今回は令和4年度下期 電力科目 B問題16、電圧降下率を10%に保つ条件から受電可能電力と調相設備容量を求める計算です。電圧降下率の近似式 ε=(PR+QX)/Vr² を自在に使えるかが問われます。
核心の式はε=(PR+QX)/Vr²(P・Qは三相電力、Vrは受電端線間電圧)。(a)は負荷だけでこの式からSを逆算、(b)は調相設備で線路を流れる無効電力Qを減らして同じ降下率を保つ——「調相設備が供給する分だけ線路のQが減る」という視点が鍵です。
令和4年度下期 電力科目 B問題16:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和4年度下期 第三種電気主任技術者試験」電力科目 B問題16
電験3種 電力科目 【送電の計算】 令和4年度下期 B問題16
電線1線の抵抗が6Ω、誘導性リアクタンスが4Ωである三相3線式送電線について、次の(a)及び(b)の問に答えよ。
(a) 受電端電圧を60kV、送電線での電圧降下率を受電端電圧基準で10%に保つものとする。この受電端に、力率80%(遅れ)の負荷を接続する。この場合、受電可能な三相皮相電力の値〔MV・A〕として、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(1)28.9 (2)42.9 (3)50.0 (4)60.5 (5)86.6 MV・A
(b) 受電端に接続する負荷の条件を、遅れ力率60%、三相皮相電力65MV・Aに変更することになった。この場合でも、受電端電圧を60kV、送電線での電圧降下率を受電端電圧基準で10%に保ちたい。受電端に設置された調相設備から系統に供給すべき無効電力の値〔Mvar〕として、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(1)12.0 (2)20.5 (3)27.0 (4)31.5 (5)47.1 Mvar
出題のポイント:電圧降下率をP・Qで表して解く

三相3線式の近似電圧降下を、三相電力を使って電圧降下率 ε=(PR+QX)/Vr² と表します。(a)では P=Scosθ、Q=Ssinθ を代入して受電可能な皮相電力を求めます。(b)では負荷の無効電力と、調相後に線路を流れる無効電力を区別することがポイントです。
(a) の答えは(3):50.0 MV・A

電圧降下率の式は、こうして生まれます。
★√3が消える
★これが核心
★答え
√3 が消えるのは、三相電力と線間電圧で書いたからです——導出を追えば納得できるのです。
4.8+2.4=7.2 が分子の係数になります——R とX が力率で重みづけされるのです。
(b) の答えは(2):20.5 Mvar

線路を流れる無効電力と、負荷が要る無効電力は別物です。
| 記号 | 意味 | 本問の値 |
| ★Q負荷 | ★負荷が必要とする無効電力 | ★★52 Mvar |
| ★★Q線路 | ★★実際に線路を流れる無効電力 | ★★31.5 Mvar |
| ★Qc | ★調相設備が現地で作る分 | ★★20.5 Mvar |
★
★
★答え
降下率の式に入るのは、線路を流れる分だけです——負荷が要る分ではないのです。
差の20.5 Mvar を、現地のコンデンサが作ります——だから線路に流さずに済むのです。
RとXの比率で何が変わるか
| 本問(R=6, X=4) | 一般の送電線(R<X) | |
| ★どちらが大きいか | ★★抵抗のほうが大きい | ★★リアクタンスのほうが大きい |
| ★力率改善の効き方 | ★★ほどほど | ★★大きい |
| ★あてはまる線路 | ★★配電線に近い | ★★高圧の送電線 |
電圧の高い送電線ほど、X が R より大きくなります——電線が太く、間隔が広いから。
X が大きい線路では、無効電力が電圧降下に強く効きます——だから力率改善の効果が大きいのです。
本問は R のほうが大きいという設定です——それでも20.5 Mvar 必要になるのです。
だから式に数値を入れて確かめることが大切——感覚だけでは決められないのです。
⚠️ よくある間違い
降下率の式に√3 を入れる——三相電力と線間電圧なら不要です。
(b)で Q負荷52 をそのまま答える——線路を流れる31.5との差です。
(b)で31.5 を答える——それは線路を流れる分です。
力率0.6の sinθ を0.6とする——0.8です。
R とX を取り違える——本問は R=6・X=4です。
⏱️ 本番での進め方
①★ε=(PR+QX)/Vr²。導出を知っていれば√3の有無に迷わない。
②★降下率の式に入るのは「線路を流れる」無効電力。
③★調相設備の容量は Q負荷−Q線路。
④★選択肢に31.5があるのは引っかけ。
💡 覚え方
「線路のQと負荷のQを分けて考える」——降下率の式に入るのは線路側です。調相設備はその差を埋める——Qc=Q負荷−Q線路になります。
★同じ形の問題が平成20年度 B問題16(送電の計算:電圧降下率と調相設備(H20))にあります。R とX の値が入れ替わっただけです。
電圧降下の近似式が使える条件
ΔV=√3I(Rcosθ+Xsinθ) は近似式です。
| 正確な式 | 近似式 | |
| ★考え方 | ★★ベクトルの大きさの差 | ★★同相成分だけを取る |
| ★手間 | ★★複素数計算が必要 | ★★掛け算と足し算だけ |
| ★誤差 | ★なし | ★★相差角が小さければごくわずか |
正確には、送電端と受電端の電圧はベクトルです——向きが少しずれているのです。
けれども相差角が小さければ、受電端電圧の向きの成分だけで足ります——直角方向の成分は2次の効果だから。
だから実務でも試験でも、この近似式を使います——手計算でできるのが強みです。
本問のように、逆算にも使えます——複素数だと逆算が難しいのです。
受電可能な電力を決めているもの
電圧降下率の上限が、送れる量を縛っています。
| 制約 | 内容 | 本問で効いているか |
| ★★電圧降下 | ★★受電端電圧が下がりすぎない範囲 | ★★これが本問の制約 |
| ★熱容量 | ★電線が許容温度を超えない範囲 | ★短い線路で効く |
| ★安定度 | ★同期を保てる範囲 | ★長距離で効く |
送電線に流せる電力には、3つの限界があります——いちばん厳しいものが上限になります。
短い線路なら、電線が熱くなることが先に問題になります——電圧降下は小さいから。
中くらいの長さでは、電圧降下が先に効きます——本問はこの場合です。
とても長い線路では、安定度が先に限界になります——相差角が開きすぎるのです。
だから線路の長さによって、考えるべき制約が変わります——そこを意識すると問題の意図が見えるのです。
計算の見直しに使える確かめ方
答えを式に戻すと、すぐ確かめられます。
★合っている
ぴったり0.10 になれば、計算は合っています——1分もかかりません。
本問の(b)は(a)の答えを直接使いませんが、同じ電圧降下率の式と線路定数を使います——式へ戻して電圧降下率が10%になることを検算できます。
時間が余ったら必ず戻して確かめましょう。
まとめ
| 降下率の式 | ε=(PR+QX)/Vr² |
| (a) | S×7.2/Vr²=0.1→S=50MVA |
| (b)負荷 | P=39MW、Qload=52Mvar |
| (b)線路 | Qline=(0.1Vr²-PR)/X=31.5Mvar |
| (b)調相 | Qc=52-31.5=20.5Mvar |
| 答え | (a)-(3),(b)-(2) |
▼あわせて解きたい関連問題
・送電電力の式(送電の計算9):【電力】令和4年度下期 A問題9
・重C軽Lの調相(変電48):【電力】平成18年度 A問題5

コメント