今回は令和2年度 電力科目 A問題9、避雷器に関する空欄補充問題です。★この問題は令和7年度下期 A問題6(変電2)と本文がほぼ同一の再出題ですが、選択肢の並びが違うため答えの番号も異なります(令和7年度下期は(1)、本問は(2))。
覚える軸は3つ。①過電圧の波高値がある値を超えたら放電、②特性要素はZnO(酸化亜鉛)で非線形の抵抗特性、③放電後は続流を遮断——発変電所用は放電遅れのないギャップレス避雷器が主流です。
令和2年度 電力科目 A問題9:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和2年度 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題9
電験3種 電力科目 【変電】 令和2年度 A問題9
次の文章は、避雷器に関する記述である。避雷器は、雷又は回路の開閉などに起因する過電圧の(ア)がある値を超えた場合、放電により過電圧を抑制して、電気施設の絶縁を保護する装置である。特性要素としては(イ)が広く用いられ、その(ウ)の抵抗特性により、過電圧に伴う電流のみを大地に放電させ、放電後は(エ)を遮断することができる。発変電所用避雷器では、(イ)の優れた電圧−電流特性を利用し、放電耐量が大きく、放電遅れのない(オ)避雷器が主に使用されている。上記の記述中の空白箇所(ア)〜(オ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(ア) (イ) (ウ) (エ) (オ) (1) 波頭長 SF6 非線形 続流 直列ギャップ付き (2) 波高値 ZnO 非線形 続流 ギャップレス (3) 波高値 SF6 線形 制限電圧 直列ギャップ付き (4) 波高値 ZnO 線形 続流 直列ギャップ付き (5) 波頭長 ZnO 非線形 制限電圧 ギャップレス

(ア) 過電圧は波高値で見る
サージは一瞬の波なので、実効値では表せません。
| 用語 | 意味 | 使う場面 |
| ★波高値 | ★波の最大値 | ★サージの大きさ・絶縁の判定 |
| ★波頭長 | ★波が立ち上がるまでの時間 | ★波形の形を表す |
| 実効値 | 2乗平均平方根 | 商用周波の交流 |
絶縁が壊れるかどうかは、瞬間の最大電圧で決まります——だから波高値です。
雷インパルスは「1.2×50マイクロ秒」と表されます——1.2が波頭長、50が波尾長になります。
波頭長は形の話であって、大きさの話ではありません——「ある値を超えた場合」なら大きさ=波高値です。
(イ)(ウ) 酸化亜鉛の非線形抵抗特性
ZnOは酸化亜鉛の化学式——SF6は絶縁ガスで、避雷器の素子ではありません。
| 加わる電圧 | 抵抗値 | 流れる電流 |
| ★平常時(対地電圧) | ★きわめて高い | ★マイクロアンペア級 |
| ★サージ時 | ★きわめて低い | ★数 kA〜数十 kA |
電圧が2倍になると電流が数千倍になる——これが非線形(非直線)です。
オームの法則なら電圧2倍で電流2倍——それを「線形」と言います。
ZnOの粒子どうしの境界に、電圧で変わる障壁があります——その性質を利用した素子です。
(エ)(オ) 続流とギャップレス
(エ) 続流とは
サージが去ったあとも流れ続ける、商用周波の電流です。
| 時間 | 流れる電流 | 呼び名 |
| ★サージ襲来時 | ★雷サージ電流 | ★放電電流 |
| ★サージ通過後 | ★系統電圧による電流 | ★続流 |
続流が流れ続けると、地絡状態と同じになります——系統が正常に戻れないのです。
だから短時間で遮断しなければなりません——問題文の「放電後は続流を遮断する」。
ZnOは電圧が下がれば自動的に抵抗が上がる——だから続流が自然に止まります。
「制限電圧」は放電中の端子電圧のこと——遮断する対象ではありません。
(オ) ギャップが要らない理由
| ★炭化けい素形 | ★酸化亜鉛形 | |
| ★非線形性 | ★ゆるい | ★鋭い |
| ★平常時の電流 | ★無視できないほど流れる | ★マイクロアンペア級 |
| ★直列ギャップ | ★必要(電流を遮る) | ★不要 |
| ★放電の遅れ | ★ギャップの放電待ちがある | ★ない |
ギャップがあると、そこが放電するまで動作が始まりません——それが放電遅れです。
ギャップレスなら、電圧が上がった瞬間に電流が流れる——だから確実に守れます。
問題文の「放電遅れのない」が、その利点を指しています。
⚠️ よくある間違い
