送電の計算15【電力】フェランチのπ形計算・完全同一の再出題!71.7kV・31.8A 令和元年度 B問題16 完全解説

電験3種 電力科目 送電の計算 令和元年度 B問題16 完全同一の再出題!フェランチで71.7kVまで上昇

今回は令和元年度 電力科目 B問題16フェランチ現象のπ形等価回路計算です。この問題は令和6年度下期B問題17(送電の計算5)と数値・図・答えまで完全に同一で再出題されました——一度解けば2問分になる、まさにお得な問題です。

無負荷なので流れるのは充電電流(進み)だけ。抵抗を無視した jX・jB/2 の回路では計算がすべて実数になり、受電端電圧が送電端より高くなる(フェランチ現象)ことが素直な式で示せます。

目次

(a) の答えは(2):71.7 kV

受電端が無負荷なので、充電電流だけが流れます

回路を整理する

要素役割
★直列インピーダンス★jX=j200 Ω★線路のリアクタンス
★受電端側アドミタンス★★jB/2=j0.400 mS★★π形の半分
★送電端側アドミタンス★jB/2=j0.400 mS★★受電端電圧には効かない

π形回路では、アドミタンスが両端に半分ずつ置かれます——だからB/2です。

送電端側のアドミタンスは、受電端電圧に影響しません——送電端電圧が与えられているから。

\( Z_C=\dfrac{1}{j\,0.400\times 10^{-3}}=-j2500\ \Omega \)
受電端側容量のインピーダンス
\( \dfrac{V_r}{V_s}=\dfrac{-j2500}{j200-j2500}=\dfrac{-j2500}{-j2300} \)
分圧の式
\( =\dfrac{2500}{2300}\fallingdotseq 1.087 \)
整理する
★1より大きい
\( V_r=66.0\times 1.087\fallingdotseq 71.7\ \mathrm{kV} \)
受電端電圧
★答え

比が1より大きいので、受電端のほうが高くなります——それがフェランチ現象です。

令和元年度 電力科目 B問題16:問題文と選択肢

まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

電験3種 電力科目 送電の計算 令和元年度 B問題16 問題文
令和元年度 電力科目 B問題16 問題文

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和元年度 第三種電気主任技術者試験」電力科目 B問題16

電験3種 電力科目 【送電の計算】 令和元年度 B問題16

 送電線のフェランチ現象に関する問である。三相3線式1回線送電線の一相が図のπ形等価回路で表され、送電線路のインピーダンスjX=j200Ω、アドミタンスjB=j0.800mSとし、送電端の線間電圧が66.0kVであり、受電端が無負荷のとき、次の(a)及び(b)の問に答えよ。

(a) 受電端の線間電圧の値〔kV〕として、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。

(1)66.0 (2)71.7 (3)78.6 (4)114 (5)132 kV

(b) 1線当たりの送電端電流の値〔A〕として、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。

(1)15.2 (2)16.6 (3)28.7 (4)31.8 (5)55.1 A

令和元年度 B問題16 π形等価回路(1相分)
令和元年度 B問題16 π形等価回路(1相分)
令和元年度 B問題16 π形等価回路(1相分)
令和元年度 B問題16 π形等価回路(1相分)
答え(a) 受電端の線間電圧は約 71.7 kVです。

(b) の答えは(4):31.8 A

送電端電流は、2つの容量電流の和になります

\( I_r=\dfrac{V_r}{\sqrt{3}}\times\dfrac{B}{2}=\dfrac{71.7\times 10^3}{\sqrt{3}}\times 0.400\times 10^{-3} \)
受電端側容量を流れる電流
\( =41400\times 0.400\times 10^{-3}\fallingdotseq 16.6\ \mathrm{A} \)
計算する
\( I_s’=\dfrac{66.0\times 10^3}{\sqrt{3}}\times 0.400\times 10^{-3} \)
送電端側容量を流れる電流
\( =38100\times 0.400\times 10^{-3}\fallingdotseq 15.2\ \mathrm{A} \)
計算する
\( I_s=16.6+15.2\fallingdotseq 31.8\ \mathrm{A} \)
2つを足す
★答え

