送電の計算31【電力】電圧降下率ε=(PR+QX)/Vr²!受電可能47.4MVA・調相22.1Mvar 平成20年度 B問題16 完全解説

電験3種 電力科目 送電の計算 平成20年度 B問題16 電圧降下率5%以内なら?受電可能は47.4MV·A

今回は平成20年度 電力科目 B問題16電圧降下率を10%に保つ条件から受電可能電力と調相設備容量を求める計算です。令和4年度下期B問題16(送電の計算10)と同型で、公式 ε=(PR+QX)/Vr² を使いこなせるかが問われます。

核心はε=(PR+QX)/Vr²(P・Qは三相電力、Vrは受電端線間電圧)。(a)は負荷だけでSを逆算、(b)は調相設備で線路の無効電力Qを減らして同じ降下率を保つ、という2段構えです。

目次

(a) の答えは(3):47.4 MV・A

電圧降下率の式から、皮相電力を逆算します

電圧降下率
\( \varepsilon=\dfrac{PR+QX}{V_r^2} \)

P:三相有効電力 Q:三相無効電力 Vr:線間電圧

\( P=S\cos\theta=0.8S,\ \ Q=S\sin\theta=0.6S \)
力率0.8なので
\( 0.10=\dfrac{0.8S\times 5+0.6S\times 6}{(60\times 10^3)^2} \)
数値を入れる
\( 0.10=\dfrac{7.6S}{3.6\times 10^9} \)
分子をまとめる
\( S=\dfrac{0.10\times 3.6\times 10^9}{7.6} \)
S について解く
\( \fallingdotseq\ 47.4\times 10^6\ \mathrm{V\cdot A}=47.4\ \mathrm{MV\cdot A} \)
整理して
★答え

この式には√3 が入りません——三相電力と線間電圧で表しているからです。

抵抗とリアクタンスの両方が効きます——力率によって重みが変わるのです。

力率が悪いほど、Q が大きくなって電圧降下が増えます——だから送れる電力が減るのです。

平成20年度 電力科目 B問題16:問題文と選択肢

まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

電験3種 電力科目 送電の計算 平成20年度 B問題16 問題文
平成20年度 電力科目 B問題16 問題文

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成20年度 第三種電気主任技術者試験」電力科目 B問題16

電験3種 電力科目 【送電の計算】 平成20年度 B問題16

 電線1線の抵抗が5〔Ω〕、誘導性リアクタンスが6〔Ω〕である三相3線式送電線について、次の(a)及び(b)の問に答えよ。

(a) 受電端電圧を60〔kV〕に保ち、送電線での電圧降下率を受電端電圧基準で10〔%〕に保つ。負荷の力率が80〔%〕(遅れ)のとき、受電可能な三相皮相電力〔MV・A〕の値として、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。

(1)27.4 (2)37.9 (3)47.4 (4)56.8 (5)60.5 MV・A

(b) 受電端に遅れ力率60〔%〕、三相皮相電力63.2〔MV・A〕の負荷を接続し、受電端電圧を60〔kV〕、電圧降下率を10〔%〕に保つ。調相設備から系統に供給すべき無効電力〔Mvar〕の値として、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。

(1)12.6 (2)15.8 (3)18.3 (4)22.1 (5)34.8 Mvar

答え(a) 受電可能な三相皮相電力は約 47.4 MV・Aです。

(b) の答えは(4):22.1 Mvar

負荷の無効電力と、系統が許す無効電力の差を求めます

\( P=63.2\times 0.6=37.9\ \mathrm{MW} \)
負荷の有効電力
\( Q_{負荷}=63.2\times 0.8=50.6\ \mathrm{Mvar} \)
負荷の無効電力(sinθ=0.8)
\( 0.10=\dfrac{37.9\times 10^6\times 5+Q\times 6}{3.6\times 10^9} \)
電圧降下率の条件
\( 6Q=3.6\times 10^8-1.90\times 10^8 \)
整理する
\( Q\fallingdotseq 28.4\ \mathrm{Mvar} \)
系統から流せる無効電力
\( Q_c=50.6-28.4\fallingdotseq 22.1\ \mathrm{Mvar} \)
調相設備が受け持つ分
★答え

