配電9【電験3種 電力】高圧ヒューズは雷サージでは溶断しない!「直ちに溶断」は誤り 令和5年度上期 A問題6 完全解説

電験3種 電力科目 配電 令和5年度上期 A問題6 雷サージでヒューズは飛ばない!直ちに溶断は誤り

今回は令和5年度上期 電力科目 A問題6配電線路の開閉器類の誤り選択問題です。配電線路用開閉器・柱上開閉器・高圧配電方式・高圧カットアウト・パッドマウント変圧器と、配電機材が総登場します。

決め手は高圧ヒューズの溶断特性。高圧カットアウト内蔵の高圧ヒューズは、変圧器の過負荷や内部短絡では溶断しますが、雷サージのような短時間の大電流では溶断しないように限時特性を持たせています——雷のたびに溶断していては停電が頻発するからです。「直ちに溶断する」は誤りです。

目次

答えは(4):雷サージでは溶断しない

ヒューズには限時特性が持たせてあります

選択肢正誤要点
★(1) 事故時・作業時に切り離す★正しい★区分開閉器の役目
★(2) 気中形・真空形・ガス形★正しい★3つの形式がある
★(3) ループ方式は高価だが高信頼度★正しい★結合開閉器で環状にする
★★(4) 雷サージで直ちに溶断★★誤り★★限時特性で見逃す
★(5) パッドマウント変圧器★正しい★変圧器と開閉器を収納

令和5年度上期 電力科目 A問題6:問題文と選択肢

まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

電験3種 電力科目 配電 令和5年度上期 A問題6 問題文
令和5年度上期 電力科目 A問題6 問題文

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和5年度上期 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題6

電験3種 電力科目 【配電】 令和5年度上期 A問題6

 配電線路の開閉器類に関する記述として、誤っているものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。

(1) 配電線路用の開閉器は、主に配電線路の事故時又は作業時に、その部分だけを切り離すために使用される。

(2) 柱上開閉器には気中形、真空形、ガス形がある。操作方法は、手動操作による手動式と制御器による自動式がある。

(3) 高圧配電方式には、放射状方式(樹枝状方式)、ループ方式(環状方式)などがある。ループ方式は結合開閉器を設置して線路を構成するので、放射状方式よりも建設費は高くなるものの、高い信頼度が得られるため負荷密度の高い地域に用いられる。

(4) 高圧カットアウトは、柱上変圧器の一次側の開閉器として使用される。その内蔵の高圧ヒューズは変圧器の過負荷時や内部短絡故障時、雷サージなどの短時間大電流の通過時に直ちに溶断する。

(5) 地中配電系統で使用するパッドマウント変圧器には、変圧器と共に開閉器などの機器が収納されている。

答え誤っているのは(4)です。

ガス形柱上開閉器という3つ目の形式

形式消弧の媒体特徴
★気中形★★空気★★構造が簡単で安い
★真空形★★真空(金属蒸気の拡散)★★小形で寿命が長い
★★ガス形★★SF6ガス★★密閉されて湿気に強く小形

どれも負荷電流までしか開閉できません——事故電流は遮断できないのです。

ガス形は密閉されているので、塩害地域や湿潤な場所に向きます——絶縁が劣化しにくいのです。

実物としては、PASやUGSと呼ばれる機器がこれにあたります——需要家の引込口にも使われるのです。

3つとも手動式と自動式があります——(2)は正しい記述です。

限時特性とは何か

電流の大きさ溶断するまでの時間ねらい
★定格の少し上★★長い(数分〜)★★一時的な過負荷では切らない
★定格の数倍★★短い(数秒)★★過負荷が続けば切る
★★短絡電流★★極めて短い★★ただちに切る
★★雷サージ★★溶断しない★★時間が短すぎて熱が溜まらない

電流が大きいほど早く溶ける、というのが基本です——これを反限時特性ともいいます

けれども時間が極端に短ければ、大きくても溶けません——熱が溜まる前に終わるから。

雷サージは数十マイクロ秒で終わります——だから溶断しないのです。

この特性がなければ、雷のたびに停電してしまいます

⚠️ よくある間違い
(4)を正しいと考える——雷サージでは溶断しません
(2)のガス形を疑う——気中形・真空形と並んで使われます
(3)のループ方式を安いと考える——建設費は高くなります
(1)を事故時だけと考える——作業時にも使います
開閉器が事故電流を切れると考える——切れるのは遮断器です。

⏱️ 本番での進め方
①★高圧ヒューズは限時特性で雷サージを見逃す。
②★溶断するのは持続する過負荷と内部短絡。
③★柱上開閉器は気中形・真空形・ガス形の3つ。
④★どれも負荷電流までしか開閉できない。