どちらも進み電流なので、そのまま足せます——同じ向きのベクトルだから。

相電圧に直してから計算します——アドミタンスは1相分だからです。

選択肢に16.6も15.2もあるので、片方だけだと引っかかります——両方を足すのです。

答え(b) 1線当たりの送電端電流は約 31.8 Aです。

フェランチ現象が起きるしくみ

段階起きること
★受電端が無負荷なので負荷電流が流れない
★②★★線路の静電容量による充電電流だけが流れる
★③★★充電電流は進み電流
★④★★進み電流がリアクタンスを流れると電圧が上がる
★⑤★★受電端電圧が送電端電圧を超える

ふつうは遅れ電流が流れて電圧が下がります——それが電圧降下です。

無負荷なら、その遅れ電流がありません——進み電流だけが残るのです。

進み電流は、電圧降下を負にします——つまり電圧が上がることになります。

だから対策は分路リアクトル——遅れ電流を流して打ち消すのです。

⚠️ よくある間違い
(a)でアドミタンスをB のまま使う——π形なので両端にB/2ずつです。
(a)で66.0を選んでしまう——フェランチなので上がります
(b)で片方の電流だけ答える——16.6と15.2の両方を足します
(b)で線間電圧のまま計算する——相電圧に直します(√3 で割る)
mS を S に直し忘れる——0.800 mS=0.800×10⁻³ Sです。

⏱️ 本番での進め方
①★π形回路ではアドミタンスは両端にB/2ずつ。
②★無負荷なら受電端電圧は送電端より高くなる。
③★送電端電流は2つの容量電流の和。
④★アドミタンスの計算は相電圧で行う。

💡 覚え方
「π形は両端にB/2」——そこを間違えると全部ずれます無負荷なら電圧は上がる——それがフェランチ現象です。

フェランチ現象の性質は令和4年度上期 A問題9地中送電:フェランチ効果)にあります。

π形等価回路という考え方

線路の静電容量を、両端にまとめた回路です

部位置くもの意味
★中央★★インピーダンス(R+jX)★線路の抵抗とリアクタンス
★送電端側★★アドミタンスの半分(jB/2)★静電容量の半分
★受電端側★★アドミタンスの半分(jB/2)★同じく半分

本当は静電容量が線路全体に分布しています——それを両端にまとめるのです。

両端に半分ずつ置くので、πの字に見えます——だからπ形

中央に1か所まとめればT形になります——どちらも近似です。

π形のほうが実際に近いとされます——だから中距離送電線でよく使われるのです。

無負荷という条件が効いている

負荷電流がないことで、計算が単純になります

負荷があるとき無負荷のとき
★流れる電流★★負荷電流+充電電流★★充電電流だけ
★電流の位相★遅れが多い★★完全に進み
★受電端電圧★下がる★★上がる

負荷があれば、遅れ電流が流れて電圧が下がります——ふつうの電圧降下です。

無負荷なら、進み電流だけが残ります——だから電圧が上がるのです。

フェランチ現象が最も顕著に現れる条件——だから問題文が無負荷と指定しているのです。

実際の系統でも、線路の充電時にこの状態になります——だから先に分路リアクトルを入れるのです。

フェランチ現象への対策

電圧が上がりすぎるのを防ぎます

対策しくみ使う場面
★★分路リアクトル★★遅れ電流を流して進み電流を打ち消す★★軽負荷時・線路の充電時
★調相設備の切り離し★電力用コンデンサを外す★軽負荷時
★発電機の低励磁運転★遅れ無効電力を吸収する★発電所側

進み電流が原因なので、遅れ電流をぶつけます——打ち消せば電圧上昇が収まるのです。

線路を充電するときは、先にリアクトルを入れます——あとからでは遅いから。

本問のような無負荷状態が、まさにその場面——実務に直結する計算です。

深夜の軽負荷でも同じ対策をとります——時間帯に応じて入り切りするのです。

まとめ

送電端相電圧Es=66000/√3=38105V
(a)受電端Er=Es/(1-XB/2)=41419V→線間71.7kV
(b)送電端電流Is=(Es+Er)(B/2)=31.8A
再出題R06下問17(送電の計算5)と完全同一
答え(a)-(2),(b)-(4)

▼あわせて解きたい関連問題
・完全同一の再出題(送電の計算5):【電力】令和6年度下期 B問題17
・フェランチの誤り選択(地中送電20):【電力】平成24年度 A問題12

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