今回は平成26年度 電力科目 B問題16、中性点を消弧リアクトルLで接地した系統の、1線地絡時に地絡電流を零にする条件を求める問題です。消弧リアクトル接地(変電39)の原理を数値で確かめます。
鍵は「消弧リアクトルは系統の対地静電容量と並列共振させる」こと。(a)で測定から1相の対地アドミタンス(ωC)を出し、(b)でリアクトルのインダクタンスが全対地容量3ωCと共振する条件 1/(ωL)=3ωCを使います。
平成26年度 電力科目 B問題16:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成26年度 第三種電気主任技術者試験」電力科目 B問題16
電験3種 電力科目 【送電の計算】 平成26年度 B問題16
図に示すように、中性点をリアクトルLを介して接地している公称電圧66kVの系統があるとき、次の(a)及び(b)の問に答えよ。なお、図中のCは、送電線の対地静電容量に相当する等価キャパシタを示す。また、図に表示されていない電気定数は無視する。
(a) 送電線の線路定数を測定するために、図中のA点で変電所と送電線を切り離し、A点で送電線の3線を一括して、これと大地間に公称電圧の相電圧相当の電圧を加えて充電すると、一括した線に流れる全充電電流は115Aであった。このとき、この送電線の1相当たりのアドミタンスの大きさ〔mS〕として、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(1)0.58 (2)1.0 (3)1.7 (4)3.0 (5)9.1 mS
(b) 図中のB点のa相で1線地絡事故が発生したとき、地絡点を流れる電流を零とするために必要なリアクトルLのインピーダンスの大きさ〔Ω〕として、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。ただし、送電線の電気定数は、(a)で求めた値を用いるものとする。
(1)111 (2)196 (3)333 (4)575 (5)1000 Ω



(a) の答えは(2):1.0 mS
3線一括なので、1相分に直します。
★3で割る
★答え
3線を一括して測ったので、3で割ります——1相当たりを求めているから。
加えた電圧は相電圧相当です——問題文にそう書いてあるのです。
アドミタンスは電流を電圧で割るだけ——Y=I/Eです。
(b) の答えは(3):333 Ω
地絡電流をゼロにする条件を立てます。
| 段階 | 起きること |
| ① | ★1線地絡すると、健全2相の対地静電容量を通って電流が流れる |
| ★② | ★★その電流は進み電流(容量性) |
| ★③ | ★★中性点のリアクトルには遅れ電流が流れる |
| ★④ | ★★2つが打ち消し合えば地絡電流はゼロ |
★答え
3が入るのは、3相分の静電容量が並列になるからです——合計は3Cになります。
その3C と L が共振すれば、電流が打ち消し合います——並列共振の条件です。
これが消弧リアクトル接地(PC接地)の原理——地絡電流をほぼゼロにできるのです。
消弧リアクトル接地という方式
| 項目 | 内容 |
| ★原理 | ★★対地静電容量と共振させて地絡電流を打ち消す |
| ★長所 | ★★地絡電流がほぼゼロ・アークが自然に消える |
| ★長所2 | ★★通信線への誘導障害が小さい |
| ★短所 | ★★系統が変わると同調が外れる |
| ★短所2 | ★★地絡の検出が難しい |
地絡電流がゼロなら、アークも自然に消えます——だから消弧リアクトルという名前。
停電せずに済むので、供給の信頼度が上がります——それが最大の利点です。
けれども系統の構成が変わると、静電容量も変わります——同調が外れるのです。
だから系統が複雑な現在では、あまり使われません——抵抗接地や直接接地が主流になっています。
⚠️ よくある間違い
(a)で3で割り忘れる——3線一括で測った電流です。
(a)で線間電圧を使う——相電圧相当と書かれています。
(b)で3を掛け忘れる——3相分の静電容量が並列だから。
(b)でωL=1/(ωC) としてしまう——3ωC です。
(a)の値をそのまま使う——Y=ωC なので、そのまま代入できます。
⏱️ 本番での進め方