負荷が必要とする無効電力は50.6 Mvar です——力率0.6なのでsinθ=0.8

けれども系統から流せるのは28.4 Mvar まで——それ以上だと電圧降下率が10%を超えるのです。

足りない分を、調相設備が供給します——その差が答えになります。

答え(b) 調相設備が供給すべき無効電力は約 22.1 Mvarです。

調相設備が電圧を保つしくみ

調相設備なし調相設備あり
★線路を流れる無効電力★★50.6 Mvar すべて★★28.4 Mvar だけ
★電圧降下率★★10%を超える★★10%に収まる
★受電端電圧★★下がりすぎる★★60 kV を保てる

調相設備は、受電端の近くに置きます——そこで無効電力を作るのです。

すると線路を流れる無効電力が減ります——遠くから運ばなくてよいから。

だから電圧降下が減り、電圧が保てます——それが調相設備の役目です。

同時に線路の電流も減るので、損失も減ります——一石二鳥になります。

⚠️ よくある間違い
電圧降下率の式に√3 を入れてしまう——三相電力と線間電圧なら√3 は不要です。
力率0.6のsinθ を0.6としてしまう——sinθ=0.8です。
(b)で28.4 をそのまま答える——負荷の50.6 との差が答え
(a)で皮相電力と有効電力を取り違える——問われているのは皮相電力です。
Vr を相電圧にしてしまう——この式では線間電圧を使います。

⏱️ 本番での進め方
①★電圧降下率 ε=(PR+QX)/Vr²。√3 は不要。
②★力率0.6ならsinθ=0.8。
③★調相設備が受け持つのは、負荷Qと系統が許すQの差。
④★調相設備を置くと電圧も損失も改善する。

💡 覚え方
「ε=(PR+QX)/Vr²」——三相電力と線間電圧なら√3 は要りません調相設備は差を埋める——負荷が要る分と系統が流せる分の差です。

電圧調整と調相設備は令和4年度上期 A問題6架空送電:電圧調整)にあります。

電圧降下と電圧降下率の違い

似た言葉ですが、別のものです

用語単位
★電圧降下★★v=Vs−Vr★V
★★電圧降下率★★ε=(Vs−Vr)/Vr★★%(無名数)
★電圧変動率★(無負荷時−全負荷時)/全負荷時★%

電圧降下率は、受電端電圧を基準にした割合です——分母が受電端だから。

だから同じ100 V の降下でも、6.6 kV と66 kV では率がまったく違います——10倍の差

本問の10%は、6 kV も下がることを意味します——60 kV の1割です。

電圧変動率はまた別で、負荷の有無による違いを表します——混同しないことです。

力率を改善すると送れる電力が増える

本問の(a)と(b)は、同じことを別の角度から見ています

力率PR+QX の重み送れる皮相電力
★1.0★★R だけが効く★★最も大きい
★0.8★0.8R+0.6X★★47.4 MV・A
★0.6★★0.6R+0.8X★★もっと小さい

力率が悪いほど、X の重みが増えます——sinθ が大きくなるから。

送電線では、ふつう X のほうが R より大きい——本問も5 Ω と6 Ωです。

だから力率の悪化は、電圧降下に強く効きます——大きいほうの係数が増えるのです。

調相設備を入れると、線路を流れる Q が減ります——だから同じ電圧降下でより多く送れる

(b)はまさにその計算です——22.1 Mvar を現地で作れば、63.2 MV・A 送れるのです。

力率改善は、電圧・損失・容量の3つを同時に良くします——だからどこでも行われているのです。

調相設備の種類と選び方

本問の22.1 Mvar を、何で作るかという話です

設備できること調整のしかた
★電力用コンデンサ★★進み無効電力の供給のみ★段階的(入り切り)
★分路リアクトル★★遅れ無効電力の吸収のみ★段階的
★同期調相機★★進みも遅れも両方★★連続的
★★静止形無効電力補償装置★★進みも遅れも両方★★連続かつ高速

本問は進み無効電力が必要なので、コンデンサで足ります——最も安く確実です。

軽負荷時にも対応するなら、リアクトルも併せて置きます——両方向に調整できるのです。

近年は静止形が増えています——速く滑らかに調整できるからです。

まとめ

降下率の式ε=(PR+QX)/Vr²
(a)S×7.6/Vr²=0.1→S=47.4MVA
(b)負荷P=37.92MW、Qload=50.56Mvar
(b)線路Qline=(0.1Vr²-PR)/X=28.4Mvar
(b)調相Qc=50.56-28.4=22.1Mvar
答え(a)-(3),(b)-(4)

▼あわせて解きたい関連問題
・同型の電圧降下率問題(送電の計算10):【電力】令和4年度下期 B問題16
・力率改善と電圧変動(送電の計算23):【電力】平成25年度 B問題16

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