今回は令和6年度上期 電力科目 A問題11、送配電方式として広く使われる交流三相方式の誤り選択問題です。三相4線式の電圧取り出し・電線量・回転磁界・瞬時電力・発電機と、三相の長所が総登場します。
決め手は電線量の比較。同じ線間電圧・電力・距離・損失で送るとき、必要な電線の総重量は三相3線式が単相2線式の約3/4(75%)で少なくてすみます。「単相2線式と同等」は三相の経済性の長所を打ち消す誤りです。
出題のポイント:交流三相方式の特徴

同一材料の電線で線間電圧・電力・距離・損失を同じにすると、三相3線式の電線総重量は単相2線式の3/4です。回転磁界、一定の瞬時電力、三相4線式の電圧利用も整理します。
令和6年度上期 電力科目 A問題11:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和6年度上期 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題11
電験3種 電力科目 【配電】 令和6年度上期 A問題11
送配電方式として広く採用されている交流三相方式に関する記述として、誤っているものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(1) 電源側をY結線としたうえで、中性線を施設して三相4線式とすると、線間電圧と相電圧の両方を容易に取り出して利用できるようになる。
(2) 同一材料の電線を使用して、同じ線間電圧で同じ電力を同じ距離に、同じ損失で送電する場合に必要な電線の総重量は、三相3線式でも単相2線式と同等である。
(3) 回転磁界が容易に得られるため、動力源として三相誘導電動機の活用に便利である。
(4) 三相回路が平衡している場合、三相交流全体の瞬時電力は時間に無関係な一定値となり、単相交流の場合のように脈動しないという利点がある。
(5) 発電機では、同じ出力ならば、単相の場合に比べるとより小形に設計できて効率がよい。
三相3線式の電線量は3/4

三相が経済的である最大の理由が、逆に書かれています。
| 選択肢 | 正誤 | 要点 |
| ★(1) 三相4線式で2種類の電圧 | ★正しい | ★線間電圧と相電圧が取れる |
| ★★(2) 電線の総重量は同等 | ★★誤り | ★★三相3線式は4分の3で済む |
| ★(3) 回転磁界が容易に得られる | ★正しい | ★三相誘導電動機に最適 |
| ★(4) 瞬時電力が一定 | ★正しい | ★単相のように脈動しない |
| ★(5) 発電機を小形にできる | ★正しい | ★同じ出力なら効率もよい |
交流三相方式の5項目を照合