①★3線一括で測ったら3で割って1相分にする。
②★消弧リアクトルの条件は ωL=1/(3ωC)。
③★3が入るのは3相分の静電容量が並列だから。
④★地絡電流がゼロになるのでアークが自然に消える。
💡 覚え方
「3線一括なら3で割る、共振には3を掛ける」——3の扱いが2か所で違います。ωL=1/(3ωC)——これが消弧リアクトルの条件です。
中性点接地方式の比較は平成22年度 A問題8(変電:中性点の接地方式)にあります。
対地静電容量とは何か
電線と大地の間にできる静電容量です。
| 項目 | 内容 |
| ★どこにあるか | ★★電線と大地の間 |
| ★何が起きるか | ★★充電電流が流れる |
| ★3相では | ★★各相に同じ大きさで存在する |
| ★平常時 | ★★3相のベクトル和がゼロなので中性点に流れない |
電線と大地は、コンデンサの2枚の板のようなものです——間に空気があるのです。
だから電圧をかけると、充電電流が流れます——それが本問の115 A。
平常時は3相がつり合うので、中性点に電流は流れません——ベクトル和がゼロだから。
1線地絡すると、そのつり合いが崩れます——だから地絡電流が流れるのです。
1線地絡で何が起きるか
(b) の前提となる現象です。
| 段階 | 起きること |
| ① | ★a相が大地とつながる |
| ★② | ★★a相の対地電圧がゼロになる |
| ★③ | ★★健全2相の対地電圧が上がる(√3倍) |
| ★④ | ★★健全2相の静電容量を通って電流が流れる |
| ★⑤ | ★★その電流が地絡点に集まる |
地絡電流は、健全2相の充電電流から来ます——地絡した相からではないのです。
だから対地静電容量が大きいほど、地絡電流も大きい——ケーブルが多いと増えるのです。
その電流を打ち消すのが、消弧リアクトルの役目——遅れ電流をぶつけるのです。
打ち消せば、地絡点に電流が流れません——アークも自然に消えることになります。
消弧リアクトルが使われなくなった理由
優れた方式なのに、現在は主流ではありません。
| 課題 | 内容 |
| ★★同調が外れる | ★★系統の構成が変わると静電容量も変わる |
| ★★地絡の検出が難しい | ★★電流がほぼゼロなのでリレーが働きにくい |
| ★設備が高価 | ★リアクトルとタップ切替装置が要る |
| ★系統が複雑 | ★ケーブルが増えて静電容量が変動しやすい |
系統は日々つなぎ替えられます——そのたびに静電容量が変わるのです。
同調が外れれば、地絡電流が流れてしまいます——肝心のときに効かないのです。
しかも電流が小さいと、地絡を検出できません——事故が見つからないことになります。
だから現在は抵抗接地や直接接地が主流——けれども原理として出題されます。
線路定数を実測で求める
(a) は実際に行われる試験です。
| 測定 | 方法 | 求まる量 |
| ★★充電試験 | ★★3線を一括して大地との間に電圧を加える | ★★対地静電容量(アドミタンス) |
| ★短絡試験 | ★受電端を短絡して電圧を加える | ★インピーダンス(R と X) |
| ★直流抵抗測定 | ★直流を流して電圧降下を測る | ★導体の抵抗 |
線路定数は、計算だけでなく実測でも確かめます——建設後に検証するのです。
充電試験では、3線を一括して測るのがふつうです——1本ずつでは手間がかかるから。
だから測定値を3で割って1相分に直します——本問の(a)がそれです。
実測した値を使って、消弧リアクトルを調整します——(a)と(b)がつながっているのです。
まとめ
| (a) | 3Y·Ep=115、Ep=38105V→Y=1.0mS |
| 消弧条件 | 1/(ωL)=3ωC=3Y(全対地容量と共振) |
| (b) | XL=1/(3Y)=1/(3×1.006e-3) |
| 計算 | =331≒333Ω |
| 答え | (a)-(2),(b)-(3) |
▼あわせて解きたい関連問題
・消弧リアクトル接地(変電39):【電力】平成22年度 A問題8
・ケーブルの静電容量(送電の計算19):【電力】平成29年度 B問題16

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