今回は令和5年度下期 電力科目 A問題7、配電線路の電圧調整の誤り選択問題です。パワコン・LRA/LRT・力率改善コンデンサ・太線化・SVR/SVCと、電圧調整の手段が総登場します。
決め手は力率改善コンデンサをどこに置くか。無効電力は流れる区間すべてで電圧降下と損失を生むので、負荷に近い低圧配電線路ごとにコンデンサを接続して、その先の線路に無効電力を流さないほうが効果的です。「上流の高圧側にまとめて接続」は逆で、上流〜負荷間の無効電力を減らせません。
出題のポイント:力率改善コンデンサの設置位置

力率改善コンデンサは低圧配電線ごとに、できるだけ負荷の近くへ並列接続します。負荷が必要とする無効電力を局所供給することで、上流の広い区間の電流、電圧降下、送電損失を減らせます。
令和5年度下期 電力科目 A問題7:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和5年度下期 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題7
電験3種 電力科目 【配電】 令和5年度下期 A問題7
配電線路の電圧調整に関する記述として、誤っているものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(1) 太陽電池発電設備を系統連系させたときの逆潮流による配電線路の電圧上昇を抑制するため、パワーコンディショナには、電圧調整機能を持たせているものがある。
(2) 配電用変電所においては、高圧配電線路の電圧調整のため、負荷時電圧調整器(LRA)や負荷時タップ切換装置付変圧器(LRT)などが用いられる。
(3) 低圧配電線路の力率改善をより効果的に実施するためには、低圧配電線路ごとに電力用コンデンサを接続することに比べて、より上流である高圧配電線路に電力用コンデンサを接続した方がよい。
(4) 高負荷により配電線路の電圧降下が大きい場合、電線を太くすることで電圧降下を抑えることができる。
(5) 電圧調整には、高圧自動電圧調整器(SVR)のように電圧を直接調整するもののほか、電力用コンデンサや分路リアクトル、静止形無効電力補償装置(SVC)などのように線路の無効電力潮流を変化させて行うものもある。
力率改善は負荷の近くで行う

無効電力が流れる区間の長さで、効果が決まります。
| 選択肢 | 正誤 | 要点 |
| ★(1) パワコンの電圧調整機能 | ★正しい | ★逆潮流の電圧上昇を抑える |
| ★(2) LRA・LRT | ★正しい | ★配電用変電所で調整する |
| ★★(3) 上流の高圧側がよい | ★★誤り | ★★低圧配電線路ごとに分散するほうがよい |
| ★(4) 電線を太くする | ★正しい | ★抵抗が下がる |
| ★(5) 直接調整と無効電力潮流 | ★正しい | ★2つの系統がある |
電圧調整5方式を照合する