(ア)を「波頭長」としてしまう——選択肢(1)(5)がそれです。波頭長は形、波高値は大きさ。
(イ)を「SF6」としてしまう——選択肢(1)(3)。SF6は絶縁ガスで、避雷器の特性要素ではありません。
(ウ)を「線形」としてしまう——選択肢(3)(4)。線形ならオームの法則どおりで、避雷器になりません。
(エ)を「制限電圧」としてしまう——選択肢(3)(5)。遮断するのは電流(続流)です。
(オ)を「直列ギャップ付き」としてしまう——選択肢(1)(3)(4)。発変電所用はギャップレス。
(イ)だけで(2)(4)(5)に絞れます。
⏱️ 本番での進め方
①★過電圧の大きさは波高値。波頭長は形。
②★特性要素はZnO(酸化亜鉛)。SF6は絶縁ガス。
③★遮断するのは続流(商用周波の電流)。
④★発変電所用はギャップレス。放電遅れがない。
💡 覚え方
「ZnOは鋭いからギャップが要らない」——平常時にほとんど流れないからです。遮断する対象は続流——サージが去ったあとの商用周波の電流になります。
ギャップの使い分けは平成27年度 A問題7(変電:避雷器とその役割)、制限電圧と絶縁協調は平成23年度 A問題10(変電:発変電所用避雷器)にあります。
避雷器の定格を決める考え方
(エ)の続流を確実に遮断できるかが、定格の根拠です。
| 用語 | 意味 | 決め方 |
| ★定格電圧 | ★続流を遮断できる商用周波電圧の上限 | ★1線地絡時の健全相電圧より高く |
| ★公称放電電流 | ★制限電圧を規定する電流 | ★系統の雷サージの大きさから |
| ★制限電圧 | ★放電中の端子電圧 | ★機器の絶縁強度より低く |
定格電圧が低すぎると、地絡時に避雷器が動作してしまいます——続流を切れずに焼損するのです。
高すぎると、今度は制限電圧も高くなって守れない——ちょうどよい値を選ぶ必要があります。
中性点接地方式で定格が変わる
| 接地方式 | 1線地絡時の健全相電圧 | 避雷器の定格 |
| ★直接接地 | ★1.3倍程度 | ★低くできる |
| ★非接地・抵抗接地 | ★√3倍 | ★高くする必要がある |
直接接地なら避雷器の定格を下げられます——制限電圧も下がるので機器の絶縁も弱くできるのです。
接地方式・避雷器・機器の絶縁は連動している——それが絶縁協調の実際になります。
要点をもう一度
避雷器の動作を、5つの空欄で追う構成です。
| 空欄 | 答え | 意味 |
| (ア) | ★波高値 | ★サージの大きさ |
| (イ) | ★ZnO | ★特性要素の材料 |
| (ウ) | ★非線形 | ★電圧で抵抗値が変わる |
| (エ) | ★続流 | ★サージ後の商用周波電流 |
| (オ) | ★ギャップレス | ★放電遅れがない |
(イ)だけで(2)(4)(5)に絞れます——あとは(ウ)で確定です。
SF6はGISの絶縁ガス——避雷器の素子と混同しないこと。
動作の流れを1本にまとめる
| 段階 | 起きること |
| ★① | ★過電圧の波高値がある値を超える |
| ★② | ★ZnOの抵抗が急に下がる(非線形) |
| ★③ | ★サージ電流が大地へ流れ、電圧が制限される |
| ★④ | ★電圧が戻り、抵抗が上がって続流が止まる |
すべて非線形抵抗特性から出てきます——1つの性質で開閉の両方をこなすのです。
避雷器を置く場所
(オ)のギャップレス避雷器を、どこに設置するかも重要です。
| 場所 | 目的 |
| ★変圧器の直近 | ★最も高価で交換が難しい機器を守る |
| ★線路引込口 | ★侵入するサージを入口で抑える |
| ★ケーブル接続部 | ★インピーダンスの変化点で反射が起きる |
サージは進行波なので、避雷器から離れるほど守れません。
★距離に比例する
波が往復する時間だけ、電圧が上がり続けます——だから近くに置くのです。
目安は変圧器から10〜20 m 以内——それ以上離れると保護効果が落ちます。
ケーブルと架空線の接続点でも反射が起きます——特性インピーダンスが大きく違うからです。
反射で電圧が2倍になることもある——だからそこにも避雷器を置きます。
まとめ
| (ア) | 過電圧の波高値がある値を超えると放電 |
| (イ) | 特性要素=ZnO(酸化亜鉛) |
| (ウ) | 非線形の抵抗特性 |
| (エ) | 放電後は続流を遮断 |
| (オ) | 発変電所用はギャップレス避雷器→(2) |
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