今回は平成25年度 電力科目 B問題16、力率を1にするためのコンデンサ総容量と、コンデンサ開閉時の電圧変動率を2%以内に抑える単機容量を求める問題です。無効電力の計算と%インピーダンスの応用が一問で問われます。
(a)は力率1=負荷の無効電力Qを全部打ち消すので、Qc=P·tanθ。(b)はコンデンサ開閉時の電圧変動率 ε=%X×(Qc/基準容量)——投入・遮断する単機容量が大きいほど電圧が跳ねるので、それを2%以内に収める最大容量を出します。
(a) の答えは(3):22.7 Mvar
力率1とは、無効電力をゼロにすることです。
★
★答え
負荷が必要とする無効電力は22.7 Mvar です——それを全部コンデンサで作ります。
すると線路には有効電力だけが流れます——それが力率1です。
tanθ は sinθ÷cosθ で出します——力率が与えられたらまず sinθ。
平成25年度 電力科目 B問題16:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成25年度 第三種電気主任技術者試験」電力科目 B問題16
電験3種 電力科目 【送電の計算】 平成25年度 B問題16
図のように、特別高圧三相3線式1回線の専用架空送電線路で受電している需要家がある。需要家の負荷は、40〔MW〕、力率が遅れ0.87で、需要家の受電端電圧は66〔kV〕である。ただし、需要家から電源側をみた電源と専用架空送電線路を含めた百分率インピーダンスは、基準容量10〔MV・A〕当たり6.0〔%〕とし、抵抗はリアクタンスに比べ非常に小さいものとする。その他の定数や条件は無視する。次の(a)及び(b)の問に答えよ。
(a) 需要家が受電端において、力率1の受電になるために必要なコンデンサ総容量〔Mvar〕の値として、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。ただし、受電端電圧は変化しないものとする。
(1)9.7 (2)19.7 (3)22.7 (4)34.8 (5)81.1 Mvar
(b) 需要家のコンデンサが開閉動作を伴うとき、受電端の電圧変動率を2.0〔%〕以内にするために必要なコンデンサ単機容量〔Mvar〕の最大値として、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(1)0.46 (2)1.9 (3)3.3 (4)4.3 (5)5.7 Mvar



(b) の答えは(3):3.3 Mvar
コンデンサを入り切りすると、電圧が跳ねます。
★答え
一度に大きな容量を入れると、電圧が大きく動きます——だから単機容量を制限するのです。
3.3 Mvar なら、電圧変動は2.0%に収まります——66 kV なら1.3 kVの動きです。
総容量22.7 Mvar を、3.3 Mvar 以下に分けて設置します——7台に分ければよいことになります。
なぜコンデンサを分割して設置するのか
| 設置のしかた | 電圧変動 | 負荷追従 | 費用 |
| ★1台にまとめる | ★★大きい(13.6%) | ★★入り切りしかできない | ★安い |
| ★★数台に分ける | ★★小さい(2.0%以内) | ★★段階的に調整できる | ★やや高い |
分割すれば、電圧の跳ね上がりが小さくなります——1台分ずつしか変わらないから。
しかも負荷に合わせて、必要な台数だけ入れられます——過補償を避けられるのです。
そのかわり、開閉器や制御装置が台数分必要になります——費用とのつり合いです。
本問はその台数を決めるための計算になっています——実務の設計そのものです。
⚠️ よくある間違い
(a)で Qc=P·sinθ としてしまう——P·tanθ です(P は有効電力)。
tanθ を cosθ÷sinθ とする——sinθ÷cosθです。
(b)で%X を6.0のまま使う——0.060に直します。
(b)で総容量22.7を使う——問われているのは単機容量です。
基準容量を66 kV系の値と混同する——10 MV・Aです。
⏱️ 本番での進め方
①★力率1にするコンデンサ容量は Qc=P·tanθ。
②★tanθ=sinθ/cosθ。まず sinθ=√(1−cos²θ)。
③★開閉による電圧変動率は ε=%X×(Qc/Pn)。
④★%は必ず小数に直してから代入する。
💡 覚え方
「力率1ならQc=P·tanθ」——負荷の無効電力をそっくり打ち消します。「開閉の電圧変動は ε=%X×(Qc/Pn)」——大きく入れるほど跳ねるのです。
調相設備の容量計算は令和4年度下期 B問題16(送電の計算:電圧降下率と調相設備)にもあります。
力率を1にすると何が良くなるか
受電端の設備から見ると、いくつも利点があります。
| 項目 | 力率0.87のとき | 力率1にすると |
| ★受電電流 | ★★皮相電力46.0 MV・A 相当 | ★★40 MW 相当まで減る |
| ★線路の損失 | ★★電流の2乗に比例して大きい | ★★約24%減る |
| ★電圧降下 | ★大きい | ★★小さくなる |
| ★電気料金 | ★力率割引が付かない | ★★割引を受けられる |
40 MW を力率0.87で受けると、皮相電力は46.0 MV・A——40÷0.87です。
力率1なら40 MV・A で済みます——電流が13%減るのです。
損失は電流の2乗なので、24%も減ります——0.87²=0.757だから。
だから需要家はコンデンサを設置します——費用をかけても元が取れるのです。
%インピーダンスが電圧変動を教えてくれる
(b)の式は、%インピーダンスの意味そのものです。
基準容量10 MV・A で6.0%ということは、10 MV・A 流すと6%下がるという意味です。
だから3.33 Mvar なら、その3分の1で2%——比例するだけです。
| 流す無効電力 | 基準容量に対する割合 | 電圧変動 |
| ★10 Mvar | ★★1.0 | ★★6.0% |
| ★★3.33 Mvar | ★★0.333 | ★★2.0% |
| ★22.7 Mvar | ★2.27 | ★★13.6% |
総容量22.7 Mvar を一度に入れると13.6%も跳ねます——66 kV が75 kV 近くになるのです。
だから分割が必要になります——数字で見ると必要性が分かるのです。
%インピーダンスは、こうした見積もりに便利です——割合のまま計算できるから。
力率から3つの値を出す手順
cosθ が与えられたら、この順で進めます。
| 求めるもの | 式 | 本問(cosθ=0.87) |
| ★sinθ | ★★√(1−cos²θ) | ★0.493 |
| ★tanθ | ★★sinθ/cosθ | ★0.567 |
| ★無効電力 Q | ★★P·tanθ | ★★22.7 Mvar |
sinθ を先に出すのが定石です——そこから tanθ が出るから。
皮相電力 S が分かっているなら Q=S·sinθ でも同じ——どちらの形でも構いません。
本問は有効電力40 MW が与えられているので tanθ を使います——与えられた量に合わせて選ぶのです。
まとめ
| (a)tanθ | cos0.87→sin0.493→tan0.567 |
| (a)Qc | P·tanθ=40×0.567=22.7Mvar |
| (b)式 | ε=%X×(Qc/Sbase) |
| (b) | 0.02=0.06×(Qc/10)→Qc=3.33Mvar |
| 答え | (a)-(3),(b)-(3) |
▼あわせて解きたい関連問題
・電圧降下率と調相(送電の計算10):【電力】令和4年度下期 B問題16
・%Xと送電電力(送電の計算16):【電力】平成30年度 B問題17

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