同じ線間電圧・電力・距離・損失という条件で比べます。
★
★
★
★答え
| 方式 | 電線の本数 | 1線の断面積 | 総量 |
| ★単相2線式 | ★★2本 | ★★A | ★★100% |
| ★★三相3線式 | ★★3本 | ★★A/2 | ★★75% |
| ★単相3線式 | ★★3本 | ★★A/8 | ★★37.5% |
本数は増えても、1本を細くできるので総量が減ります——そこが要点です。
電流が√3分の1になるので、抵抗を2倍にしても損失は同じ——だから断面積を半分にできるのです。
瞬時電力が脈動しないという長所
| 単相交流 | 三相平衡 | |
| ★瞬時電力 | ★★2倍の周波数で脈動する | ★★時間によらず一定 |
| ★最小値 | ★★ゼロになる瞬間がある | ★★ゼロにならない |
| ★機械への影響 | ★★振動やうなりが出る | ★★滑らかに回る |
単相では、電圧も電流もゼロを通る瞬間があります——そのとき電力もゼロです。
三相では3つの相が120度ずつずれています——合計するとちょうど一定になるのです。
だから電動機が滑らかに回り、発電機の軸も安定します——(4)と(5)がつながっているのです。
三相が動力用として選ばれる理由がここにあります。
⚠️ よくある間違い
(2)を正しいと考える——三相3線式は4分の3で済みます。
電線量を本数だけで比べる——断面積まで含めた総量です。
(1)を誤りと考える——Y結線+中性線で2種類の電圧が取れます。
(4)を単相と同じと考える——単相は脈動します。
比較の条件を読み飛ばす——同じ電圧・電力・距離・損失が前提です。
⏱️ 本番での進め方
①★三相3線式の電線量は単相2線式の75%。
②★単相3線式なら37.5%まで減る。
③★三相平衡なら瞬時電力は一定で脈動しない。
④★回転磁界が得られるので電動機に適する。
💡 覚え方
「100・75・37.5」——単相2線・三相3線・単相3線の電線量です。本数が増えても総量は減る——1本を細くできるから。
単相3線式の経済性は令和7年度上期 A問題11(配電:単相3線式配電方式)にあります。
回転磁界が三相から生まれる理由
| 段階 | 起きること |
| ① | ★3つの巻線を空間的に120度ずつずらして置く |
| ★② | ★★そこへ時間的に120度ずれた三相電流を流す |
| ★③ | ★★合成磁界の向きが時間とともに回っていく |
| ★④ | ★★回転子が引きずられて回る |
空間のずれと時間のずれが、どちらも120度です——だからきれいに回るのです。
単相では磁界が往復するだけで、回りません——始動に工夫が要るのです。
だから動力用には三相が使われます——(3)は正しい記述です。
三相4線式で2種類の電圧が取れる
| 取り出す場所 | 電圧 | 呼び方 |
| ★電圧線どうし | ★★200 V | ★★線間電圧 |
| ★電圧線と中性線 | ★★約115 V | ★★相電圧 |
| ★関係 | ★★線間=相電圧の√3倍 | ★— |
Y結線の中性点から線を出すと、相電圧が取り出せます——それが中性線です。
1つの系統から動力用と電灯用の両方がまかなえます——(1)は正しい記述です。
発電機が小形にできる理由
| 単相発電機 | 三相発電機 | |
| ★巻線の使い方 | ★★一部の溝しか使わない | ★★全周の溝を均等に使う |
| ★出力の脈動 | ★★大きい | ★★ない |
| ★軸への負担 | ★★脈動トルクがかかる | ★★一定トルク |
| ★同じ出力での大きさ | ★★大きい | ★★小さい |
三相なら固定子の全周を無駄なく使えます——だから同じ大きさで多く出せるのです。
出力が脈動しないので、軸にも無理がかかりません——振動も少ないのです。
だから発電機は三相で作られます——(5)は正しい記述です。
電線量の比較が成り立つ条件
| 条件 | そろえるもの |
| ★① | ★★同一材料の電線を使う |
| ★② | ★★同じ線間電圧で送る |
| ★③ | ★★同じ電力を送る |
| ★④ | ★★同じ距離を送る |
| ★⑤ | ★★同じ損失に抑える |
5つの条件をそろえて初めて比較できます——問題文が丁寧に断っているのはそのため。
条件が変わると比率も変わります——だから前提を読み飛ばさないことです。
三相の長所を4つにまとめる
| 長所 | 中身 | 効いてくる場面 |
| ★★電線が少なくて済む | ★★単相2線式の75% | ★★送配電の建設費 |
| ★★回転磁界が得られる | ★★空間と時間のずれが120度 | ★★三相誘導電動機 |
| ★★瞬時電力が一定 | ★★3相の合計が脈動しない | ★★機械の滑らかな運転 |
| ★★発電機を小形にできる | ★★固定子の全周を使える | ★★発電所の設備 |
この4つが、三相が世界中で使われている理由です——本問の(2)〜(5)がそのまま並んでいるのです。
どれか1つを否定する形で誤りが作られます——本問では電線量でした。
4つを覚えておけば、どこを否定されても気づけます。
単相が残っている場所
| 用途 | 方式 | 理由 |
| ★住宅の電灯 | ★★単相3線式 | ★★三相が要らない |
| ★鉄道の電車線 | ★★単相 | ★★1本の架線で送るため |
| ★★動力・送配電 | ★★三相 | ★★経済性と回転磁界 |
三相が万能というわけではありません——用途によって単相が選ばれることもあります。
けれども送配電の幹線は、ほぼすべて三相です——電線量と効率で勝るから。
だから本問は「送配電方式として広く採用されている」と書いています。
まとめ
| 誤り | (2) 電線総重量は三相3線式が単相2線式の3/4 |
| 三相4線 | 線間・相電圧の両方取り出せる(1) |
| 回転磁界 | 三相誘導電動機に便利(3) |
| 瞬時電力 | 三相平衡なら一定・脈動なし(4) |
| 発電機 | 同出力で小形・高効率(5) |
| 答え | (2) |
▼あわせて解きたい関連問題
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