今回は令和2年度 電力科目 A問題7、真空遮断器(VCB)について誤っているものを選ぶ問題です。真空バルブ内で消弧する仕組みと、他方式との比較——遮断器のなかでも最頻出テーマです。
ねらいは騒音の大小。真空遮断器は密閉された真空バルブ内で開閉するので動作音が小さいのに対し、空気遮断器は圧縮空気を勢いよく吹き付けて消弧するため排気音が大きい。「真空遮断器のほうが騒音が大きい」は逆です。
誤りは(5):真空遮断器は静か
「空気遮断器に比べて動作時の騒音が大きい」——逆です。
| 遮断器 | 消弧の方法 | 騒音 |
| ★空気遮断器(ABB) | ★圧縮空気を大気へ吹き出す | ★★きわめて大きい |
| ★真空遮断器(VCB) | ★真空中でアークが拡散する | ★小さい |
| ガス遮断器(GCB) | SF6を密閉容器内で循環させる | 小さい |
空気遮断器は圧縮空気を大気へ放出します——そのときの破裂音が非常に大きいのです。
数百メートル離れても聞こえるほど——市街地では使えません。
真空遮断器は密閉されたバルブの中で完結します——外へ何も出ないので静かです。
騒音が小さいことは、真空遮断器の利点の1つ——それを短所として書いたのが本問の誤りになります。
令和2年度 電力科目 A問題7:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和2年度 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題7
電験3種 電力科目 【変電】 令和2年度 A問題7
真空遮断器に関する記述として、誤っているものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
真空遮断器は、高真空状態のバルブの中で接点を開閉し、真空の優れた絶縁耐力を利用して消弧するものである。
真空遮断器の開閉サージが高いことが懸念される場合、避雷器等を用いて、真空遮断器に接続される機器を保護することがある。
真空遮断器は、小形軽量で電極の寿命が長く、保守も容易である。
真空遮断器は、消弧媒体としてSF₆ガスや油を使わない機器であり、多頻度動作にも適している。
真空遮断器は経済性に優れるが、空気遮断器に比べて動作時の騒音が大きい。

(1) 真空で消弧できる理由
真空には、電離するものがありません。
| 段階 | 起きること |
| ① | ★接点が開き、金属蒸気によるアークが生じる |
| ★② | ★蒸気は周囲へ急速に拡散する |
| ★③ | ★電流零点で蒸気の供給が止まる |
| ★④ | ★真空なので絶縁がただちに回復する |
アークの正体は、接点から蒸発した金属の蒸気——空気ではありません。
電流がゼロになれば蒸気の供給が止まり、拡散して消える——吹き付けるものが要らないのです。
絶縁回復が速いので、電流零点の直後には切れています——だから多頻度動作にも耐えます。
(2) 開閉サージという弱点
真空遮断器は、切れがよすぎることが問題になります。
| 現象 | 内容 | 結果 |
| ★裁断電流 | ★電流零点の前に強制的に切れてしまう | ★e=−L di/dt で高い電圧 |
| ★再点弧 | ★切れた直後にまた放電する | ★高周波の振動が生じる |
★切れる速さが効く
電流が小さいと、零点を待たずに切れてしまうことがあります——裁断電流と呼ばれます。
急に切れるほど di/dt が大きく、高い電圧が生じる——運転電圧の数倍に達することも。
特に電動機など誘導性の負荷を切るときに問題になります——巻線の絶縁を傷めるのです。
だから避雷器やサージ吸収器を併設します——問題文の(2)がその話になります。
(3)(4) 真空遮断器の利点
| 利点 | 理由 |
| ★小形軽量 | ★真空バルブが小さく、機構も簡単 |
| ★電極の寿命が長い | ★アークが分散し局所的に消耗しない |
| ★保守が容易 | ★消弧媒体の補充・交換が不要 |
| ★多頻度動作に適する | ★絶縁回復が速く消耗も少ない |
| ★火災の恐れがない | ★油を使わない |
SF6も油も使いません——環境面でも火災の面でも有利です。
だから6.6 kV の高圧受電設備では、ほぼ真空遮断器——数が多い場所ほど保守の楽さが効くのです。
⚠️ よくある間違い
(5)の前半「経済性に優れる」だけを見て正しいと判断する——そこは正しいのです。誤りは「騒音が大きい」。
空気遮断器の騒音の大きさを知らないと迷います——圧縮空気を大気へ放出するので破裂音がします。
(2)の「開閉サージが高い」を疑ってしまう——裁断電流による実際の課題です。
(3)の「電極の寿命が長い」を疑ってしまう——アークが分散するので正しい。