💡 覚え方
「大きくても短ければ溶けない」——熱が溜まらないからです。柱上開閉器は気中・真空・ガスの3形式——ガス形も忘れずに

★ほぼ同一の問題が平成22年度 A問題12配電:配電線路の開閉器類(H22))にあります。柱上開閉器にガス形が加わった点だけが違います

PASとUGSという実物

略号正式名称使う場所
★★PAS★★柱上気中負荷開閉器★★架空引込みの需要家の引込口
★★UGS★★地中線用負荷開閉器★★地中引込みの需要家の引込口

どちらも需要家の敷地の入口に置く開閉器です——構内の事故を切り離すのです。

地絡方向継電器を組み込んだものが標準です——波及事故を防ぐためです。

気中形やガス形など、本問の分類がそのまま使われています

限流ヒューズという別の部品

高圧カットアウトのヒューズ高圧限流ヒューズ(PF)
★付く場所★★柱上変圧器の一次側★★需要家のキュービクル内
★役目★★変圧器の過負荷・内部短絡から守る★★短絡電流を限流遮断する
★遮断能力★★限られる★★高い

同じヒューズでも、役目と能力が違います——混同しないことです。

限流ヒューズは電流がピークに達する前に切ります——だから機器への負担が小さいのです。

放射状方式とループ方式の停電範囲

放射状方式ループ方式
★事故が起きた区間より先★★停電したまま★★反対側から送電できる
★結合開閉器★★ない★★ふだんは開いている
★必要な設備★★少ない★★電線も開閉器も余分に要る

環状にしておけば、どちらからでも送れます——だから停電範囲が小さいのです。

そのかわり建設費が上がります——記述(3)が述べているとおりです。

負荷密度の高い地域なら、費用に見合います——停電の影響が大きいから。

開閉器が事故電流を切れないということ

機器負荷電流事故電流
★柱上開閉器★★開閉できる★★遮断できない
★遮断器★★開閉できる★★遮断できる
★断路器★★開閉できない★★遮断できない

柱上開閉器は真ん中の能力をもちます——負荷電流までなら切れるのです。

だから事故のときは、いったん変電所で止めてから開きます——それが時限順送方式です。

記述(1)の「切り離す」は、この手順を前提にしています

配電線路の機材を誤り選択で問う型

狙われる点よくある誤りの書き方
★ヒューズの溶断条件★★雷サージでも直ちに溶断すると書く
★開閉器の能力★★事故電流を遮断できると書く
★方式の費用と信頼度★★ループ方式を安いと書く
★機器の中身★★パッドマウントに開閉器が入らないと書く

誤りの作り方には型があります——能力を過大に書く・逆に書くのが定番です。

本問は1つ目の型でした——溶断する条件を広げすぎているのです。

高圧カットアウトが守る範囲

事故の場所ヒューズは溶けるか
★変圧器の巻線が短絡★★溶ける
★低圧側で短絡★★溶ける
★変圧器が過負荷★★続けば溶ける
★雷サージが通過★★溶けない

守るべき事故と、見逃すべき現象があります——そこを区別するのが限時特性です。

変圧器を投入した瞬間の突入電流でも溶けません——数サイクルで終わるから。

区分開閉器が自動で動くしくみ

状態開閉器が感じること動作
★停電した★★電圧がなくなった★★開放する
★送電が再開された★★電源側に電圧が現れた★★一定時限後に投入する
★投入直後に再停電★★また電圧がなくなった★★開いたまま固定される

電圧の有無だけを見て動くので、通信も指令も要りません——単純で確実です。

これが自動式の柱上開閉器の働きです——記述(2)の「制御器による自動式」にあたります。

手動式は工事や点検のときに人が操作します

ループ方式が負荷密度の高い地域に向く理由

負荷密度が低い地域負荷密度が高い地域
★1回の停電で困る軒数★★少ない★★多い
★配電線の長さ★★長い★★短くて済む
★環状にする費用★★割高になる★★見合う

需要が集まっていれば、短い距離で環がつくれます——だから費用が抑えられるのです。

しかも停電したときの影響が大きい——だから投資に見合うのです。

逆に郊外では、環をつくるだけで長い電線が要ります——費用倒れになります。

だから記述(3)は「負荷密度の高い地域に用いられる」と書いています

まとめ

誤り(4) 高圧ヒューズは雷サージでは溶断しない
配電線路用開閉器事故時・作業時に区間切り離し(1)
柱上開閉器気中/真空/ガス形・手動/自動(2)
配電方式放射状=安価/ループ=高信頼(3)
パッドマウント変圧器+開閉器一体(5)
答え(4)

▼あわせて解きたい関連問題
・高圧受電設備の機器(配電5):【電力】令和6年度下期 A問題11
・避雷器の役割(変電2):【電力】令和7年度下期 A問題6

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