今回は令和元年度 電力科目 B問題16、フェランチ現象のπ形等価回路計算です。この問題は令和6年度下期B問題17(送電の計算5)と数値・図・答えまで完全に同一で再出題されました——一度解けば2問分になる、まさにお得な問題です。
無負荷なので流れるのは充電電流(進み)だけ。抵抗を無視した jX・jB/2 の回路では計算がすべて実数になり、受電端電圧が送電端より高くなる(フェランチ現象)ことが素直な式で示せます。
(a) の答えは(2):71.7 kV
受電端が無負荷なので、充電電流だけが流れます。
回路を整理する
| 要素 | 値 | 役割 |
| ★直列インピーダンス | ★jX=j200 Ω | ★線路のリアクタンス |
| ★受電端側アドミタンス | ★★jB/2=j0.400 mS | ★★π形の半分 |
| ★送電端側アドミタンス | ★jB/2=j0.400 mS | ★★受電端電圧には効かない |
π形回路では、アドミタンスが両端に半分ずつ置かれます——だからB/2です。
送電端側のアドミタンスは、受電端電圧に影響しません——送電端電圧が与えられているから。
★1より大きい
★答え
比が1より大きいので、受電端のほうが高くなります——それがフェランチ現象です。
令和元年度 電力科目 B問題16:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和元年度 第三種電気主任技術者試験」電力科目 B問題16
電験3種 電力科目 【送電の計算】 令和元年度 B問題16
送電線のフェランチ現象に関する問である。三相3線式1回線送電線の一相が図のπ形等価回路で表され、送電線路のインピーダンスjX=j200Ω、アドミタンスjB=j0.800mSとし、送電端の線間電圧が66.0kVであり、受電端が無負荷のとき、次の(a)及び(b)の問に答えよ。
(a) 受電端の線間電圧の値〔kV〕として、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(1)66.0 (2)71.7 (3)78.6 (4)114 (5)132 kV
(b) 1線当たりの送電端電流の値〔A〕として、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(1)15.2 (2)16.6 (3)28.7 (4)31.8 (5)55.1 A



(b) の答えは(4):31.8 A
送電端電流は、2つの容量電流の和になります。
★
★
★答え
どちらも進み電流なので、そのまま足せます——同じ向きのベクトルだから。
相電圧に直してから計算します——アドミタンスは1相分だからです。
選択肢に16.6も15.2もあるので、片方だけだと引っかかります——両方を足すのです。
フェランチ現象が起きるしくみ
| 段階 | 起きること |
| ① | ★受電端が無負荷なので負荷電流が流れない |
| ★② | ★★線路の静電容量による充電電流だけが流れる |
| ★③ | ★★充電電流は進み電流 |
| ★④ | ★★進み電流がリアクタンスを流れると電圧が上がる |
| ★⑤ | ★★受電端電圧が送電端電圧を超える |
ふつうは遅れ電流が流れて電圧が下がります——それが電圧降下です。
無負荷なら、その遅れ電流がありません——進み電流だけが残るのです。
進み電流は、電圧降下を負にします——つまり電圧が上がることになります。
だから対策は分路リアクトル——遅れ電流を流して打ち消すのです。
⚠️ よくある間違い
(a)でアドミタンスをB のまま使う——π形なので両端にB/2ずつです。
(a)で66.0を選んでしまう——フェランチなので上がります。
(b)で片方の電流だけ答える——16.6と15.2の両方を足します。
(b)で線間電圧のまま計算する——相電圧に直します(√3 で割る)。
mS を S に直し忘れる——0.800 mS=0.800×10⁻³ Sです。
⏱️ 本番での進め方
①★π形回路ではアドミタンスは両端にB/2ずつ。
②★無負荷なら受電端電圧は送電端より高くなる。
③★送電端電流は2つの容量電流の和。
④★アドミタンスの計算は相電圧で行う。
💡 覚え方
「π形は両端にB/2」——そこを間違えると全部ずれます。無負荷なら電圧は上がる——それがフェランチ現象です。
フェランチ現象の性質は令和4年度上期 A問題9(地中送電:フェランチ効果)にあります。
π形等価回路という考え方
線路の静電容量を、両端にまとめた回路です。
| 部位 | 置くもの | 意味 |
| ★中央 | ★★インピーダンス(R+jX) | ★線路の抵抗とリアクタンス |
| ★送電端側 | ★★アドミタンスの半分(jB/2) | ★静電容量の半分 |
| ★受電端側 | ★★アドミタンスの半分(jB/2) | ★同じく半分 |
本当は静電容量が線路全体に分布しています——それを両端にまとめるのです。
両端に半分ずつ置くので、πの字に見えます——だからπ形。
中央に1か所まとめればT形になります——どちらも近似です。
π形のほうが実際に近いとされます——だから中距離送電線でよく使われるのです。
無負荷という条件が効いている
負荷電流がないことで、計算が単純になります。
| 負荷があるとき | 無負荷のとき | |
| ★流れる電流 | ★★負荷電流+充電電流 | ★★充電電流だけ |
| ★電流の位相 | ★遅れが多い | ★★完全に進み |
| ★受電端電圧 | ★下がる | ★★上がる |
負荷があれば、遅れ電流が流れて電圧が下がります——ふつうの電圧降下です。
無負荷なら、進み電流だけが残ります——だから電圧が上がるのです。
フェランチ現象が最も顕著に現れる条件——だから問題文が無負荷と指定しているのです。
実際の系統でも、線路の充電時にこの状態になります——だから先に分路リアクトルを入れるのです。
フェランチ現象への対策
電圧が上がりすぎるのを防ぎます。
| 対策 | しくみ | 使う場面 |
| ★★分路リアクトル | ★★遅れ電流を流して進み電流を打ち消す | ★★軽負荷時・線路の充電時 |
| ★調相設備の切り離し | ★電力用コンデンサを外す | ★軽負荷時 |
| ★発電機の低励磁運転 | ★遅れ無効電力を吸収する | ★発電所側 |
進み電流が原因なので、遅れ電流をぶつけます——打ち消せば電圧上昇が収まるのです。
線路を充電するときは、先にリアクトルを入れます——あとからでは遅いから。
本問のような無負荷状態が、まさにその場面——実務に直結する計算です。
深夜の軽負荷でも同じ対策をとります——時間帯に応じて入り切りするのです。
まとめ
| 送電端相電圧 | Es=66000/√3=38105V |
| (a)受電端 | Er=Es/(1-XB/2)=41419V→線間71.7kV |
| (b)送電端電流 | Is=(Es+Er)(B/2)=31.8A |
| 再出題 | R06下問17(送電の計算5)と完全同一 |
| 答え | (a)-(2),(b)-(4) |
▼あわせて解きたい関連問題
・完全同一の再出題(送電の計算5):【電力】令和6年度下期 B問題17
・フェランチの誤り選択(地中送電20):【電力】平成24年度 A問題12

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