(4)の「多頻度動作に適している」を疑ってしまう——絶縁回復が速いので正しいです。
他の機器と比較した記述を疑う——本問では(5)だけになります。
⏱️ 本番での進め方
①★真空遮断器は静か。空気遮断器が騒音の元。
②★アークの正体は接点から出る金属蒸気。
③★裁断電流で開閉サージが生じるので避雷器を併設。
④SF6も油も使わないので環境・火災の面で有利。
💡 覚え方
「真空は外へ出さないから静か」——空気遮断器は大気へ吹き出すからうるさいのです。弱点は切れがよすぎること——開閉サージには避雷器で備えます。
遮断器の種類は平成28年度 A問題7(変電:遮断器)にあります。
空気遮断器がなぜ騒がしいのか
(5)の比較対象を、具体的に見ましょう。
| 段階 | 起きること | 音 |
| ① | ★圧縮空気(1〜3 MPa)を接点へ吹き付ける | ★噴出音 |
| ★② | ★アークを吹き消す | ★— |
| ★③ | ★使った空気を大気へ放出する | ★★破裂音(100 dB 超) |
高圧の空気を一気に大気へ逃がすので、破裂音がします——雷が近くに落ちたような音です。
消音器を付けても、完全には抑えられません——市街地では使えないのです。
真空遮断器やガス遮断器は、密閉されたまま完結します——外へ何も出ないので静かになります。
だから空気遮断器はほとんど使われなくなりました——騒音と設備の大きさが理由です。
消弧媒体の変遷
| 年代 | 主流 | 置き換わった理由 |
| ★〜1960年代 | ★油遮断器 | ★火災の恐れ |
| ★1960〜80年代 | ★空気遮断器 | ★騒音と設備の大きさ |
| ★現在 | ★ガス遮断器・真空遮断器 | ★— |
より静かで、より小さく、より安全な方向へ進んできました。
要点をもう一度
4つが利点で、(5)だけが他機器との比較です。
| 記述 | 内容 | 正誤 |
| (1) | 真空の絶縁耐力で消弧 | 正 |
| (2) | 開閉サージ対策に避雷器 | 正 |
| (3) | 小形軽量・長寿命・保守容易 | 正 |
| (4) | SF6も油も使わず多頻度動作に適する | 正 |
| ★(5) | ★空気遮断器より騒音が大きい | ★誤(小さい) |
比較の記述を疑うのが定石——本問では(5)だけです。
真空遮断器が使われる範囲
| 電圧 | 主に使われる遮断器 |
| ★3.3〜6.6 kV | ★真空遮断器 |
| ★22〜77 kV | ★真空遮断器またはガス遮断器 |
| ★110 kV 以上 | ★ガス遮断器 |
高圧受電設備ではほぼ真空遮断器——数が多く、保守の楽さが効くからです。
超高圧ではガス遮断器——真空は距離を伸ばしても耐力が比例して上がらないため。
真空バルブの構造
(1)の「高真空状態のバルブ」を、中身から見ましょう。
| 部品 | 働き |
| ★固定電極・可動電極 | ★接触して通電し、開いて遮断する |
| ★アークシールド | ★金属蒸気が絶縁筒に付着するのを防ぐ |
| ★絶縁筒(セラミック) | ★容器の絶縁と真空の保持 |
| ★ベローズ | ★真空を保ったまま可動電極を動かす |
真空度は10-5 Pa 以下——大気圧の100億分の1です。
ベローズは蛇腹状の金属——伸縮しても気密が保たれます。
アークシールドがないと、蒸気が絶縁筒に付いて絶縁が落ちます——寿命に直結する部品です。
電極には銅とクロムの合金が使われます——アークが分散しやすく消耗が少ないから。
開閉サージへの具体的な対策
(2)が挙げる保護を、方法ごとに見ましょう。
| 対策 | しくみ | 置く場所 |
| ★避雷器 | ★過電圧を大地へ逃がす | ★機器の直近 |
| ★サージ吸収器 | ★抵抗とコンデンサで波形をなまらせる | ★電動機の端子 |
| ★サージ吸収用コンデンサ | ★立ち上がりを緩やかにする | ★機器の入口 |
避雷器は電圧の大きさを抑えます——コンデンサは立ち上がりの速さを抑えるのです。
巻線を傷めるのは、急峻な立ち上がり——最初の数巻に電圧が集中するからです。
だから両方を組み合わせて使うことがある——大きさと速さの両面から守ります。
特に高圧電動機は巻線が弱いので、対策が欠かせません——真空遮断器と組む場合の定石です。
まとめ
| (1)消弧原理 | 真空バルブ内・真空の絶縁耐力で消弧→正しい |
| (2)開閉サージ | 高くなりやすく避雷器で保護→正しい |
| (3)長所 | 小形軽量・電極長寿命・保守容易→正しい |
| (4)消弧媒体 | SF₆・油不要・多頻度動作向き→正しい |
| (5)騒音 | 空気遮断器より小さい(大きいは逆)→誤り。答えは(5) |
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