分路リアクトル | ★★遅れ電流を流して進み電流を打ち消す | ★★軽負荷時・線路の充電時 |
| ★調相設備の切り離し | ★電力用コンデンサを外す | ★軽負荷時 |
| ★発電機の低励磁運転 | ★遅れ無効電力を吸収する | ★発電所側 |
進み電流が原因なので、遅れ電流をぶつけます——打ち消せば電圧上昇が収まるのです。
線路を充電するときは、先にリアクトルを入れます——あとからでは遅いから。
本問のような無負荷状態が、まさにその場面——実務に直結する計算です。
深夜の軽負荷でも同じ対策をとります——時間帯に応じて入り切りするのです。
⚠️ よくある間違い
(a)でアドミタンスをB のまま使う——π形なので両端にB/2ずつです。
(a)で66.0を選んでしまう——フェランチなので上がります。
(b)で片方の電流だけ答える——16.6と15.2の両方を足します。
(b)で線間電圧のまま計算する——相電圧に直します。
mS を S に直し忘れる——0.800 mS=0.800×10⁻³ Sです。
⏱️ 本番での進め方
①★π形回路ではアドミタンスは両端にB/2ずつ。
②★無負荷なら受電端電圧は送電端より高くなる。
③★送電端電流は2つの容量電流の和。
④★アドミタンスの計算は相電圧で行う。
💡 覚え方
「π形は両端にB/2」——そこを間違えると全部ずれます。無負荷なら電圧は上がる——それがフェランチ現象です。
★この問題は令和元年度 B問題16とまったく同一です(送電の計算:フェランチ現象(R01))。5年を隔てての再出題です。
長距離送電線ほど起きやすい
線路が長いほど、静電容量が大きくなるからです。
| 条件 | 静電容量 | フェランチ現象 |
| ★短い架空線 | ★小さい | ★ほとんど起きない |
| ★長い架空線 | ★★大きい | ★★起きやすい |
| ★★ケーブル | ★★架空線の数十倍 | ★★短くても起きやすい |
静電容量は線路の長さに比例します——だから長いほど充電電流が大きいのです。
ケーブルは導体と外部の距離が近いので、静電容量がとりわけ大きくなります——だから地中線では要注意。
本問の0.800 mS は、かなり長い線路を想定しています——だから6 kV近く上がるのです。
実際の系統では、この上昇を見込んで運用します——計算で予測できるからです。
進み電流で電圧が上がる理由
ベクトルで考えると、はっきり分かります。
| 電流の種類 | jXI の向き | 受電端電圧 |
| ★遅れ電流(誘導性負荷) | ★★電圧と同じ向きに近い | ★★下がる |
| ★同相電流(抵抗負荷) | ★90度ずれる | ★ほとんど変わらない |
| ★★進み電流(容量性) | ★★電圧と逆向きに近い | ★★上がる |
リアクタンスによる電圧降下は jXI です——電流を90度進めた向きになります。
電流が遅れていれば、jXI は電圧と同じ向きに近づきます——だから送電端のほうが高いのです。
電流が進んでいれば、jXI は電圧と逆向きに近づきます——だから引き算になるのです。
本問は無負荷なので、電流は完全な進み電流——電圧上昇が最も大きくなる条件です。
だから受電端が71.7 kV まで上がります——送電端より5.7 kV も高いのです。
ベクトル図を描けば、一目で納得できます——試験でも余白に描くとよいのです。
単位の扱いで間違えないために
mS と kV が混ざるので、注意が要ります。
| 量 | 問題文の表記 | 計算で使う値 |
| ★アドミタンス | ★0.800 mS | ★★0.800×10⁻³ S |
| ★その半分 | ★— | ★★0.400×10⁻³ S |
| ★線間電圧 | ★66.0 kV | ★★66.0×10³ V |
| ★相電圧 | ★— | ★★線間電圧÷√3 |
mS は10⁻³ S です——直し忘れると1000倍ずれるのです。
電圧は必ず相電圧に直してから掛けます——1相分の回路だから。
この2点だけ気をつければ、計算自体は掛け算だけ——落ち着いて進めましょう。
送電端側の容量が答えに関わる場面
(a)では効かず、(b)では効きます。
| 問い | 送電端側の B/2 | 理由 |
| ★(a) 受電端電圧 | ★★関係ない | ★★送電端電圧が固定されている |
| ★(b) 送電端電流 | ★★関係する | ★★そこにも電流が流れ込む |
送電端電圧が与えられているので、その手前の容量は電圧に影響しません——電源が支えているから。
けれども電流としては確かに流れています——15.2 A の分です。
だから(b)では足す必要があります——問われているものによって使う要素が変わるのです。
まとめ
| 送電端相電圧 | Es=66000/√3=38105V |
| (a)受電端 | Er=Es/(1-XB/2)=41419V→線間71.7kV |
| フェランチ確認 | 71.7kV>66.0kV(受電端が高い) |
| (b)送電端電流 | Is=(Es+Er)(B/2)=31.8A |
| 答え | (a)-(2),(b)-(4) |
▼あわせて解きたい関連問題
・フェランチの誤り選択(地中送電20):【電力】平成24年度 A問題12
・T形等価回路の計算(送電の計算4):【電力】令和6年度下期 B問題16

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