数字で置いてみると、はっきり分かります。
| 区間 | 上流に置いた場合 | 負荷の近くに置いた場合 |
| ★変電所〜コンデンサ | ★★無効電流は流れない | ★★無効電流は流れない |
| ★★コンデンサ〜負荷 | ★★無効電流が流れ続ける | ★★ほぼゼロ |
| ★改善される区間 | ★★上流だけ | ★★線路のほぼ全部 |
コンデンサは、置いた地点から電源側の無効電流を打ち消します——そこで無効電力を作るからです。
だから負荷に近いほど、打ち消せる区間が長くなります——そこが判断の決め手です。
上流にまとめると、そこから負荷までは無効電流が流れたままです——その区間の損失も降下も減らないのです。
だから低圧配電線路ごとに分散接続します——記述(3)は逆なのです。
個別補償と集中補償
| やり方 | 置く場所 | 効果 | 費用 |
| ★★個別補償 | ★★負荷(電動機など)ごと | ★★最も大きい | ★★台数が多く高い |
| ★★集中補償 | ★★受電点や母線にまとめて | ★★上流だけ | ★★安い |
需要家の構内でも、同じ考え方が使われます——個別補償と集中補償です。
電動機のそばに置けば、構内配線の損失まで減ります——それが個別補償です。
受電点にまとめれば安く済みますが、構内は改善しません——効果と費用のつり合いです。
本問は配電線路の話ですが、理屈はまったく同じです。
⚠️ よくある間違い
(3)を正しいと考える——負荷に近い下流が効果的です。
コンデンサが下流の無効電流を減らすと考える——減らすのは電源側です。
(4)の太線化を無関係と考える——抵抗が下がり降下が減ります。
(5)の分路リアクトルを疑う——進み分を吸収して電圧を下げます。
(1)のパワコンを発電だけの装置と考える——電圧調整機能をもちます。
⏱️ 本番での進め方
①★コンデンサは置いた地点から電源側の無効電流を減らす。
②★だから負荷に近いほど効果が大きい。
③★上流集中では下流の無効電流が減らない。
④★構内では個別補償と集中補償として同じ議論になる。
💡 覚え方
「打ち消せるのは電源側だけ」——だから負荷のそばに置くのです。上流にまとめると下流が残る——それが(3)の誤りです。
★この問題は平成29年度 A問題13とまったく同一です(配電:配電線路の電圧調整(H29))。6年を隔てての再出題です。
進相コンデンサに直列リアクトルを付ける理由
| 付けないと | 起きること |
| ★★高調波の拡大 | ★★コンデンサと系統のリアクタンスが共振して高調波が増える |
| ★★突入電流 | ★★投入の瞬間に定格の数十倍の電流が流れる |
| ★機器の過熱 | ★★高調波電流でコンデンサが発熱する |
コンデンサは周波数が高いほど電流を通しやすい——だから高調波が集まるのです。
そこで直列にリアクトルを入れて、誘導性に寄せます——ふつうは容量の6%です。
突入電流も抑えられるので、開閉器の負担が減ります——実務では必ずセットで使うのです。
力率をどこまで改善するか
| 力率 | 状態 | 評価 |
| ★0.8以下 | ★★無効電力が多い | ★★改善が必要 |
| ★★0.85〜1.0(遅れ) | ★★ほどよい | ★★料金の割引が受けられる |
| ★★進み力率 | ★★補償しすぎ | ★★軽負荷時に電圧が上がる |
力率1を超えて進み側にすると、かえって困ります——電圧が上がりすぎるのです。
だから軽負荷時にはコンデンサを切り離します——開閉器付にする理由です。
太線化が効くところと効かないところ
| 抵抗 R | リアクタンス X | |
| ★決まるもの | ★★導体の断面積と長さ | ★★電線どうしの間隔と太さの比 |
| ★太くすると | ★★反比例して小さくなる | ★★ほとんど変わらない |
低圧配電線では R のほうが X より大きいのがふつうです——だから太線化がよく効くのです。
高圧の長い線路では X の割合が増えます——そこでは力率改善のほうが効くのです。
だから2つの対策を使い分けます——記述(4)は正しいのです。
SVCという装置
| 電力用コンデンサ | SVC(静止形無効電力補償装置) | |
| ★調整のしかた | ★★入り切りだけ(段階的) | ★★半導体で連続制御 |
| ★向き | ★★進み分の供給のみ | ★★進みも遅れも出せる |
| ★応答 | ★★遅い | ★★ミリ秒 |
| ★費用 | ★★安い | ★★高い |
変動の速い負荷にはSVCが向きます——アーク炉や圧延機などです。
ふつうの配電線ではコンデンサで足ります——費用が違いすぎるから。
無効電力を減らす3つの効き目
| 効果 | しくみ |
| ★★線路電流が減る | ★★無効電流が流れなくなる |
| ★★電力損失が減る | ★★損失は電流の2乗に比例する |
| ★★電圧降下が減る | ★★QX の項が小さくなる |
1つの対策で3つが同時に良くなります——だからどこでも行われるのです。
どれも「無効電流が流れる区間」で起きます——だから区間が長いほど効果が大きいのです。
負荷に近く置けば、その区間が最も長くなります——(3)の判断につながるのです。
電圧調整の2系統をもう一度
| 調整のしかた | 装置 | 働き方 |
| ★★電圧を直接調整 | ★★LRT・LRA・SVR | ★★タップで巻数比を変える |
| ★★無効電力潮流を変える | ★★コンデンサ・分路リアクトル・SVC | ★★QX の項を増減させる |
まったく違う2つの手があります——記述(5)はそれを述べているのです。
タップは確実ですが段階的、無効電力は連続的に調整できます——だから組み合わせて使うのです。
パワーコンディショナも電圧調整に加わる
| 機能 | 働き | 発電への影響 |
| ★★進相運転(力率制御) | ★★遅れ無効電力を吸収して電圧を下げる | ★★ほとんどなし |
| ★★出力抑制 | ★★有効電力そのものを絞る | ★★発電量が減る |
まず無効電力で調整し、足りなければ出力を絞ります——発電を減らしたくないから。
需要家側の設備が系統の電圧調整に参加する形です——記述(1)はそのことです。
まとめ
| 誤り | (3) 力率改善は負荷に近い低圧側ほど効果大 |
| パワコン | 逆潮流の電圧上昇を抑制(1) |
| LRA/LRT | 高圧配電の電圧調整(2) |
| 太線化 | 電圧降下を抑える(4) |
| SVR/SVC | 直接調整/無効電力潮流で調整(5) |
| 答え | (3) |
▼あわせて解きたい関連問題
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